心友。
「友達ってね、友達を見ると黙ってられないんだよ。
だから大切にしたいの。」
地味な私と明るいあの子の話。
B組…。
中学生になった森山カレンの新しい学校生活の始まりはクラスで決まる。
「カレン!あたしも同じクラスだよっ!B組!」
えへって笑う私の友達、西アラレちゃん。
「え、マジで!?やったぁ!」
これからの中学校生活は良い日が送れそうだ。
アラレちゃんは、人の輪に馴染むのが得意だ。
こんな、地味で人見知りの私とは違って。
いつも新しい友達ができるのはアラレちゃんのおかげだった。
たった一日の学校生活体験でアラレちゃんは、クラスのほぼ全員の人と仲良くなっていた。
もともと友達だった原田イズミとしか話せなかった。
「アラレちゃん!一緒に帰…―――。」
「あ!アラレちゃんだぁ。一緒に帰ろう!」
「うん、いいよ。」
アラレちゃんはその子と一緒に帰っていった。
あの子は確か…、白巻ヨウちゃんだ。
やっぱ、アラレちゃんは凄いなぁ。
次の日、やはりアラレちゃんはずっとヨウちゃんと一緒にいた。
あと、ヨウちゃんといつも一緒にいる…神崎ナミカちゃん。
あの中に入れる勇気がないなぁ。
入って面白楽しく話せたらめっちゃ嬉しいんだけどね。
イズミのとこにでも行くかな。
って、イズミのとこへ向かう時…。
「カレン!おいでよっ!」
…アラレちゃんが私を呼んでくれた。
見ると、ヨウちゃんとナミカちゃんが私を笑顔で招いてくれた。
「カレンちゃん、遠慮しなくていいよぉ!」
ヨウちゃんが私の肩を優しく叩いた。
自然と私の顔に笑みがこぼれた。
「かわいい、カレンちゃんっ!」
ナミカちゃんが私の顔をまじまじと見ていた。
思わず、ビクッとして机に手をぶつけた。
「な、何言ってんの!?そんなことないよぉ!」
必死に否定した。
そしたら皆、私を見て笑ってくれた。
誰にも冗談が通じなくて心細かった小学生の頃。
凄く嬉しい。
帰り、いつものように一人で帰ろうとした。
(やっぱりアラレちゃんは尊敬しちゃうし、ヨウちゃんは明るくて面白いし、ナミカちゃんは優しくて可愛い!
最高の友達を持ったなァ。)
そう思っているうちに気づかず笑顔ができていた。
「何ニヤニヤしてんの?」
すると後ろからアラレちゃんが肩を叩いてきた。
その後ろにはヨウちゃんとナミカちゃんがいた。
凄く嬉しかった。
本当に友達なのかな…。
「遠慮しなくていいって言ったじゃん!」
「一緒に帰ろっ♪」
ヨウちゃんとナミカちゃんが言ってくれた。
次の日から普通の授業が始まった。
一時間目は…美術だ。
皆は、ぺちゃくちゃおしゃべりをしていた。
私はアラレちゃんとしゃべってい。
「アラレちゃん、カレンちゃん!」
ヨウちゃんが来た。
そしてナミカちゃんも来た。
皆凄い面白い話で盛り上がった。
「もぅ、ナミちゃんウケるわぁ!」
「アラレちゃん、すげぇ!」
「ヨウちゃん、ばかじゃないの!?」
って、皆楽しそうだった。
するとヨウちゃんが爆笑しながら私たちに言った。
「あのね、あたし、この前、マモリの彼女になったのっ!」
「「は?」」
アラレちゃんと私の声が重なった。
「あ、あ!あたしねぇ、3股中!リリカと結婚したんだけどね、マナと不倫しててね!本命はちゃんといるけどっ!」
と、ナミカちゃん。
ますます変だ…。
「あははっ!何なに?それ!ウケるわぁ!不倫とか結婚とか!」
私も少しクスッと笑った。
だって、女の子と女の子でそんなこと…おかしいじゃない。
「アラレちゃん、好きですっ、付き合ってください!」
急にヨウちゃんがアラレちゃんに告白した。
ナミカちゃんは大爆笑。
「無理。だってそしたら私、浮気相手になっちゃうじゃん。」
ヨウちゃんは残念そうに嘘泣きをしだした。
「あーあ、アラレちゃん、最悪ぅ!」
ナミカちゃんが言った。
「…分かった!いいよっ!彼女になってあげるぅ!」
アラレちゃんは降参して意味不明に応えた。
「ひゅーひゅー!いいなぁ!」
ナミカちゃんがアラレちゃんとヨウちゃんのラブラブな姿を見ていた。
「ナミカちゃんにはいっぱいいるじゃない!」
「え、やめてよ、ナミカちゃんだなんて!」
ナミカちゃんはデレデレと言った。
「ナミちゃんでいいんだよっ!」
ってヨウちゃんが言った。
「うん、分かった!ナミちゃんっ!」
嬉しかった。
「えへへ!んじゃぁ、あたしカレンちゃんの彼女になるっ!」
と言って私の腕を組んだ。
「え、ええぇぇえぇぇぇ!?」
びっくりしたけど嬉しかった…?
アラレちゃんとヨウちゃんはひゅーひゅーとか言いながら笑っていた。
「こらぁ、静かにしろぉ!」
先生が怒ってる。
皆がやべっとか言っていっせいに席についた。
「それじゃぁ、今日は自分の手を描いてください。」
先生の説明が終わると皆は再びしゃべりだした。
アラレちゃんのとこにヨウちゃんが行った。
私も行こうとしたけど…。
珍しくナミちゃんが来ない。
なぜか、真剣に手の絵を描いていた。
ちょっと近くに行ってみた。
「ナミちゃん?」
…普通にスルー。
真剣だ…。
私もやろっかな、て思って行こうとした時。
「何、カレンちゃん?」
気づいてくれた。
「えっと、アラレちゃんたちのとこ行かないのかなって、思って…。」
「あぁ、でもこの絵描かなかったらきっと宿題だよ?面倒だから今やっちゃう。」
ふぅん、て関心した。
「ねぇ、カレンちゃん、ここにいてねぇ♪」
と、私の腕を掴んだ。
うん、と言ってずっといた。
さすがに飽きた。
「ナミちゃん、もう行くねばいばい。」
って、腕を離そうとしたら…。
「え、え、ダメっ!行かないで!」
ってめっちゃ可愛い声で言うから…。
結局一時間ずっとナミちゃんにつきっきりだった。
そして、もちろん、宿題。
それから私とナミちゃんはかなり仲良くなった。
だけど突然、ナミちゃんが学校に来なくなった。
2日間、不登校を続けた。
3日経って、ナミちゃんが学校に来た時、ヨウちゃんが泣いてナミちゃんに抱き着いた。
だけど、なんだかナミちゃんの様子がおかしい。
それをアラレちゃんも気づいたようだ。
「ナミちゃん、大丈夫?」
アラレちゃんが声をかけた。
すると、ナミちゃんは答えた。
「うん、大丈夫…。なんで?」
凄く暗い声だった。
「なんか…いつものナミちゃんじゃない気がして…。」
「そんなことないよっ!」
絶対つくってる…。
放課後、ナミちゃんは先生に職員室に呼ばれた。
部活が終わって、教室に忘れ物を取りに行こうとした。
教室に行く途中、職員室の前を通った。
すると、変わり果てたナミちゃんの姿があった。
「な、ナミちゃん!」
驚いた。
あちらもびっくりしていた。
「ナミちゃん!」
ナミちゃんのもとへ駆け寄った。
「あ、カレンちゃん!」
急に明るくなった。
教室まで一緒に行った。
忘れ物を取り、教室を出ようとした。
「ナミちゃん、帰る?」
そっとナミちゃんに声をかけた。
「ううん、まだ帰らない。帰ってていいよ。」
少し残念だけど一人にしてあげた方がいいのかなって思った。
「それじゃぁ、ばいばい。」
ナミちゃんどうしたんだろ。
玄関で靴を脱ごうとした時、嫌な予感がした。
なぜか分からない。
だけど、行かなきゃいけない気がした。
ナミちゃんのところへ。
階段を上がって、走って、急いだ。
教室への長い廊下を思いっ切り走った。
「ナミちゃん!」
予感が的中した。
教室の隅の席のナミちゃんの席にナミちゃんの変わり果てた姿があった。
放心状態だった。
すぐに駆け寄って、異変に気付いた。
ナミちゃんは右手にカッターを持って、右手首に赤い何本もの傷があった。
すぐにカッターを奪い取り、遠くへ投げた。
ポケットからティッシュと生徒手帳に入っている絆創膏を手に持って、ナミちゃんの頬を叩いた。
そしてナミちゃんの手を引いて水道場へ向かった。
自分にはこれが最大の手当だから。
ナミちゃんと水道場へ急いだ。
そしてそのナミちゃんの手首の傷を水で洗い、丁寧にティッシュで拭いて絆創膏を貼った。
それをしてる間に涙がこぼれてきた。
「なんで…!なんでこんなことするのっ!?」
ナミちゃんの手を握ったまま怒りをぶつけた。
ナミちゃんは私が手当した手首をじっと見て黙っていた。
ますます涙がボロボロ流れた。
「ありえないよ…。なんで…。ふざけてでもやらないでよ、こんなこと。」
ナミちゃんは床にこぼれた私の涙に気づいて顔を上げた。
「カレンちゃん…?」
ナミちゃんがやっとしゃべった。
「私たち、友達じゃん。でしょ?」
ナミちゃんは浅くうなずいた。
「友達がこんなことしてたら悲しいよ…。」
涙が止まらなかった。
すると、気づくとナミちゃんも涙を流していた。
「なんで、こんなに私に尽くせるの?」
「…友達ってね、友達を見ると黙ってられないんだよ。だから大切にしたいの。大切な人がこんなことになるのは、凄く悔しい…!」
ナミちゃんは涙を溢れさせた。
「ねぇ、教えてよ。何があったの?」
ナミちゃんは黙った。
「…………うん、やっぱいい。言わなくて、いいよっ…!」
こんなに辛いことがあったんだ。
私はナミちゃんに抱き着いた。
「へへ。帰ろう、ナミちゃん。」
そうして私たちは帰った。
次の日、ナミちゃんは昨日とは別人みたいに明るい女の子になっていた。
良かった…。
「カレンちゃん、大好き。」
急にナミちゃんが抱き着いてきた。
私も大好きって言いたかった。
だけど、照れくさくって言えなかった。
それからも楽しい生活が送れた。
心友。