気付いてよ...バカ -12-

12です。
季節も寒くなってきましたね(・・;)


<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*井上 奏哉(いのうえ そうや)
*椎名 由仁(しいな ゆに)
*黄瀬 悠夜(きせ ゆうや)
*藤池 翔太(ふじいけ しょうた)

...その他

パートナー

-12-

「岡野さん。」
「あっ、藤池先生。」

奏ちゃんに言われて
私は藤池先生を探していた。
そして今タイミングよく会った。

「良かった。
ちょうど君を探してたんだよ。」
「私もです。
奏ちゃんに言われて
先生のこと探してました。」
「井上くんが??」
「はい。」
「ふーん。
...罪悪感でも生まれたのかな??」
「はい??」
「ううん、なんでもないよ。
ちょっと話があるんだ。
時間あるかな??」
「大丈夫ですよ。」
「良かった。
じゃあ、着いてきてくれるかい??」
「分かりました。」

そう言って連れてこられたのは研究室。
今日も誰もいなかった。

「はい、お茶で良かったかな??」
「ありがとうございます。
いただきます。」
「どうぞ。」

生徒がきてお茶を出してくれるのは
藤池先生だけだと思う。

「ん、美味しい!!」
「良かった。
知り合いからもらったお茶なんだ。
良かったら、これもどうぞ。」
「いただきます。」

おまけに茶菓子も出してくれるなんて。

「あー、幸せ。」
「フフフ。
それは良かった。」

先生が微笑むと
空気が和み、
ここが研究室だということを
忘れそうになる。

「あっ、先生。
そういえば、私に話って??」
「あぁ、そうだったね。これを。」

先生に差し出されたのは原稿用紙。

「これって...」
「俺がここに来た日に
みんなにレポート書いてもらっただろ??」
「はい。」
「これ、岡野さんのだよね??」

確かに私が書いたもの。

「はい。」
「全員のを読んだけど
岡野さんのが一番良く書けてた。」
「本当ですか??」
「うん。
星のことよく分かってるんだなって。」
「嬉しいです。」

星のことは好きだし、
こんな風に誉められたのは
久しぶりだった。

「将来はやっぱり星関係の仕事に??」
「就けたらいいなとは思ってます。」
「へぇ。」
「それで、先生の話って??」
「...岡野さん。」
「はい??」


「俺のパートナーにならない??」



俺は急いで大学に戻ってきた。
こんなに必死に走ったのは
久しぶりだった。

「はぁ...はぁ...」

乱れた息を正して、俺は夢空を探した。

由仁に言われた“本当の答え”は
まだ出てないけど
夢空に会いたい、夢空と話したい。
いや、違う...
あいつといる夢空を見たくない。

さっきから電話してるが
なかなか出ない。

俺はとりあえず、
夢空が行きそうなところを探した。
でも、どこにもいなかった。

♪~♪~♪
「もしもし!?」

電話が鳴って
俺は夢空からだと思ってすぐに出た。

「あっ、奏哉か??」
「...兄貴か。」
「珍しいな、お前がすぐ出るなんて。
そんなに俺が恋しかったか??」
「切っていいか??」
「待て待て。
今話していいか??」
「まぁ、少しなら。何か用??」
「今日暇か??」
「...まぁ。」
「悪いけど、
今日の18時に店に来ててくれ。」
「...分かった。18時な。」
「ん、じゃあ頼んだ。」

電話が切れた。
確か俺のシフトは明日なはず。
何かあったのか...
緊急時は呼ぶって言ってたもんな。

そんなことを考えていたら
また電話が鳴った。
今度は悠夜からだった。

「もしもし。」
「あっ、奏哉??
今、奏司から電話きた??」
「きたよ。
18時までに来いって。」
「俺も。」
「悠夜もか。」

まぁ、俺の教育係だもんな。

「俺、今日車だから
乗ってくかなって思って。」
「あぁ、じゃあ頼む。」
「了解した。
じゃあ、また連絡する。」
「分かった。あっ、悠夜。」
「ん??」
「...夢空見なかったか??」
「夢空ちゃん??
さっき藤池と歩いてたけど。」
「...そうか。」
「たぶん研究室じゃねぇか??」
「ん、分かった。
ありがとう。」
「おぅ、じゃあまた後でな。」
「じゃあな。」

電話を切り、
俺は急いで研究室に向かった。

研究室の前に着いた。
扉は少し開いていて
ノックするのを少し躊躇った。
でも、するのが普通だし...
緊張を落ち着かせるために、
俺は深呼吸をした。

「えっ、私がですか!?」

落ち着いたと思った瞬間に
夢空の声がして、
さっきとは違う胸のざわつきがした。

「うん。ダメかな??
岡野さんしかいないんだ。」

それと同時に、あいつの声もした。

夢空しかいない??
俺は嫌な予感しかしてなかった。

「...分かりました。
私で良かったら是非。」

やっぱり...
夢空は頼まれたら断れないんだ。
どんな話をしていたかは分からない。
でも、藤池の夢空に対する気持ちを
俺は知ってるから、
軽く宣戦布告をされたから
俺の思考は悪い方にしかいかなかった。

「ありがとう。
じゃあ、明日の18時にここで待ってる。
送ってくよ。」
「いいんですか??」
「もちろん。
俺の大切なパートナーだからね。」
「そんな大袈裟な。
...じゃあ、よろしくお願いします。」
「うん。
トラブルを避けるために
この事は俺たちだけの秘密にしよう。」
「分かりました。」
「これからよろしくね。」
「はい。
こちらこそ、よろしくお願いします。」

扉の隙間から夢空が見えた。
嬉しそうに笑っていた。

俺は研究室に背を向けて
その場を逃げるように去った。


「もしもーし。」
「...」
「奏哉??」
「...」

奏哉からの本日2度目の電話。
出てみたけど何も話さなかった。

「おい、奏哉??どうしたんだよ。」
「...悠夜、今どこ??」
「俺??...図書室だけど。」
「...似合わねぇな。」
「うるせー。」
「...今1人??」
「あぁ。」
「...今から行く。」

そう言って電話が切れた。

「...奏哉??」

明らかに様子がおかしい。
普段は冷静な奏哉が
こんなに分かりやすいくらいに
おかしくなるなんて...
俺は図書室を出て奏哉を待った。


悠夜との電話を切り、
俺は図書室へ向かった。

「悠夜に言って
どうなるんだよ、俺。」

でも、誰かに
悠夜に聞いてほしかったんだ。

「奏哉!!」

俺はいつのまにか
図書室の前に着いていたようだ。

「...悠夜」
「奏哉、なんかあったのか??」

自分のことじゃないのに
こんなに必死になれる悠夜は
本当にいい奴だと思う。

「...俺さ」
「待て。
お前の様子から
いいことじゃなさそうだな。
ここじゃなんだから移動しようぜ??」
「...悪い。」
「気持ち悪いから
らしくないこと言うなよな。」

悠夜はそう言って笑った。
俺もつられて笑った。

俺たちはこの後の授業をサボって
悠夜の家に移動した。

「相変わらず汚ないな。」
「ほっとけ。
男の一人暮らしって
こんな感じなんだよ。」
「...お前、全国の一人暮らししてる男に
謝った方がいいぞ。」
「はいはい。
適当に座っといて。水でいい??」
「あぁ。」

俺は適当に座った。
悠夜の部屋は本当に汚ない
でも、なぜか落ち着くんだ。

「はい。」
「サンキュー。」
「...んで、どうしたんだよ。」

俺は悠夜に
藤池に宣戦布告されていたこと、
夢空がキレていたこと、
由仁と話したこと、
自分の本当の答えが分からないこと、
そして、研究室で
藤池と夢空が話していたこと、
...夢空がよく分からないが
パートナーになったことを話した。

「...」
「奏哉、お前...」
「分かってる。」

分かってるんだ。
自分の気持ちも
はっきりしてないような俺が
こんなこと言ったって
どうにもならないことくらい。

「お前...なに俺の由仁と
2人でコーヒー飲んでんだよ。」
「...はっ??」

俺の話した内容をスルーして
そこにつっこむのか!?

「はっ??じゃないだろ。
なんで俺に黙って2人で行くかなー
あぁー、俺も由仁と
コーヒー飲みたかったなー。」
「...」
「なーんて、冗談だよ。」
「...」
「半分本音だけどな。
...それにしても、」
「ん??」
「パートナーって??」
「...俺もそこはよく分からない。」
「予想もつかねぇな...」
「...」
「つくとしたら、あれか。」
「...」

たぶん悠夜と思ってることは同じ

「結婚...」
「人生のパートナーって訳か。」

ほらな。

「でも、夢空ちゃんは
まだ学生なんだぜ!?」
「学生結婚するやつなんて
今更少なくねぇだろ。
ましてや秘密にするなんて
怪しすぎるだろ。」

自分で言って少し後悔した。
言えば言うほど
現実味が増していく。

「...奏哉、お前本当にバカだな。」
「バカって...」
「バカだろ、
本当は気付いたんじゃねぇの??」
「何に...」
「由仁が言ってた“本当の答え”。」
「俺は...」

気付いた??
自分の気持ちに??

「...奏哉は藤池に
嫉妬してるんじゃないのか??」
「嫉妬...??」
「夢空ちゃんと一緒にいるとこ見て
奏哉に宣戦布告するくらい余裕があって
よく分からないけど
パートナーになってて
2人で会う約束もしてて
うらやましいって思ったんじゃね??」
「...」

嫉妬...してたんだ。
俺よりも余裕があって、大人で
俺にも夢空にも
思ってることを素直に言えて
夢空をパートナーに出来た藤池に。

「悠夜...」
「行くぞ。」
「はっ、どこに!?」
「夢空ちゃんの所に決まってるだろ。
バイトまであと少ししか
時間がねぇんだから車出してやるよ。
急いで行くぞ。」
「...」
「今行かねぇと後悔するぜ??」
「...そうだな。」
「今日くらいは素直になれよな。」
「俺はいつも素直だろ。」
「はいはい。」
「...サンキュー、悠夜。」
「おう。」

俺は悠夜の部屋を出て車に乗った。
向かうは大学へ。

気付いてよ...バカ -12-

この2人は、なかなか
くっつきませんね
そろそろ進展させたいなと
思ってはいます。

楽しみにしてる方のために
頑張っていきます!!

気付いてよ...バカ -12-

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-13

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