柿崎純子と沢村一樹

一話~完結

【柿崎純子と沢村一樹】



【一話】



「畜生ー! 俺をこんなところに閉じ込めてどうする気だああー!! おい沢村! 聞こえてるんだろ!! 出せ! 俺をここから出しがれ!!」

 一人の男が寒々しい部屋で大声で叫んでいる。 周りの壁は薄い錆び付いた鉄板がいびつにネジで貼られて天井と床だけが本来の姿である木造をあらわしている。 部屋の中にあるのは台所とトイレらしき小部屋と洋服箪笥と和箪笥。 そしてテーブルと椅子のセットにマットも布団も枕もないパイプ式のベッドだけだった。
 男は名前は柿崎純子。 身長百七十センチほどで色白の耳に掛かる程度の髪の毛で目鼻立ちもスッキリした細身の身体つきの男と言うより性同一障害者の女である。 柿崎純子の年齢は二十四歳。 素性は追々明かすとして医療関係の会社に男性社員として勤務している。 そして柿崎を監禁しているのは柿崎の良きパートナーであって理解者の沢村一樹である。
 沢村一樹は柿崎純子の仕事上のパートナーであって良き理解者でありながら友人としての立場をキープする二十七歳の健康な男子である。 素性は追々明かすとして、沢村は何れ性転換して男の身体になるであろう柿崎純子を女として目覚めさせ、それを一目みたいと言う男の素朴な欲望のために、酒に酔わせた柿崎純子を東北の山深い別荘へと運び監禁した。
 
「お! ようやく目が覚めたか? 純子! あっはははー♪」
「てめえぇ! 名前で呼ぶんじゃねえっていつも言ってるだろうがああ! 兎に角ここから出せ!」
「純子ちゃーん あんまり怒ったら可愛いお顔が台無しですよー♪ あっははははは♪」
「てめえ! ぶっ殺す!! だったら姿を現せ!! 姿を見せろー!!」
「駄目だよーーん♪ だってねー そこに降りるには天井からハシゴでしか降りられないんだもんねー♪」
「フザケんなああー! 大体ここは何処だあー! てめぇは何処にいるんだあー!!」
「ああ。 一応言っとくよ。 純子ちゃんはねえー♪ 俺に拉致されたのだー♪ 因みにそこは地下だよーん♪」
「拉致!? 監禁!? いつまでもフザケてないでここから出せよ沢村! 冗談キツイぞお前!」
「あはははは♪ そだな♪ そろそろ出してやるか♪ ここ出たら温泉場も近いから風呂にでも入って美味いモンでも喰うか♪」
「解ったよ。 さっさとハシゴを降ろせ! よくもまあこんな場所に俺を入れたモンだ♪」
「じゃーねー♪ 部屋の隅っこに赤くペイントされた四角い網の上に立ってー♪ 天井からハシゴを下ろすから受け止めてねー♪」
「面倒臭せえな!  おい! いいぞ! 立った! さっさとしろよ沢村!」

 天井の四角い切れ目が開いた瞬間、上を見上げていた柿崎純子。

「バッシャーーーン!」
「うわああーーー!! な! 何しやがる!! 冷てえぇぇー!! 水じゃねえかあ! 沢村! てめえぇー!!」
「純子ーー! その部屋の室温。 十五度しかないんだよ… 早く着替えないと風邪引いちゃうよ~♪」
「な! なに言ってんだあ! てめぇで水ぶっかけといてよおお! 早くハシゴ降ろせえーーー!!」
「あ! ごめん! 縄バシゴ! さっき焚き火して燃やしちゃったの忘れてた♪ あはははははは♪」
「冗談にも限度あるぞ沢村!! 寒いから早くハシゴを降ろせよ! 寒い!」
「じゃあさー! ちょっとハシゴ見つけてくるからさー 濡れたモノを脱いで逆側の隅っこにある籠の中に全部入れなー♪」
「お前! 俺にここで裸になれってのか!! そうか! お前の魂胆が解ったよ… 俺の裸が見てえんだろう! そうか!」
「ああ。 うん。 確かに見たいけど、それなら酔って寝てる間に素っ裸に出来たよ♪ いくらでもー♪」
「兎に角、ハシゴを早くくれ… 寒くて凍えそうだ… 寒い!」
「だったら言うこと聞かないとさー♪ 困った時は今までも助けて来たじゃーん? だから今度も助けてやるから濡れたモノは全部脱いでかごに入れてー♪ そしたら俺のジャンパーとスボンを投げるからー♪」
「どうでもいいからハシゴをさっさと降ろせええええええーーーー!!!」
「商談不成立だねー♪ じゃー純子の気が変わるのをオイラはずーーっと上で待ってるよ~ん♪ 上は暖かくてヌクヌクだよ~ん♪」

 天井の四角い穴を下から覗き込む純子は腕組みしてガチガチと全身を震わせて、部屋の逆側にある洗濯籠を俄かに見詰めていた。 だが、数分間待っても家に居るであろう沢村からは何も言ってこず、体温も下がってきた純子は限界とばかりに上に声を荒げた。

「沢村ー!! これから脱ぐけどいいかあ! 絶対に覗くんじゃねえぞー!! そんなことしたら絶交だからなあ!!」
「解ったよーーん♪」

 純子は逆側へ移動すると辺りを見回して青ざめた顔でビショビショになったワイシャツとネクタイを脱いで籠に入れると、胸に巻いている晒しに手を掛け躊躇(ちょうちょ)しつつ、スラックスを脱いで籠に入れた。

「サラシと下着もだよーーん♪ 素っ裸にならないと駄目だよーーん♪」
「てめぇ… やっぱり覗いてたんだな… 畜生ーーーー!!」
「覗いてないよーん♪ 籠に入れた音で解るんだよーーん♪」

 純子はサラシを胸から外しつつ沢村が覗いてないか睨むように天井を見入った。 だが沢村の影も無かったことで純子はホッとしてボクサーパンツを脱ぎ捨てた。 

「さあ! 脱いだぞ! 次ぎはなんだ!」

 肩を窄めてガクガクと大きく震える純子は天井に顔を斜めに向けた。

「よし! じゃー次はそのまま奥の隅っこ。 純子が寝ていた場所に移動して壁側を向いてねー♪」

 純子は胸を右手でと陰部を左手で隠しながら移動した。

「牛を振り向いたら駄目だよーん♪」
「ギギギギー!」
「スルスルスルー!」
「バタンッ!」

 後ろで妙な物音がしたものの純子は天井にいる沢村に身体を見られることを恐れてジッとしていた。

「よし! いいよー♪ 今ねー 純子の服の入った籠を上に引き上げた♪ 乾かすためにねー♪ で。 取り敢えずさー 和箪笥に替えの下着と洋服箪笥に衣類がワンセット入ってるから着ていいよ♪ 最低線のモノしかないから全て着た方がいいかもだねー♪ ちょっと脱水して干して来るから留守にするよー♪」

 沢村の声に胸と陰部を隠したまま首を左に回して籠の方を見るとそこには籠は既になく、右後ろの天井を見ると天井のフタは閉じられていた。 純子は何が何だか解らないままに凍えそうな寒さに全身を震えさせ右中央部にある小さなトイレを交して右壁の和箪笥に急いだ。 そして引き出しを開けた純子はその中身を見て唖然とした。 そして他には無いのかと次々に引出を引いて中を見たが何も無いことに気付いた。

「畜生… 沢村の野朗! こんなモノを俺に履けって言うのか!! 畜生……!!」

 引き出しにあった白いビキニタイプのパンティーを見た瞬間、純子は顔色を真っ青に変えた。 それは寒さに依るモノではなかった。 だが、ガチガチと寒さで全身を大きく震えさせる純子は辺りを見回して尚も何も身を覆う物がないことを確かめつつ、涙を目に滲ませて白いパンティーを足にとおした。 そして何だろうと両手に掴んで見た黒いボディーブリファーを見て右手に拳を握った。

「あの野朗…… 殺してやる! 絶対にぶっ殺してやる!」

 純子は着たことの無いボディーブリファーを試行錯誤しながら何とかそれで身体を包むとその暖かさにホッとした。 だがそれだけでは到底防げない寒さに引き出しの奥に手を差し込んで何かを掴んだ。

「フッ! 馬鹿にも限度がある! こんなモノ…… こんなモノ履けるかああぁぁー!!」

 黒いタイツを右手で投げ捨てようとした瞬間、純子は部屋の温度が急激に下がっていることに気がついた。 そして左にある中央のトイレのドアの横に貼り付いている気温計を見て目を丸くした。 室温十二度を指している気温計の目盛りに純子は部屋の中央に置かれていた椅子に腰掛けると慌しく黒いタイツで下半身を包んだ。 そしてボディーブリファーとタイツの重なった部分に温度を感じた純子は「どうにでもなれ!」と、洋服箪笥の前に立って扉を開いた。
 前側ボタン式の紺色のワンピースが一着ハンガーに掛けて吊るされていた。 純子はそれを手を伸ばして生地に伸縮性を感じた。 そして純子はワンピースの前で着るか着ないかを考え始めた二分後。 大きな深呼吸を一度してから何も考えずにそれを着衣した。 そして中にあった黒いサンダルを履いて冷たかった床と絶縁した。 その後、椅子に腰掛けた純子は足組するほどに体温を回復させ、天井が再び開くのを腕組して待った。 だが、一向に天井は開く気配はなかった。
 
 そして更に一時間後。

「おおー♪ 純子。 可愛くなったなあ~♪ やっぱり美人の純子は何を着ても似合う♪」

 突然、何処からか聞こえた沢村の声を純子はパニックになって椅子から立ち上がると辺りを見回した。

「ここー♪ ここだよ純子ー♪ うん。 そこそこ。 そこの上にスピーカー付いてるんだよ。 小学校見たいだろ♪ で、一応最初に言って置くけどこの部屋はね♪ カメラが付いてるのは解るよね♪ え!? まさかその様子だと知らなかった?  トイレの上の天井の角だよ♪ で、そのカメラの下にワイド画面のモニターが付いてる♪ 時々、オイラがそこに映るからね~♪ いやーなんか照れ臭いなあ~♪ だからある意味、双方向対話が可能なんだ♪ じゃあねー♪ 純子がいる場所の写真をモニターにUPするからねー♪ 写真で解る通りここは山中の高い場所に位置する使われなくなった建物なんだけど、横から見て解る通り階段見たいな場所に立っててー 純子のいるところが一段低くなっててその上ってのは林道と同じ高さ、まあ、純子の居る場所は見て解る通り地面より一階半くらい低いんだ♪ で、ここで質問はあるかな♪」
 突然、パッと明るくなったモニターに映しだされた映像を純子は見上げ口を半開きにしていた。

「よし、取り敢えず解説を続けるねー♪ で、ここの場所ってのは高い位置にあって、一階部分の正面の林道と略同じ高さで推移している。 ただ、純子の居る裏側ってのは崖になってて、写真で見ても解る通り深さ数百メートルある渓谷になってる。 だから壁を破ろうと頑張っても落ちて死んじゃうだけだからね♪ 何もとないのが無難だよ♪ で、ここは山奥なので一番近くの町までは車で一時間は掛かるんだ♪ まあ、見て解る通り別荘地だからね♪ ただね。 山の中で崖に近いから秋に入ったのに朝晩は結構冷えるんだ♪ 今の気温を見てもらえば解るけど十度より少し上辺りだろ。 下の町なら二十度くらいあるんだろうけどね♪ ここはね、昔。 別荘地として売りに出されたんだけどね、温度差が激しすぎて売れなくて構想が頓挫した場所でさ、別荘はあっても殆ど持ち主が誰なのかさえわからないってな具合らしいんだ♪ まあ、オイラの貯金でも買えるくらいの安さなんだけどね♪ で、何か質問は?」
 純子はモニターに映し出される写真とビデオ映像に自分がとんでもない山奥にいることに唖然としていた。

 純子はモニターを前に一分ほど沈黙し口を開いた。

「何で… 何で俺にこんなものを見せるんだ… 早くハシゴを降ろせよ… 早く俺の服を乾かせよ… 何してんだよ… 何してんだよお前ええええー!!」
 純子は傍にあった椅子を持ち上げて余暇に叩きつけた。

「純子ちやんは女の子なんだからそんな男みたいな怒り方はいけないぞぉ~~♪ だーかーらー♪ 純子ちゃんは俺に拉致されてー 監禁されたんだってば~♪ だあーかあーらあー♪ 純子ちゃんの男の服なんか燃やしたからもう何処にもないよ~ん♪ あははははははー♪ 純子はねえー 俺とここで暮らすんだよーん♪ 囚われた美女ってな具合でねーーーん♪」
 沢村は怒れば怒った純子の逆撫でするように笑い飛ばした。

「じゃあ! 何かあー!? 俺から服を取り上げるために水をぶっ掛けてこんなモンを着せたってのかあ…… 沢村… 俺達はあんなに仲良かっただろうに… 一体、何の恨みがあるんだよ! 俺はお前をトコトン信じてたのに… 今までのは全部、演技だったのかよ! 沢村ーーー!」
 カメラに向かって両手に拳を握って悔しそうに顔を顰める純子。

「じゃあー取り敢えず、もう夕方ってか陽が沈むから弁当買って来たからお茶と一緒に中に入れるからねー♪ ゴミはゴミ箱って書いたモノに入れてねー♪」
 純子の叫びに動じない沢村は天井のフタを開けるとそこから細い裁縫用の糸で弁当とお茶の入った買物袋を下ろして糸を切った。

 自分の問いに答えない沢村を許せないとばかりに純子は両手に拳を握ったままテーブルに置いていた。

「取り敢えずさー 余り感情的にならないでね♪ あとねー オイラの指示に従わない時には容赦なく罰を与えるからねー♪ 純子が辛い思いをするのは本意ではないけどねー♪ ああ、タバコも入れておいたけど三本だけだから大切に吸ってねー♪ あと、マッチも必要本数は入れたけど火事が起きても一番近い町まで一時間だし誰も助けにこないから焼け死ぬだけだからねー♪」
 天井のフタを閉めた沢村は再びモニターから顔を出すと、純子に差し入れた弁当と同じモノを開いて見せた。

「何でこんなこと… そんなに俺が憎いのか! それとも俺に恨みでもあるのか! 俺が欲しけりゃ、今まで何度でもチャンスはあったはずだ! 一緒に俺やお前の部屋で寝起きをともにもしたし、お前がその気になればいつだって俺をレイプ出来たはずだ! こんなことするなら俺を力ずくでレイプして味見でもなんでもすりゃー良かったんだ! 一緒に寝起きしてメシ喰って酒飲んで仕事の愚痴言い合って… その間に俺を味見するチャンスはいくらでもあったはずたろお!! 何でだ!? 俺を虐めて気持ちいいのか!! 俺を辱めて気持ちいいのか!! こんなモン着せて… どれだけ俺が敗北感味わってるか沢村! お前には一番わかるはずだ!! 俺がどんな思いで病気と闘ってきたかお前が一番よく知ってるだろうにい!!」
 テーブルを何度も平手打ちして叫ぶ純子。

「取り敢えず、御飯食べれば~♪ 感傷的になるのはその後でいいからさ~♪ お腹空いてるだろ♪ 相棒の言うこと聞けよ純子~♪ タバコ。 吸えば~ 吸いたいだろ♪ まあ、お前の好きな若葉じゃないけど我慢してくれや♪」
 純子の話しを殆ど聞いていない素振りの沢村はモニターの中で弁当を黙々と食べていた。 そしてそんな沢村を横目に見て美味そうに喰うハンバーグに純子は慌てて袋に手を伸ばした」

 三十分後、弁当を食い終えた純子はタバコに火をつけ深々と灰に煙を入れた。

「いつまで閉じ込めて置く気なんだ」
「うーーーん。 解らんね。 お前次第だな~♪」
「ところでマットも布団もシーツも無いんだが…」
「あるよ♪ ここに♪ でもねー 文明的な暮らしをするためにはさー 代償が必要なのさー♪」
「チッ! まかたよ! 今度は俺に何をしろってんだ!」
「何もしなくていいよー♪ まずはー そだなー 自分のこと俺とか僕って言う言い方やめてもらおうかな~♪ 私って言う言い方にして貰うよ♪」
「ケッ! 馬鹿馬鹿しい。 何だそりゃー!」
「そだな~ 確かに馬鹿馬鹿しいかも~♪ 一々、面倒だから純子がこれからすべきことを実行すれば一品ずつ文明を手に出来る一覧表をあげるね♪ はいよ♪ 今、落とした封筒の中に目を通してね♪」

 天井から落ちてきた封筒を拾いに行き再びテーブルの前の椅子に腰掛けた純子は封筒を開けた。

「何だこれ!?」

①自分のことを「私」と、一週間いい続けるとマットが貰える
②怒鳴ったり大声を一週間やめると毛布が貰える
③ガニ股歩きを一週間やめると掛け布団が貰える
④屁を垂れたりゲップをやめると枕が貰える
⑤鼻糞ほじりを一週間やめると湯たんぽが貰える
⑥朝晩の定時に洗顔と歯磨きを一週間するとシーツが貰える
⑦毎日髪を解かすを一週間すると蛍光灯の小が貰える
⑧毎日部屋とトイレ掃除をしているとマッチの擦り紙が貰える
⑨毎日、御飯を食べる前に頂きますと、御馳走様でしたを言うとタバコが三本貰える
⑩毎日、おはようございますと、お休みなさいを言うと、マッチ棒三本が貰える

「沢村~♪ お前、馬鹿だろ♪ まあ、前々からおかしいヤツだと少しは思ってたが、どう見ても小学生並だよ。 あっははははは♪」
 純子は読み終えた手紙をクシャクシャに丸めてポイッと床に捨てた。

「今夜は冷えるからさ♪ よく考えて行動してよねー♪ 囚われの身なんだしさ~♪ 因みに夜は十度切るかもだからねー♪ 短気だけじゃー男にはなれないよ~ん♪ あははははは♪ 再び因みにそこには蛍光灯はないからね♪ まだ八時だけどさ消灯するからねー♪」
 沢村がいい終えた瞬間、純子のいる部屋のモニターが消え真っ暗になった。

 純子は真っ暗と言う意味がどういうことなのか身を持ってその暗さに恐れ戦いた。

「おい!! 沢村!! 灯りを付けろ! おい! 沢村あーーー!!」
「一人で真っ暗な中で考えなよ♪ オイラもテレビ見てタバコ吸ってコーヒー飲んだら寝るからさ♪ ああ、いい忘れたけど、オイラには逆らわないほうが身のためだよ♪ じゃーねーお休み~♪」
 
 驚いた純子は辺りに灯りらしきモノを探したが宇宙空間のように真っ暗になった中で沢村を呼びつけた。 そして沢村はいつも調子で物言いを終えるとマイクのスイッチを切った。 静まり返った真っ暗な室内、テープルを前に椅子に座る純子は両腕で頭を抱えた。
 
『冷静になれ! 冷静になって考えるんだ! 何で沢村が俺にこんなことするのか! いや、違う違う! そんなことはどうでもいい! 兎に角ここから出る方法が先決だ! しかし… 寒いな… そうだ! 体温が残っている内にアソコに入ればここよりはマシかも知れない!』
 純子は無言で考え抜くと手探りで真っ暗な室内を歩き回って洋服箪笥の扉を開けると、その中に入って扉を内側から閉めた。
『ん… いくらか温度があるようだな。 これなら何とか朝まで持ちそうだ…』
 純子はワンピースの裾を両手でタイツにくっ付けて押さえて体育座りして目を閉じた。
『くそ! こんな体勢じゃ眠れねえ! 第一息苦しい! 駄目だあ! 我慢! 我慢するんだ!』
 目を閉じて寝ようとした純子は目を開いて尚も真っ暗な中で苦痛に顔を歪めた。 そしてその息苦しさに辛抱出来ないと箪笥の扉を開いた。 その瞬間、蓄積していた温度は一瞬にして解き放たれ冷えた温度が中を満たした。
『くそおう! 息苦しさを絶えるか暖かさを取るか苦肉の選択かよ!』
 再び扉を閉じた純子は背中をやや倒し気味にしてワンピースの裾を押さえたが、両腕が痺れてきて裾を放したものの、タイツ越しに下半身から体温が逃げていくのを感じた。
『こんな服装じゃあ体力も体温も持たえ! そうだ! 真横だ! 真横になればいいんだ!』
 純子は引出の天板の上で両足を折り曲げて身体を丸めてワンピースの裾を両足で挟んだ。
『こりゃあいいや♪ 息苦しくねえし、体温も逃げて行かねえ! ふっ! これで眠れる♪』
 純子は一人暗闇の中で笑みを浮かべるとそのまま眠ってしまった。 洋服箪笥の中の気温は二十三度だった。

 翌朝純子は天井のフタが開く音で目が覚めた。

「へえー♪ 中々グッドアイデアだね~♪ 純子、おはよーう♪ 今朝は爽やかな朝だ。 さあ、こっちに。 モニターの前に来て挨拶して貰おうかな♪」
 洋服箪笥の中から這出た純子にスピーカーから沢村の声が広がった。

 箪笥から出て来た純子は憮然とした表情でモニターの前に来るとカメラを睨みつけた。

「純子~ そんな怖い顔すんなよー♪ 折角の美人が台無しだポ♪ それより朝の挨拶は無いのかな~? マッチが無いとタバコは吸えないよ♪」
「この薄ノロ野朗があ~! てめぇ、人をオチョクルのもいい加減にしねえか! 早くここから出せ! 何がポだ!」
「あららら~ どしたのかな~ 利口な純子らしくないな~♪ そんなこと言うなら今朝の食事は無しだね♪ オイラは早朝、二つ向うの街までいって買って来たハンバーガーセットを食べるけどね♪」
「てめぇ! 俺を甚振って気持ちいい変態野朗だったんだな! くそ! もっと前に気付くべきだったぜ! この変態野朗!!」
「あらら~? またそんな暴言吐いちゃって♪ 可愛さ余って憎さ百倍かもー♪ あっはははは♪ 今朝の直時は無し♪ タバコも無し♪ コーヒーも無し♪ じゃーねー♪」
 純子の暴言に沢村はモニターとマイクのスイッチを切ると純子の呼びかけには一切応じなかった。

 そして昼時。

「純子~~ 会いたかったよおーん♪ お腹空いただろーう♪ 吉野屋の牛丼! 温泉卵つきの汁だく~ 食べるかーい♪ でもその前にねー♪ お知らせーーー♪」
 カメラの前に立ちモニターを見る純子はテープルに左手を置いた。

「あのね~ 純子は女の子なんだからさ~ トイレ! トイレに座って用足しを終えたらね♪ ちゃんとキレイになるまでウォシュレット使って、ちゃあーーーんとペーパーで拭かないとと駄目ポ♪ 用足しして適当に拭いてたら大切な部分に傷とか出来るし不衛生だポ♪ だからーー今度からはウォシュレットとちゃんと拭くことを約束するポ♪ 解ったら返事するポ♪」
 モニターに移っている沢村は牛丼を食べながら人差し指を立てて左右に振りながら話した。

「てめえぇー! トイレの中まで見てるのかああああーー!? 畜生ーーー!! この変態野朗があああー!!」
 両手に拳を握る純子は顔を歪め目を吊り上げて歯を食い縛って怒りを露にした。

「見てないポ♪ 全体的には見えるけどアソコは見えないポ~♪ 照れちゃうポ♪」
「同じことだろうがああー! トイレの中まで見てたなんて! あんまりだろおう! あんまりだ…」
「取り敢えず解ったら返事をしないと駄目ポ♪ はいお返事は~~?」
「糞野朗ーーーー!! 変態野朗がああーー!! 何が返事だああ!!」
「仕方ないな~ じゃー お昼も抜いてもらおうかな♪ 朝も二人分食べて昼も二人分かあ~ お腹がキツイや~♪」
「ああー! 要らねえよおおーー! この変態野朗!!」
「純子は男じゃないポ。 単にダラシない勝手気ままな暮らしをしたいだけなんだポ。 短気でだらしないことが男のシンボルじゃないポ」
「煩せええ!! てめえーは何処かへ消えろ!! このインポ野朗!!」

 数年間、無二の親友として衣食住を週末にしていた沢村にとって、普通に予想のつく範囲のことであってトイレに取り付けられたカメラは見てはいなかった。 また万一に備えてのカメラのスイッチは切られていた。
 
『またメシ抜きか… 俺の馬鹿野朗! 学習しろよ俺!!』
 純子は空腹に耐えながら心の中で沢村を怒鳴り散らしたことを悔いていた。 そして水で腹を膨らませたが何の効果もなかった。

 そして夕方。

「可愛い可愛い純子ちゃーーん♪ 御機嫌いかが~♪ ちゃんとトイレではオイラの言う通りしてる見たいだね~♪ ご褒美に晩御飯! 今夜は純子ちゃんも大好きな沢村流のビーフカレーだピョーン♪ さてさて、渡した十項目のうち満たしたものはー♪ トイレ掃除だピョーン♪ よってマッチ三本を進呈するポ♪」
 モニターに映ったビーフカレーと沢村の弾む声に喉をゴクリを鳴らした純子は無言でカメラの前で大きく頷いた。 
「じゃあねー♪ 御飯が貰える時にはありがとうって言うポ♪ はい、可愛い純子ちゃん。 お礼の言葉はないのかな~♪」
「畜生ーーー! 糞喰らえだあああー! 何で俺がてめえぇーに礼を言わなきゃならねえんだあーー!」
「ふう~ 仕方ないポ… 今夜も抜いてダイエットするポ… オイラはお腹いっぱいだポ… じゃあ勿体無いけどこれは廃棄するポ♪」
「ま! まて! まてー! 沢村! もう勘弁してくれよ! 頼むから! もう虐めるのやめてくれ!」
「お礼は!? 言わないと駄目ポ!」
「こうして頭下げて頼んでるのに… お前ってヤツは… 沢村… もうお前は親友じゃねえ! ただの誘拐犯だ!」
「解ったポ… 捨てるポ… オイラが心を込めて作った純子ちゃんの好物… 捨てるポ」
「待て! 早まるな!! 沢村!! 早まるんじゃーない!! 言う! 言うから待て! 心の準備が必要だ!」
「サンキューは厳禁… 使ってはいけない言葉だポ!」
「ありがとう…」
「へ!?」
「ありがとう!」
「聞こえないポ」
「ありがとうー!!」
「聞こえたポ♪ はい良く出来ました~♪ でもねー残念! さっきの暴言でオイラ、そこまでカレーを運べないポ… 悲しいポ」
「なにいぃ! それじゃあ約束が…」
「ああ、でもねオイラの沈んだ心を戻せる方法があるポ♪」

 騙されたと怒り爆発寸前の純子は沢村の言葉に安堵の表情を見せたが、次の沢村の言葉に唖然とした。

「カメラの前でワンピースの裾を胸まで持ち上げて欲しいポ~♪ 純子ちゃんのタイツ姿が見たいポ~~♪」
「………」

 大魔神のような表情を見せ両手に握った拳と肩を震わせた純子は爆発寸前を大きな深呼吸をして押さえると、カメラの前で裾の左右を持ち歯を食い縛って胸まで持ち上げた。 純子は目を閉じていた。

「ワオォ♪ ワンダフルービューティフルー♪ 純子ちゃん、目を閉じちゃ駄目ポ♪ ちゃんと可愛いおめめも見せて欲しいポ♪」
 黒い薄手のタイツに包まれた下半身にフィットする白いパンティーを見た沢村は声を裏返して大喜びし、怒りと辱めに屈辱する純子の両足はプリプリとタイツに包まれて弾力を見せていた。

「可愛いおめめでねえ~♪ 純子ちゃーん♪ 後ろも見せて欲しいポ♪ 純子ちゃんのお尻だポ♪」
 沢村の要求に純子は唇を噛み締めつつ後ろ向きになると泣きそうな表情を見せた。

「もういいポ♪ 今夜のマスターベーションのオカズは出来たポ♪ プリプリした純子ちゃんの下半身だポ♪」
 カメラに後ろ向きのまま俯く純子は涙を必死に堪えていた。

 数分後、天井のフタが開いてアルミの鍋に入ったカレーライスがケースで差し入れられ、純子は前日ぶりの食料に慌てて飛びついた。

「熱いからゆっくり食べてね~♪ 純子ちゃんのタイツ姿♪ 最高だったポ♪ また見せて貰うポ♪」
 熱々のカレーに形振り構わずに食べ始めた純子の後姿を沢村は見ていた。

 純子は何度も喉を詰まらせながら水で流し込みそして咳込みつつ、大好物の沢村ビーフカレーに貪りついていたが、ワンピースのスカートの中を自分から見せてしまったことへの恥辱に目を涙で潤ませていた。
 



【二話】


 
「おはよう愛しの純子♪ ここへ来て今朝で三日目の朝だね♪ 今日は朝ごはんの前にまず着替えて貰うよ。 青い籠に全部脱いで入れて貰ってから、着替えを籠に入れて落とすからね♪」
 前日同様に洋服箪笥の中で眠った純子はノソノソと出て来るとモニータの方へ近づいて顔を上げた。

「今日は良い天気♪ 洗濯日和だよ♪ そこには洗濯機がないからねオイラが洗濯して乾かすから、その籠に全部脱いで入れといてね♪」
 純子は箪笥のある壁の置くの方の天井のフタの真下に視線を移動させた。

「はい♪ お返事は?」
「はい… 解りました…」
「もっと大きな声で返事をしましょう!」
「はい解りました!! て、俺… いや、私の下着とかもお前が…」
「はいその通りです♪ ここには純子ちゃんとオイラしかいないのでーあります♪ だからーオイラがやります♪」
「そんな! 俺… いや、私の下着をお前が!? そんな……」

 純子は俯いて目をキョロキョロさせ激しく動揺した。

「心配しなくてもいいよ~♪ 純子ちゃんの恥かしいパンティーの中を見たり匂いを嗅いだりペロペロ舐めたりしないからねー♪」
 沢村の嫌らしい物言いに純子は背筋がゾクゾクするのを感じた。

「じゃー♪ 脱いで脱いでー♪ 安心してー♪ 覗いたりしないからね~♪」
 沢村のいつになく楽しげな弾むような笑い声が純子の耳にいつまでも残る中、空腹の純子は悔しそうに表情をゆがめるとゆっくりと後ろへ下がって移動し、天井のフタに背中を向けてワンピースを脱ぐと籠に入れ、そのままタイツとパンティーを脱ぎ捨てたが、籠には入れずにそれを持って台所に行くと水道の水でジャブジャブと水で濡らして手早く水洗いした。

「もおーいいーかーーい♪」
 楽しげに声を弾ませる沢村に、水洗いしたタイツとパンティーを入れた純子はそのままフタに背中を向け、胸と陰部を両手で隠した。

「早くしろ… 早くして……」
 俯いて胸と陰部を隠す純子は言葉を言い換えて返事をすると、フタの上で唸り声を上げて沢村が籠にフックを引っ掛けてロープを上げ始めた。

「かあぁー♪ やられたあーー♪ 水洗いしたら重たいだろうにぃ~♪ 全く信用してないんだな~♪」
 沢村はモンクを言いながらも籠を引き上げるとビニール袋に入った着替えを入れて籠を降ろした。 そしてロープにつけたフックを外すとロープを引き上げた。

「ちょっと洗濯機の中に放り込んでくるからねー♪ 着替えておいてねー♪ 着替えないと朝ごはんはないからねー♪」
 沢村は純子にスピーカーから伝えるとスイッチを切った。

 純子は後退りするように籠へ近づくと斜屈んで籠を引き寄せそのまま前へと進んで壁際へ来た。 そして袋の中を見た純子は泣き出しそうな顔して両手に拳を握った。 ピンク色のフリルタップリのパンティーに何処で寸法を知ったのか解らない自分のサイズで同色のフリルのついたブラジャーと、ピンク色した膝上丈のスリップにショコラブラウンの薄手のタイツ、そして白無地のベルト付きのワンピース。

『こんなモノを俺に履けと言うのか! 畜生! 何処まで俺を辱めれば気が済むんだ! アイツ… 殺してやる!』
 裸で寒さに肩を震わせる純子は無言のままフリルたっぶりのピンクのパンティーに足を通すと、ブラジャーそしてスリップを身に着けると寒さに慌ててタイツを下半身にフイットさせワンピースで身体を覆い隠した。

 純子は薄っすらと涙を滲ませていた。

「やっほー♪ 純子ちゃーん♪ 御飯だよーーん♪ 今朝はねー 全開惜しくも食べら背なかったハンバーガーセット♪ また買って来たからねー♪」
「ありが… ありがとう…」

 純子はフタの傍に移動して俯いたまま声を放った。

「では特別映像ーーーー♪ パチパチパチパチパチ♪」
 スピーカーから流れる沢村の声にハンバーガーを頬張る純子の目はモニターに移動した。 そしてその映像に震撼した。

「な! 何で俺の部屋の中があああーーー!!」
 思わず叫んだ純子の声は部屋の隅々まで響き渡った。

「これは録画なのでありまーーす♪ なので質問等は後ほどジックリと聞きまーーーす♪」
 スピーカーから流れた沢村の声はビデオに録音されている声だった。

「これからこの汚い部屋へ潜入し客観的に愛する純子ちゃんに見て貰おうと言う趣旨の特別番組でーーーす♪ あと、箪笥の中も序に見ちゃえうと思いまーーす♪ ムフフフフフ♪」
 映像が流れる中で純子はハンバーガーを食べるのを止めるとコーラをグイッと飲み干した。

 映し出された映像には純子の足の踏み場もない汚れた部屋が延々と流れ、満タンのゴミ袋を避けながら脱ぎ散らかした服やズボンをかき分け、風呂場へ来たカメラは洗濯物の山を映し出しそして汚れの酷いバスルームへと続いた。
 そして同じく服やスボンを脱ぎ散らかした寝室のベッドにカメラがグルリと回ると、タバコの煙にヨレヨレになったカーテンや読み散らかした任侠シリーズの漫画コミックの積まれた山を映し出した。
 
「見て下さいよ! これは男とか女とか無関係ですよね~♪ 殆どゴミの山! 山! 山! こんな汚い部屋を毎週、私めが奴隷のようになって片付けそして掃除をしていましたが! 三日もしない内にこの始末♪ 笑えますねえ~♪ これは男女関係無く性格の問題でしょうか!」
 純子はモニターの録画に若干視線を下へ落とした。

「さてさて! いよいよ愛しの純子ちゃんの箪笥の中を覗いちゃいましょーう♪ わお! こ、これは! フンドシー♪ 男になった時に履くつもりなのでしょーうか♪ そしてこんな物まで見つけちゃいましたー♪ 何処で買ったのか、はたまた自分で作ったのか前側黄ばみ付き白いブリーフ♪ あっひゃひゃひゃ♪ 流石は男フェチの。 いや間違えた♪ 性同一性障害の純子ちゃん♪ そしてまだまだあるね~♪ 女子起ち小便グッズ♪ これは陰部に取り付けて小便する器具のようですが~♪ ウッホ! 使ったことがあるのでしょうか♪ 実に愉快♪ 流石はオイラの純子ちゃん♪ さてさて純子ちゃんの変態性暴きはこれくらいにして。 次ぎはこれだ! 純子ちゃんが女子校生時代に一度も着なかったと言う幻のセーラー服とスカート♪ 純子ちゃんが何故、こんなものを取って置いたのか不明ですが、オイラが代わりに着て上げることにしましたー♪ ヤッホー♪ ルンルン女子高校生~♪ スカートヒラヒラ~ クルクル回る~♪ アレレ? 何でこんなものがここにあるんだろ… おいおいこれはヤバイね… あの美人で可愛い純子ちゃんがダッチワイフ? 男の性処理人形を持ってましたー♪ ひゃっほーー♪ レズレズレズビアン♪ こんなものどうやって使うんだろ♪ うーーーん純子の匂いが染込んでる~♪」
 純子はモニターを見て卒倒しそうな自分を抑えた。

「畜生ーーー! 勝手に人の部屋へ入りやがって!! 酷すぎる! 沢村ーー!! 人のプライバシー暴いて気持ちいいかああーー!! 糞野朗!! あんまりだ… 酷すぎる…」
 テーブルに置いた両手の握り拳を開いてガックリと肩を落とす純子。

「さあーさあー♪ そしてこれが極め付けか!! 男になりたい純子ちゃん! でもー? 躊躇もあるの? 女性下着が隠してあったー♪ しかもそればかりじゃない! レザーで出来たボンテージで女王様にでもなるつもり? あっひゃひゃひゃひゃ♪ 網タイツ履いて誰をヒールで踏むつもりだったのでしよーうか♪ でも~ でも、でも、でも、女性下着には可愛らしいフソコのシミもついてる~♪ これは間違いなく履いたパンティーでしょうかー♪ 男フェチの純子ちゃんも躊躇したことがある証拠! 一人胸をドキドキさせて女性下着を付けてパンスト履いてヒョウ柄ノースリーブと黒レザーのミニスカで女装を楽しんでいた!? ええーー!? 何と純子ちゃんは女装マニアだったのか!? 身体は女。 心は男と自負する純子ちゃんが女装に目覚めたのか!? これはヤバイ展開だあーー!! まさか!! 女装してオナニー!? またもやシミの付いたパンティーを発見!! ああ~ いい匂いだ… はぁはぁはぁはぁ♪ 純子ちゃんもセーラー服着てはぁはぁしたのかあーーー!! 心は男で身体は女と言う純子ちゃん! 本当は女の子でいたいのか! はたまた迷いか! それとも女装趣味なのか!! 探検はまだまだ続く!!」
 純子はテーブルを前にカメラに見えないようにして涙をポタポタと落とした。

 カメラに隠れて涙をテーブルに落とす純子を見ているかのよう特別映像は途中で止められた。 誰にも知られたくない秘密を暴露され悔しさと恥かしさが交差する中で純子は声を喉に詰まらせたまま泣いていた。 純子は我が身の苦しみを自分ごとのように思って接してくれた沢村の全てが偽善だったと思っていた。

「さあー♪ 特別映像はまだまだあるけど、今日のところはこの辺で終了ーーー♪ パチパチパチパチ♪ さて! 楽しい一時も終ったので、今日からの純子のスケジュール発表ーー♪ 今日、たった今から純子ちゃんは! オイラのことを御主人様と呼ぶようにね♪ 呼ばないと一食抜くからね~♪ あと、暴言一つに対してはタバコ一本抜くからねえ~♪ どう? 楽しい企画だろ~♪ 但し! その代わりいい娘(こ)にしていれば! 偶に缶コーヒーを進呈しよう♪」
 テーブルに俯いたままの純子を逆撫でする沢村は声を弾ませた。

 沢村の呼びかけに微動だにしない純子はハンバーガーをそのままにして、テーブルの上にグッタリとして見せた。 カメラはジジッと音を微かに立ててズームインし純子の様子を見入ること三分、急に立ち上がった純子は座っていた椅子をカメラに向けて投げ捨てた。

「ああああー! なんてことすんだよーーん♪ カメラが壊れちゃうだろーん! これは反逆だポ♪ 女の子がそんなことしたら駄目ポ!」
「煩せえーーーんだよおおおおー!! この変態野朗!!」
「怒っても可愛い純子ちゃんだポ♪ 可愛いからこんな特別映像を見せちゃうポ♪ オイラは恥かしくて見てられないから純子ちゃん一人で見るポ♪」

 突然の出来事に沢村はモニターのスイッチを入れるととんでもない映像を流し始めた。

「アアアーンッ! アンッ! アンッ! アヒイィ! ゥウーンッ! ハァハァハァハァ… アンッ! アンッ! アアーンッ!」

 流れた映像の音は立ったまま塞ぎこむ純子を震撼させ仰天させた。 驚愕してモニターに視線を移した純子は自分の部屋の寝室でしていた自慰の映像に顔色を真っ青に変えた。 そこには裸で四つん這いになって陰部を指で弄り回す純子(じぶん)がいて、恥かしい鳴き声を奏でているその身体を左真横から撮られているモノだった。
 純子は口を半開きにして顔を強張らせ全身を大きく震わせ、時折切り替わる盗撮角度に呆然とした。 尻側からは陰部がパックリと割れ指が忙しく動く様子が映し出され、斜め前側からはユラユラと重そうに動くCカップの乳房。 そして斜め前側からは頬を桜貝色に染めてウットリしつつも陰部の快感(しげき)に顔を顰める純子がいた。
 
「畜生ー! 畜生、畜生、畜生おおおおーーーーー!! うわああああああー!! うぎゃああああ!! 畜生ーーーー!!!」

 純子はその映像に怒声と奇声を発して床に転がった椅子をモニターの画面に何度も叩き付けた。 だが、モニターーは強化ガラスで覆われていて傷一つつくことなく延々と純子の恥かしい自慰シーンを映し出し続けた。 沢村はその間、一言も声を発せず部屋の中は狂乱して暴れる純子の声一色になっていた。
 数十分間、椅子でモニターを叩き続けた純子は「バタッ!」と、床に崩れアヒル座りをすると床に両手を付いて大粒の涙をボロボロと零して号泣した。 部屋の中は延々と流れる純子の自慰シーンと号泣する声が重なり合って充満していた。

「さあーて♪ 心の汗である涙を女々しい女のようにタップリと出した純子ちゃんに朗報~♪ 今日から三日間のダイエットをプレゼントしちゃうよーん♪ いい加減に立場をわきまえないと餓死しちやうかも~だね♪ ププププ~♪ でっ! その間はタバコも出ないよーん♪ 健康デーー♪ 早く立場を学習して寝具もゲットしてねー♪ それじゃーオイラは三日経ったら戻るからねー♪ チャオー♪」
 スピーカーから流れた沢村の声は弾み、マイクのスイッチが切られると同時に寒々しい大きな部屋の灯りも消された。

 そして沢村の言葉通り夕方になっても沢村からは何も言ってこず、物音一つしない真っ暗な部屋で昼間なのか夜なのかも解らないまま純子は放置されたことを悟った。 静まり返った真っ暗な部屋の中で純子は頭の中を駆け巡る屈辱と恥辱に涙が止まらなかった。 そして飢えと人恋しさと寒さに純子は二日目辺りから衰弱して行った。 考えることと言えば暖かい食べ物や飲み物のことばかりで、まるで洞窟に滑落した登山で遭難した人と同じ状況だった。
 もしかしたら沢村はもう戻ってこないのではないかと頭に浮かんでは、それを打ち消す繰り返しと自分のしたことの愚かさへの後悔ばかりだった。 短気なだけじゃ男にはなれないと言う沢村の言葉は正しい。 自分がしているのは男の真似でしかない。 男はこうあるべきと言う自分の身勝手な客観的要素がこうして自分を苦しめているのだと思った。 短気で我がままで不精でガサツなのが男なのだと決め付けていたことを暗闇の中で振り返ってもいた。
 沢村が戻ってこなければ自分はここで誰にも発見されずに骨になるのだと思いつつも、モノを貰ったら「ありがとう」と、言えとゆう沢村の言葉は男女に区別のない感謝の気持ちなのだと知った。 だが、もう遅すぎた。 もう遅いのだ。 怒鳴っていれば男なのだと言う自分は何て浅墓だったんだろうと繰り返し自分の過去の行いを振り返った。 
 三日目。 何日目なのか解らぬまま順子は洋服箪笥の中で飢えと寒さと孤独感と戦っていた。 何日経ったのか何時間経ったのか全く解らない純子は食べ物のことで頭が一杯だった。 そして閉じた瞼の中に暖かい太陽を思い出しつつ、その下で熱々のラーメンを嬉しそうに食べる自分を思い描いた。 部屋の掃除も衣類の洗濯も買出しも嫌な仕事も何でもかんでも沢村に押し付け、一度も礼を言ったことのない自分の愚かさを知る。 
 感嘆には頭は下げないのが男だと自負していた自分が恥かしいと心から悔やんだ。 自分の代わりにペコペコと顧客に頭を下げ造り笑顔で商品を扱う沢村に、自分はただ養われていただけなのだと悟った。 男とはこう言う物。 男とはこうあるべき。 男とはこうでないと駄目だ。 ただ、単に沢村の厄介者になっていただけの自分が死にたいほど恥かしくなっていた。 

『ホイ! 俺の部屋の合鍵だ! 俺が留守でもチョクチョク来て掃除はしといてくれや! 俺は礼は言わねえから嫌ならやめとけや!』

 暗闇の中で思い出されるいつもの光景。 

『おいおい! あんな気分の悪いヤツにヘコヘコすんなよ! あんな病院に買って貰う必要ねえって! 俺は行かねえからな!』

 閉じた瞼の中に映し出される映像。

『フザケんな! 男が一々、礼なんて言うかよ! 言いたいならお前が言えばいいだろ!』

 握り締めた拳の中に掴んだ過去。

 純子は身勝手な自分のしてきたことの一つ一つを悔いた。 そして半日ほどが経過した頃、純子は洋服箪笥の中でピクリとも動くことなく気を失った。 その数時間後、真っ暗な部屋に突然灯りが点いて、その光が箪笥の中に漏れた。
 瞼に当たる光に目を覚ました純子は左手を伸ばしてその眩しさに目を覆った。 三日経ったのかと、重たい身体を起こして窮屈な洋服箪笥の中から扉を押し開いた純子はその光に顔を背け両手で顔を覆った。

「ヤッホー♪ 純子ちゃーん♪ おおヒサー♪ 今日は三日目の朝だポーン♪ 御機嫌はどうだい♪ おおっと! 直ぐに目を開いたら見えなくなるからゆっくりと開くんだぞー♪」
 
 光に顔を背けつつ手探りで洋服箪笥から這出た純子はワンピースのスカートが捲れ上がりタイツに包まれた下半身が露出していることにも気付かなかった。 

「今朝はねー朗報だよーーん♪ トイレに付いてるだけで使えなかったシャワー! 遂に浴びれるようにしたからねー♪ 女の子の肌は敏感~~♪ ちゃんとキレイにしないとねー♪ バスホールになってるの知ってるだろう♪ まずは今朝は朝シャンならぬ朝シャワーで吹くも着替えよう♪」

 沢村の弾む声に次第に光に対して目の慣れてきた純子はヨロヨロとテーブルまでたどり着くと、部屋の後方にあるプラスチックの籠を見た。

「今日も服を脱いだら籠に入れて服を裂きに受けとろうー♪ くれぐれも此間みたいに水洗いしちゃ駄目だよーん♪ 重たくてかないましぇーん♪」

 三日ぶりに耳に響くスピーカーからの沢村の声に両手で耳を押さえた純子は、カメラの方を向いた。

「ありがとう… 御主人様……」

 純子はカメラの前でボソッと呟くと、そのまま籠の方へ行くとカメラと天井のフタに背中を向けて、脱衣するとそのまま籠に後ろ向きに入れて胸と陰部を隠して籠の逆位置に移動した。
 すると天井から降りて来たフック付きのロープが籠を引っ掛けてスルスルスルッと上へ吸い込まれると、籠の中に着替えとバスタオルと風呂用品が入れられて降りて来た。
 空腹の中、純子は再び後ろ向きで籠へ近づくと籠を持ってそのまま今居た場所へ移動した。 髪はバサバサで肌も乾燥と汚れで表現しきれない状態の純子はバスタオルの裏で身体を胸下に覆い隠した。

「中々、礼儀正しくなったね♪ じゃーねートイレの中にある便座のフタは確実に閉じて使ってね♪ 制限時間は六十分♪ 五分前にチャイムが鳴るからねー♪ 無駄毛の処理もちゃんとするんだぞぉ~♪ 解ったかな?」
「はい… ご主人様…… ありがとうございます……」

 純子は籠の中身をトイレのドアの前に置くと久しぶりの御湯に薄っすらと笑みを浮かべて中に入った。 そして焦る気持ちを抑えて便座のフタを閉めると御湯を一気に頭の上に出した。 熱い湯が冷えた身体に一層熱く感じられ慌てて水を足した。 洗髪して身体を洗い腋から始まった無駄毛処理は不慣れな純子を苦しめもしたが、久々の湯と体温の回復に癒されもした。
 そしてその最中、純子が三日間も身に着けていた衣類を持った沢村は洗濯機の前に居た。 だがそんなことを知る由もない純子は制限時間を気にする様子もなく御湯と戯れていたが、制限時間を二十分前にして、何もすることのなくなった純子は身体をタオルで再び包むと、トイレを出て来た。 寒いと感じていたはずの室内は涼しいと感じる状況だった。 そして十分涼んだ頃。
 
『今度はコレか……』

 袋から取り出した黒いヒラヒラの付いたスキャンティーに足を通し、履き慣れない薄さに消沈しつつ黒いブラカップ付きの薄いキャミソールで身体を包んだ。 そして取り出した黒いパンティーストッキングを見て、惨めな気持ちになりながらカメラを意識しつつ椅子に腰掛けて足を通した。 そして履き慣れないパンストを伝線させないように気遣いながら下半身にフイットさせた純子は黒レザーのミニスカートと白いブラウスで全身を覆った。
 こんな服じゃ凍えてしまう。 だが文句は言えない。 言えばまた罰が待っている。 心の中で着慣れない服装に再び消沈した純子だった。

「着替えたかーーーい♪ そろそろいいかな~♪ じゃーカメラのスイッチを入れるねー♪ おお!! 可愛いーー♪ 綺麗ーーー♪ 凄い似合うポーーー♪ じゃーねープレゼントがあるポ♪ 画面に映る二つの内で欲しいモノを一つ選んでねー♪ Aはベッドに使う毛布ーー♪ Bは暖房機ーー♪ さあーどっち?」
 純子はモニータに映し出されたモノを見た瞬間、間髪入れずに「暖房機!」と、思わず声を弾ませた。 その声に沢村も「OK---♪」と、思わず声を弾ませた。 これで暖が取れると純子はミニスカートを履いた自分を見回した。

「ちょっと重たいからね♪ これは滑車を使っておメスことにするよ♪」
 沢村はスピーカーから声を発したあと、天井のフタを開いてギシギシと石油暖房機を降ろし始め、上を見上げる純子は「ありがとう♪」と、声を弾ませつつ両手を添えて受け取った。

「いやー♪ そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいー♪」
 スピーカーから沢村の声がする中で、部屋の壁がわに持ってきた石油暖房機のコンセントの差込口を捜す純子は部屋の中を壁伝いに歩き回った。 だが、何処にもコンセントはなく、カメラの前に来てそれを沢村に伝えた。 すると沢村は「へ? 無いか? あれれー♪ あると思ってたんだが…」と、困惑する声をスピーカーから発した。
 
「まあ。 コンセントなんかどうでもいいって♪ だって灯油は入ってないしね♪ あははははは♪ 引っ掛かったー引っ掛かったー♪ やーい♪ やーい♪ あははははは♪」
 スピーカーから流れる沢村の声に純子は唖然として腕組みした。

「御主人様! こんな格好では死んでしまいます!」
 純子は自分を落ち着かせて沢村を怒らせないように腕組して自分の姿を見回した。 

「オイラは暖房機とは言ったが灯油が入っているなんて一言も言ってないポ♪ 毛布の方が良かったポ♪ 取り敢えず朝御飯にするポ♪」
 純子の困惑する顔を見て声を弾ませる沢村。

「はい。 御主人様… ありがとうございます…」
 純子は沢村を怒らせないように気遣いしつつ返事と礼を言った。

 そして数分後、再び天井のフタが開いてそこから降ろされた袋を見た純子は、大きな溜息が漏れる程のビックハンバーグ弁当に胸を躍らせた。

「ありがとう♪ ご主人様♪」
 無意識に出た沢村への感謝の言葉と笑みに純子は気付いてはいなかった。 

「足りなかったら牛丼弁当と天丼弁当もあるポ♪ 三日分の栄養は必要だポ♪ 但し口をつけたら全部食べないと罰があるポ♪」
 沢村もモニターの中で純子と同じ弁当に舌包を打って美味そうに食べていた。

 十分後、純子は弁当を食べ終えたが、それでも食欲旺盛が止まらず牛丼弁当の追加を頼んだ。 それに対して沢村はホイホイと天井から差し入れたがその牛丼は普通盛が鍋に二つ入れられていた。 だが、純子はここで何か言えば沢村の機嫌を損ねてしまうと、頑張って食べることを誓うと「ありがとう。 頂きます♪」と、笑みを浮かべたが半分を少し食べた辺り顔色が悪化していった。
 そしてその様子を見ていた沢村は無言で純子が食べ終えるのを待っていた。 だが純子の食は徐々に細り鍋を前にして苦しそうにしていた。 そしてそこへ追い詰める沢村の「朝食タイム残り五分!」と、言う声が聞こえた。 

「残り四分♪ ちゃんと完食しないと罰があるからねー♪」
 純子は意を決して残り四割を無心になってガツガツと口に入れて無理矢理飲み込んで、残り一分前にして全部を食べ尽くした。 そして繰り返される嘔吐感に堪えて作り笑顔でカメラを向いた。

「よおーし御褒美にアイスクリームあげようー♪ ホラ見てみてー♪ 美味しそうだろー♪」
 モニターに映っていたのは純子の大好物だったことで、純子はアイスなら食べれると目を輝かせた。 だが考えた。 もしかしたら大盛りではないか、特盛りだったらどうしようと。 すると沢村はモニターにアイスの大きさを映して見せた。

「頂きます♪ ご主人様♪」
 純子はそれを見た瞬間、是も非もなくお礼を言った。

「でも食べ切れなかったら罰があるけどいいのかな~♪」
 心配そうな言葉を使う沢村に純子は大げさなヤツめと内心笑みを浮かべていた。

 そして天井から降りて来たアイスを見て純子は悲しい気持ちになった。 袋に入っていたのは食べれると思っていた量のアイスが五本だった。

「あんまりだ… こんなのだべれる訳ない…」
 テーブルの上に袋ごと置いた純子は暫くその袋に見入っていた。

「オイラは一本だなんて一言も言ってないピョーン♪ 量は確認させたピョーン♪ 早く食べないと時間がなくなっちゃうピョーン♪ ランランラン♪」
 沢村は袋を見入る純子の様子に声を弾ませた。

「罰は… 食べれなかった時の罰は?」
 純子は声を絞って質問した。

「罰はねー♪ そだなー 男同士♪ 一緒に立小便するピョーン♪ 男同士なら立小便で来て当たり前だポ♪ オイラはここで純子ちゃんはソコでするピョーン♪」
 純子は罰の内容に無言になって俯いた。

 罰の内容を聞いた純子は小さな溜息をして諦め顔で遠い何処かを見ていた。 そして袋から取り出したアイスを一口。 久しぶりに食べるアイスの味に嬉しくもあり悲しくもありという複雑な表情を浮かべた。

『人に女装させといて立小便もないだろうに…』
 純子は心の中で呟くと、モニターの中でジッと自分を見入る沢村を鼻で笑った。 するとアイスを美味しそうに食べている純子に沢村から追加が発表された。

「それを一時間以内に食べ終えたら、灯油五リットルと電気の来てるコンセントを進呈しちゃおうー♪」
 沢村のこの言葉に純子は目を大きく見開いて、吐き出すのは後でもいいと俄然やる気を見せた。

 そして純子がアイスにムシャブリ付いて二つ目に入った辺りモニターの中から沢村の姿が消え、トイレの右側の壁辺りからゴソゴソと言う音が聞こえ始めた。 純子はその音を頼りにアイスを食べながら辿っていくとトイレの右側の鉄板で覆われた壁の下、床近くに突然、丸いドリルのような刃先が数箇所開けられた。 そしてその穴から沢村の指が数回見えるとソコからコンセントの付いたコードず押しいれられた。

「純子! ソコにいるんだろ。 コンセント。 引張れよ」
 久々に聞く沢村の生の声に何故か安堵した純子はコンセントのついたコードを拾い上げて引いた。 だがこの時、純子は「お願いだからもう許してえぇー!」と、切なげに叫びそうになっていた。 だが沢村に女言葉なんか使って堪るかと吐息を振るわせて耐えた。

 更に数分後、アイス四本目に突入した純子は嘔吐感もなくなっていることに安心していると、天井から五リットルの灯油の入った暖房機のポットが下ろされた。 純子はこれで暖が取れると残りのアイスを急いで食べ尽くした。 その勢いは半端なく早かったことに天井にいる沢村は思わず拍手した。


【三話】


「一週間、よく頑張ったポ♪ そろそろ身体も痛くなってきただろうし寒くなってきたから別室へ映るポ♪ 灯油も殆どないはずだポ♪ まずはシャワーと着替えと朝食だポ。 籠の中に洗濯物を入れてシャワーするポ。 制限時間は一時間だポ。 女の子の身嗜み忘れたら駄目ポ」

 別室へ移動すると言うことに純子は期待と不安の両方を胸中にしながらいつものように、カメラと天井のフタに背中を向けて脱衣し始めた。 ブラウス、スカート、パンスト、キャミ、そしてパンティーを脱いだ純子は籠の中に放り込んだ。
 スルスルっと天井から降りて来たフックが籠に引っ掛かり上に引き上げられ、その戻りに着替えとバスタオルが入れられていた。 純子はいつもと同じように籠を引き寄せるとバスタオルで首下を覆った。

「洗濯と朝ごはんの用意するポ。 制限時間は一時間あるポ♪」
 天井のフタが閉った数分後モニターに現れた沢村はスピーカーから声を発した。

「御主人様。 ありがとうこざいます」
 バスタオルで身体を包んだ純子は籠から着替えの入った袋を取り出すと籠をきちんと所定の位置に戻してトイレの中へと入って行った。 そして再び数日ぶりのシャワーに心と身体を癒し女の身嗜みにせっせと時間を費やした。 

 その頃、洗濯機の前で純子が脱いだ匂いの染込んだ衣類を愛おしそうに持って起ち尽くす沢村は何処か遠くを見ていた。

「ランランラン♪ フンフンフン♪」
 楽しげに鼻歌をする純子の声は無理矢理作ったギスギスした声ではなく澄んだ綺麗な声だったが、本人はこの鼻歌は無意識だった。 そして鏡に映った自分の顔をマジマジと見入る純子は長いあいだ無理して作っていた目付きの悪さが無くなっていることに気付いた。 ジーッと自分の顔を見て、そしてその視線をプリプリと揺れる乳房とピンク色の乳首に映した。

『初めから沢村(かれ)にあげてれば彼だってこんなことしなかったはずなのに…』

 決して嫌いではない沢村のことを思い出しながら乳房を見流す純子は、便座のフタに腰掛ると鏡の前で視線を下へと向け両足を開いた。 自分のために嫌な思いを沢山しても尚も、愚痴一つ言わずに自分に尽くした沢村に礼の一言も言わずに過してきた身勝手な自分に出来ること。 何故気付いてあげられなかったのだろうと、表情を曇らせた。 男になるならなるで女として最後に受け入れてやれること。 私が彼のためにして上げられること。 気付くべきだった彼の気持ち。
 純子は制限時間を一杯に使ってトイレから出ると、椅子に腰掛けて涼んでいた。 そしていつものように沢村が遣した服を確認すべく袋に手を入れた。 そしていつものように唖然とした。 ヘソまで来る純白のパンティー。 そして同色の三段ホックのブラジャー薄水色のスリップ。 更に純子を震撼させたのは、一度も袖を通したことのない純子自身の高校生時代のセーラー服とヒダスカート。 そして紺色のハイソックス。

『こ、これを着ろと言うの? 沢村!! こんなの無理よ。 だって体重だって違うのよ…』
 純子は顔を青ざめさせて心の中で叫びにも似た動揺を放っていた。

『アレ? 何で入るの? えっ!? もしかしたらあの三日間の絶食で痩せたの!? そ、そんな… アレはもしかして沢村(かれ)の計算!?』
 下着類を着けた純子はセーラー服で上半身を包むとヒダスカートを腰に引っ掛けた。 生まれて初めて来た高校時代のセーラー服に何故か純子は感動にも似た涙を流した。 男になるのだと片意地張るようにして敢えて着なかったセーラー服に身体はピッタリサイズに治まっていた。

「さあーーて♪ 朝御飯の準備は出来たかな~♪」
「はい♪ ご主人様♪ シャワー頂きました♪」
「ヨッシャ~♪ おおおおーーー! ビューティフル♪ ワンダフルー♪ 綺麗♪ 可愛いー♪ 凄げえーー♪ わお♪」
「あはははははは♪」

 顔を真っ赤にして照れる純子と純子を見て感動する沢村。

「回って見て回って見て♪ もっと勢い付けてー♪ わおおーー♪ ヤッター♪」
 純白パンティーをチラチラ見せてクルクル回る純子に御機嫌モード全開の沢村は歓喜した。 そして純子もまた喜ぶ沢村にクルクル回ってはカメラの前で尻を左右にフリフリして見せた。

「OK! OK! OK! それでは、では朝御飯ターーーーイム♪ 今朝はねー♪ いつも二人で肩並べて公園で食った懐かしのノリ弁当&別買いの塩シャケだーー♪ ムフフフ♪ これは車で夜駆けして買って来た例の弁当屋のモノなのだー♪」
 歓喜に次ぐ歓喜に沸いた沢村はご機嫌だった。

 数分後、天井から降ろされた海苔弁当をテーブルの前に、セーラー服姿の純子は目頭の熱くなった。 

『どうしてもっと素直になれなかったんだろう。 沢村(かれ)にこんな目に合わせられなきゃ気付かないなんて… 本当は高校の時、セーラー服も着て見たかったのに…』
 純子は心から恨んでいたはずの沢村への憎しみは消えていることに気付き、同時に感謝の気持ちさえ芽生えていた。

「よっしゃー♪ 朝食タイムも終ったことでー♪ お部屋を移動するポ♪ 暖房機だけは持っていくポ♪ 移動する手順は簡単だポ。 まずはトイレに入るポ♪ そして便座を乗り越えて奥の壁をお股を大きく縦に広げて蹴るポ♪ さあー実戦しよーう♪」
 スピーカーから流れた沢村の言葉に従って純子はトイレへと移動した。

「そおれっ!」
 純子は指示通りに右足を目一杯上に上げて壁を蹴り飛ばした。

「ドンッ!!」
 純子は簡単に向こう側に倒れたユニットバスの壁を前に唖然と暫く立ち尽くした。

「さあー♪ 純子の新しいお部屋に暖房機を持ち込もうー♪」
 沢村の言葉に背中を押された純子は暖房機を両手に抱えると開いた空間に足を踏み入れた。


そして…


「え!?」
 純子の第一声は驚きの声だった。

 広さにして約三十畳ほどのガランとした空間の奥に二十畳ほどを仕切るように黒い鉄格子と鉄格子で出来た出入り口があったて、その中にマットの付いた木製のダブルベッドと洋服箪笥に和箪笥、そして台所があってトイレとバスルームは別々に備えられていた。
 黒い鉄格子は直径、三センチから四センチの太い鉄棒と細長い鉄板状で出来ていてその全てが黒で統一されていた。 そして壁に取り付けられている縦横三十センチ程の小窓からは外に広がる緑一色の自然が見えていた。 床にはカーペットが敷き詰められていたが、何に使うのか解らないロープの通った滑車が檻の上の天井に無数ぶら下っていた。
 
「さあ、その中に入るポ♪ ここが純子の新しいお部屋だポ♪ この檻はオイラが純子のためにコツコツと作った檻だポ♪ 電気もあって文化的だポ♪」
 スピーカーから流れてきた沢村の声を聞いている純子の横で、入って来たトイレの壁の天井からシャッターが金属音を立てて降り始めた。

「寒いからむような穴は塞いだっポ♪ ここは向こうと違って機密性があるから暖房するとミニスカートでも快適に居られるポ♪」
 純子は沢村の声が聞こえる中、檻の入り口で入るのをためらっていた。

「御主人様、ありがとうございます……」
 声を窄め礼を伝えた純子は暖房機を床から持ち上げると気の進まない南側から檻の中へと入って行った。

「キュルキュルキュル! バタンッ!! カチャッ!」
 純子が入ったのを見計らったように檻の出入り口は天井を伝うワイヤーロープで引張られて重々しい音を立てて閉じ、鍵が自動でかけられた。 その瞬間、純子は出入り口の方を振り向いて肩を窄めた。

「今回は特別に西側のベッドにはマットとシーツを付けて置いたポ♪ 横になって見ると解るけど中々の寝心地だポ♪」
 暖房機を床に置いた純子は沢村の言葉通りセーラー服姿のまま捲れ上がるヒダスカートに気を使いつつ、ベッドの上にその身を横たえてみた。 そしてニッコリとカメラに笑みを浮かべると再び声を発した。

「ご主人様。 ありがとうございます♪」
「喜んでもらえてオイラも嬉しいポ♪ 序に今この部屋の室温は二十三度設定になってるポ♪ 多分、よほどの時でないと暖房機は必要ないポ。 なのでー 暖房機は隅っこにでも置いておくといいポ♪」
「はい。 御主人様」

 純子の礼儀正しさに沢村は御満悦の声を聞かせた。

「礼儀正しいのは大好きだポ♪ ではこの部屋の説明をするポ。 一番奥の北側の壁に付いている小さな扉は御飯類や洗濯や必要な物資を入れる搬入口だポ。 そして東側の浴室は広めで浴槽を完備してて五畳あって二畳の脱衣場を備えているポ。 中を見れば解るけど純子に必要な身体のケアをする道具や洗顔剤がフル装備されているポ♪ その並びのトイレも少し広くなっているポ♪ そしてその並びには新たに台所でもお湯が使える仕様だポ♪ あとは、純子がちゃんとオイラの指示に従っていればラジオやテレビや冷蔵庫も差し入れするポ♪ あと、洋服箪笥と和箪笥には今までに純子が着た服や下着や靴下類を仕舞うことと、基本的にオイラの指定が無い場合の純子の服装は、白いブラウスに黒いタイトスカートと黒いパンティーストッキングを着用するポ! あと洗濯機は無いポ。 地下で使える水量に限りがあるポ♪」
 沢村の声は俄かに弾んでいた。

 そしてベッドの上に座る純子の視線が東側の壁のワイドモニターに移ると、モニターの中で沢村が示した項目表に純子は驚きの表情をして頷いた。

「今日から男言葉の全てを禁止するポ♪ 違反したら厳しい罰則が純子を待っていてオイラは容赦しないポ。 モニター横の少し小さいサイズのモニターに女性の言葉使いのビデオを随時流すから、それを参考ではなく! 完全にマスターするポ♪ これに対するボーナスとしてラジオが進呈されるポ」
 モニターの横の一回り小さなモニターに突然映し出されたテレビCMや芸能人の会見の様子や映画の録画が流れその全てがターゲットが女性であることは明白だった。

「それから今夜の六時から消灯の九時までの三時間。 少しは文化的にドラマを放送するポ♪ 純子はそれを見る義務を負うポ。 目をそらしたり見てなかったりすると翌日の食事に影響が出るポ♪」
 沢村は何やら嬉しそうにそして笑みを堪えるように話した。

「ではオイラは洗濯物を干して来るからその間はビデオを見て勉強するようにするポ♪ それとさっきから天井の滑車とロープが気になるようだけど、アレは元々の家主がこの地下室を作るのに重たい物を持ち上げるのに使っていたらしいポ♪」
 モニターに映る録画を見つつも天井からぶら下る滑車とロープをチラチラ見る純子に沢村は解説を果たしてマイクのスイッチは切られた。

 純子は他人であれ誰であれ、自分と略同じ容姿の女と言う人間が女言葉を使うことに反感を持ち続けていた。 このことを知る沢村ならではの策を純子は理解しつつも心の中で「残酷だ」と、消沈していた。 恐らく沢村のこと、突然話し掛けて来て何度もテストするのだろうと思いつつも、純子は暫くぶりに見る文明にモニターを見入っていた。 
 部屋に時計は無いものの一時間、二時間と時間は経過したが画面は止まることなく動き続け尿意を催した純子がトイレに立ち上がって移動すると、モニターの画面は一時停止した。 純子は「センサーで私を見張っているの?」と、心の中で沢村の用意周到さを垣間見た。 そしてトイレに入って便座に座り用を足し流した瞬間、真正面の小さな電光掲示板に「女の子は用足ししたらウォシュレットで綺麗にしないと駄目ポ♪」と、流れた。 純子はトイレも覗かれているのではと、辺りを入念に見回した。
 そしてトイレから戻って座ると、再びモニターの一時停止は解除され再び画面が流れたが、モニターの右下に白字で「只今の一時停止時間は四分三十八秒です」と、表示された。 そしてそれから更に一時間を経過した辺りで突然画面が沢村に変わった。

「ヤッホー♪ 純子ーー♪ ここでー特別企画だよーん♪ オイラもねー 色々と洗剤を変えて洗濯してるんだけどー♪ どーうしても汚れが残っちゃう純子のパンツ♪ 洗う前と洗った後の比較写真と、どうしてこんなに汚れるのかを純子自身に考えて貰おうと言う企画だポ♪ 女の子の使用済みのパンティーをこう言う形でモニターさせるのって凄ーーーく。 オイラも気が引けるんだけどー♪ ここは心を鬼したポ♪ ではモニターの上に洗濯前のパンティーの内側とー♪ 下側に洗濯後の乾燥したパンティーの内側を比較出きる様に映し出すからねー♪ よーーーく見てピョーーン♪」
 突然の沢村の爆弾発言に純子は激しく動揺しつつ、思わず両手で口元を覆い隠した。

 モニターに映し出された使用済みパンティーは見事なまでに汚れて、色と色の重なり具合やその性器の形までも浮き出ていて尻の辺りから真っ直ぐに伸びるウン筋をも映し出していた。 そしてその下に洗濯後のパンティーの内側があって薄っすらと汚れの色が残ったモノが並べられていた。 純子はその映像を見た瞬間、脳裏が真っ白になりその恥辱に激しい怒りを覚えた。 過去にここまで恥かしいと思える出来事があっただろうかと、心の奥底からその映像と沢村の心無い遣り方に両手は拳を握り全身はブルブルと大きく震えた。 そこへ沢村が言葉を発した。

「ヤッホー♪ 純子ーー♪ どう? 汚いよねーー♪ 見るも無惨とはこのことだピョーン♪ どうしてこんなに汚くなるのか不思議だピョーーン♪ 多分、トイレでの後始末だと思うけど、その辺は純子がちゃあーーんと考えて欲しいピョーーン♪ じやあ、続きの録画にに戻るポ♪」
 沢村の心配を装った楽しげな弾む言葉に純子は遂にブチ切れた。

「この弩変態野朗があああああーーー!! 何処まで人を馬鹿にして何処まで人を下げれば気が済むんだああーー! てめえぇーーは人間じゃあーねええぇーーー!! この外道がああぁーー!!」
 モニターの上に付けられているカメラに向かって仁王立ちした純子は表情を凄まじく変貌させた。

 仁王立ちする純子は髪の毛が逆立つ思いをしていた。

「セーラー服着た可愛らしい純子とは思えない発言にオイラ… 悲しいポ。 でも、オイラも一度は心を鬼にしたから後戻りは出来ないポ…」
 沢村の言葉に我に返った純子はこれから降るであろう罰に一瞬にして顔色を恐怖の色に変えた。

 静まり返った部屋の中。 暖房の出ていた噴出し口からの温風が突然止まり、その静けさに純子の視線は噴出し口へ向けられた。 そして洋服箪笥から「ジジジジジ… カチャ! カチャ! カチャ!」と、言う鍵の掛かる音がして直ぐに箪笥へ視線が移動した。 

「今まで室温は二十三度に設定されていたけど、今から十八度設定にしたポ… 同時に箪笥は内側から鍵が掛かったポ… 今日の昼食から明日の昼食までダイエット期間にするポ… 電気の供給もストップしたポ… 寒くて居られないだろけど、少し考えたほうがいいポ。 オイラ。 このまま純子を放置して家に帰っちゃおうかな… 純子に弩変態って言われたし… 台所のお湯も止めたからね… セーラー服とスカートじゃ十八度は辛いかもだポ…」
 意気消沈した沢村の声が純子の耳には冷凍庫のような温度に聞こえそして伝わった。

「ちょっ! ちょっと。 ちょっと待て! 悪かった! すまん! 沢村! 謝るから! 謝るからああ! 沢村あああー! 頼むから聞け! 聞いてくれえぇー! 沢村ああーーー!!」
 純子は室温が下がって行くのを肌で感じ急にオロオロして沢村の嫌いな男言葉を連発させた。
 
「こんな時でも冷静に女言葉で詫びれば許しちゃおうと思ってたのに… 少々の痛みじゃ治らないってことだね…… まあ、十八度は健康温度だって数十年前は国も推薦してたらしいから健康になれていいんじゃないかな~」
 沢村はこれを最後にマイクのスイッチを切っが、モニターの録画だけは流され続けた。

 純子は最後の沢村の言葉に「ハッ!」として我が身を振り返ったが、室温はドンドン、セーラー服姿の純子には厳しい室温へと変化していった。

『何処まで俺は… いや、私は馬鹿なんだ! 結局ヤツが言いたいのはちゃんと用足しの後の始末をしろってこなのに… クソ!』
 心の中で自分を責める純子だったが、俺を私に直した辺りは学習していたようだった。

 それから数時間。 純子はベッドの上でヒダスカートを身体とベッドの間に挟んで体温を逃がさないように、アヒル座りして時の経つのを待ったが、寒くて肩を窄め震えることには変わりはなかった。 
 そしてドンドン室温が下がり、やがて耐えられなくなった純子はベッドの上から飛び降りると突然ダンスのように全身を動かす運動を始めた。 するとアレよアレよと言う間に体温は回復し額に軽く汗ばむほど暖かくなった。
 純子は「これなら何とかなる!」と、笑みを俄かに浮かべたがずっと動いている訳にも行かず時折ベッドに腰掛けて身体を休ませた。 純子はずっと後悔していた。 自己責任。 全てはこの言葉に尽きるのだと自分に言い聞かせた。
 そして尚も室温はドンドン下がり再び運動をするも何度も動いたことで疲れも出て来た純子は、飲めば身体が冷えることを承知で水を飲もうと台所に移動して蛇口を開いた。 だが、コップに入った水は僅か数滴だけだった。
 水さえも止めてしまったのかと純子はカラカラに乾いた喉を潤すべく、檻の中を探し回ったが何処にも水はなかった。 ひもじいと言う言葉が純子の脳裏に焼きつき始めたその瞬間、純子はトイレと風呂場を熱く見詰めた。

『あそこならあるかも知れない…』
 心の中で思いつつ頷いた純子は風呂場のドアを開こうとしたが、内側から鍵が掛かっていて開く気配はなかった。 
『それならば!』
 純子はトイレのドアに手を掛けた。
『開いた! トイレは開くんだ!』
 慌ててトイレのドアを開いた純子は用足ししたフリしてトイレの水を流すと、勢い良く出て来た手洗い用の水で喉を潤した。 地獄に仏、溺れる者は藁をも掴む心境だった。
『え!? トイレの中はこんなに暖かい♪』
 純子はトイレの便座に腰掛けると、そのまま中で冷え切った身体を暖めるように手足を摩擦し始めた。

 この時、トイレの中に入ったまま手で来ない沢村は、カメラを切り替えて純子の様子を密かに視ていたが、純子は気付くことはなかった。 そして部屋の搬入口の裏側へ移動した沢村は搬入口の中に包装されたままのアーモンドブラウンのパンティーストッキングを一枚と、紺色のカーデガンを投入すると、トイレの電光掲示板にトイレの長居禁止と打ち込み、更に搬入口を見るように指示した。
 純子はまるで視られているのかと辺りを見回したが何も気付かず、入っている時間で察したのだろうとトイレを出ると搬入口へ移動した。 そして中から出て来たパンティーストッキングとカーデガンを見てカメラに見えないように涙ぐんだ。 純子はカメラに背を向けるとハイソックスを脱いでパンティーストッキングを履くと、立ち上がってガニ股を沢村に披露し再びハイソックスで両足を包んだ。
 そしてカーデガンを羽織るとカメラに向かって「ご主人様。 ごめんなさい。 ありがとうございます」と、頭を下げた。 その瞬間、パッと部屋に灯りが灯り暖房の吹き出し口から暖かい温風が「ブワァァー!」と、強く排出された。 そしてモニターに沢村が現れ「予定変更! 突然の晩御飯ターーーイム♪」と、沢村の弾む声がスピーカーから流れた。

「可愛いねえ~♪ 純子は♪ メチャクチャ可愛い~♪ 可愛いから晩御飯にしよーーーう♪ 今夜はお寿司を実は買って来てあったのだ~♪ 純子の大好物の一つ! お寿司は暖かい部屋で食べるのが美味しい♪ そしてなんと! 二人前だからお腹いっぱい食べれるぞ~~♪」
 突然の明るい声と空腹に凍みる御寿司の言葉に純子は口を半開きに安堵の表情を満面で見せた。

 搬入口に何かが投入された音がして近づいた純子は腰を屈めて中から折り詰めの寿司を二人前、そして缶入りの熱々の煎茶を二本取り出した。

「さあ! 今夜から始まる消灯までの三時間… いや、二時間か♪ よし! 今夜の消灯は十時に変更してタップリと三時間モノの映画を見よう♪ では映画の始まり始まり~♪」
 明るい沢村の声に今朝の一件を思い出した純子は何が映し出されても決して取り乱すことのないように身構えつつ、折り詰めのフタを開いた。

 そして映し出された映像と題名に純子は一口飲んだ御茶を噴出しそうになった。

 官能アダルト映画…

 それは女の身体をした純子がこの世で一番見たくない映像だった。 女に対して憎悪を抱いているのではない、自分と同じ身体の人間が男に味見され貪られていることに悪寒が走る純子だった。 だが、純子の脳裏には今朝の一件がこびり付いていていたが、顔に表情を出さないように海苔巻きを一口食べては映像に目を向けていた。
 そしてそんな純子をカメラの向うでは強く凝視している沢村が居て室内は映画の音声だけが流れ続けていた。 ベッドに押し倒された女が叫びながらも一人の男からの激しい業に対して抵抗しつつ白いブラウス左右に引き裂かれる。 ボタンが連続して次々に弾け飛び顔を顰める女を見て男は笑みを浮かべ女の両手を押さえつけ、自らの口で女の肩からスリップとブラジャーの肩紐を交互に外した。
 女はどうにもならない悔しさと肩紐を外される恥かしさに半泣き状態で首を起こしては左右に振って抵抗したが、両肩から全てを外され胸元の乳房が緩んだ瞬間、女は叫ぶように「嫌あああぁぁぁーーー!!」と、全身を左右に揺すりそして両足をバタつかせた。 男はスリップのレースに染込んだ女の匂いに目を細めウットリするかのように鼻でソレを吸い込んだ。 女はレース越しに奪われる体温に嗅がれていることを知った。
 そして数十秒後、女の胸元は男の口によって全てを晒されビンク色の乳首を支える白い乳房がプリプリと無造作に大きく揺れた。 男の目は乳房に釘付けになり女は懸命に操を守ろうと全身を大きく揺すった。 だが、女が全身を揺すれば揺するほどに男は目を血走らせ鼻息を荒くした。 そしてその激しく揺れる乳房に業を煮やした男は女を抑えつつベッドの回りを慌しく見回した。 男は何かの帯紐を見つけるとそれを鷲掴みして女を力任せにうつ伏せにした。
 女は帯紐を持つ男を見てうつ伏せにされることに激しく抵抗し髪の毛を振り乱したが、男の強い力に悲鳴を震わせながらうつ伏せに、そして両腕を後ろに縛られた。 男は女の尻にスカートの上から腰を下ろすと白い歯を晒して笑みを浮かべ額の汗をワイシャツの袖で拭った。 女は疲れ果てたようにグッタリして動かなかったが、男が再び仰向けに戻すと狂乱のごとく暴れながら乳房を再び男の目に晒し、笑みを浮かべる男の血走った目を見て恐怖に大粒の涙を自らの頬に伝えた。
 男は勝ち誇ったようにニヤニヤして女の顔から視線を下に下げると、ピンク色の乳首を支える白い乳房を右手で一度横から押してプリプリ感を確かめた。 女は咽び泣くように吐息を震わせ目を閉じてプルプルと乳房を揺らした。 そして女の乳房は真上から男の影に包まれ嫌らしい半濁音と女の咽び泣く声が辺りを包んだ。 そして咽び泣く女の黒いストッキングに包まれた両足の爪先は、男に対する拒絶感からか或いは別の意味なのかギュッと力を込めて閉じられていた。

 最初の数分間、嫌悪感を顔に出すまいと意識していた純子だったが、内容が進展し濃くなるうちに表情を意識することなく、好物の寿司を口に入れることすら忘れて見入っていた。 そしてその様子を無言で沢村も見入っていた。 テーブルとモニターを前にセーラー服姿で見入る純子は微動だにせず画面の動きを瞬きすら忘れて見入っていた。 だが、テーブルの下をズームする純子の知らない一台のカメラがモジモジするハイソックスとアーモンドブラウンのパンストに包まれた太ももを捉えていた。
 上半身は殆ど微動だにしない純子だったが下半身(からだ)は無意識に純子の心の変化をカメラのレンズに隠すことなく伝えていた。 そしてその下半身(からだ)の変化に食い入るように見る沢村は何かに安堵したかのように大きな深呼吸をした。 そしてモニターの中では、乳房に飽きた男の手が黒いタイトスカートの中に入り黒いパンティーストッキングに包まれた太ももに這わせられる場面に入っていた。 同時に純子の下半身を包むパンティーストッキングが微かにスリスリとテーブルと椅子に仕込まれた盗聴器によって拾い上げられていた。
 何も知らない純子は上半身で平静を装いつつも、正直な下半身は相応の動きを見せていた。 モニターの中の女は目を閉じて只管に男の業に忍び耐える表情を浮かべつつ時折、後ろに首を仰け反らせつつ耳たぶを桜色に染めて行った。 そして男の手が女の腰からスカートを外し下半身を露にさせると、黒いパンティーストッキングに包まれて弾けるように弾力を伝える女の太ももに男の視線は釘付けになった。 そして男が女のヘソ下に顔を埋め恥かしい匂いを嗅いだ瞬間、大きな吐息が強調された。 この時、純子は下半身をモジモジさせつつ、受身の女に自分を重ねていた。
 映像はまだまだ続き、純子の熱い缶茶は既に温くなっていてそのことにすら気付かずテーブルの下で両足は組れた。 そして組まれた足は「ギュッ!」と、不定期に筋肉に力が込められた。 テーブルの下を映し出すカメラはその微妙な動きを確実に捉えていた。 更にモニターの中で黒いパンティーストッキングの上から男の頬が女の太ももに擦りつけると純子は、無意識にテーブルの上に置かれていたはずの右手を下に降ろしパンストに包まれた太ももに指で円を描いていた。 パンストを履く女にしか解らない触指の感覚は純子の組まれた足を更に力強く硬直させた。 
 モニターの中の男は女から黒いパンティーストッキングを剥ぎ取ると、女に見せ付けるように両手でソレに顔を埋め激しい鼻呼吸を繰り返した。 女は唇を噛み男の行為から目を反らし何れ来るであろう最大の恥辱に首を横に倒した。 男はそんな女の心境を知ってか突然口から舌を出すと、女の太ももを片方ずつ持ち上げゆっくりと味わうように舐めそしてムシャブリついた。 女は痛い程に内モモにムシヤブリつく男の舌と唇に顔を歪ませ男の舌がパンティーに近づく度に剥ぎ取られる恐怖に頬を引き攣らせた。 
 女の太ももはその全体を余すところなく味見され更にパンティーラインに沿って男の舌が女を追い詰めた。 だが、男が女の下腹部から遠く離れた足へ移動すると女は小さな安堵を吐息に替えた。 だが足を両手で持つ男の舌が爪先の指と指の間に滑り下りた時、女は背筋に冷たいモノが走るのを感じた。 男は爪先を口の中に入れ女の汚れを一心に舐め取り唾液で溶かして洗い流してまでそれを飲み込んだ。 オゾマシイ。 女の脳裏に浮かんだ言葉だった。
 男の業は両足の爪先を味わい続けたが、やがてそれも終焉に近づくと男の影が女の閉じられた瞼の中に映し出された瞬間、パンティーに添えられた男の両手に恐れ戦いた。 そして女が顔を強張らせた次ぎの瞬間! スルスルスルッと手馴れた手つきで男は女からパンティーを剥ぎ取り再び女の恐怖に脅える視線の中で、剥ぎ取ったばかりのヌルヌルしたモノが付着したパンティーの内側の匂いを思いきり嗅いで音を聞かせた。 女は再びそのオゾマシイ音にに顔を顰め、聞きたくもないパンティーにムシャブリつく男の汚らしい音に両肩を窄めた。
 男は女の仕草が心地よいのか、今度はその味わった小さなパンティーを口の中に入れて「クッチャクッチャクッチャ」と、ガムのように噛んで背筋の凍りつきそうな音を女の耳元に聞かせた。 女は聞きたくもないその音に全身を震わせ続けた。 だがパンティーに味も匂いもなくなった頃、再び身元にあった男の影が女のマフだから消えると、突然女の両膝が下から掴まれ宙に舞い上がった。 女は「もう駄目だ」と、観念した瞬間、その両足は大きく広げられ恥かしい部分を男の前に晒した。 男は両足を広げたまま何もせずに女の恥かしい部分に鼻先を近づけて「スゥーハァースゥーハァー」と、鼻呼吸して匂いを楽しみ始めた。
 女の恥かしい部分を前に時折その臭気に咽て咳込みつつも男は何度も何度も女の恥かしい部分の匂いをかぎ続けた。 そして男は鼻先で女の匂いを嗅ぎながらワイシャツとズボンをベッドの下に脱ぎ捨てた。 女は恥かしい部分から奪われる体温と口から吐き出される男の熱い吐息に再び涙を溢れさせ、奪われかけている自らの操に別れを告げた。 そしてその直後、男の親指は女の大陰唇を無慈悲にも左右に広げた。 女は奥歯を噛み締め首を横に振ると男と「クッククク♪ 何てぇマン粕だあぁ♪ 白いトロロ芋見てぇだ♪」と、女に究極の恥辱を与えた。 決して普段は他人に見せることの無い女として死ぬほど恥かしい垢を男は笑った。
 そはて左右に広げられた大陰唇の真ん中に男のザラついた舌先が押し付けられ縦に滑った時、女は全身を大きくビク付かせながら恥辱と屈辱の狭間で声を出して泣いた。 男は女の悲しみに満ちた泣き声と反比例する身悶えに女の悲しい性(さが)を垣間見た。 男の舌先が女の汚れを掻き出しそして口の中に消えるたびに女は泣き声を鳴き声に幾度も替え柔らかな肌を無造作に揺らした。 男はまるで「身体は正直だ」と、言わんはがりに揺れる女の肉肌を視界に納めつつ女の内肉のに匂いと味に酔い痴れた。 そしてその儀式が数分間続いた後、女は閉じていた瞼を全開まで開かされ顔を限界まで強張らせた。
 女の意思に反して押し広げられた恥かしい部分のそのまた奥の窪みに「ムリュムリュムリュ」と、突然挿入された太く硬いモノに女は叫び声を失い同時にその呼吸すらも禁じられた。 身体の中に擦れる男の硬いモノに女は全身をガクつかせて開かされた両足の爪先を「ギユゥーッ!」と、息んで閉じさせた。 受け入れ難い男の肉棒を自らの意思に反して受け入れさせられた女はその屈辱と深い悲しみに後ろに縛られた両手に激しい怒りの拳を握った。 そして身体の奥深くに挿入された女はまるで産卵期のシャケのように口を大きく開き全身を著しく硬直させた。 男はそんな女の深い悲しみを舐め尽すかのように奥へ挿入した肉棒を一気に窪みまで引き抜いた。
 
 純子はモニターの中の映像に吸い込まれるように見入り、スピカーから聞こえる恥かしい男女の肉が擦れる半濁音にテーブルの下で組んだ両足を硬直させそして爪先を映像の中の女のように内側に閉じていた。 

 やがてモニターの中の女は純子の見ている前で、悲しみの泣き声の全てを鳴き声に変化させ男の耳に心地よい狂おしく重圧なそれでいて弾けるような喘ぎ声を連続させた。 女の肉肌はプルプルと男に打ち付けられる度に無造作に大きく揺れ腰をガク付かせそして勃起した乳首を支える白い乳房を激しく揺らした。 そして映像を見入る純子に突然沢村から声が掛けられた。

「さあ! 今夜の特別映画は楽しんでもらえかな? お! 純子の晩御飯が全然減ってないポ♪ 映画を楽しんでもらえたってことだポ♪ 今夜の包装時間は終了に近づいたので続きは別の機会に。 あと、もうすぐ消灯だから早めに食べちゃった方がいいかもだ♪」
 突然の沢村の声に目の前の寿司を見た純子は、我に返ったように慌てて口に入れて無心に食べ続けた。 そして沢村も食欲旺盛な純子を見てカメラの向うで嬉しそうにしていた。
 
 だが純子が用意された二人前の寿司と缶茶を飲み終え、カメラに向かって「ご馳走様でした♪」と、笑みを浮かべた矢先、沢村から放たれた思わぬ言葉に純子は見も心も震撼させた。 

「さあーて! 美味しく楽しい食事タイムも終ったのでー♪ ここで、下着の交換ターーーイム♪ 今日は特別に下着を就寝前に交換出切るんだ♪ さあー♪ 純子は今、着けているパンティーとキャミソールを搬入口の前で脱いで中に投入しよう♪ そしたら新しい下着を進呈するからね♪ ああ、それと下着はトイレや風呂場で脱ぐのは禁止だよーん♪ 搬入口の前でするようにねー♪」
 純子はカメラに向かって顔色を真っ青に変えて呆然とした表情を沢村に見せた。

 青ざめて呆然とする純子のパンティーは女にしか解らない状態になっていたことを沢村は予想していた。

「あ… はい… 御主人様…」
 沢村の指示に喉をカラカラにさせた純子はもう一本残っていて温くなった缶茶を一気に飲み干すと席を離れた。 そして搬入口の前まで移動した純子は躊躇(ちゅうちょ)を数回繰り返した後、意を決した純子の顔は緊張から強張り始めていたが腰を屈めて両手をヒダスカートの中に入れると、パンティーに手を掛けてゆっくりとパンティーの内側に注意を払った。

「ニチャッ…」
 パンティーの内側の陰部への当布が離れる瞬間、微かに肌に伝わった音に純子は不安を隠せなかった。 このまま下着交換を拒否すれば折角良くなりかたけた事態が元に戻り再び苦痛を伴う。 だが、このままパンティーを出せば映画を見て濡れていたことがバレてしまう。 純子は掛けた両手を中々降ろせずにいた。 

『どうせ、パンティーの汚れは知られているんだ…』
 純子は心の中でそう呟くと一気に愛液が付着したパンティーを膝まで下げるとそのまま足を引き抜いた。 そして搬入口にそれを落とすとセーラー服を脱いでキャソールも入れた。 するとスピーカーから沢村の声がして、スカートとセーラー服もいれるように指示された。 純子は搬入口の前で全裸になって数分後、スピーカーから搬入口を開けとの指示に再び搬入口を開いた。

 黒いスケスケのスキャンティーと後ろ六段ホックのガーター紐付きのスリーインワンが搬入口に入っていて、その下に黒いガーター用のストッキングが一組入っていた。 純子は着けたことも無いソレらを手に取ると困惑した。 すると突然モニターからスリーインワンの上手な付け方と題された音声入りの映像が流れた。 純子は先に履こうとしていたスキャンティー棚の上に置くと、映像に繰り返し映される通りにスリーインワンを身体に合わせて前側でホックを止めてグネリとホックを背中に回した。 そして映像に合わせるように全体を整え乳房をカップに納めた。
 そして搬入口に再び入れられた大き目の鏡を取り出して、自分を映した時、以外にも似合っている自分に照れて顔を赤く染めた。 そして黒いストッキングを両足に通してから再び繰り返し流れる映像に従ってガーター紐の止め具でストッキングの切り替え部分の前側と横側で止めた純子は、ようやくスキャンティーを手に取るとガーター紐の上を通した。 そして引き上げようとした時、陰部が湿っていることを思い出して慌てた純子は傍にあったティシューでカメラを気にしつつ陰部を繰り返し拭いた。 そして手早く黒いスケスケのスキャンティーを下腹部にフィットさせた。
 すると再び搬入口に何か入れられた純子は搬入口を開いてみた。 中からはベッドサイズに合わせた大き目の枕が入っていたことで純子はベッドに横になれることに安堵の表情を浮かべた。 そしてモニターから流れる画像が止まると同時に「今夜はその姿で寝るポ♪ 純子には良く似合うポ♪」と、スピーカーから流れた声に純子はカメラに「ありがとうございます♪」と、照れ笑いしたが、引き換えに渡した恥かしいパンティーの所在に不安を覚えていた。 中を見られたら映画に感じていたことが知れてしまうとうろたえつつも、何も知らぬフリしていた方が良いのではないかと自分を納得させた。
 だが純子の不安通り、純子が搬入口に入れた愛液の付着したパンティーは、その内側を開かれた状態で沢村の机の上、目の前に置かれていた。 蛍光灯の灯りに反射してキラキラと照り返すパンティーに付着した液体をカメラに収めた沢村はこの後、ソレをどうしたのかは純子の知るところではなかった。 だが、純子にとってソレどころでない問題がジワリジワリと生じていたようだった。 その問題に純子は俄かに身体の異変を感じていた。



【四話】 


 

 部屋の消灯が始まって一時間。 静まり返った室内に下着姿でベッドに横になる純子には快適な温度設定で保たれていた。 だが、そんな純子を身体の異変が襲ってもいた。 異常なまでの身体の火照りと敏感になり過ぎた乳首に生理前を想像していた純子だったが、陰部の奥に広がる感覚は生理のソレとは異なっていた。
 あんな映画を見せられたからだと心の中で寝返りするも、ブラカップに乳首が擦れるや否や恥かしい声をあげたくなるほどの強い快感(しげき)に思わず息を止めた。 下腹部がモヤモヤし全身の肌が過剰過ぎるほど敏感になって何気なくストッキングの上から触れた自分の指に腰を大きくビク付かせた。
 生理前で気が高ぶるにしても、まだまだ生理には二週間ほどの余裕があったことから、純子は何かの病気をも暗闇の中で疑った。 だが時間の経過と共に敏感過ぎるのは全身の肌だけに留まらず次第に体内(いんぶ)にも広がって行った。 下腹部はモヤモヤからジンジンに変わりそしてそれが次第に大きくなった。
 あんな映画を見せられしかもこんな嫌らしい下着を付けている所為だと思いつつ、一向に治まる気配のない全身の異変に純子は寝苦しくなってベッドの上に上半身を起こした。 だが、ベッドにストッキングに包まれた足が軽く擦れただけで純子は飛び跳ねそうなほどの激しい快感(しげき)に口元を押さえて困惑した。
 そして一度伝わった激しい快感(しげき)に再び身体を横にした純子はストッキングを吊っている紐が肌に滑った瞬間「くわぁっ!」と、仰向けで腰を仰け反らせた。 そして今、自分の身体に起きていることに純子は激しい衝撃を受けていた。

『そんな馬鹿な! 映画では確かに感じていたけどこんなはずは… もしかしたらストレス!? どうしようこんなんじゃ眠れない…』
 純子は心の中で自問自答をし自分を落ち着かせようとした。 だが心と身体は別物なのか。 純子は自分の身に起きていることを拒絶しつつも暗闇の中で黒いストッキングに包まれている自らの足を左手の指をゆっくりと滑らせた。 濃厚と言う言葉を通り越した得体の知れない激しい心地よさが体内を通って頭の天辺まで、髪の毛の先にまで伝わった。
『ぅぐぅ! ぅぁぁああああ……』
 声に出せない喘ぎ声を喉の奥に必死に溜め、そして堪えながら二度と三度とストッキングの上に指を滑らせた純子は東側のカメラに背中を向け、両足をくの字に曲げたその真ん中に右手を忍ばせた。 そしてスケスケのスキャンティーの上から既に勃起しているクリトリスに中指を滑らせた、その瞬間「くわぁっん!」と、有り得ない程の凄まじい刺激が純子の脳天をブチ抜いた。
 
 そして純子の脳裏には男に無理矢理恥辱される哀れな女の残像が蘇り自らをその女に重ね合わせ、あたかも男に弄られているかのような妄想の中に自分を置いた。 そして純子のスキャンティーは既にグッショリと恥かしい液体にその内側を塗れさせていた。 まさか、自分が口にした寿司の中に強烈な女用の媚薬が仕込まれていたなどとは思っていない純子だった。
 純子ははち切れそうな喘ぎ声を必死に能登背の奥に溜めて左手で口元を覆い隠して、右手でクリトリスをスキャンティーの上から回し続けたが、その様子を暗がりの中、西側に仕込んだカメラがズームして一部始終を赤外線で捉えていた。 暗闇の中なら見られることは無いと思いつつも東画のカメラを気にする純子はまさか正面から見られそして録画されているなどとは夢にも思っていなかった。
 そして口元を押さえつつ左肩からスリーインワンの肩紐を外した純子は左手をクリトリスに、そして右手で左乳房の乳首を指で摘んだ瞬間、純子はハンマーで頭を叩かれたような重圧な快感(しげき)に、全身を激しく痙攣させ放ちそうになったヨガリ声を唇を噛んで耐えた。 息遣いもエスカレートし女の業に点いた火は直ぐに炎と化して純子から理性を奪った。
  
 その様子は赤外線カメラによって克明に記録されつつ、別室にいる沢村は食い入るようにその様を見入っていた。 そして遂に耐えられないと悟った純子は暗闇の中を手探りでトイレへ移動すると、トイレの中の灯りを点けずにスキャンティーを膝まで下ろして便座に座り両足を開くと右指を恥かしい部分に滑らせた。 左手を右乳房に這わせながら指でコリコリに勃起した乳首を弄り息とヨガリ声を殺し静まり返った室内に「クチュクチュネチュネチュ」と、半濁音を充満させた。
 だがトイレに駆け込んだ純子の様子も切り替えられたカメラに依って克明に記録され続け、殺しているはずの虫の羽音程のヨガリ声すらも記録されていた。 純子は何も知らずに無心になって減少することのない性欲に手と指を動かし、そして恥辱を受ける映画の中の女に自分を重ねる妄想に浸った。 男になりたいはずの性同一性障害者は、女としての妄想の中に身を置いて自慰に荒い吐息を吐き出し続けた。 純子はこの時、完全な女になっていたことに気付いてはいない。

 翌朝の七時、スピーカーから流れた沢村の声に目を覚ました純子は、前夜の激しい水分の消費と睡眠不足に顔を浮腫ませていた。 消えることの無いコンコンと湧き上がり枯れることのない性欲に殆ど眠れず、また眠っていても知らぬ間にスキャンティーの上から指と言う具合に純子はフラフラになっていた。

「はぁーい♪ 今朝も元気に明るく笑顔で過そう♪ まずは下着と言いたいところだけどー まあ、昨日の夜に交換したばかりだからそれは夕方くらいにして、洗顔と歯磨きそして朝食と言う具合かな♪ あと、搬入口に着るモノを入れといたからねー♪」
 朝から御機嫌な沢村に挨拶をした純子は、先に搬入口へ行き取り出した白いブラウスと黒いタイトスカートを着衣した。 そして歯磨きと洗顔。 本当はシャワーでスッキリ恥かしい汚れを洗い流したい純子だった。

「今朝は珍しくハムエッグにトーストと言うシンプラな朝食だピョーン♪ 飲み物はコーヒーだポ♪ さてさて、今日はお化粧の勉強と言うことでー 映像を流すポ♪ 洋服箪笥の中の引き出しに必要なモノは全て揃ってるポ。 それを使って練習しよーう♪ お化粧は基礎知識から始まるポ♪ 今日は午前中はお化粧の学習と実技を、午後からは昨日放映した特別映画を見ようー♪ 但し! いつも言ってるけど女性としての言動、仕草、動きには十分に注意してポ♪ 罰を与えられないように気をつけるポ♪ 本日の教訓ーーー♪ 心の中でも自分を表す場合は、必ず私と呼ぶようにしよーう♪ 普段から心の中でも自分を私と言うことで突発的な事態にも自然にクリア出切るようになるポ♪」
 黒いタイトスカートに白いブラウスに着替えてカメラの前に立った純子に、スケジュールを発表する沢村は見事なまでの純子の容姿に声を弾ませた。
 だが、純子は前夜からの睡眠不足に頭の中を空洞化させ真っ直ぐに立つこと出来ずに若干フラフラしていたが、何故純子が睡眠不足なのか熟知している沢村は特に何も言わなかった。 だが黒いストッキングに包まれた純子の足を見た時、サンダルを履いていない純子に沢村は「純子ー♪ 裸足が好きならこれからずーっと裸足にさせるよ~♪」と、言った瞬間、純子は思わず「あっ! すまんっ!」と、女性らしからぬ言葉を吐き出し、咄嗟に自分が吐いた言葉に顔色を変え「申し訳ありません! 御主人様!」と、頭を深々と下げる純子を沢村は鼻で笑った。 

「朝食ターーーイム♪ 今朝はオイラもトーストを食べたかったのだ♪」
「御主人様。 頂きます♪」

 カメラの向うにいる沢村に行儀良くする純子は作り笑顔ながら暫くぶりのパンに喜んでいた。 モノを食べる時にはテーブル肘を付けないと言うルールと、食べる時は余所見をしないと言うルールも守られていた。 そしてテーブルの下の下半身も最初の頃と比べて格段に行儀の良くなったことに沢村は喜んでいた。 だらしなく伸ばされ貧乏揺すりしていた両足はスカートの中にピタリと納まり恐らく知らず知らずだろうか、若干内股気味になっていることにも沢村は喜んでいた。 そして後は化粧さえ上手くできるようになれば形だけは何とか整うと沢村は考えていた。
 外側から女をよみがえらせ内側から女であることの喜びを開花させることで、完璧な女に生まれ変わらせる調教は着実に進んでいた。 言葉、仕草、行動、容姿、そして女の性(サガ)と、五項目の達成と女の強さと弱さである心の部分を六項目に設定していた沢村だった。 粗暴な純子は今はネコを被っているだけかも知れないと思いつつも、今はやるべきことを着実に進めようと、テーブルの下。 スカートの中を覗く沢村だった。
 
「朝食タイム終了ーーー♪ ではここで久々にタバコを進呈しよう♪ 純子の吸い慣れた若葉を進呈する♪ 勿論! マッチもだポー♪ 食事の後のタバコは喫煙者しか解らない至福だポーー♪」
 まさかまさかの喫煙タイムに純子は思わず両手をピシャりと打って喜びを表すと、立ち上がってカメラに向かって両手を前に深々と頭を下げ、カメラの向うで女性らしい純子を見た沢村は思わず鼻の下を伸ばした。 これは早く持って行ってやらなければと、沢村はスキップして地下室の裏側へとやってきた。 
 純子は渋さが大人の男のイメージと勝手に思い込んで吸い続けた「わかば」を手に持つと、嬉しさに手を震わせてタバコに火を点けた。 

「ゲホゲホゲホ! ウゲエェ! ゲホゲホゲホ!」
 暫くぶりに吸ったヘビーな若葉に、純子は涙を流して大きく咳込み苦しそうにモガキつつも、そのヘビーさに笑顔を沸かせた。

「足組してもいいポ♪ 一服くらいは気楽でいいポ♪」
 沢村の言葉に咳込みを落ち落ち着かせた純子はペコリと頭を下げると、テーブルの下で足組しスラリと伸びた膝下に目を奪われた沢村だった。

「そうしていると完璧な美人OLだポ♪ 恐らく世の中の男はみんな純子にひざまずくポ♪ 綺麗だポ♪ 髪の毛は頬を覆うくらいがいいポ♪」
 作意なく純子を褒め称える沢村に純子は頬を紅く染めて照れ、恥かしげに俯いた。

 そして和やかな時間を継続しつつ予定通りの化粧の勉強へと進んだ。 モニターに映る化粧の基本と言う、恐らくは沢村が購入したであろうビデオが音声と共に室内に流れる中、純子は洋服箪笥の中にある全ての道具をテーブルの上に出してきて、まずは道具の名前を勉強し始めた。 その間、沢村からのアクションは何もなく延々と繰り返し映される映像を見つつ純子は学習ノートに道具の名前と用途を書き込んで行った。 さながら新商品の研修のような姿勢で純子は臨んでいたがだらしなかったテーブルの下は沢村が指摘せずとも内股にバランスは取れていた。
 この時の純子は何故か真剣な眼差しで映像に見入り真剣に筆記していた。 男への性転換を決めていた純子にとってどうでも良かった化粧だったが、強制的にとは言え女の姿になっている自分を見て、そして沢村に誉められたことで化粧してみたいと言う女心が芽生えた結果だった。 そして一生懸命に勉強する純子をカメラ越しに見る沢村はようやく道半ばに差し掛かっていると感じていた。 その勉強も二時間を終えた辺り映像は実地へと進んで行き、純子もまた用意された無数の化粧品の中から映像に従って道具を選び取った。

「今日の予定を変更するポ♪ 午後からの映画鑑賞は夕方に延期してこのまま昼食を挟ん継続するポ♪ オイラは昼までチョイと買出しに行くから休憩を交えながら勉強するポ♪ 映像から離れれば一時停止するようにしたポ♪」
 突然、流れた沢村の声に、純子は立ち上がって両手を前に深々と御辞儀し席に戻った。

 だが休憩しても良いと言われていた純子だったが、化粧への関心が高かった所為か純子は休憩をとらずに時間を忘れて実地に励んだ。 化粧を落とす勉強にも余念なく一心不乱という言葉通り純子は夢中で勉強に励んだ。 それは沢村に初めて見せる化粧した自分を誉めて欲しかったからだったかも知れない。 
 
 その頃、別荘から車で街に来ていた沢村は、純子の初化粧を楽しみに今夜の食材を数人前と、昼食を買い込んだ帰り道、衣料品店に立ち寄った。 地方の衣料品店は実用的なモノが多く遊び心的なモノはないだろうと入ったソコソコ大きな店は、売り場面積も流石は地方と言うほどに広くそしてガラガラだった。 そんな中で沢村の目を引いたのが、現品限りの大特価と言う大きなポスターだった。 衣装ケースに収められたモノを、アゴに左手を這わせ回りながら見ている沢村を複数の店員が恥かしそうに目を合わせぬようにチラチラと見ていた。 女王様の衣装と決まっている黒レザーのボンテージ。 ハイレグカットされた衣装を肩紐で吊るすタイプを想像の中で純子に着させる。 頭の中に入っている純子のスリーサイズと微細なまでの寸法情報を振り返った沢村は頷いた。

「すみません♪ この位の背丈の娘(こ)なんですが♪」
 近づいた四十過ぎの店員さんにケースの中を指差し、自分の前側に純子の頭の辺りを手の平で教えた沢村を、店員は「ホッ」と、安堵した表情で笑顔を見せた。
「すみません… バストサイズって… 解りますか…?」
 沢村を見上げるように店員は聞きづらそうに質問した。
「確かCカップなはずだな…」
 わざと自信なさそうに店員さんの目を見た沢村に、店員さんはボンテージの仕様を見てニッコリ笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ♪ 化粧箱においれしますね♪」
 笑顔で沢村を見上げる店員。
「まあ、イベントでも一応プレゼントだし… そうだね♪ お願いします♪」
 再びわざとイベントを強調し白い歯を見せてニッコリする沢村。

 沢村はいいモノが手に入ったと喜び大きな箱を車に積み込むと再び車を走らせ酒屋へ立ち寄った。 

「今夜は純子(アイツ)の初化粧祝いだな♪」
 純子の好きなビールの銘柄を買い込んだ沢村はそれも車に積み込むと鼻歌交じりで演歌を口ずさみ車を別荘へ向けた。

 沢村にとっていつもは面倒くさいだけの片道二時間の山道もこの日は楽しいドライブ気分だった。 だが別荘に到着した沢村の表情は一変した。 

「何てことだ… こりゃ! 一体どうしたってんだ……」
 カメラの映像を繋いだパソコンを立ち上げた沢村は、床にブチまけられた化粧道具と口紅で壁にラクガキされた意味不明な絵と、そしてベッドにうずくまっている純子がいた。

 沢村は大きな溜息して暫くの間、自分が戻っていることを隠した。 すると、突然、自分が遅れた時に知らせるビデオのタイマーが作動して純子の居る部屋に映像が流れた。

「はああ~い♪ 今、電車が混んでてオイラの到着時間が遅れているらしいポ♪ もう少し待ってて欲しいポ♪」
 自分でセットしたビデオに驚いた沢村だったが、敢えて止めることをせずそのままにした。

 すると、その映像の声を聞いた純子はガバッと状態を起こすと暫く正座していたが、クルッと辺りを見回したかと思うとベッドから降りて立ち上がった。 そして慌しく床に散らかった化粧品を拾い始め壁に書いたラクガキを消し始めた。 化粧の実地が上手く行かないことで癇癪(かんしゃく)を起こしたのであろう純子の顔は確かに笑えるモノだったが、冷静に清掃に専念していた。
 そして三十分が過ぎる頃、清掃をし終えた純子は台所でお湯を出して化粧品を顔から落とす作業に取り掛かった。 それを見ていた沢村は何事も無かったことにしようと純子の背中に心の中で呟いた。 そして純子が化粧を落とし終えて数分が経過した辺り、沢村はマイクのスイッチを入れて戻ったことを純子に伝えた。 



【五話】


「さあー♪ 今夜は純子のお化粧の勉強開始を祝してなんと! 純子の好物のその二と題してコレを晩御飯にしたぞ~♪ しかも! 今夜は純子の好きな銘柄のビールもあるピョーン♪ で、その前に♪ シャワーターーイム♪ 脱いだものは全て搬入口に入れるポ。 そしたら着替えをこっちから入れるポ♪ シャワー時間はいつもと同じ一時間だポ♪」
 夕方の六時。 スピーカーから流れる沢村の声はいつもと変わらずに弾んでいた。

 純子は両手を前に深く頭を下げると、箪笥の中からバスタオルを出し搬入口の前で白いブラウスと黒いスカートを脱ぎそれを搬入口に入れた。 そして前夜から着けていたガーター紐付きの黒いスリーインワン姿になると、少しだけ前屈みになって黒いストッキングからガーター紐を外し交互にストッキングを脱いで搬入口に投入した。 そしてスリーインワンを身体から剥がした純子は最後に残った黒いスキャンティーを脱ぐ直前、ためらうようにその両手の指をバラバラに動かした。
 前夜の暗闇での恥かしい行為と、日常生活で当然汚れに汚れているであろうスキャンティーを沢村に見られたくないと言う女ごろの表れであった。 純子は思い悩みためらった末に目を閉じて一気に下半身からスキャンティーを剥ぎ取ると、中の汚れを見ることなく搬入口に投入した。 そしてバスタオルで首下を覆い隠すとそのまま脱衣場のドアの向うに姿を消した。 その瞬間、壁の向こうでは沢村がゴソゴソと搬入口から純子のブラウスとスカートを拾い上げ、二十四時間肌に密着していたモノたちを拾い上げた。
 バスタオルを身体から剥がした純子はそのまま浴室へと移動し熱いシャワーに身を浸したが、搬入口で純子の使用済みの衣類を手にした沢村は咽返るような純子(おんな)の香りに無言でソレを上へと持ち帰った。 シャワーの熱い湯に打たれる純子は癇癪(かんしゃく)を起こした一件が沢村に知られていないことに安堵しつつも「今夜は何を着せられるのだろう…」と、憂鬱な気分にもなっていたが、打ち付ける熱い湯がしばしそれを忘れさせてくれた。 そして五十分後、純子はシャワーを終え搬入口の前で涼んでいた。

「搬入口に着替えを入れて置いたポ♪ あとで着替えてピョーン♪」
 スピーカーから流れた沢村の声に純子は椅子に腰掛けながら搬入口を開いて中を見た。

 それから三十分後。

「えっ… これって…」
 黒レザーの肩紐タイプのボンテージを見た純子は、その初めて見る形に固まった。

 レオタードのような形のボンテージは両肩紐からヘソ上辺りまでにV字に切れていて、丁度乳房をギリギリに覆い隠し背中は腰の辺りまでU字型にカットされていた。 そして中で肌を包むのは極薄のボディーファンデーションと言うボディーブリファーに似た一体型の下着だった。 純子は呼び名もわからないモノを前に「こんなものを着けるのか…」と、愕然とした。 そして黒いネットタイプのパンティーストッキングを包装紙から取り出した。

「女王様か……」
 十分に涼んだ身体にボディーファンデーションを着けた純子はその肌触りの良さに驚きつつも、黒いネット柄のパンティーストッキングで下半身を包むと、その上から着け方を考えながら黒いレザーボンテージを着衣した。 そして最後に残った赤いハイヒールを履いた瞬間、初めて履くヒールに全身を不安定にさせた。 

『アンッ! 窮屈……』
 陰部への圧迫を感じながら鏡に映った恥かしい姿の自分に頬を紅く染めた純子は、深呼吸で自分を落ち着かせカメラの前へと移動した。

「御主人様。 用意出来ました…」
 両手を前に背筋を伸ばした純子は頭を深く下げた。

 カメラの向うに居る沢村はその見事なまでに完成度の高い女王様スタイルに目を見開いてパソコンに喰い寄った。 

「似合うポ… こんなにステキな女性を見たのは生まれて初めてだポ… 綺麗だポ…」
 スピーカーから流れる感無量と言わんぱかりな沢村の声に、純子は嬉し恥かしと言う表情を見せ頬を紅く染めた。

「ヒール危険だから記を付けるポ♪ ちょっと円を描いて歩いてみるポ♪」
 沢村の言葉に純子は照れながら両手を後ろに組んでカメラの前で円を描いて歩き出した。 その様子に沢村は何度も深い溜息を付いて今すぐにでも傍に行って純子を抱きしめたいと思った。

「今夜はその姿で食事とビールを楽しんだら、寝る時はそのボンテージは脱いで寝るポ♪ そろそろ食事にするポ♪」
 カメラの前で歩いて見せた純子は沢村からの誉め言葉に照れながらも素直に嬉しかった。 
  
 純子はいつも通りに搬入口から食料とビールを取り出すとテーブルの上に置いた。すると沢村から声が掛かった。

「あ! 忘れてたポ♪ 美味しく頂くために今日から純子に小さいけど電子レンジをプレゼントするピョーン♪ 天井を開けてそこからロープで降ろすから危ないから離れてて欲しいポ♪ うなぎは熱くして食べたほうがいいポ♪」
 沢村の言葉に目を輝かせて部屋の隅っこに移動した純子に合わせて、天井に縦横一メートルほどのフタを開いた沢村は、電子レンジをロープで縛るとそのまま床へと降ろし始めた。

 純子は隅っこに居て揺れながら降りて来る電子レンジに笑みして見入っていた。 そして床に電子レンジが下りた瞬間、突然沢村が持っていたロープが落下して床を叩いた。

「ぅわあああー! これは参ったポ… 仕方無いからそのロープは純子に片付けてもらうポ。 コンセントには電気が入っているからセットして暖めるポ♪」
 慌てた声を出した沢村だったが、面倒臭いとばかりにロープの片付けを頼みつつ、転じ様のフタを閉じた。

 純子は床を打ちつけたロープをレンジから解くと丸い輪を作ってそれを部屋の隅っこに片付けた。 沢村はボンテージ姿に黒網ストッキングを履いた純子をパソコンモニターの中に目で追ったていた。

「台所のコンセントにも電気は着てるポ♪ 好きなところに置けばいいポ♪ 使い方は至って簡単だポ♪」
 沢村の声にカメラに向かって両手を前にして頭を下げた純子は、嬉しそうにレンジを両手で抱えると、台所の棚の上に置いてコンセントを差し込んだ。

 純子は電子レンジの中にうな重を一つ入れると加熱し始めた。

「温まるまでビールで初化粧練習を祝して乾杯するポ♪ 綺麗な純子を祝してかんぱーーーい♪」
 モニターの中に居る沢村の音頭にあわせて缶ビールの栓を開けた純子は嬉しそうに笑顔して缶ビールを持ち上げると、沢村が飲み始めるのを待ってから缶に口をつけた。

「美味しい…♪」
 いつもなら、うめえぇー♪と、言うはずの純子は缶ビールを両手で持ち上げて満面の笑みを浮かべ、沢村はそれを見て感無量に浸っていた。

 そしてレンジが加熱を知らせる音を出す、純子はカメラに向かって両手を前に一礼した。

「さあー♪ オイラの方も熱々になったポ♪ 食べよう食べよーう♪」
「御主人様。 頂きます」
 
 礼儀正しくなった純子を見る沢村は込上げる嬉しさを缶ビールで押し戻した。

「純子ー♪ お化粧は焦らなくてもいいからな♪ 時間はタップリあるから少しずつ慣れればいいポ♪」
 スピーカーから聞こえる沢村の言葉に純子は真っ直ぐに背筋を伸ばして一礼した。

 沢村は美味しそうに女性らしく食べる純子をみながら自らも同じものを口に運んだが、強いて違いを言えば純子のうな重には前日と同じ媚薬が入っていることくらいだった。
 美味しそうに行儀良く食べながら、缶ビールで喉を潤す純子は傍目には完全な女性だった。 そして最初の一人前をペロリと平らげた純子は二つ目を暖めて再び食べ始めた。
 前夜同様に何も知らずに純子は缶ビールを飲みながら無心になって好物のうな重に舌鼓を打った。 食事をさえぎる官能映画もない静かな中で純子は嬉しそうに食べ続けた。
 そして二人前を食べ終えて満腹状態になった純子は、いつもなら軽く六本は飲むはずのビールを二本で止めてカメラの向うにいる沢村を見詰めた。

「御主人様♪ ご馳走様でした♪」
「あれ? まだビール残ってるポ♪」
「ああ。 いえ。 今日はこのくらいで…」
「じゃあ折角だから映画でも見ながら飲めばいいポ♪ タバコ吸ってもいいポ♪」

 純子は目を大きく見開いて立ち上がって頭を下げ、タバコを持って来ると火を点けて大きく吸い込んだ。 そして瞼を閉じてゆっくりと吐き出し至福の一時に浸った。
 
「では♪ 今夜の特別映画の始まり始まりーー♪」
 満腹後のタバコに癒される純子の耳に弾ける沢村の声が入った。

 モニターに映し出された映像からは既に女の喘ぎともヨガリとも付かぬ重々しくそれでいて歯切れのいい音が放たれた。 十二畳ほどの広さの部屋に薄暗い灯りがボンヤリと二人の影が揺れ動くシーンから始まっていて、女の鳴き声が響くその部屋の中に紺色のブリーフを履いた男がその股間を硬く聳えさせていた。
 女は天井から吊るされるように両手を縛られ、抵抗したのだろうか髪の毛を振り乱していた。 そして黒いボディースーツを着衣している女の両肩に留まっていたであろう肩紐は何か鋭利な刃物で切断されたのだろうかユラリユラリとぶら下がり女の身体に合わせて揺れていた。 その光景に背中を向けて見入る男の小さく嫌らしい笑い声が辺りに漂った。
 縛られて天井から吊るされている女の胸元は男の前に晒されレースの綺麗な花柄は無惨にもその裏地を見せていた。 豊満な乳房がプルプルとその柔らかすぎる程に柔らかな肉肌を男の視野に納められ、そして視点が女の胸から下へと移動すると恥かしい部分を覆っていたボタン止めのクロッチが無惨にも開かれ中から引き出された白いスキャンティーは鋭利なモノで切断されていた。
 女は男の前に恥かしい部分を晒し更にその部分の真ん中を一本の荒縄が縦に通っていた。 女の恥かしい部分に食い込んで這わせられた荒縄は天井から女の目の前を通りそのまま後ろで再び天井へと伸びていた。 女は天井から伸びた荒縄を跨がされた状態で陰部に食い込む荒縄に自ら腰を振り擦りつけていた。 

「おらあぁ! もっと腰をふらねえか! そうだ! それでいい!」
 腰振りを休める女に激を飛ばすように男が声を荒げると、女は振り乱した長い髪を持ち上げて男を見て再び腰を降り始めた。

 クチュッ! クチャッ! ニチャッ!と、女から溢れた液体が荒縄に絡む音をマイクが拾いそれが映像の中に誇張された。 女は腰を前後に揺らし再び酒に酔い痴れるように虚ろな目を男に向け時折悔しそうに唇を噛んで見せたが、そんな男への態度に男は女へ近づくと女の背後に回り後ろから回した両手で女の乳房を下から支えるようにゆっくりと揉み回した。
 女は噛んでいた唇を離すと深呼吸をするように息を吸い込みそして背筋を伸ばした。 豊満な乳房は伸ばした背筋に引き寄せられるように見事に形を整えそして男の手に再び乱された。 男は左手で女の乳房を揉みまわしつつ右手で女の右腰を前へと押し出すと女は首を仰け反らせて「ぅあんっ! ああああんっ!」と、弱々しい鳴き声を男に聞かせた。
 柔らかすぎるほどに柔らかい女の肉肌はプルプルと揺れ、破られて両足の太ももで止まる黒い網タイツは女の柔らかな肉を「プリプリ」と、弾力として受け止めていた。 そして男の右手が再び女の右乳房に戻り二つの乳房を揉見回したその瞬間、男の両手の指は女の勃起した乳首に絡めて抓んだ。 

「くわん! あひぃ! あひいぃぃーー!!」
 女は全身をブルブルと揺らしそして首を仰け反らせて髪を振り乱した。 破れた黒い網タイツに包まれた両方の太ももを大きくプルプルと揺らし、豊満な乳房は男に掴まれたままプリプリと無造作に揺れ同時に薄いスキャンティーに覆われた尻はその切ない程に柔らかい肉質で空気を振るわせた。 
 そして悲鳴にも似たヨガリ声を上げる女の前に背後から前へと移動した男はそのまま床にひざまずくと、女から溢れ肉肌(ふともも)に伝わる液体に唇を寄せてザラ付いた舌で舐め取っで喉をゴクリと鳴らして飲み干すと再び肉肌に伝わって滑り落ちる液体を舐め取った。
 女は太ももに滑る男の舌に腰をそして首を仰け反らせて重苦しい吐息を幾度も吐き出し続けた。 女を縛りそして吊るす荒縄をキリキリと女のビク付く振動に金きり音をかもし出し女の吐息に重ねた。 そして男の舌先が荒縄の通る辺りに来ると女はガクガクと大きく腰を揺れ動かした。
 女を吊るす荒縄は激しく前後左右に大きく揺れ男は女の右足にしがみ付いて尚も舌を押し付け滑らせた。 そして男は女の恥かしい部分を這う荒縄に手を掛けると邪魔だとばかりにその荒縄を横にクイッとずらした。 女は強い刺激に悲鳴にも似たヨガリ声を部屋に響かせそして荒縄のズレた部分に押し付けられた舌先に女は声を失い喉に詰まらせ全身を痙攣させた。
 
 知らず知らずのうちにモニターに食い入る純子はテーブルの下で網ストッキングに包まれた足を組み始めた。 そして前夜同様にモジモジさせてカメラをズームさせる沢村を引き付けた。 テーブルの上に置いた両腕で脇をギュッと絞めて全身を力ませる純子の足の爪先がギュッと閉じると、カメラの向うに居る沢村も組んだ足をギュッと力んだ。 
 
「はぁはぁはぁはぁ…」
 男はフラフラ状態の女から恥かしい部分を這わせた荒縄を外すと、液体の絡みついて染込んだグッショリした荒縄を両手に持ち女の目の前で横に加えてシャブった。 突然荒縄を外された女はバランスを取れずにヨタヨタし全身を自らを吊るす荒縄に託した。 だがその荒縄も男の手によって緩められた女は両手を吊るされたまま馬乗りのように足を開いて尻を突き出した。
 両手を吊るされた女は首をダラリと下げ黒く長い髪をユラユラと揺らした。 男は女の背後に回り女の尻に張り付いた薄いスキャンティーをナイフで剥ぎ取ると、尻に密着していた部分に顔を埋め紅茶の香りを楽しむように笑みを浮かべた。 そして床にひざまずくと女の恥かしい部分を目の前に黒い網タイツを剥しつつ裏ももに背後から舌を滑らせた。 
 女は裏モモに滑る舌に下げていた首を持ち上げ肌から伝わる心地よさにウットリと虚ろな目を閉じた。 男の舌は裏モモから膝裏へと滑りながらそして時折、自らの唾液で溶かした女の肌の汚れをすすりしゃぶって飲み込んだ。 女はその官能(ここち)良さに無意識に両足をジリジリと更に広げ男の前に恥かしい部分を丸見えにさせた。
 男の舌は膝の裏を円を描いて舐め尽くし汚れを味わいそして飲み干すと自らの視線を上に向けた。 そして縦スジを目の前に男は満面の笑みを浮かべると鼻先を近づけその熟しきった臭気を放つ生肉の匂いを吸い込んだ。 両手をプリプリした尻に内側から滑らせるように這わせつつ両側に移動させ割れた尻を親指で左右に押し広げた。
 そして中に鼻先を押し付け綺麗な色をした肛門の表面の匂いを嗅ぐと雄ライオンのブレーメンを思い起こさせる満面の笑みを再び浮かべた。 仄かに香る甘みと苦味そして酸味に男は口を大きく広げ舌を根元まで惜しげも無く突き出してそして押し付けた。 女は持ち上げた首を左右に振って髪を振り乱し心地よくも激しい快感(しげき)に甲高い鳴き声を連発させた。
 プルプルと両方の太ももを揺らし重力に逆らわない二つの乳房はその重みを無造作に揺らし、男は女から伝わるバイブレーシェンに心地よさと充実感を得ていた。 チロチロと舌先を動かすほどに女は狂乱のごとく全身を激しく踊らせ両手を吊るす荒縄をギシギシと撓らせ耳障りな音を放たせた。 そして女の肛門(つぼ)を味わい尽くした男は女の膝ほどの寝台を探り寄せ女の両足の間に押し滑らせた。
 男はその寝台に仰向けになりながら背中を這いずらせると、目の前の熟した生肉の前で顔を止めた。 女の生肉からはネットリとした光沢のある液体が滑り落ち男の顔にその粘度を伝えた。 男は笑みをそして舌舐擦りをすると首を持ち上げ両手を女の腰に左右から添え、根元まで突き出したザラついた舌を女の中へと滑り込ませた。 女は両目を大きく見開きくびを仰け反らせて全身を硬直させ震えさせた。
 
「ハヒィハヒィハヒイイイィィーーー!!」
 甲高い声を裏がしたような鳴き声は部屋の隅々にまで広がりそして充満し周りの空気を振るわせた。 男の舌先は熟した女の内側に張り付いた汚れと光沢ある液体を否応無く舐め取りそのザラ付いた舌で女を刺激した。 女は吸い込んだ息を吐き出すことも忘れたように体内を駆け巡る凄まじい刺激に脳機能を停止した。

「バシッン!」
 男が左右に這わせた手で女の尻を平手打ちすると女は我に返って、忘れていた呼吸を取り戻した。 そして男の舌が滑る度に女の尻は男に平手打ちされプリプリとその柔らかさで空気を揺らした。

 純子はその様子にテーブルの下の組んだ足を組み替えて尚も、キリキリと両足の筋肉を硬直させた。 何かを挟むようにキリキリと両足の筋肉を強張らせた純子は自らの両腕で自らを抱いていた。 そしてその両腕は紛れも無くボンテージに覆われた自らの乳房を押し付けていたのを沢村はカメラで見ていた。
 映像は延々と流れそして終わりを告げて尚も純子はその場から離れられずに椅子に座ったまま真っ黒になった画面を見続けていた。 何処かがジンジンしていたようだ。

「今夜の特別映像はお仕舞いだポ♪」
 沢村の声に全身をビク付かせて気付いた純子は、その声にモニターの中の映像が終っていることに気付くと頬を紅く染めた。

「残りのビールは好きな時に飲んでいいポ♪ ボンテージは脱いで寝た方がいいポ♪ そんなもの着てたら肩こりになるポ♪」
 沢村はスピーカから落ち着いた口調で声を発すると、純子に後片付けをさせて就寝の準備をさせた。

 そして純子がボンテージを脱いでベッドに入るのを確認した沢村は室内の灯りを落とした。 極薄の下着でありボディースーツと同じ形をしているボディーファンデーションは、その伸縮性でピタリと身体にフィットしその上から下半身を黒いネット柄のパンティーストッキングが腰まで包んでいる。 そんな純子は前夜同様に身体を熱くし局部の奥をジンジンさせ胸の奥をモヤモヤさせていた。
 振り返れば映画を見ている辺りから既に身体の異変が始まっていたが純子は、それに気づかぬまま時間を経過させていたことに気付く。 身体が火照る。 眠れない。 仰向けから右を下に寝返りを打つと、乳房が右へと移動して乳首がボディーファンデーショの内側に擦れた。 激しい快感(しげき)が脳天をつんざき、全身を大きくピク付かせた。 胸の置くのモヤモヤ感が大きくなり乳首が痛い程に勃起した。
 身体が震えそれを押さえるように両腕を胸の下で組んで、くの字に曲げた両足を軽く擦り合わせた。 スリスリ感が腰から背骨を通り脳へ伝達された。 辛い。 苦しい。 我慢出来ない。 目を閉じれば映画の中の女の切なげな表情がよみがえり重々しい喘ぎ声が耳の内側に聞こえる。 ブリーフ姿の男の硬いモノが脳裏を覆い、ソレに頬寄せる自分がソコに居て「ハッ!」と、して瞼を開く。
 そして下半身をモジモジさせる自分に気付くも、どうしようもない切なさに腕組したまま身体を仰向けに戻した。 更に首を回して暗闇の中を見回す。 暗闇が自分を覆いつくして沢村から見えるはずはないと安堵するも「もしかしたら…」と、警戒して何度も辺りの様子を窺う。 乳房の下で組んだ両腕を少しだけ上へと移動させ、両方の中指で軽く乳首を擦った。 擦る力とは比にならないほどに凄まじい快感(しげき)が脳天を撃ちぬいた。
 思わずヨガリ声を発しそうになって両手で口を押さえて目だけをキョロキョロさせて様子を窺う。 息を潜めて辺りの様子を窺いながら再び腕組を装う。 そして両方の中指で痛いほどに勃起した乳首をスリスリと撫でるとビシビシと機敏な刺激が前頭葉(あたま)に快感をもたらした。 そしてもう我慢出来ないと、泣きそうな表情を暗闇に伝えた純子はそれでも「せめてこのくらいなら…」と、ボディーファンデーションの上から両手の中指を腹部中央と左右にかけて回し滑らせた。

「くわぁんっ!」
 首と腰を仰け反らせ身体が一瞬持ち上がった。 くすぐったいが心地よさに変わりそして快感(しげき)に変わるまでのコンマ数秒は純子に呼吸を止めさせた。

「気持ちいい…」
 自らの両手の全ての指を全身に張り付いたボディーファカデーションの上からくすぐるように回し滑らせる純子は、何かに獲り憑かれたように喘ぎ声を喉の奥に溜めながら動かし続けた。 下半身をモジモジさせ局部の奥をジンジンさせ胸の奥をムンムンさせひたすら指の動きに全身をクネクネさせ官能した。 そして余りに刺激的な官能は暗闇が全てを隠してくれていると言う思い込みへと発展した。 
 
 そして純子は大胆にも仰向けのまま両手で二つの乳房をファンデーションの上から揉み回し始めた。 瞼を閉じて映画の中の女が男にされたようにゆっくり乳房を回し深い吐息を暗闇に溶け込まさせた。 女の業が前面に押し出された純子は沢村が見ているのではと言う疑心を忘れ、ベッドの上で身悶えして尚も乳房を揉み回し映画の中の男と女に自分を重ねた。 乳房に這わせた指が二つの乳首に絡む。
 耐え切れない鳴き声が喉に溜り切れないまま僅かに開いた唇から放たれる。 ゆっくりとそして触れるように撫ぜた硬く勃起した乳首の頭は指にコリコリ感を伝える前に、その凄まじい快感(しげき)によって純子の指を遠ざけ、ベッドの上で身体を左右に転がらせ刺激のパワーを暗闇に放出した。 余りの電撃的な乳首からの刺激に純子は乳首を弄るのをやめ両足を膝起てし大胆にも大きく開いた。 
 そしてその柔らかい太ももの間に右手を滑らせた純子は、そのまま黒い網パンストに包まれたグッショリと濡れた恥かしい部分にクリトリスを見つけ触れると、薄い生地を内側から押し上げんばかりに勃起するのを感じた。 薄生地に染込んで広がったヌルヌルした液体にクチャッと音を放たせ硬くなったクリトリスを両足を硬直させながら弄った。 
 暗闇の中で息を殺して自慰にふける純子の時間は延々と続けられ何度ものエクスタシーに突入したものの、治まることを知らない女の業は遂に純子をベッドから床へと引き摺り下ろした。 暗闇の中で顔を強張らせる純子は電子レンジを降ろす時に使った荒縄を探していた。 足と息を忍ばせつつ荒縄を手にした純子はソレをベッドへと持って移動すると、仰向けになって両膝立てた太ももの間、恥かしい部分を覆うグッショリと濡れたクロッチ部分を横にズラした。
 そして自らの腰を後ろ側で縛るとそのまま荒縄を尻の間に通して恥かしい割れ目に間に這わせた。 内肉にチクチク感を感じつつもそのチクチク感に純子は思わず肛門をキュッと閉め、そしてその荒縄を両手に持って引張った。 その瞬間、純子は頭をハンマーで内側から殴れたような衝撃的な快感(しげき)に顔をしかめた。 割れ目に食い込んだ荒縄をひいては戻し戻しては引くを繰り返すと、純子は頭の中に映画の中のシーンを思い出し自分を映像の中の女に置き換えた。
 純子の恥かしい割れ目から染込んだ恥かしいヌルヌルした液体は下腹部全体に広まり、それに気付いた純子は仰向けの体位を左を下にカメラの前を向いてしまったが、官能の世界に浸りきった純子は映画の中の女のように自らの割れ目の内側を荒縄で刺激し続けた。 だが殺していると思い込んでいた息と鳴き声は無意識に放たれていることに純子は気付いてはいなかった。 それほど純子は凄まじい快感(しげき)の中に身を置いていた。 
 そんな純子の死ぬほど恥かしい映像と音声を超高感度カメラが記録し続けていたことは当然と言えば当然だろうか。 天井から真下を見るためのカメラに加え、部屋に仕掛けられた四十八個のカメラは純子の全てをデジタル信号として記録していた。 沢村のボンテージ作戦は見事に成功を成し遂げた。 衣料品店でボンテージを見つけた沢村が実際に欲しかったものはボンテージではなく、ボディーファンデーションだったが、それを純子に着ろと言えば勘ぐられる恐れがあった。
 ボンテージを着る前に必要な下着として提供することで純子に気付かれずにボディーファンデーションを着けさせることが出来たのである。 極薄生地のボディーファンデーションを触れば解る通り、肌に密着したその上からの触指の感覚は極上の愛撫と化し乳首に触れれば生肌の数十倍の威力を発揮することは一目瞭然だった。 しかも純子の好物のうな重を熱々の状態で食わせると言う理由で与えた電子レンジは荒縄を純子の部屋に落とす理由を作ってくれる。
 そして全てが計算された沢村の作意は放映された映画の内容こそが重大であった。 純子の内側を精力を高めるウナギと絶大なる媚薬を持って高め、同時に視聴覚から純子が自慰するための情報を詰め込んだ。 沢村の思惑通り純子は女の業を打ち消すことが出来ずに自らの両手に快感を求めそして荒縄に強い刺激を求めた。 純子は全てが仕組まれたことだと知らずに高感度カメラに撮られていることにも気付かずに延々と荒縄で死ぬほど恥かしい姿を沢村に見せ続けた。
 更に純子の使っている荒縄は沢村の手に依ってその全てを消毒され抗菌コートしてあったことを純子は何も知らないが、純子の自慰は深夜を経て早朝の四時頃まで続けられた。 そしてその二時間前、純子はベッドに立ち上がると手探りで頭の上を横に走る鉄格子に荒縄を結び横にずらし更に片方を鉄格子に潜らせた。 そして荒縄を持ってベッドから降りると映画の中と全く同じ状況を作り出した。 床に降り立った純子は股間のクロッチをズラシて荒縄を跨ぐと手に持った片方の荒縄を引いた。
 純子は長時間の自慰に肩で息をしていたがそれでも尚、割れ目に食い込んだ荒縄に自ら腰を振って絶妙且つ激しい快感(しげき)に映画の中の女同様に全身をフラフラさせた。 その光景は沢村に恐怖にも似た女の凄まじい業を教えた。 そして早朝の四時。 純子は半日以上にも上る激しい自慰に白目を向いて失神してその身を床に横たえて終焉させた。 カメラの向うで見ていた沢村は驚いて席を立ち上がったが純子の傍へ行かずに、別の仕事に取り掛かっていた。 そして朝の七時。

「おっはよーう♪ オイラの可愛い純子~♪ これを見る頃にはオイラは多分、純子の居る別荘に向かっているポ♪ 夜駆けで街まで用足しに行ってくるから戻るまでいい子にしてるポ♪」
 静まり返った部屋の中に突然流れた大音量の沢村の声にビックリして目を覚ました純子は、床に斜め座りして両腕で我が身を支て辺りを見回した。

 純子はその内容を聞きながら自分の姿と鉄格子にぶら下がった荒縄を見て思い出したようにその身を震撼させた。

『急がなきゃ! もおう私のバカアァー!』
 ボーっとする意識の中でフラフラになって立ち上がった純子はヨロヨロとヨロケながら、鉄格子にぶら下がった異様な臭気を放つ荒縄を取り除くと自らの姿を見て慌ててボディーファンデーションを脱ぎ台所に起って全裸のまま、ファンデーションをお湯でジャブジャブと揉み洗いした。
 そして俄かに割れ目の内肉にジリジリと言う痛みを感じて「擦り過ぎたぁ!」と、顔を顰めて尚も揉み洗いを優先した。 そして沢村が戻る前に乾きますようにと祈りながらハンガーを使って干すと、異様な臭気を放つ荒縄をもお湯でジャブジャブと洗い始めた。
 
『乾いてー! お願いだから早く乾いてー!』
 干した荒縄とファンデーションを前に全裸で祈る純子は取り敢えずはと、シャワーへと足を急がせた。 そして熱い湯に全身を打たせた瞬間「キャァ!」と、無意識に女の悲鳴を出してお湯から離れた。

『痛ったぁーい!』
 恥かしい部分にお湯が飛んだ瞬間、純子は擦り過ぎた割れ目の内肉にジリジリジリと言うさっきよりも強い痛みを感じた。 陰部を温い湯であらい温度になれた頃に少し熱くして身体を洗い始めた純子は自己嫌悪に陥っていた。

 そしてシャワーから首下をタオルで覆って出てきた純子は何気なく見たポット式の温風ストーブを見てひらめいた。

『あれなら乾くかも知れない…』
 ストーブを起動して追うぷうを出したその前側に干してあったファンデーションを置いて、干物でも焼くように何度も手探りで確かめながらひっくり返して水分を飛ばした。
 そしてその動作を三十分ほど繰り返すとファンデーションはサラサラに乾き、今度は荒縄をストーブの前側に置いた。 この分なら何とか乾くだろうと安堵した純子は特に指定の無い時に着る決まりを守り、和箪笥から下着と黒いパンストを出し洋服箪笥からスカートとブラウスを取り出して着衣した。
 黒いタイトスカートに白いブラウス。 そして足を黒いパンティーストッキングで包んだ純子はツイ忘れがちなサンダルを履いて、落ち着かない様子で室内をウロウロし、五分ごとにストーブの前の荒縄を解しては音譜に当てて乾かした。 そしてそれを見ている沢村はあと三十分くらいかとタバコに火を点けて待っていた。


【六話】



 純子が化粧の練習に入ってから相当の日数を経過し、純子の腕前は見る見る間に成長し今ではその日の服装に合わせた化粧が出来るほどになっていた。 そして純子の男らしさも最初の頃から比べれば格段にその成果を見せ、今では気の緩んだ一瞬でも自然に女性らしさが垣間見えるほどだった。
 そして何もなかったはずの純子の部屋は御褒美として与えたテレビや小型の冷蔵庫などの家電品が身の回りに市位置され、特別に与えた女性が読む恋愛小説の数も相当に増えていた。 純子を別荘に連れて来てから四週間弱、短髪だった髪の毛も耳タブが隠れるほどに成長し、より一層、女らしさが際立っていた。
 
「純子♪ 今日はいいものをやるポ♪ 買物しててオマケで貰った肩凝りのツボを刺激する防水のハンドマッサージ機だポ♪ 充電式だからあっても邪魔にならんだろうからやるポ♪」
 いつものように買出しに行ったついでに電気店で買って来たマッサージ機を、景品と称して純子に与えた沢村は純子が別の目的で使うこと想定していた。

「ありがとう♪ 御主人様♪」
 搬入口から受け取った純子は早速、肩に当てて使用感を実感しつつ嬉しそうにカメラに向かって頭を下げた。 前日から着ている白い上下のスーツスカートに黒いネットストッキングと白いヒールを履いた純子は服に似合う化粧を施していた。
 
 先っぽの丸い防水仕様のマッサージ機は一件するとロケットのような形状だったが、太さと長さから行けば男の品物そのままだったが、純子の目は澄んでいてそれを夜の営みに使うなどと言う風にはまるで見えなかった。
 そしてこの頃になると純子は朝起きたら直ぐに服を着て洗顔の後に化粧を施していて、沢村に素顔を見せる機会が減っていた。 

「あと、何冊か本も買って来たから入れて置くポ♪ 純子はもう立派なレディーだポ♪ この別荘を卒業する日も近いポ♪」
 日に日に美しくなる純子に沢村は弾む心を抑えつつ卒業の予告をした。 すると純子の表情が一変した。

 笑顔だった純子はその表情を見る見る曇らせ、ゆっくりとカメラの前で俯くと再びカメラに背筋を伸ばして視線を返した。

「私… ずっとここに居たい… 御主人様とここで暮らしたい… 駄目ですか? 私! 一生ここで御主人様と暮らしたい!」
 切羽詰まった表情を見せた純子は両手を胸の辺りでクロスさせキリキリと力んだ。

 沢村は絶句した。

「私。 何処へも行きたくない! ずっと御主人様の傍に居たい! お願いです! 私… 卒業なんて… 嫌ー!」
 思い余った勢いを表情に出して目を潤ませる純子。

 沢村は純子の言葉に胸を詰まらせ、このまま純子の傍へ行き抱き締めたい衝動に駆られた。

「私… ここへ来て。 初めて心と身体が合致したんです! ここは私の家… ふるさと… 私。 御主人様に飼われて居たいんです! だから! 卒業なんて言わないで!」
 思い詰めるた表情。

「解ったポ… 卒業は少し引き伸ばすポ。 ところで純子に質問するポ。 お前はまだ処女か? 正直に言わないといけないポ!」
 突然の沢村からの質問に純子は困惑したが、一瞬俯いてからカメラに視線を合わせた。

「はい… 御主人様。 私は処女です…」
 純子の頬は幾分紅く染まり恥かしいさが顔に出ていた。

「純子はここに来て生まれ変わってから自慰はしたのかな?」
 淡々と言葉に変化を付けずに質問する沢村。

「あ…… それは……」
 顔を真っ赤にして俯く純子。

「どうしたっポ? 正直に言わないといけないポ!」
 少し口調を強めにした沢村。

「いえ! ここではしていません! して… ません……」
 真っ赤な顔をカメラに見せて首左右に振った純子は直ぐに俯いて肩を窄めた。

「そうか、解ったポ♪ それでは今日の着替えを搬入口に入れるポ♪ シャワーのあと着替えるポ♪」
 純子の返答に間を空けて話した沢村。

「はい。 ありがとうございます」
 カメラの前で両手を前にして頭を下げた純子は嘘をついたことに表情を曇らせた。

 純子は恥かしさから沢村に嘘をついたことを後悔しつつ、シャワーへと移動し脱衣場で真実を沢村に話すべきかどうかを悩んでいたが、頭からシャワーに打たれても尚、オナニしているなんて絶対に言えないとクチビルを軽く噛んだ。
 そしていつものようにシャワーを終えた純子はバスタオルで首下を隠して出てくると、搬入口を開いた。

「何かしら…?」
 着替えの入った袋を取り出したその下に見えた別の袋を手に取った純子は中を確かめた。

 ナプキンとサニタリーショーツが入っていて、それは純子が普段から使っているモノだった。 純子は自分の生理が近づいていることを忘れていた事に気付いた。

『ありがとう… 御主人様…』
 純子は生理用品をギュッと抱き締め心の中で感謝した。

 そして、着替えの袋を見ると中にはビキニタイプのパンティーとスポーツブラジャー、そしてデニムのショートパンツにカップ無しのタンクトップが入っていた。 そして袋の一番下にライトブラウンのパンティーストッキングと、ジョギングシューズがが包装されたまま入っていた。
 
『スポーツブラなんてどうするんだろう?』
 純子は心の中で思いながら首を傾げつつ着衣し終えると生理用品をトイレの棚の上に片付けた。 そして冷蔵庫から取り出した麦茶を飲み干しつつ、天井でゴトゴトする物音に視線を向けた。

「純子~♪ これからルームランナーを天井から降ろすポ♪ 危ないから隅っこに移動するかトイレか風呂場に移動するポ♪」
 沢村の言葉に従った純子はトイレの中に身を隠した。 すると天井のフタが開く音がしてキィーコキィーコと金きり音に両耳を塞いだ。

「もういいポ♪ 滑車の油が切れていたポ。 ルームランナーにはキャスターが付いてるから女性でも動かせるポ♪」
 沢村は純子にルームランナーを東側の隅っこに移動させるとコンセントに差し込ませテストさせた。

「どうかな? ちゃんと動いているかな?」
「はい♪ 御主人様~♪ 軽快です♪」
「そかそかそれは良かったポ♪ しばらく遊んでいるといいポ♪」

 純子はルームランナーの上に乗ると五段階のスピード調節をしながらジョギングに夢中になりつつ、今朝の下着にスポーツブラが入っていることの意味を理解した。
 ルームランナーの上で走るショートパンツ姿の純子を様々な角度からカメラチェックする沢村は、ストッキングに包まれて柔らかさを弾力に変える太ももの揺れと、無造作に揺れ動くCカップの胸に心をワクワクさせた。
 そんなこととは知らない純子は久々に走る楽しさと嬉しさに全身に汗を滲ませ、ルームランナーに備えられている距離と消費カロリーに視線をチラチラと重ねていた。 そしてショートパンツの裾が交互に捲れパンストの切り替え部分がカメラな映った。
 男暮らしだった純子にとってカロリーや体重などは殆ど無縁だったが、別荘へ来てからの純子は普通の女性のように身体のラインを気にし、そして体重やカロリーにをも気にするようになっていた。
 純子はジョギングに本来必要のない下半身を包むパンティーストッキングの所為で、次第にその汗の量を増やして行った。 そして走行距離が四キロに達した辺り純子のブラやパンティーは心地よい汗でグッショリと濡れ始めてきていた。
 沢村はそんな健康的な純子を眺め自らも一緒に走っているような気になって椅子に座りりながら両足を交互に動かしていた。 その純子の額に汗が滲み呼吸乱れるそのの表情に沢村は何かを感じていた。
 
「休憩いれないと駄目ポ♪」
 沢村の気遣いに走りながら笑顔する純子は頭をペコリと下げ尚も走り続けた。 そして六キロに達した辺りで走行ボタンをオフにした純子はカケラの前で一礼すると冷蔵庫へ麦茶を飲みに移動した。

 麦茶で喉を潤す純子は全体に汗をかき、下半身を包むパンティーストッキングも太もも辺りから汗を滲み立たせるほどの汗の量だった。 

「もう少し走ってもいいですか♪」
 沢村の了承の元、ルームランナーに乗った純子は再び折り返すように六キロを目指した。 純子の着ていたタンクトップも履いていたデニムのショーパンも吸い込んだ汗で色が変わった。
 そして暫くして純子の目指す往復十二キロは達成された。 元々走るのは得意だった純子にとって十二キロは丁度いい距離だったが、カメラの向うで見ている沢村は見ているだけで疲れたようだった。
 
「着替えは自由にしていいポ♪ 洗濯物を搬入口に入れてシャワーするポ♪」
 沢村の言葉に満足感に浸りつつ笑みする純子は金乳口へと移動し、汗で張り付いたタンクトップを脱ぎづらそうに脱ぐと、グッショリ濡れて重くなったショーパンそしてパンストとパンティーを身体から剥ぎ取った。

『良かった♪ 汚れてないや♪』
 パンティーの内側を見てホッと胸を撫で下ろす純子は、汗だくの衣類を搬入口に入れ、タオルで身体を隠して風呂場へと移動した。 

 純子がシャワーをしている間。 上から下へと降り立った沢村は、搬入口の裏側で汗でグッショリ重い純子の衣類に口元に笑みを浮かべてそれを上に持ち帰った。 そして部屋の中の会議用机の上にタンクトップ、ショートパンツ、ブラジャー、パンスト、パンティーの順に並べた。
 沢村がパソコン類を置いている部屋で純子の脱衣した衣類を前に、何をしているのか純子は知る由もなく心地よいく汗を流していた。 この頃の純子は女として自分の汚れにかなり敏感になっていてパンティーの内側にも注意を払っていた。
 四十分後、シャワーから出た純子は首下をタオルで包むと椅子に座って麦茶を飲みそしてタバコを吸っていた。 純子は久々のジョギングで身体の中に溜っていた老廃物が出て行ったのを感じていた。 そして二十分ほどして立ち上がった純子は用意しておいたパンティーに足を通した。
 そして女性の身だしなみとして別荘では決まりごとなっていたパンティーストッキングで下半身を包むと、小さめカップのブラを着けると白地に水玉模様の半袖ワンピースで身体を包み腰紐でウエストをキュッと絞った。 髪型を整え化粧をした純子は以前のような不精男とは到底思えない容姿だった。
 
「自由時間にするポ♪ カメラのスイッチは切ったポ♪」
 沢村の言葉通りカメラの赤いランプが消えモニターには何処かの国のレディー達が男たちの視線を感じつつ様々なシチュエーションで様様゛に景色をバックに歩き回る映像が無音のまま放映されは始めた。 純子は沢村から差し入れられた読みかけのレディス用の恋愛小説を手にベッドに腰を下ろしてそれを開いた。

 静かな乙女の時間が流れ、小説を読みふける純子はそのストーリート描写に不安げな表情を時折見せ、そして安堵の表情を見せる。 留まっているはずのカメラの向こう側の沢村はそんな純子に安堵する。

「煩せえってんだろ! 俺はもう会社なんか辞める! あんなところに居られるかあぁー! てめえぇもいつまでも先輩顔すんじゃねえぞお!!」
 ボサボサ頭でヨレヨレのスーツを着た純子は、医療施設へのルートセールスの帰りそのまま帰宅で焼き鳥屋へと沢村と立ち寄った。 
「大体あの課長も頭腐ってんじゃねえかああー!? いくら売って来いったって施設が要らないってったら売りようがねえだろおう! そう思わねえかぁー??」
 小上がりで飲みすぎた感もある純子は辺りに声を響かせネクタイを外しつつ周りに謝って頭を下げる沢村に声を荒げた。 周囲から見れば何処にでもある上役への愚痴だったが、見境無く誰彼構わずに威嚇する純子をあやす沢村に周囲は同情した。
「プオォッ! くっ! 臭せえぇーー!!」
 自分で屁を垂れてその臭さににも怒り露にウチワで扇ぎまくる、女性版の性同一性障害者である柿崎純子。
「ああ! す、すいません! 今の俺がしちゃって♪ ど、どうもすいません♪」
 明らかに柿崎がぶっ放した放屁を自分だと言い庇う沢村は周囲にヘコヘコと頭を下げ作り笑顔を絶やさなかった。 そして純子の酒癖の悪さは偶々入って来た地回りのヤクザの足を止めた。

 鋭い喧嘩慣れした眼差しの四十代の男を守るように入店した数人の男達は大声で愚痴る純子を凝視し、純子はその眼差しに怯むことなく睨みを利かしたが相手にされずフラフラと立ち上がって男の一人に立ち向かって行った。

「あああああー!!!」
 周囲の客たちはその光景に口を半開きにして震撼して一斉に声を大きくはなった。

「ズッデェーーーン!」
 男はヒョイと身体を交して純子は店内の床にそのまま落下。 男達は二階へと行ってしまったが、沢村は鼻血を出した純子の鼻にティシユーで栓をして尚も、謝罪のために二階へ上がったヤクザ達を追いかけた。 周囲はその光景に沢村を案じたが、数分後、沢村は作り笑顔で周囲にヘコヘコと頭を下げて純子の下へ近づいた。 その瞬間、一人の女性が純子に近づいた。

「バッシイィーーン!」
 純子は畳の上に弾き飛ばされた。

「アンタねえ!! 男の癖にグダグダ愚痴ってみっとも無いったらありゃーしない! アンタの所為でこの人は今、命がけであの人たちに謝罪してきたのよお! アンタ、それでも男なのお!? 誰だって辛いことや苦しいことやってて、みんなアンタと同じなのよ!! アンタなんか男じゃないわ!! 格好悪い!!」
 突然、純子の頬を力任せに平手打ちした女性は目を吊り上げさせ周囲の言いたいことを全て言うと、沢村にペコリと頭を下げて引き上げた。

「何お! 女の癖に男に意見するたぁいい度胸じゃねえかあ!!」
 再びヨタヨタと立ち上がった純子は拳を握り締めて女性の下へ近づくと握った拳を振り上げた。

「ドスンッ!!」
「ああ、すいません! すいません!!」
 沢村は純子の腹を軽く一発パンチすると純子は一瞬にしてダウンし気を失った。 極真空手五段の沢村の目にも留まらぬ一撃だった。 そして周囲にヘコヘコと頭を下げて勘定して店を出る沢村は店の前で純子を肩に担いだ。

 今でも思い出される純子の危険極まりない男の真似が、何れとんでもないことになるのではと不安に思っていた頃を沢村は振り返る。 それが今では誰がどう見ても愛らしいそして美しい乙女に変化したことに沢村は肩の荷が下りた気がしていた。
 純子はベッドに斜め座りして左を下にして小説に読みふけっている。 そんな純子には以前のような険しさは何処にもなかった。 沢村は純子を残しトレーニングパンツを買いにその場を離れた。 


【七話】


 夕方になっても沢村から何も言ってこないことを不思議に思っていた純子は、小説を手にルームランナーの傍へ近づき乳房の張りと乳首の異常な感じやすさに生理が近いことを知る。 歩く度に乳房が揺れブラの内側に乳首が擦れ時折腰をビク付かせた。
 以前ならこの身体にモドカシサを感じていた純子だったが、今はこの敏感さも女性として生まれたことへの喜びの一つだった。 女性故の女性にしか解らない生理と言う面倒臭さに女性であることを幸福に思う純子だった。
 
「戻ったポ♪ 純子の走りっぷりを見ててこれを純子に買って来たポ♪」
 ルームランナーの傍に居た純子にモニーターを通じてトレーニングパンツを見せた沢村に純子の目は喜びに満ちた。

「純子の走りっぷりを見ててオイラも嬉しくて黙って買いに行って来たポ。 帰りに牛肉と野菜を買って来たから、純子に焼いて貰ってサラダも作ってもらうポ♪」
 突然の沢村からの申し出に純子は動揺した。

「でも私… 卵焼きも……」
 カメラの前で困惑した表情を見せる純子。

「今日から少し料理の練習をするポ♪ オイラも純子の手料理を食べたいポ♪ 明日からビデオで勉強するポ。 取り敢えず今夜はステーキの焼き方のビデオと本で勉強するピョーン♪」
 困惑し動揺する純子を元気付けた沢村は下へ降りて来ると、搬入口から食材と本をとトレーニングパンツ入れて再び上へ戻った。

 純子は搬入口から食材と本をトレパンを取り出しカメラに向かって感謝の意をあらわすと、台所のガスコンロの前に起って本を読み始めた。 落ち着いていさえすれば解読力に優れている純子は本を熟読しつつ手真似してアクションを繰り返した。
 そんな純子をカメラで見入る沢村はカレンダーに「料理」と、言う項目を書き込んだ。 そしてそれから三十分後。 純子は緊張した面持ちでガス台の前に立つと「御主人様! 焼き加減は如何致しましょう?」と、沢村に聞いてきた。

「オイラはウエルダムで焼いて欲しいポ♪ 換気扇を使うポ」
 失敗しても純子を誉めてやれるように選んだ沢村に純子は真剣な眼差しを送った。

「では、私はミディアムで!」
 純子の意気込みは声に率直に現れた。 

 そして卵焼きも満足に出来ない純子とステーキの戦いが始まり、沢村はカメラを純子の手元にズームしてそれを見守りつつ、純子が今夜もストレスの自慰(はっさん)が出来るようにと思案して、ベッドの枕元に置いてある充電式のハンドマッサージ機を別のカメラでズームした。
 生理直前の女のメカニズムを知り尽くしている沢村は媚薬の量を加減し、更に純子の妄想(オカズ)に使うべくビデオを選び始めてもいた。 そんな中で純子の部屋の台所から勢いの良い火加減と肉の焼ける音が沢村に伝わった。
 
『そうか… 純子は処女だったなぁ… 傷付けはしないと思うがこっちの方がいいかも知れない…』
 沢村は純子からハンドマッサージ機を理由をつけて借り受けようと考えつつ、心の中で別の電気マッサージ機の箱を見入っていた。 

『処女なら電マの方が使いやすいし乳房(うえ)にも陰部(した)にも使えるしな~』
 電マの入った箱を手に持った沢村は心の中で、決めたとばかりな表情を見せるとステーキに挑戦している純子を見つつ箱を準備した。

 その時、純子は。

『焦らないで! 焦ったらお仕舞いよ! 純子! 大丈夫。 本の通りやれば絶対に上手く行くはずよ!』
 心の中で自分を落ち着かせるのに必死になっている純子。

『あんっ! 駄目! 駄目よ! まだよ! もう少し… あんっ! もう我慢出来ない!』
 引っくり返すこに集中している純子は微動だにしせず息を飲んだ。

 そして沢村は。

『この分ならいい感じに焼けるな♪ いいぞ♪ 純子がんばれ!』
 心の中で純子を応援する沢村もまた純子を真剣に見入っていた。

 
 一時間後。


「上手いポ~♪ 美味しいピョーン♪ サラダもちゃんと切れてるポ~♪ 純子はお料理も上手なレディーだピョーン♪」
 カメラの前にテーブルを移動させ座る純子を見ながら、二階では沢村が純子をベタ褒めしワインを喉に流し込んだ。

「御主人様のお陰です… 私… 嬉しくて…」
 涙ぐみつつカメラを見入る純子は・・・・・・・

「ああ、そうそう。 運動好きな純子にコレを買って来たポ♪ これがあれば肩凝りも解消するポ♪ 朝方渡したハンドをオイラにも貸して欲しいポ♪」
 モニターに映った箱に入った電気マッサージ機を見た純子は立ち上がって一礼すると笑顔を見せた。

「私のために… 御主人様。 ありがとうございます…」
 席の前で一瞬俯いて見せた純子は再び顔を上げて笑みを見せた。

「それと、今日からオイラのことは御主人様ではなく旦那様と呼ぶポ。 その方が感じがいいポ♪」
 沢村は照れていたが、その照れを口調に出さずに物腰を柔らかく伝えた。

「はい旦那様♪」
 恥かしそうに頬を薄っすらと紅く染めた純子。

 そして他愛ない雑談…

「純子は誰のモノだポ?」
「私は旦那様のモノでございます…」
「ではオイラは純子を味見してもいいポ?」
「はい… 私も旦那様に食べて欲しいです…」
「ポポポポポポポポポーーーーーーー!!」

 純子は顔を真っ赤にして恥じらい、沢村は二階で頭から湯気を噴出した。

「パン足りてるポ? 少しは食べないとバランス取れないポ♪」
 媚薬の染込んだパンを純子に勧める沢村はこの後に見せるビデオ放映の準備をモニターに映らないように進めた。 そして純子は何も知らずに勧められるままにパンをステーキと一緒に食べそしてワインで流し込んだ。

「ここに入れて置くポ♪」 
 沢村は電気マッサージ機を純子の居る部屋の搬入口に箱ごと入れると、ハンドタイプのマッサージ機を搬入口で受け取った。 自慰で処女膜を損傷するケースは少なくないと知っている沢村はホッと安堵の表情を浮かべた。
 
「特別放送を開始するポ♪」
 沢村の声と同時にモニターに映し出された映像に純子は目を丸くして唖然とした。

 ベッドの上に右頬と開いた両足の三点だけでうつ伏せになる女。 髪を白いシーツの上に乱れバラケさせその両腕を後手に縄で縛られている。 その甲高い裏返ったような女のうめき声がモニター以外の灯りを落とした部屋に響き渡った。 カメラの視点は女の乱れた髪から背中をゆっくりと通り縛られた両腕を映しそしてプルプルと揺れる丸みを帯びた女の尻で止まった。
 雪のように白い透けるような女の肌に落とされた真っ赤な蝋の形跡。 百目蝋燭の炎が怪しく揺らめき煌々とその火力をモニターの中の薄暗い室内を照らし出した。 ポタリ… 落ちる度に女はその白い尻肉をプルプルと大きく揺らし粘着テープで塞がれた口の奥に悲痛な、うめき声を奏でる。 そして女の尻の揺れを大きく見開いた目を輝かせて釘付けする狂気にも似た男の顔に嫌らしい笑みが浮かぶ。
 女の尻に溶け落ちそして固まった蝋を照らす真っ赤な百目蝋燭を手に持つ男はその手を高く上げると再び「ポタリ…」と、女の白い尻に溶けた蝋を流れさせそして貼りつかせた。 声にならない粘着テープの下、喉の奥に虫の羽音ほどの鈍い声が溜ると一斉にその呻き声を暗闇に充満させた。 雪のように白い女の肌肉はその熱さに堪えかねて激しい揺れで空気を震わせる。 男の狂気に満ちた笑み。
 そして女の尻に溶けた蝋が落とされる中でカメラの視点は女の尻から左足へと移動する。 荒縄で三箇所を強く絞られて縛られる柔らかい女の太ももから痛々しさと伝わって来る。 絞られ縛られた太ももの弾力を確かめるように男の左手が嫌らしく這わせられた。 そして時折チラリと見える血管の浮き出た男の逞しい象徴が撓り。 女の歓喜か悲しみか解らぬ喉の奥から発せられる甲高い唸り声。 時折、鞭のように尻に飛ぶ男の平手。
 繰り返し落とされる溶けた真っ赤な蝋に女は額に汗を浮き立たせ「もう嫌だあぁー!」と、ばかりに首を左右に振って涙ぐむ。 それを見て男は逞しい象徴の先から百目蝋燭の炎を消す勢い程の透明な液体を溢れさせ、白い雪のような女の肉肌に擦りつけた。 男は後手に縛った女の身体を背後から持ち上げると、女は絞られた太ももが更に縄によって絞られ呻き声を上げ、百目蝋燭の炎の前でその豊満な乳房を下から支えるように揉み回した。 やがて女の乳首は恥かしいほどに勃起して男の指にコリコリと言う弾力を伝えた。
 力無げにグッタリして左右に揺れる女の首と同時に乱れた髪が乳房を揉みまわす男の手に揺れる。 男は正座に近い女の体位を膝起てさせ絞られる太ももの痛みを和らげつつ、女にしかない柔らかさに抱きついて尚も乳房を自由にした。 女の身体からは甘美な湯気が立ち上がり男の鼻を通って脳に快楽の元を分泌させる。 男は女の匂いに目を虚ろにしゆっくりと女を仰向けに寝かせると、両足を抱えて女の恥かしい部分に鼻先を近づけザラ付いた舌先をその割れ目に押し付けた。 甘臭く塩気の聞いた酸味を伴うその臭気と味に男は蜜を貪る蜜蜂のように舌を躍らせた。
 縄に縛られ身動きの取れない女は狂おしいほどの男の舌の動きに両足の爪先を閉じたままにし、大きくビク付く女の腰とそれに伴って無造作に揺れる豊満な乳房に乱れる髪の毛が纏わりついた。 そして全身から立ち上がる甘美な女の匂いに男は酔い痴れ陰部の刺激臭すら男には快楽のための増徴剤になていた。 筋肉質なガッシリとした男の骨っぽい手と指先の動きは時折女の柔肌に食い込み、僅かしかない筋肉を刺激する。 そんな情景を見せられる純子はテーブルの下で組んだ足で何かを挟むように筋肉を硬直させ、ナイフとフォークを持つ手をピタリと止めていた。
 そしてカメラの視点が女を映し出すと、純子の視線は女の微妙な閉じた瞼や唇の動きの変化と息遣いに集中した。 そしてモニターの右側に映し出された小さな枠に映し出された女の内肌を舐める男の舌先の動きを交互に見回す。 ジュルジュルと女の液体と汚れをすすり舐め取り飲み込む男の口の音。 そして純子の熱い視線の前で突然男がその体位を変え女の顔を跨いだ。 女の顔は男の影にその表情を潜め、透明な液体を溢れさせる硬く撓ったモノの先が女の唇をクニュクニュと押し付け液体を擦り付ける。 女は唇をピタリと閉じて苦しそうに顔を左右に振ったが男はそれを許さなかった。
 男は女の口元を見ながら少しだけ開いた口の中にその硬くしなったモノを押し付け銜えさせると、女の身体に自らを重ね縄で絞るように縛られた白い太ももに両腕を巻きつけけ舌を限界まで露出させ押し付けた。 女は口の中にむりやり受け入れさせられた硬いモノに躊躇(ちゅうちょ)しつつ、硬いモノから舌を逃がし男はその舌を追って口の中を彷徨う。 自ら意思に反して挿入された硬いモノから口の中にヌルリとした液体が絡みそれを吐き出そうとして顔を振ると、女の鼻の上に男のムニュムニュした肉皮がペタリと張り付き女の呼吸を止めた。
 呼吸を止められた女はその苦しさと口の中に入れられた生臭いモノと、ヌルヌルした液体に涙を滲ませ首を左右に激しく振って呼吸を確保したが、舌と生臭いモノが密着した瞬間、女は大粒の涙を溢れさせ舌に押し付けられる生臭いモノに咽て咳込んだ瞬間、生臭いモノから溢れたヌルヌルした液体を飲み込んだ。 涙を流しながらも硬いモノから逃げられない女は吐き出そうとしたヌルヌルが鼻の奥に入り込み再び呼吸を止められると、口を半開きにして呼吸を始めたが、男の硬いモノは女の舌を探して再びさまよい始めた。 そんな女にお構いなしとばかりに男は女の両腕のした辺りに膝起ちすると、女を後転姿勢にした。
 縄で絞るように縛った女の弾力ある白い太ももを開くように押し付けた男は、女の口に差し込んだ硬いモノを出し入れするかのごとく腰を上下に動かし女の柔らかい口の中に擦り付けた。 男のムニュムニュした肉皮が女の鼻をペタペタとくっ付いては離れたり妙な音を放った。 そして男は再び口を開いて自らの舌を限界まで露出させると、再び女の恥かしい内肉にその舌を押し付けて数分後、舌先に絡めた女の液体を肛門の表面に塗り付け舌先を回した。 その瞬間、女は両目を大きく見開いて全身を大きく揺さぶり爪先をギュッと閉じて身体を硬直させた。 女は男の硬いモノから舌を逃がすことを止め男はその舌に硬いモノを幾度も押し付けた。
 そして男の腰の動きが早くなり女の口は吐き出せない自らの唾液で蜜ツボのようになりニッチャクッチャと小気味悪い半濁音を放と、顔を少し傾けるとその生臭い唾液が溢れて頬を伝わった。 男は容赦なく腰を上下させその動きを小刻みに女の口はその振動に頬の肉を揺らした。 気持ちいい。 でも苦しい。 女は快感と辛さの板ばさみの中に居て、尚も止まらぬ男の腰の動きに叫びたさで胸が張り裂けそうになった。 そしてその瞬間、突然女の口の中に何かが勢い良く放たれた。 強い苦味のあるドロドロした熱い液体に女はその恐怖に首を左右に振って吐き出そうとモガイタ。 そしてそのドロドロした液体が咽る口の奥で鼻に入ると、女し大粒の涙をボロボロ流した。 鼻から外に出たドゥルドゥルした液体は女の首を通じてその小気味悪い官職を肌に伝えた。
 男は咽て咳込む女の口から少し柔らかくなったモノを出すと、口から溢れさせる女の唾液と自らが放った液体を見てニヤリと笑みを浮かべた。 女は首を横に倒し咳込みながら大粒の涙を流し同時に鼻から白濁の液体を滑り流して嘔吐を繰り返した。 男はそんな女の苦しむ様を見てか再び幾分柔らかくなったモノを直ぐに硬くさせ女の白い太ももを絞るように縛った縄を解くと、直ぐに両太ももを抱いて咳込みと嘔吐に苦しむ女の中へ自らの硬いモノを挿入した。 女は突然中に入って来た硬いモノに驚きそして両目を見開きそして「嫌あああぁぁーーー!!」と、泣き出したが男はその硬いモノを女の奥まで一気に押し付けた。 男は根元まで入れたモノを小さく小刻みに出し入れすると、顔を歪ませていた女は見る見る間にその表情を変え険しさが薄れていった。
 女は重苦しい息遣いと表情を男に見せ首を横に倒して揉まれた乳房の真ん中の乳首を勃起させた。 男は腰を前後に振りながら揉み回す乳房の真ん中、勃起した乳首に指を絡めそしてコリコリと回した。 男は女の表情と息遣いと勃起した乳首を見回して尚も笑みして腰の動きを早めた。 純子はその様子にテーブルの下で組んだ足をギュイギュイと何かを締め付けた。 そして沢村がカメラをズームさせ純子の下半身を見ると、さっきまでフワリと下半身を覆っていたワンピースの裾が束ねられるように股間に集められていた。 純子は組んだ両足の間に纏めたワンピースの生地を何かに押し付けそして挟んでいることが沢村に露見した。 だが、そんなこととは知らぬ純子は刺激に満たされた女の表情と肌を打ち付ける男から放たれる音に組んだ足をギュウギュウさせていた。
 そして純子の顔を映した沢村のカメラは荒い吐息を殺して頬を紅く染める純子を見て慌てるように映画を停止させ、室内に灯りを戻した。 

「今夜はこれで終了するポ♪ 今夜はワインで少し酔ったポ♪ 純子も食事を済ませて就寝前の一時間を楽しむポ♪」
 突然、停止した映画と室内に灯る明かりにハッとした純子は足組を解いてワンピースの裾を腰を浮かせてフワリと広げた。
「は、はい旦那様」
 カメラに一礼して残りを食べワインで流し込んだ純子は立ち上がって食器を片付け始めた。 だが、その歩き方に沢村は違和感を抱いていた。 

 沢村は心の中で『今、下着交換をやれば純子の熟したパンティーを見ることが出来る』と、思いつつも『それをやったら純子は業冷めする』と、思い留まった。

「今夜は新しく部屋に入った電気マッサージ機を試して寝るといいポ♪ 暗闇でもスイッチの場所が解れば使えるポ♪ オイラはここを離れて別の部屋へ移動して寝るポ♪ だから電気マッサージ機の使い方を覚えるポ」
 後片付けをしている純子に声を掛けた沢村に振り向いた純子は、身体の火照りを我慢出来ないことを笑顔で隠した。

 そして就寝前の時間。 純子は箱から出した電気マッサージ機を手に持って説明書に目を通すと、スイッチを入れてその心地よい振動に肩を震わせた。 大きさの割りに殆ど音を出さない電機マッサージ機を椅子に座ってワンピースの生地の上から太ももに当てた純子は、俄かに恥ずべき部分に伝わる心地よい刺激に何かを思いついた。 そしてカメラを気にしつつ俯いて頬が熱くなるのを感じた。
 
「さあて♪ 今夜もゆっくりお休みするポ♪ オイラは別室へ映るポ♪ 消灯するポ♪ ふわぁ~~」
 純子が電マを持ってベッドに入ったのを見た沢村はスピーカーからわざとアクビ声を聞かせるとカメラの赤いライトを消して、室内の明かりを落とした。 

 灯りの消えた室内は静まり返り電マのかすかな音だけが純子の耳元に届いていた。 純子は電マを布団の中に入れると静かにベッドを降りて音がどの程度聞こえるのか確かめるように室内を歩き回った。 そして殆ど音がしないことを知ると直ぐにベッドに戻り我が身を布団で覆った。 沢村は暗視カメラで純子の様子を見つつ微笑してベッドの方向にカメラを切り替えた。
 純子は布団の中でゴゾコソと電マの振動部分の位置を上にすると、微弱で乳首に押し当てた。 すると心地よい振動が乳房をプルプルと振るわせつつ、その刺激に乳首を直ぐに勃起へと導かれた。 そして純子は心の中で「思った通りだ」と、勃起した乳首に押し当てる振動するヘッド部分を少し離して微かな振動を表面に当てた。 すると純子は突然、勃起した乳首に伝わる振動に歯を食い縛り首を仰け反らせた。
 
「ぅぐう! ああんっ! ぅぐぐぐぐぐ! ぅぐうぅ! あああんっ!」
 電マのヘッド部分を少し押し付ければ乳房に心地よさが広がり、離し気味に表面を当てると勃起した乳首は耐えられないほどの快感(しげき)を純子に伝えた。 

 純子は布団の中で只管に乳房と乳首を交互に振動させその気持ちよさの虜(とりこ)になった。 だが、温度管理の行き届いた室内でのしかも布団の中でのある意味、運動は純子の体温を押し上げ息苦しささえ覚えさせた。

『もうだめえ! 暑い!』
 電マのスイッチを切って布団をはぐった純子は、額の汗を拭き取りつつ大きな深呼吸をした。 静まり返った暗闇の中では安心感を持っている純子は晒したCカップの乳房の汗をタオルで拭き取った。 乳房は身体の傾きに揺れながら流れた。 そしてその光景を高感度暗視カメラで手に取るように見入る沢村がいて、プルプルとゼリーのように震える純子の乳房は自分からは見えずともカメラを通す沢村にはその全てを見せていた。
 
 暗闇は純子(おんな)から羞恥心を奪い去る。 まさにその通りであろうか、純子はベッドの上で両足を膝起てすると左右に広げつつ、聞き耳を立てて辺りをうかがった。 その様子を部屋の南側に取り付けられた隠しカメラはためらうこと無くズームし、ストローを刺し込めば飲めそうなほどに柔らかい純子の裏モモと内モモに迫った。 そして純子の白いパンティーに包まれている盛り上がった恥かしい部分に内側から表面化した湿気の痕跡と、縦に割れた筋を見つけた沢村は喉をゴクリと鳴らした。
 そんなこととは知らない純子は、電マを逆持ちしスイッチを入れると振動するヘッドを縦に割れた筋に対して押し付けた。 

『あひっ! あひあひあひいぃー!』
 思わず発した自分のヨガリ声に驚いて脳裏を真っ白にした純子はスイッチを切って再び暗闇の室内を首を振って見回した。 途方も無い快感(しげき)に思わず出した自分の声が別室で寝ると言った沢村に届いたのではとドキドキしていた純子を、南側の隠し高感度カメラでズームしている沢村は確かに純子の思う通りにヨガリ声を聞いていた。 しかも、さっきよりも純子の恥かしい部分のシミは大きくなっていることも沢村は知っていた。
 純子は枕の横に置いてあるタオルを手に取ると起き上がって自らの口をソレで縛った。 そして慌しくパンティーを脱ぐと横に置いて恥かしい部分を沢村の前に晒した。 沢村はその光景に息を飲んで前のめりになって目を一点に釘付けした。 使用感の無い綺麗な盛り上がった縦割れに沢村は思わず口元に薄っすらと生えたヒゲを手の中に包んだ。 そして再び喉をゴクリと鳴らして尚も目を釘付けにすると、その目前に大きな黒い物体が覆い塞がった。 沢村は何事だとズームしているカメラを引くと、それは純子に押し当てられた電マのヘッドだったことに気付いた。
 自分で自分の口をタオルで縛り上げた純子はその壮絶過ぎる快感(しげき)に首を仰け反らせそして両足を震わせ筋肉を硬直させた。 そんな純子の足の爪先をズームする沢村は刺激の強さをキリキリと閉じる足のシワに思い知った。 沢村しベッドの天井の隠しカメラを起動して純子の快感に歪む表情に目を釘付けにした。 男女間のセックスでは絶対に味わうことの出来ない甘美さに、沢村は複数のカメラを起動して様々な角度から官能に柔肌を揺らす女の表情を目撃しそして記録していた。 その視点は純子の髪の毛の一本からキリキリと閉じられる爪先の小指にまで広まっていた。
 見られているなどとは夢にも思わない純子は女の恥かしい動きの全てを沢村に見られつつ、仰向けの体位から四つん這いへと変えた。 そして膝起ちし尻を南側に突き出して身体を映画の中の女と同様に右頬で支えると、その両手に逆さまに持たれている電マのヘッドを南側に晒している恥かしい部分に押し付けた。 咄嗟に沢村は純子の恥かしい部分を見ようとカメラを切り替えたがそれは叶わなかった。 だが、激しい快感に全身を揺らす純子の蕩けそうな尻の揺れは沢村の心をトロトロにさせた。 そして尻の下、リズミカルにプルプルと弾力を見せ付ける二つの太ももに心が締め付けられた。
 そしてその光景はしばらく続き、沢村の見守る中で純子は電マを陰部に当てたまま真横に倒れそのまま眠りの世界へと導かれた。 

 

 
【八話】


 朝の九時過ぎ、純子は水色の半袖に同色のトレパンを履き両足をグレーのパンティーストッキングで包み、白いソックスをくるぶしまでを二つ折りし白いジョギングシューズで覆った。
 完全にやる気満々の純子はルームランナーの前で、ニコニコしながらカメラを向いて可愛くVサインを見せ沢村に微笑むとルームランナーの上に乗って走り始めた。 今日は往復十四キロに挑戦すると言う純子の髪はサラサラと揺れ肩まで届きそうな状態だった。
 胸を上下に揺らしストッキングに包まれて柔らかさを弾力に変え健康美を見せる純子に、カメラの向うに居る沢村は嬉しそうにその走りに見入っていた。 だが、楽しげに走る純子とは対照的に沢村は寂しげな表情を浮かべつ身の回りを片付け始めていた。 
 荷物は箱に片付けられ順次、外に止められている車に運ばれそして積み込まれて行った。 純子は何も知らずに距離を見ては自分を見ているであろう沢村に愛らしく笑みを見せた。 山の別荘は厳しい冬を直前にして沢村と純子を追い出すべく日に日にその厳しさを増して行った。
 外の様子は室内の小窓で純子も知っていたが、冬を越して尚も沢村と一緒に居られると思い込んでいた純子だった。 沢村は荷物を車に積み込みながら純子の様子に見つつ、物を手にしては「これはあの時の…」と、センチメンタルリズムに駆られた。 
 厳しい冬の他に、沢村はこれ以上の拘束は純子のためにならないと判断し、純子のの生活にピリオドを打つ決断をした。 純子はもう立派な分別のあるレディーになったと言う沢村の決意は固く揺るぐモノではなかったが、どう純子に切り出そうと困惑していた。
 今の純子は沢村に自分の操を貰って欲しい。 沢村に女として愛されたいと日常的に感じるほどになっていて、別れが来るなどとは思っていないことは沢村も解っていた。 沢村が純子を監禁して数ヶ月。 一度も純子の前にその姿を見せなかったのは、この日が来るのを想定していたからだった。
 肌と肌。 心と心が密着すれば離れられなくなる。 同じ場所で空気を共有することを避けてきた沢村だったが、荷物を車に運び終えると純子に出かけることを告げ、別荘を車で降りて行った。 だがその用向きは伝えることはなかった。 何も知らない純子は只管にランナーの上で心地よい汗を流した。
 
 沢村が別荘を離れて数時間が経過したが、純子はその間にチャレンジを成し遂げ汗だくの身体をシャワーに当てて着替えを済ませていた。 汚れた下着と衣類を袋に入れて搬入口に入れ沢村が戻るのを待った。 純子は室内に設けられた小窓から外の様子を見て無事に戻れることを心から案じた。
 だが外が暗くなっても沢村は戻ることがなく、昼食も取っていなかった純子は棚の上に置いておいたカップ麺で空腹を満たして尚も沢村の帰りに不安を募らせた。 窓は外の冷たいのだろうか暖かい室内と差は拭いても拭いても曇る窓ガラスで一目瞭然だった。 
 そして、静かな中で純子は「フッ」と、耳に届く風の音に視線を移動させた。

『なんだろ…?』
 鉄格子の中、何処からか入り込む冷たい空気とその音を辿る。 

『ここ…?』
 今まで感じたことの無かった搬入口の左側に感じる縦1メートル、横五十センチほどの隙間。

 純子はワンピース姿のまま斜屈んで隙間風に手の平を当てて床から這わせて調べた。 するとそこは出入り口らしいモノを板で覆っていることが解った。 純子はその板の前に立ち両手で軽く押して見た。

「ギッ! バタンッ!」
「キャァ!」
 板が外れて向こう側に倒れるとストッキング越しの素肌を凍えさせる冷たい空気が勢い良く流れた。

 純子は恐々とその向こう側に視線を向けると、窓から入る光に開かれたままになってユラユラと揺れるドアを見つけた。 

『なんだろ…?』
 純子は腰を屈めてスカートの中を冷やす風に向かって進んだ。 

 そこは搬入口の裏側で小さな裸電球が灯る六畳ほどのボイラーのある部屋だった。 二階へ通じる古びて修理された後のある階段を右側に見ながらユラユラ動くドアの向こう側に進んだ。 すると別のドアがもう一つあって、そこには「純子へ」と記された白い封筒が貼り付けられていた。 その中を開くと純子は激しい不安に襲われた。
 タクシー会社の電話番号と現金が数万円。 そして手紙には二階に電話があるから使え。 そう書かれただけの手紙に純子は立ち眩みしたように身体を窓のあるドアに寄りかけた。 そして開いたドアの外。 純子はその冷たい風の中に身を震わせそして肩をすぼめた。 車が数台置ける広さの場所をグルリとフ落下防止のェンスが覆い、目の前の右側に上へ登る石で出来た階段があった。
 上へ上る階段を見た純子は冷たい風の中で見上げて起ち尽くした。 ワンピースの裾が風に靡きパンスト一枚の両足に痛いほどの纏わり付き純子を振るわせた。 数分後、純子は涙を滲ませ口元を手で覆うとクルリと身体の向きを変えた。 建物に入って白い封筒の貼り付いていたドアを閉めると、そのまま自分の部屋に戻り、冷蔵庫を梱包していた大きなダンボール箱を当てて塞いだ。
 純子は、一人ぼっちの部屋で泣き腫らした顔で朝を迎えた。 そして部屋の中の西の小窓から陽の光が入った頃、段ボールで塞いだ場所からドアの開く、そして閉じた音が聞こえた。 沢村は『気が付かなかったのか…』と、困惑しつつパソコンを立ち上げてカメラとモニターを起動させた。 だが、そこに居てカメラに視線を向ける純子を見た瞬間、沢村はその泣き腫らした顔を見て直ぐに状況を把握した。

「何だ、まだ居たのか… オイラはもう純子に飽きたから捨てたのに…」
 沢村の一声に純子は胸に溜った悲しみを一気に大粒の涙に変えて、テーブルにポタポタと落として頷いた。
「オイラはもう純子の御主人様でも旦那様でもないポ。 好きなところへ行ってしまえばいいポ…」
 沢村の感情のこもらない冷たい口調に純子は黙って涙を零して咽び泣いた。
「オイラは片付け物があるポ。 だから純子に構ってる暇はないポ…」
 モニターの中の沢村はそのまま身の回りの片づけを始め、純子は大粒の涙を零し鼻水を垂らして、グシャグシャになって尚もニッコリと笑顔をカメラに向けた。
「………」
 純子は過去に沢村が喜んでくれた笑顔をグシャグシヤになって尚もし続けた。


 白い歯を見せカメラに向かって大粒の涙を零して直を笑顔をする純子に、モニターの中の沢村は動きをとめて視線を純子の目に重ねた。 その瞬間、沢村はポツリと呟いた。


「もう駄目ポ………」
 突然、モニターの前から沢村の姿が消えた瞬間、バタバタと階段を駆け下りる音が室内に響いた。 そして段ボールで塞いだ四角い穴から純子の傍に駆け寄った沢村は振り向いた純子に視線を重ねた。

 そして席を立った純子は両腕を前に思い詰めた表情して直ぐにニッコリと沢村の好きな笑顔を見せると、両腕を広げる沢村の胸の中へと飛び込んだ。 そして声を出して泣いた。 

「もう離さないポ…」
 沢村は純子を抱き締め、純子もまた沢村を力強く抱き締めた。

「愛してる! 愛してる! 愛してるのおー!」
「お前はオイラのモノだああー! 一生オイラのモノだああー!!」
 沢村の腕の中で泣き叫ぶ純子に感化されたように沢村も大声で叫んだ。
 
 純子は沢村と荷物を纏めて別荘を後にした。


 純子の実家…


「よくぞ成し遂げてくれた! 沢村くん♪ 娘を君に預けることに少々の不安はあったが、娘を世界中で誰よりも知り尽くした気味だからこそ成しえた。 これは快挙と言っても過言ではない♪」
 純子の実家の応接室。 純子の女帰りに死力した沢村を歓喜して称える父親の昭三。 そして横で涙ぐむ母親の美鈴。 

 両親と沢村にワンピース姿で、お茶を運んで来た美しい純子は床に膝起てして穏やかな笑顔を三人に見せた。

「ところで、挙式はいつにするんだ沢村くん♪」
 満面の笑みで沢村に聞き、沢村は照れて真っ赤な顔をし後頭部に手を当て、何も話しを聞いていない純子は俯いて頬を紅く染めた。

 純子は突然の父親の言葉に動揺を隠せない純子は立ち上がって口元を覆い隠し父親と沢村を見て直ぐに母親に目を合わせた。 母親は純子に笑みし一度頷くと、妹の彩香がドアをノックせずに突然入って来た。
 そして彩香は真っ直ぐに沢村の横に座ると、沢村に出した純子が入れたお茶に口をつけて、右横に居る沢村に抱きついた。

「挙式? そんなもん面倒臭せえよ! 親父ー♪ とっとと籍を入れちまおうって思ってんだ♪ アタシ達♪ ねえぇ~♪」
 父親に昔の純子のような言葉を使う妹の彩香の頭を自分から引き離そうとする沢村。

「おいおい♪ いくら何でもそれは駄目だ♪ わっはははは♪ 次女とは言え、柿崎グループの総帥の娘。 それ相応のとをせんとワシの面目が成り立たん♪ まあ、沢村君にもそれにりのペストを与えるとして、まずは先に柿崎グループの総帥の長女と医療分野のパイオニアの吉永グループの長男との結納を済ませねばならんからのおう♪」
 父親は沢村と彩香を見てから、傍に立ち尽くす純子をジックリと見て尚もその視線を母親に向けた。

「いいなぁ~ 姉貴は吉永の会長の一人息子のとこ行けてー 人生バラ色じゃん♪ ウッキキキー♪ でもまあ、オイラの沢村っちには敵わないべえ~♪ ニャハハハハ♪」
 沢村にベッタリと張り付く妹の彩香は話しの流れに顔色を変える純子を見てケラケラと大笑いした。

 純子は監禁時代に沢村がマイクで使ってた「オイラ」と、言う言葉を脳裏によみがえらせていた。

「柿崎グループと吉永グループが組めば日本の経済は根底から変革する… 純子はにはその大役を担って貰う♪ だがまさかワシと敵対している吉永グループの会社に勤めるとはワシも夢にも思っとらんかったが、先方の長男がまさか純子を見初めるとは、正直ワシは運命を感じたわい♪ がっははははは♪」
 父親は大きな声で笑いながら何も知らない純子を見詰めたその視線を沢村にあてた。

「いやあ、僕も義父さんの役に立ててこんな嬉しいことはありませんよ♪ 彩香と二人二人三脚で幸せを探しますよ♪」
 照れる沢村。

「おいおい♪ もう義父さんか♪ がっはははは♪」
 照れる父親。

「ああーーーん♪ 腹減ったーーー! お袋ー 何か食うモンねえかぁー♪」
 母親に食べ物をせがみつつ母親の手を引いて応接室を出る妹の彩香。

 そして応接室に父親と沢村と純子だけが残った。

「ところで沢村くん! 一応聞いておくが純子には……」
「ええ。 指一本触れていませんから御安心下さい♪ 義父さんの将来を担う大切な身体ですからね♪」
「おおおー♪ そうかそうか♪ まあ、ワシが言うのもなんだが、これ程の美しい娘だからなあ~ がははははは♪」
 
 父親は純子の操のことを沢村に聞き、沢村は父親に報告をした。

「あの… お父さん。 私… 誰かと結婚するの?」
 不安げに父親に聞いた純子に父親は、厳しい表情を見せ純子の勤めていた会社の本社の会長の長男との縁談があることを伝えた。

 純子は自分が何故、沢村に監禁されたのかその全てを父親から打ち明けられた。 沢村は自分を愛している。 そして自分も沢村を愛していると思っていた純子への酷い仕打ちだった。 そして全てを知った純子はその翌日に自らの短い生涯にピリオドを打ちその人生を終えた。 純子にとって女として一人の男性を愛した最初で最後の恋はこう言う結末を向かえた。



【完結】
  

柿崎純子と沢村一樹

柿崎純子と沢村一樹

  • 小説
  • 中編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • コメディ
  • 成人向け
  • 強い暴力的表現
  • 強い性的表現
  • 強い反社会的表現
  • 強い言語・思想的表現
更新日
登録日
2013-12-09

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