悠太と日常
自分の作品にしてもいいよ!!!
「えー!」
「わあ、びっくりした。いきなり大きな声出さないでよ!」
八月初めのある夜。十歳になりたての悠太は、五つ上の姉に怒られた。姉は携帯でメールを打つのに集中していたらしい。
「だってー、明日雨降るってテレビで言ってるんだもん」
「あー、あんた明日海行くんだって?」
「ひろくんのお父さんに連れてってもらうんだー! いいでしょ!」
「いや、別に羨ましくないけどさ」
「お姉ちゃんも一緒に行かない?」
「あたしはパス。焼けるの『ヤ』だし」
「ふーん。まあいいや」
「まあいいやとかじゃなくて、明日雨ならどっちみち行けないじゃないの」
「あ! そうか……」
「……そんなに泳ぎに行きたかったら、屋内プールにでも行ってきたら?」
「うーん……」
頭を抱える悠太。とそこに悠太の父親が帰ってきた。
「ただいまー。帰ったよ」
「お父さんだ! おかえり!」
悠太は玄関へ走っていき父の胸に跳び乗った。
「悠太……迎えてくれるのはすごく嬉しいんだけど……重いよ……」
「あなたおかえりなさい」
台所にいた母も玄関まで来て声をかける。悠太は父の背中から降りて明日のことを聞いた。
「ねえお父さん。明日雨降るんだってさー。僕、嫌だよ。どうすればいい?」
「ああ? それは残念だなー」
「悠太、今日はもう遅いし明日のためにもう寝なさいね」
「はーい」
悠太は「明日晴れますように」と少し曇り始めた夜空に向かって手を合わせた。
次の日。案の定、雨は降ってしまったが昼前には上がった。悠太は先週からの約束通り、友達のひろ君と彼の父親と一緒に、家から小一時間ほどの海水浴場に行った。
「気持ちいいなー!」
「おーい! 悠くんとひろくーん」
偶然、クラスメイトの加奈ちゃんたちも海水浴に来ていて、仲良しの五人で夕暮れまで遊んだ。
「面白かったねー」
「うん。また来たいねー」
帰りの車の中では、二人とも寝てしまった。家に着くとすぐ夕食で、献立は大好きな素麺だった。
「おいしいなー」
悠太は充実した夏休みの日々を過ごしていたが、すぐそこに迫る―――たくさん宿題を出さなければいけない全校登校日のことはすっかり忘れていた。
悠太と日常
自分の作品にしてもいいよ!!!