ライクライン

ライクライン

恋心持つ男の子。

別れ

私の名前は渡辺みづと。
普通の中学三年生である。
「おーい!おはよ!みづとおお」
朝からこんなに元気なのは寺田愽臣、私の幼馴染だ。
「朝からテンション高いな、愽臣」
普段から寝不足の私は朝が嫌いだ。
「そりゃそうさ。君の寝起きの顔を見るのは俺の楽しみだからな!」
「気持ち悪…」
私は小学3年生の時、こいつに婚約を申し込まれた。
それ以来ずっとくっついてくるし私を何かとたすけてくる。
『おい!みづとに手ぇだすんじゃねえよ』
『なにいってんの…』
みたいな会話はもう飽きた頃だ。
もちろん婚約なんて小さかったから言っただけだろう。
断ったし。
「早く学校いこ」
そう言って私は早足で学校に向かった。

「なあ、愽臣」
「ん?」
「ぼーっとしてて変な道にきちゃった」
「やっぱり?景色が変だと思ったよ」
学校行くのに道間違えるなんてどうかしてる。
「もどろ」
後ろを振り向いても見覚えのないところだった。
「おわっ、なあなあ!こっちにすげえ長い階段あるぞ」
またさらに振り返ると何処かの国に繋がるような、とても綺麗なレンガの階段があった。
「行ってみようぜ」
「え、ちょっと待ちなよー」
愽臣を追いかけた。
2分くらい階段を駆けのぼったところ、そこは別の街だった。
「おお、すご」
「うん」
車が次々と走って、高いビルやマンションがあった。
私たちの住んでいるところは田舎と言っていいくらいで、こういうのを見る機会はあまりない。
ていうか、ここ。
なんか、見覚えある。
「ねえ、ここ…」
「あ、ああ。ここはあれだ」
「「首都の尼津」」
尼津とは、私たちが住んでいるところの首都。
つまり、都会だ。
「なあ、ちょっと遊ばね?」
「学校があるでしょ」
「いいのいいの、行こうぜー」
ずるずると引っ張られて移動した。

「おいおい、お前〜。また学校休むのかよぉ?」
「ちゃんとこいよ〜」
「休めばいじめられないとでも思ってるわけぇ?」
「ウザいんですけど」
マンションとビルの間。
1m半くらいの隙間で四人が一人を囲っていた。
「愽臣…あれ」
「…ああ、気にすることない。あんなの何処にでもあんだよ」
「最低」
「そんなことないよ」
私は一人でその隙間に向かった。
「なあ、お前ら」
「あ?」
私が声をかけると、すぐにこちらを向いて陰険な目つきを刺してきた。
「私が勝ったらそのいじめられてる子から離れろよ?」
満面の笑みと裏腹に黒いオーラを放って手をゴキゴキならした。
「だーれだよお前っ」
「可愛い顔してんなあ〜」
「死ね」
一気に蹴り飛ばして言葉には出来ないような痛いことを思う存分やってやった。
ふう、とため息をつくといじめられていた子がいった。
「あの…ありがとうございます」
丁寧に頭を下げてくれた。
「別にいいの。あなたは大丈夫?」
「はい。おかげさまで…」
「これからは気をつけなさいよ、じゃあね」
愽臣のところに戻ろうとすると
「あ、待ってください」
私の服をちょんと掴んだ。
「お礼…したい…です。俺の名前は…城田皐月」
なぜか城田皐月の顔はほんのり赤かった。
「お礼?そんなの別にいいわ」
少し冷たかったかな。でも気遣ってもらっても悪いし。
そう思って愽臣のところへ戻った。

俺の名前は城田皐月。
この街の学校に転校してきたばかりなんだけど何故かいじめられる。
今もその状況だ。
「な〜んで転校してきたのお?」
「まじウケるんですけどお〜」
何がうけるのかわからないけど…。
逆らったら命はなさそうだ。
男のくせにひょろひょろの僕は立ち向かうことが怖い。
…どうしよう。
「なあ、お前ら」
?誰…?
突然聞こえた女の子の声。
見てみると美少女が立っていた。威勢のいい態度をもって、とても綺麗で、かっこいい。
その時、人生初の一目惚れをした。
「私が勝ったらそのいじめられてる子から離れろよ?」
俺を…助けに来た?
刹那、少女は強い蹴りやかかと落としやら本当に痛そうな攻撃をかました。
つ、強い。
すぐに四人は逃げて行って少女は「楽勝」といわんばかりの顔をしていた。
「あの…ありがとうございます」
「別にいいの。大丈夫?」
「おかげさまで…」
助けてもらってお礼しないわけにはいかない…。
「これからは気をつけなさいよ。じゃあね」
「あ、待ってください」
とっさに服を掴んでしまってものすごく恥ずかしい。
「お礼…したい…です。俺の名前は…城田皐月」
やばい、俺今、顔沸騰しそう。
「お礼?そんなの別にいいわ」
あっさり断られてしまった。
まあ、迷惑かなあ。
もう1度…いつか…会えるといいな。

「ただいま」
「おかえり、みずと」
私は家に帰るとソファに座ってぐったりとした。
「大事な話があるの」
ん?なんだろ。
「あのね、実は…」

その日の朝はいつも以上に機嫌が悪かった。
「おはよおおおみづとおお!今日も可愛いよおお」
「るっさい」
愽臣のテンションには今日はついていけない。
「どうした?今日いつもより暗いな」
「なんでわかるの」
「俺神だし」
意味わからん。
「で、どしたの」
「私さ、転校することになった」
しばらく訪れる沈黙。
「は…はああ???何の冗談」
「冗談じゃないし、もう決まったの。お父さんが仕事うまくいって、尼津で働くことになった。だから尼津に引っ越し」
最近抜け道を見つけて、確かに近いと思うことができるけど、私たちが住む予定のところはもっと街の真ん中で尼津の中心と言ってもいい。
尼津は広いし、あんまり近いとは思えない。
なんて考えてると、横からグスグスと音が聞こえてきた。
見てみると、愽臣が泣いていた。
男なのに泣くなんて、弱い奴。
「俺…みづとと学校離れたくないし…普段一緒にいられないなんて嫌だ…。」
そんなわがままを聞かされるが、私にはどうしようもない。
「ごめん愽臣…私何も出来なくて…。出来るだけ会いに行くし、私も愽臣に会えないの寂しいよ」
できる限り慰めてやって、しゃがんでる愽臣の頭を撫でる。
「ほんとか…?」
「うん」
今の、うん には自信がない。
すると愽臣は立ち上がって背伸びをした。
涙も拭いて、満面の笑みをしていた。
「おっけー!じゃあ今言ったこと嘘にならないようにねー?」
「う…あえ?」
はめられた…。
「あははっ、でも本当寂しいよ」
優しい顔で私に微笑みかけた。
「はいはい」
学校に行った。

学校にて。
「皆、聞いてくれ」
先生が本当に真剣な眼差しで話す。
ちなみに、今渡辺みづとは先生の横にいる。
「とても急な話だが、我らがマドンナ…転校することになった…」
マドンナって…。
「えっえええええええええ」
生徒は叫び、驚きを隠せないようだ。
先生、共に生徒が涙目になり、私を生まれたての子犬のような目で見上げた。
「皆、大げさ…」
苦笑いしか出来ない。
実は私よくわからないけど高嶺の花らしく、周りの生徒から守ってくれたのが愽臣だ。
「今日で最後だけど、私のこと忘れないでね…」
ひきつった笑いで話し掛けた。
「もちろんですみづと様ああ」
はあ、なんでこんなことに…。

その日はもう、それ以上ないほど疲れた。
ロッカーにお菓子は入ってるし、机の上にはメッセージが書かれていたり、廊下を歩いていれば写真を撮られ…。
家に帰ったら段ボール詰めがある。
そんな9月15日を過ごした。

俺は寺田愽臣。
今日は大好きなみづとが尼津に引っ越す日だ。
俺はみづとに小さい頃から恋心を抱いている。
そのことにあいつは気付いていない。
「なあみづと」
「なに」
「愛してる」
「ものすごくきもい」
こんなやりとりが好きだ。
俺ってば案外マゾなのかも。
「じゃあね、愽臣。またうち来いよ」
「えっもういくの?!ちょ」
なんて微妙な別れ方をしてみづとは駅に行ってしまった。

出会い

私は渡辺みづと。
今、尼津の学校にいます。
自己紹介なんて緊張…。
「今日はなー、なんと!転校生が来たんです。皆仲良くしたってなー」
担任は女、国語教師。何故か大阪弁。
名前は谷薗愛佳。
谷薗先生に手招きされたから、入ろうと思う。
いい印象いい印象…。
「うわっ」
「美人…」
「綺麗…」
なんて声が聞こえるけど、無視無視…。
「初めまして。渡辺みづとといいます。えと…」
皆からの目線はとてもプレッシャーだ。
「これからよろしくおねがいしましゅ」
あっ…!馬鹿私。噛んだ…。
「おい、こいつ今噛んだぞ」
慌てて口を抑える。
もう遅い、クラスじゅう馬鹿にするように笑っていた。
酷い…。
「あはは、じゃあ1番奥の城田君の横に座ってー」
ん?城田?
近くまで行くと、見覚えのある顔だった。
「あ、城田皐月じゃない」
私が話しかけると肩をはねさせて下を向いた。
何故か顔は赤い。
「えっと、この前はありがとう…。よろしく…お願いします…」
「ええ、こちらこそ」

ライクライン

ライクライン

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-21

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  1. 別れ
  2. 出会い