私があなたに遺したかったものとは
私は、結城 淳くんが好きです。
そっと、ペンを置いて優しく紙を撫ぜた。
この一文に、私の全てが詰まっている気がした。
純白のページにその一文だけを遺し、私は手帳を閉じた。
伝えるつもりは、さらさらなかった。
ただ、とある小説を読んだことで私たちの命とは明日もあるという確証もないままふわふわと流されてきたことを再び実感した。
小説にはありがちな"命"のテーマだった。
ただ、信じた明日がやってこなかった少年の物語が、そのときは私の心に妙によく響いた。
それだけだった。
伝える気はない。
ずっと片思いをしていようと、いつかは離れ離れになっていつかは忘れると。そう思っていた。
それを、待っていた。
それでも、彼のことが好きなうちに伝えられたかもしれない明日が急にやってこなくなると思うと、なんだか悔しいというか、寂しいというか、後悔するというか。
だから、今だけ。
今だけ、そっと。
ふ、と細く息を吐いて、手帳を大切に引き出しの奥に仕舞った。
その部屋の主がいなくなっても、手帳が開かれることはなかった。
私があなたに遺したかったものとは
こんにちは。
少し思うところがあってですね。深く考えずに衝動で書いてしまいました。
また次回作でお会いしましょう。