鑑賞記録-映画「アレックス」より
2002年、ギャスパー・ノエ監督。
簡潔にいえば気の狂っている映画だ。しかし、そんなノエ監督の愛情表現が僕は心地よく大好きである。未体験の世界へ、力尽くでグイと引っぱり込んでくれる。公開当時、失神者続出、9分間に及ぶレイプシーンにくわえ、めまぐるしく右往左往しつづける画面の視点は観る者の冷静さをぶち壊してゆく。奇抜(という言葉でさえ陳腐)であり、ハラハラさせる。時折「どうやって撮影するのか」と疑問に思わせるほどに。けれどもそれは、低俗なやらかしとは程遠い、表層の下劣さを感じさせない哲学的思考も持ちあわせた、そして相対的にみればミヒャエル・ハネケ作品群よりも若々しくてスタイリッシュ。見事にギャスパー・ノエ監督のセンスで語りつくされている映画と言える。売り文句「21世紀最大の問題作」にも肯ける。
筋書きはいたって単純明快であり、往々にして(人間)ドラマは難解な筋立てを嫌うもの。人間の性根を焙りだしてこそ憎たらしくも麗しい真理がみえてくる。いつまでも芸術は治外法権でなければ。想像にまで罰が及ばないのと同様に、そうあることを願う。
鑑賞記録-映画「アレックス」より