紹介文「酒井一途」
酒井一途くんと私は大学時代からの友人であり、ともに演劇の道へ切磋琢磨し、過去数作、おもには彼が企画制作・運営・脚本らを兼ね、私が彼の創造世界を具現化すべく演出を担いながら、演劇の可能性を開拓しつづけてきた間柄であります。一般に「演劇」ときけば軽やかで優美なイメージが先行しますが、けれどもその製作過程は概して泥臭く、面倒な手間ばかりかかる作業と困難の連続です。まずもっとも特筆すべき彼の魅力は、そうした誰もが忌む事柄に対し、苦汁を嘗めながらもひたむきに挑戦することができる、ゆえに無から有を、理想を現実のもとに実現させられてしまう「強さ」にあると思われます。楽な道を選択しようと咎まれないのが物作りの恐さです。彼は徹底して自律し、自己と対話し、誰彼の評価を二の次に邁進する才能を持っています。そうした誠実さが制作時の人望をよび、また脚本の清廉さにも繋がっていると強く感じます。
紹介文「酒井一途」