ナミヤ雑貨店の奇蹟
ナミヤ雑貨店の奇蹟
2012年東野圭吾著
こちらは全くの初読で、前知識もなかったので、とても楽しめた。
シリーズもの以外のお話は久々で、なんだか読み切りもいいなーなんて思ったりする。
文章は相変わらず読みやすく、すぐに読めてしまうのが東野さんの特徴。
ストーリーはなんか不思議な話だね。
すべてがリンクする瞬間に、ぞわってなる。
そのリンクがこの作品のキモで、ところどころで登場する。
時には物であったり、人物であったり、時間であったり。
ナミヤさんとフィアンセのつながりも見どころ。
それがこの作品の大もとになっているから。
すべての現象には理由があるという前提をもとに、すべての謎が最後に来るまでに解決してるという、なんとも気持ちのいい作品。
最初はなんじゃこりゃ、と思うけど、最後には、なるほど!てなる。
一番最後の手紙で泣いたなぁ。
地図が白紙なのだから、どんな地図だって書けます。なにもかもが自由で、可能性は無限に広がっています。自分を信じてその人生を悔いなく燃やし尽くされること祈っております。
ていう手紙の文句がなんかキタんだな。
自分の立場とかぶる言葉だったので。
最後まで考え尽くされた話だった。
あそこで出てきた人、物があとで出てくる。おもしろいねぇ。
最後はおもしろい終わり方だった。
ところどころでつながってきて、伏線をちゃんと閉じてます。
読んでて、あそことこれがつながってるのね、と納得。
無駄はないらしい。
過去と現在と未来がつながる瞬間。
ぞくぞくする。
これは読んで良かった。
この前にガリレオを読んで、とっても残念な感じだったので、払拭されました。
シリーズものより読み切りの方が好きなのかしら?
1冊で完結してる感がすごく良いんですよね。
あまり読み切りは読まないんだけど…。
プロ作家が教える小説の書き方ハウツー本をいま読んでて思ったんだけど、すごく随筆の勉強になりますね。
作家はこういう感じで小説を書くんだってわかって。
書いてみないとわからないかと思ってたけど、ハウツー本で疑似体験できました。
だから書けるかはまた別の話なのだが、勉強にはなった。
客観的に見る訓練ができた気がします。
私の人生はこればっかりなのだが。
人生のテーマのひとつなのかもしれない。
この話のなにがつながっているかというと、東野さんはストーリーテラーなんだろうなと。この本でいうところの。
最初に終わりを考えて、トリックがあって、謎が解決して、すべてが一定の位置に収まるように書く人はストーリーを書きたい作家さんなのだそうな。
この本によると、ストーリーテラーは小説ではないらしい。
まあ、厳密にはよくわからんが、漫画家とか脚本家とかに多いらしいのだ。
小説というのは先を考えずに書くからおもしろいし、とんでもない方向に行ったりするのだそうだ。
終わりがわからないというのが本音だという。
だから、決まった終わりありきで書いてるのは、ちょっと違うのだそうな。
ふーむ。そういうものなのかねぇ。
でもなんかわかる気がする。
理詰めで考えられた話は真面目すぎて堅すぎて読みづらいことがあるよね。
そんな感覚だろうと。
この作品はそんな理詰めの作品の秀作だと思います。
ナミヤ雑貨店の奇蹟