Park story 約束の男

初投稿ですが、よろしくおねがいします。

眠い…
起きてから30分は経ったはずだが、睡魔は一向に俺を解放してくれる気はないみたいで、先ほどから欠伸(あくび)が止まらなかった。
俺は公園のベンチに腰を掛けながら、ぼんやりと『アイツ』を待っていた。腕時計を確認すると、時刻は5時57分。約束の6時までには、まだ僅かの暇がある。
どうしてこんな時間に呼び出されたのか、俺は一切の理由を聞いていない。昨日のよる突然『アイツ』からの電話があり、「6時に公園に来るように」としか言われていない。
アイツと最後に会ったのは、5年前の中学の卒業式の日だ。俺はその時『アイツ』にたくさんのことを訊いたが、『アイツ』はただ謝るだけだった。
それ以来、俺は『アイツ』の姿を見ることはなく、思い出すこともなかった。このまま俺の記憶から完全に消えるはずだったのに…
そもそも、俺はなぜ来てしまったのだろう、 『アイツ』の誘いなんて、断るべきだったのではないのだろうか。頭の片隅が、弱音を吐いている。俺だって逃げたくてしょうがないのだ。
しかし… この現実と向き合わなければならない。 『アイツ』を捨てたとはいえ、やはり俺は背負わなくてはならないのだ。

「………」
突然、後ろから猛烈に嫌な気配がした。俺は、ゆっくりとその方へと顔を向けた。
…そこには、 『アイツ』がいた。直後声の出し方がわからなくなり、唇だけが小刻みに震えた。
僅かな沈黙。周りには誰もいない。
俺はとうとうかすれた声を発した。
「あんたは… 死んだ方がいい」
「………」
『アイツ』は何も答えない。ただ、苦しそうな顔つきをしているだけだった。
『アイツ』は殺人を犯した。そして5年間少年院で暮らしてきたはずだ。
だが俺はもう 『アイツ』を捨てたのだ。
やがて、 『アイツ』の口がゆっくりと開いた。
「会いたかったんだ… 5年間少年院で過ごして、自分の愚かさに気づいたんだ」
「失われた命は、戻ってこないんだぞ」
「だから… 償いたいんだ。ぼくの一生をかけて」
俺は心底驚いた。5年前の 『アイツ』ならこんなことは絶対に言わない。
「変わったんだな…」
嬉しくて涙が出そうになった。それを必死でこらえ、俺は優しく言った。
「隣、座れよ…」
「うん、ありがと」
考えてもいなかった。こうしてまた、肩を並べることがあろうとは…

ーーーこれなら、やり直してもいいのかもしれない…

その瞬間だった!
腹部に強烈な違和感を感じた。
見ると、

『アイツの突き出した刃物が俺の腹を深く深くえぐっていた』

「ああ、テメエの言う通り、死んでやるよ。でもな、まだやり残したことがあるんでね、少年院を出れてやっとそれが実行できる。フフフ…」
不気味な笑みだった。やはり狂っていた。
…何も変わってはいなかったのだ。
俺がバカだった… 改心するなんてことは絶対にあり得ないと最初からわかっていたはずなのに…
意識が徐々に薄れていく… 頭もほとんど働かない。
ああ、殺されるのか…

「じゃあな、父さん」
そして俺は、実の息子に殺された。

Park story 約束の男

読んでいただき本当にありがとうございます。
いかがでしたか? これが初投稿の作品です。自分なりに頑張って書いたつもりです。

Park story 約束の男

突然何者かに公園に呼び出された1人の男。彼は遠い過去を思い出す。

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted