ジゴクノモンバンⅡ(6)

第六章 インターネットジゴク 

 祭りの後、参加者たちは、仮装したままハンバーガー店やコーヒーショップに流れていく。店に入れなかった者たちは、広場の椅子や空き店舗の前で、地べたに座り込む。一人で座る者もいれば、二人、三人と連れだった者もいる。中には、放置自転車のサドルに座る者もいる。
 みんな、ポケットからおもむろに携帯電話を取り出すと画面を指で触っている。仲間同士の会話はない。画面に向かってつぶやいている。みんな、画面に夢中である。時々、隣の者に話し掛けるものの、ほとんど画面に集中している。
 商店街のまん中で、それらの風景を見つめている青太たち。
「みんな、何を見ているんやろ」
「スマートフォンゆう奴でっしゃろ」
「スマートフォン?」
「ええ。電話をかけたり、メールもしたり、画面を触れば、インターネットに繋がり、いろんな情報が文字だけでなく映像で得られますわ。ゲームもでき」るし、テレビも見れるし、便利な奴でっせ」
「赤夫は詳しいなあ
「パパが、ジゴクに登って来た奴の持ち物検査し、押収した物を見たんですわ」
「ほんまか。そんなに楽しいんか」
「そりゃあ、調べたら、何でもわかるし、さっき言うたように、ゲームもできるし。暇つぶしには最高でっせ」
「それやったら、試験中に、持っとたら、役に立つなあ」
「いっぺん、それが問題になって、試験会場では、持ち込み禁止になったらしいですわ」
「そりゃそうや。そんでも、仲間同士がおるのに、お互いに話もせんと画面ばっかり見とるなあ」
「よっぽど面白いんとちゃいまっか」
「と言うことは、仲間は面白ないちゅうことかいな」
「そうかもしれまへん」
「ちょっと聞いてみるか」
「そうしまひょ」
 青太たちはハンバーガー店の前で自転車に乗ったままの学生服の男子に尋ねた。
「あのう、すいません」
「何?」
 学生は携帯電話から目を離さないまま答える。
「何を見ているんですか?」
「おいおい、これ見てみろよ」
 青太が話かけたにも関わらず、青太には返事をせずに、隣の仲間に話し掛ける。
「おっ、それ面白いやんか。どこのサイト?」
 隣同士で盛り上がって、青太は相手にされない。あきらめる青太。
「何がおもしろいんやろか?」
「ここにいながら、いろんな場所を見たり、いろんな人と話をできるからと違いまっか」
「そりゃそうやけど。ここでじっとしとっても、行ったことにならんで」
「そうでんな」
「遠いどこかの奴と機械を使って話をするんもええけど、隣の奴と生身の話もするんも大事とちゃうか」
「そうでんな。でも、携帯もっとったら、SPGやGPSか忘れてましたけど、位置情報システムを使えば、パパや青太ちゃんのとうちゃん、すぐに見つけられると違いまっか。便利なこともありまっせ」
「そんな便利な機能がついとんかいな。なんでも、ええことと、悪いことがあるんや」
「ええように使えばいいんでっしゃろ」
 商店街の空きスペースにたまり、スマートフォンで楽しんでいる若者たちを後にして、青太たちは父親たちを探し始めた。

ジゴクノモンバンⅡ(6)

ジゴクノモンバンⅡ(6)

第六章 インターネットジゴク

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-27

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