殴る

殴る

殴る、容赦なく自分のことを思って殴ってくれる相手。 

そんな人が居れば、この心の錆も剥がれるようなそんな気がします。

殴る

 私と彼は親友だった。中学生の頃から彼と私は知り合い、互いに初対面とは思えないほどの親しみやすさを感じていた。

しばしの間、私はたばこやギャンブルなどを中学生ながらにする者達とつるんでいた時期があった。

服装や髪もその者達と同様の似たような風貌へと私が変わっているとき、ある1人の男子生徒に対してのカツアゲが行われていた。

「おい、昨日言ってあった金は持ってきたのか?」グループのリーダー的な存在の奴が男子生徒に質問を問いかけた。

「ごめんなさい、勘弁してください」男子生徒は震えながらそう返答した。

「ふざけんな!!」グループのリーダー的な奴が怒声を上げて、男子生徒の腹に一発拳を入れた。

そのほんの数秒後だった、男子生徒を殴った奴が思いっきり右側に吹っ飛んだのだ。

急に何事かと思ったが、そこに居たのが彼だった。

一瞬グループの者達は彼に襲いかかろうとしたが、彼の鋭くどこか冷徹な眼光に怯んでリーダー的な奴と共々その場を去っていった。

1人その現場に残った私に彼は近づき、無言で私の左頬を拳でおもいっきり殴ると彼は一言私にこう言ったのだ。

「お前は違うだろ・・・。あんな奴らと付き合うなよ。目覚ませよ・・・。」

その言葉は、今まで私にいろんな言葉を投げかけた。先生や親よりも深く深く私の心に付いていた錆のようなものを叩き壊してくれた。

それと、同時に涙が目から溢れ出してきた。

「泣くほど、自分を騙してたのかよ。仕方ない奴だな」と彼は言うと私の肩をポンと叩いた。

彼の目はさっきまでの鋭い眼光を放ったとは思えないほど、優しい目をしていた。

それからはもうグループで群れていた奴らと付き合うのは一切やめるようになった。

何時しかは彼と私は親友になり、私が道を踏み外しそうになったとき彼は容赦なく私を殴る。

またそれとは逆に彼が道を踏み外しそうになったときは私は彼を容赦なく殴る。

私達の関係はよくある馴れ合いの関係とは違うものであった。
まぁ、ただ、私の殴られる回数がやけに多いが・・・。

殴る

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-25

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