鑑賞記録-映画「BIUTIFUL」より


2010年、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。ハビエル・バルデム主演。邦題は「ビューティフル」。
同監督の映画「バベル」を観ても感じたのだが、イニャリトゥ作品は、複数の人物・場所・時間を並行して断片的に繋ぎあわせてゆく描き方なため、端役の存在をそれほど感じさせない。本作は主人公ウスバルの生活ぶりと衰弱(死)にわりと焦点が絞られてはいるものの、二人の子供アナとマテオも、先妻マランブラも、彼の仕事仲間やそれら周辺の関係者たちでさえ、「物語上のウスバルのために」の印象は希薄で、各々が主人公然として一個体の意識を持ち、立ち回っていると思われる。殊にこれは特筆すべき点であって、当事者の視点が作中転々と移り変わっていくがため(しかもその比重がみな主人公と同等のレベルで)、このように感じるのだろう。安直な事件でドラマチックさを呼びこもうとせず、たとえば、ある事件を前にして各人はどのように感じ、煩悶し、ゆえにどのような行動をおこすか、を徹底して重要視している。そうした慇懃さは観客にも伝わるものである。

鑑賞記録-映画「BIUTIFUL」より

鑑賞記録-映画「BIUTIFUL」より

「2010年、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。ハビエル・バルデム主演。邦題は「ビューティフル」。 ……」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted