素直になること。
クリスマスの日に起きた 些細な喧嘩
ごめんなさい。
私はいつも自分から謝ることができなかった。
どうしてか?
恥ずかしかった。
どうしても”ごめんなさい”と言う時は声がものすごく小さくなった。
両親からも友人からも
「真由美っていつも自分からは、ぜったいに謝らないよね~」と笑われながら言われた。
その都度「別に謝るような事してないもん」と返していた。
そして今日は私の誕生日だ。
しかし今朝、同棲している彼の歩と喧嘩をしてしまった。
私が歩の大好物のメロンパンを許可もとらずに朝食に食べてしまった。たったそれだけ。しかし、それが原因で、いつもは許してくれる歩だったが今日は不機嫌で「夜、真由美とは一緒に過ごさない〜」とまで言われてしまった。拗ねられたのだ。
勿論私も黙ってはいなかった。「そこに置いといた歩が悪い」「誕生日の日くらい許してよ」と歩を責めてしまった。
悪いのは自分なのに。”真由美って自分からは謝らないよね。素直になればいいのに。”という言葉が頭を過る。はーぁ。
そもそも20歳にもなって大人気ない。今時、幼稚園児だって自分からごめんなさいくらい言える。そんな事わかっていた。でもどうしても言えない。
どうしよう。
誕生日の日に1人で過ごすのは流石に嫌だった。淋しい。
友達呼ぼうかな。
だが、私の誕生日は12月24日と、Xmasと同日だった。そのおかげで、子供の頃から誕生日とXmasのケーキが1つに。Xmasプレゼントなんていうものは勿論ない。
しかし今、それは問題ではない。
問題は、どの友達も彼氏と過ごすために予定など空いていないという事だ。ダメもとで親友の優里香にメールしたが「ごめん!彼氏と過ごすから無理。というか、歩くんは?」と聞かれ理由を話すと「それは真由美が悪い!あ!いい機会じゃん!人生初で”ごめんなさい”言いなよ~がんばってね!」と返されてしまった。
どうしてXmasに産んだの?と初めて親を恨む。
ただただ時間だけが過ぎていく。
本当だったら今頃、歩と2人でお祝いしていたはずだ。
このまま帰ってきてくれなかったらどうしよう。
突然、不安になり淋しくなる。
歩がいない部屋は静かで寒い。
メロンパンがここあれば許してくれるかな?
そんな事を考えていると、なんだか家にいるのが嫌になってきて外に出てしまった。
外は雪が降っていた。
室内よりもっと寒い外を1人で歩く。
雪が手のひらに乗っては体温で溶けていく。吐息が白い。
遠くで光っているイルミネーションが綺麗だ。
去年、歩から誕生日プレゼントにもらった赤色のマフラーを巻いてきた。
しばらく歩いているとパン屋に辿り着いた。
私はそこでメロンパンを2つ買う事にする。
サンタ帽を被った優しそうな店員のおばあちゃんに、メロンパンを2つもらえませんか?と聞いてみる。
おばあちゃんは少し考えてから、ちょっと待ってね。と笑顔で言った。
20分くらい経っただろうか。遅いなぁと思いながらカウンター越しに厨房を見ていた時、奥から小走りで戻ってきた、おばあちゃん。
「遅くなってごめんなさいね。外は寒いから”焼きたてのメロンパン”を食べてもらいたいと思って」と、おばあちゃんは紙袋に入れてそのメロンパンを持ってきた。
とても温かい。
それから1つは、おまけと言われた。
紙袋の中にはメロンパンが3つ入っていた。本当にありがとうございます!とお礼をし、店を後にする。
スマホのメール作成を開く。
宛先は歩。
「歩の好きな焼きたてのメロンパンあるよ、外も寒いし早く帰ってきなよ」
今なら言える気がする。
「朝はごめんね。」と付け加え、深呼吸してから送信ボタンを押した。
家に着く。
中から「おかえりー」という元気な声が聞こえた。歩だ。
嬉しかった。
玄関まで走って来た、歩の顔を見て安堵で泣いてしまった。
「おかえり。どうして泣くのー?」
と笑顔で私を見る彼に抱きつく。
歩に「というか、真由美から謝ってくれるの初めてだね」と言われた。
私はうるさいなーと言って、さっきよりもっと強く抱きしめた。
イタイイタイと彼が言っても離さなかった。
メロンパンの入った紙袋を開く。
中から甘い香りと焼きたての温かさが伝わってきた。
私と歩は笑顔になる。
嬉しそうに「食べよ!」と言う歩。私は頷く。
彼がいると部屋は明るくなる。
暖かくなる。
ずっと一緒いようね、歩。
私は彼に、もう一度抱きついた。
今日は甘えん坊さんだねと頭を撫でられる。
やっぱり素直になれない私はうるさいなぁと小声でつぶやき歩の胸に顔を埋めた。照れた事に気がつかれないように。
素直になること。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今年のXmas、皆さんはどのようにお過ごしですか?
ちなみに私は家で勉強です。受験生なので仕方ないですね(涙
来年は友達とか彼氏と過ごしたいです。
なんだかメロンパン食べたくなってきたので買ってきますね。
それでは良いXmasを◎
また次の作品でお会い出来たら幸せです。