鑑賞記録-映画「恐怖と欲望」より
1953年、スタンリー・キューブリック監督。
古典的で重厚なオーケストラ音楽(黒澤明風)で幕が上がる。戦時下、乗っていた飛行機の墜落により、味方陣営へ戻れなくなった四人の兵士たちの行動と、ともなう心理状態の変遷を描いていると思われる。上映時間60数分のシナリオはシンプルであるがゆえに、その結末も意外とあっさりとした印象か。
冒頭「どんな世界であろうと恐怖と不信と死は普遍である」とナレーションによって語られはするが、本作でいうところの1953年的な恐怖と不信と死は、実感として紛れもなくもはや幻想であろう。戦争を知らない、(情報として紛争を知れど、肌に感ずる実感としては皆無な)戦争と無縁な生活を送ってきた私達若者にとってみれば、「戦争における○○」は普遍的とはなかなか申しがたい、歴史的産物、つまりは過去を眺める感覚でしかない。良いか悪いかは別として。
鑑賞記録-映画「恐怖と欲望」より