Candy【終わる世界の戦闘少女】

「終わる世界の戦闘少女企画」に参加していらっしゃるさくさん(@sakusann0108)さんの所の飴融ちゃんと、式女狼(@sikinome810)さんのところの瑞鶴さんをお借りして百合…を書きました。かいちゃいました…。 ディープチュ程度のイチャイチャがあったりなかったりするので苦手な方はご注意ください。■■ちょこっと見返して書き直すところがあったらごめんなさい。

~班誌152頁目~
記入者:瑞鶴
HOME周辺のオス掃討中、一人の少女を発見。保護。HOMEに連れ帰る。
唯の一般人ではないようである。と言うよりは変人と、言うべきだろうか?
彼女の詳細は、後ほど。
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世界中の"男"が消失して何年が経ったのだろうか。あの時生まれ育った赤ん坊が、武器を手に前線に立てる程の歳月が過ぎたのは確かであり、瑞鶴もまた、遊び道具の1つだったソレをオスに突き立てることに躊躇しなくなる程度の時間が経過していた。
あの混乱期から十数年、やっと"HOME"と呼ぶ拠点と、仲間といえる者達と、庇護するべき拠点の民たちとともに、瑞鶴は暮らしてきた。

瑞鶴が拠点に提供するのは紛れも無く「防衛力」であり、それが瑞鶴に出来るただひとつのことであった。

「ただのナイフ狂がね~、できることなんて、そんなものでしょうね…っと」

瑞鶴の存在をどうやってか嗅ぎつけたオスたちが数体襲いかかるのを苦もせずに避けつつそうしてひとりごつ。

「あなた達"格下"に”この子”を使うのは勿体無いわ‥」

と、手に握った大ぶりのナイフをしまいつつ、太もものナイフホルダーから数本抜き出し、的確にそれらの急所を射抜く。

男の悲鳴によく似たソレは、やはりいちばんよく見る姿のオスの悲鳴で。それらの戦闘には慣れすぎている瑞鶴には最早戦いにすらならない。倒れ伏した二体のソレに近寄り、射抜いたナイフを抜き、それでまたオスの体内を搔っ捌く。そこから臭う腐臭などに怯むことなどもうすでにない。

「おっ、いい刃渡りの包丁ね……コレが内蔵を傷つけていたからこのオスは動きが鈍かったのかしら…?」

十数日ぶりの"報酬"である。いや、こうやって拠点を守っていることで、小隊から、弾薬やマシンガン等の報酬を貰えることはあるが、瑞鶴にとってはそんな野暮ったい銃装備なんかよりも、街の残骸やオスの体内から見つかるナイフ達のほうが十分報酬たりえる。

「――そして、貴方も何か飲み込んでいそうね…?いつにもまして動きが鈍いわよ?"うすのろ"さん…?」

先ほどのオスは、ほぼ普通の男に違い体格をしていた――瑞鶴たちはそれを”格下”と呼んでいる――が、ソレに遅れること数分、本日最後であろう、敵が出てきた。
自分の三倍は有りそうな巨人、通すナイフを選びそうな厚い皮、常人が見たら卒倒しそうなその敵を、瑞鶴たちは”うすのろ”と揶揄している。破壊力はあるが、回避能力と、自己防衛本能に乏しい”うすのろ”。
これもまた、オスの中では珍しくない種である。
瑞鶴は先程しまった相棒のダガーを取り出すと、周りの瓦礫を上手く使い、跳躍し、振りかぶったうすのろの手を踏み台にして、それの懐へと潜り込んだ。

――正確には首元へ。

握りしめたダガーを深くその首元にねじりこみ、柄の内部が空洞になっているため、その空洞を伝って、柄の外にオスの体液が流れ出る。
流石の"うすのろ"もその痛みには反応し、もがき始める。
その暴走に巻き込まれる前に、瑞鶴はダガーの柄を離して、それの攻撃範囲外へと飛び退く。
先程、体内から報酬を出してくれた”格下”と同じように、やけに簡単である。
普段ならそうやすやすと急所である喉仏を狙えるはずもなく、"うすのろ"といえどあまりに反応が鈍過ぎた。
体液がぬけて、ドスンと倒れこむ音もまた普段より重苦しく、やはり何かを飲み込んでいると確信して、瑞鶴は喉仏に刺さったままの相棒を抜き取った。空振りをしてオスの体液を払い、丁寧にダガーをしまう。

「さて、それじゃぁ、アナタの強さ、見せてちょうだい?」

先程てに入れたばかりの、刃渡りが30cmばかりの調理用包丁を、ゆっくりソレの腹に差し込む。ソレの腹の中は宝箱だというは経験則から知っている。うすのろの消化器官は未発達らしく、体液にまみれてはいるものの、ほぼ呑まれたときそのままの鹿が出てきたことすらある。

あの時の鹿鍋ほおいしかったなぁ、また出てこないかなぁ、と淡い期待を抱きつつ、中のものを傷つけないように、表層の硬い皮のみを割いた、思っていた以上の切れ味に惚れ惚れしつつ、中を覗いて…

「――!?」

手が見えた。
まぎれもなく人間の。
瑞鶴は今までの思考を放棄し、一瞬見えたその手に手を伸ばした、ぬちょり、と気味の悪い音が響くのもおかまいなしに、触覚だけで一瞬だけ見えた白い手を探す。

(――あった!…細い手首…)

掴んだその手首を思い切り引き、それと同時に、腹の裂け目を更に大きくするべく逆の手では包丁を握る。そうして現れた人間――やはり女性であった――を抱え、近場の平らな地面に下ろす。

右目が変につぶれているが、古傷なようだ。ナイフで切ったような裂傷以外、特に気になる外傷もなく、瑞鶴は経験上、それが大した怪我ではないとわかり、安堵の息をつく。

それから、意識のない彼女を抱え、瑞鶴は"HOME"に戻る算段をつける。

(今日の医務室勤務はだれだったかな~……)

体中にしまいこんだナイフの餌食にならないようにするには両腕に抱えるしか無く、姫抱きのまま、オスに襲われる前に、と足早に瑞鶴は帰途に付いた。


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名前は飴融(いと)、19歳。
話を聞くと、彼女はオスの死体を材料に様々なものを作り出しているらしい。
私が出逢った時も、”あえて”オスの体内に入り込み、内蔵から生えている(と彼女は証言している)オスの腫瘍を採取することが目的だったようだ。
常人では考えられない行為に私もレティも開いた口が塞がらなかった。
しかし、オスの死体から何かを生み出すという発想は今まで無く、また、彼女の作るもののクオリティは、そう悪くない、と判断し、特に目的も住処もないという彼女を班に編入することを提案しようと思う。

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瑞鶴は飴を舐めながら班拠点の廊下を歩いていた。
そして、目的の場所に辿り着き、ノックをしてから中へと滑りこむ。

そこには書房から取ってきたのだろう、過去の班誌を読んでいる飴融がいた。

「こんな記述………初めて読んだな」

ぱたん、と班誌を閉じ、飴融は目の前に立っている彼女を見やる。

「瑞鶴さん?ちょっとコレは酷いんじゃない?…変人って何よ変人って?」

班の歴史でもある唯一無二のそれをぞんざいに机におき、その上でバンバンと机を叩きながら飴融は抗議した。

「変人以外の何物でもないですよ?……自分からオスの体内に侵入しようだなんて」
「だーかーらー!アレは何度も言ってる通り!それしか入手方法がなかったんだって!死体を漁っても硬度が落ちてるものしか見つからないし…だから多分生きたままの状態で素材を手に入れたら…って」

あの時とても驚いたこちらの気持ちを汲んでほしいものだ、と瑞鶴は思った。しかし彼女はそれでもやるのだろう。思い立ったら行動してみないと気がすまない彼女の性格は、班に正式加入してからいやというほど思い知った。
しかし、そんな性格の彼女だからこそ、瑞鶴にとってはかけがえのない人の一人であることは間違いなかった。

「それで、今日はどんな武器を見せてくれるの?」

飴融がこうやって瑞鶴を呼ぶからには、きっと完成したのだろう。――新しい武器が。

「んとね…これ………」

得意気に差し出した武器は、刃渡りが8cmほどの一般的なナイフと似ていた。違うのは、唯一刃の色が、銀色でなく、黒く汚れた色で有ると言う点だろう。

「……この素材は?」

あれだよ…と苦笑する飴融に瑞鶴は察す――あの時、ある意味命を掛けてまで手に入れた素材は飴融の実力不足が故に未完成のままであった。…それがやっと完成したのだ。

「…どう、かな?」

恐る恐る、という感じで飴融は瑞鶴にそれの出来を聞く。――緊張もするはずだ。瑞鶴はナイフのことに関しては妥協を許さない。
因みに飴融が作ったナイフはただの一本も彼女に"ナイフ"と認められたことはなかった。

「……」

飴融から受け取ったそれで、軽く素振りをするように空を切る彼女。そして、きっと硬い顔をして戻すのだ…これは"違う"と…。

「――」

素振りを終えた瑞鶴がおもむろに、刃をながめる。…そして。

「――良い"子"ね…気に入ったわ」

その言葉が発されると同時に彼女は、飴融が作った"ナイフ"で自分の腕に赤い線を引く。

「切れ味、握り、軽さ…申し分ないわ。…コレは私が使わせてもらっても‥?」

初めて認められた…そのことが飴融にとってはこの上なく嬉しく、言葉すら発することが出来ずにこくこくと頷く。満足気に瑞鶴はその”子”をナイフホルダーにしまう。

やった、やったのだ。

自分がここ1年程、目標にしてきたことがかなった。

夢のようだ、と思った。

そう思うと、安堵でフッと一瞬意識が途切れた。

「飴融ちゃんっ!?」

すぐざま瑞鶴の腕が飴融を捉え、床との衝突を免れた。

「大丈夫…?」
「ごめんなさい……」

ちょっと、あんまり寝てなくて、と続いた声で瑞鶴はここ数日飴融に会っていなかった事実を思い起こす。武器開発となれば数日にわたって熱を入れることはそう珍しくなく、気にすることではないはずだ。しかし、瑞鶴には一つだけ思い立つ節があった。

「飴融ちゃん?…ご飯は?」

数拍、飴融は躊躇した後、瑞鶴の真っ直ぐ見据える目と、助けられたがために捉えられて――逃げられない状況を鑑みて、諦めたように呟いた。

「――食べてない」
「飲み物は?」
「水を…ちょっとだけ」

そういうふうに見てみれば、頬は痩せこけ、隈も濃い…。
――そうだ、この時期だ。


彼女が決まって摂食障害を起こすのは。


理由はなんとなくしか察していない‥このご時世、何が切欠で摂食障害(トラウマ)持ちになっても不思議ではない。

「…大丈夫、大丈夫だから…」

飴融はそんなことを言って瑞鶴の腕の束縛から逃れようとする。それをさせまいと、瑞鶴は更に腕の力を強めた。

先程ナイフで傷をつけた傷口から、スッ、と血が一筋零れる。

「…瑞鶴さん…消毒、しないと……」
「別にこんな傷……」

今更こんな裂傷1つで騒ぎ立てるようなたまではない。すでに瑞鶴には体中に"いとしい子”たちの爪痕が残っている。

「でも……」
「こんなの舐めておけば大丈夫です…。それよりも今は飴融ちゃん、貴方のことです」

ちゅ、と自分でその血と傷口を舐め取り、零れた血は一旦瑞鶴に摂取された。口の中にはまだ、この部屋に来るときに舐めていた飴が残っていて、それと血の味覚が不協和音を瑞鶴に伝えた。

「とりあえず…寝て?…食べ物はまだ、食べれそうにない?」

そんな瑞鶴の問に答えようとせず、飴融は瑞鶴の裂傷に目を向け、そこから更に零れた血を、舐めとる。否、摂取する。

「……今、食べた」

だから許して?と笑う飴融に、それご飯じゃないとデコピンをかます。

「……でも…固形物はちょっと…」

努力はしたんだけどね…とカラ笑いする飴融に、ふ、と思いついいた瑞鶴は飴融の顎に手を添え、クイ、と持ち上げる。

「えっ…!」

飴融が状況を把握する前に瑞鶴は迷わず飴融に口付け、彼女の乾いた口内に”贈り物”と共に進入する。
贈り物を彼女に押し付け、少しだけ舌を絡める。…ちょっとした遊び心だ。

「んんっ…」

少し苦しそうな声をあげた飴融の声を聞いて満足気に瑞鶴は唇を離す。その口には先程まで瑞鶴を楽しませてくれた飴はもう無く、代わりに彼女の口内にそれが残っていることだろう。

「飴なら食べれるわよね?」

それとも、もうちょっと食べさせてあげましょうか?と更に詰め寄る瑞鶴に、赤い顔を隠さずブンブンと首を横にふる飴融。コレ以上続けてしまったら飴融の心臓は持ちそうにない。

「それだけ動けるなら大丈夫ね……糖分も補給できたんだし、ちょっとはマシになったでしょう」

だから、とその後間髪入れずに、飴融の肩と足に手を入れて、姫抱きをした瑞鶴。そう言えばコレは初めて彼女とあった時もやったな、と薄く微笑む。あの時は気を失っていて、ただ可愛い寝顔を晒していただけだったが、今は両手で赤い顔を覆い隠そうとしている…そんな様もまた可愛く、思わず声に出して笑う。

「なっ、なんで笑うんですか!瑞鶴さんっ!」
「ご、ごめんっ!ちょっと飴融ちゃんがあまりに可愛いもんだからっ…!」

なっ…と反論することも出来ずに更に…今度は耳まで赤く染めた彼女を眺めつつ、瑞鶴は彼女を寝室まで護衛することを決めたのだった。

Candy【終わる世界の戦闘少女】

瑞鶴班(企画っ子たちの一部集合隊)……大好きです…。
思わず隣から横槍入れてかかせていただきました…!ご快諾ありがとうございます!こんなのでごめんなさいっ!(;・∀・)

Candy【終わる世界の戦闘少女】

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-16

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work