鑑賞記録-劇団はへっ第5回公演「傍白」より
渋谷にあるギャラリー・ルデコ4Fにて観劇。
本作の脚本と演出を担う、自身の後輩でもある木村和博くんが主宰する劇団の本公演。数年前、彼の作品を拝観してまた同様の私考が浮かんだものだが、いやなかなかに難儀な方法を選択し、演劇の(と一括りに申してよいのかどうか定かではないが)可能性を追求していると感じられる。当然ながら、これは彼に対し野次を飛ばすような低俗な分析ではない。人には鑑賞においての心躍る要点が多々あれど、それらをことごとく排除することで道を開拓してゆこうとする、つまりは一般に「面白味」と称される高揚とすすんで決別しようと試みているのである。
演劇は体験(体感)芸術だ。同空間・時間を共有する肉体の芸術である。かつて、太田省吾という演劇人が“無言劇”を世に送りだし、観客の度肝を抜いた(しかしあまりの静寂に眠気を誘うこともしばしば)のとおなじく、木村くんもまた、一歩一歩と信ずる道を踏みしめている。価値観によっては作品の門前で引き返してしまうような観客も少なくなかろう。奥深き思索は、彼の内部で満ちている。あとは呆気にとらせて引きずり込む「入口」をどう仕掛けるか、だ。
鑑賞記録-劇団はへっ第5回公演「傍白」より