鑑賞記録-映画「エレファント・マン」より
1980年、デヴィッド・リンチ監督。ジョン・ハート、アンソニー・ホプキンス出演。
ジョゼフ・メリックという醜い風貌の、実在した人物を劇化しなおした物語。作中ではジョン・メリック(より普遍性をもたせるためらしい)。
なんとも心が痛む二時間だった。その数奇な20数年の人生は筆舌に尽くしがたい。誰にもっともらしく彼のような人生を弁明することができようか。何故だか、戦争や貧困や孤児の凄惨なあり様をモチーフにした、それら数多くの映画を享受したときよりも、共鳴が強かったように思う。とても丁寧に紡がれていて無駄がなく、そして全てが必要と感じられる場面ばかりだった。また、奇怪で懐かしいメリーゴーランド風のテーマ音楽も、陰影が饒舌でさえあるモノクロ映像も、本作には欠かすことのできない一部である。
ふと気にかかったのだが、作家の別役実が若年期に発表した戯曲「象」も、ジョゼフ・メリックに触発されたものだろうか。あれは原爆のケロイドによる苦悩だった。ジョゼフ・メリックが生きていたのは、ちょうど19世紀後半である。
鑑賞記録-映画「エレファント・マン」より