鑑賞記録-映画「ドラッグストア・カウボーイ」より


1989年、ガス・ヴァン・サント監督。
鑑賞前に“麻薬にふける若者の話”と知って、「トレインスポッティング」(ダニー・ボイル監督)にみられる溢れるような疾走感を予見していたが、いや、たしかに中毒者特有の世界観(これは「ハウス」(大林宣彦監督)を彷彿とさせて笑えた)を露わにはしているものの、それ以上に薬物に対する教育的な視点のほうが印象として強く残った。依存による肉体への恐ろしい影響のみならず、薬物を中心に生活がまわり始めれば、人間関係そのものすら、ときに意に反して簡単に破綻させてしまう。
主人公で麻薬常習者のボブが「テレビっ子」と皮肉まじりに称する少年ら(本作はデイヴィットがその役を担っているが)は、まるで「テレビで知りました」と言わんばかりのちょっとした好奇心と憧れから、安易に薬物へ手をだし、次第にのめり込んでしまう。「シティ・オブ・ゴッド」(フェルナンド・メイレレス監督)の銃が支配する少年らと同様、次の世代へ次の世代へ、麻薬もその踏襲<麻薬戦争>は、需要と供給があるかぎり止まるところを知らない。
「ハイでいるのも、なかなか大変だぜ」
と彼は口にするが、映画とはいえ下手な中毒表現ばかりに焦点をあてず、あくまで群衆のうちの生活者の一人として追っているからこその、単純に「ああ面白かった」で身を引けない、奥深さが感じられてしまう。

鑑賞記録-映画「ドラッグストア・カウボーイ」より

鑑賞記録-映画「ドラッグストア・カウボーイ」より

「1989年、ガス・ヴァン・サント監督。鑑賞前に“麻薬にふける ……」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-17

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