Lost
小説家初心者の空色と申します。
一応、初作品となります。
稚拙な文章でお見苦しいとは思いますが、どうかよろしくお願いします。
Cry of city
「うう……」
朝の目覚め一番の感覚は、ベタついた汗が額を覆っている、という最悪の目覚めだった。
今直ぐにでもシャワーを浴びたい、と起きたての脳を回転させる。させてみる。
出てきた答えは『布団から出たくない』という残念かつ寝起きの脳に相応しい回答だった。
極寒の地の、極寒の冬の、極寒の朝の部屋で、オレはミノムシのように布団にくるまる。
モゾモゾ、と。
*
親がいなくなったのはつい昨日のことだ。
冬休みという天国でありながら地獄の期間をオレに一人で過ごさせるというのは
、良心なのか、ただの嫌がらせなのか。
両親は死んだ。
とかではなく普通に、ごく普通の、旅行というものだ。
オレを連れていかなかったのはやはり良心か。冬休みを友達と過ごさせたいとかいうあれか。
が、残念ながらオレには友達が少ないのだ。ろくに遊べやしないのだ。
孤立してるとかではなく、ごく単純に、色々な要素が加わって人と関わりにくい……というか関わられにくい。
そんなこともあってまあまあ朝から憂鬱な気分のオレ、柊 伊吹であった、と。
「……はぁ」
さて、ここで問題があるとすれば、横においてある、目覚まし時計兼携帯電話が朝の5時を告げていることと、異様な汗と不安感で寝付けないことだ。
悪夢でも見たのか、未だに心臓は鼓動を急いでいるが、全くもって覚えがない。
所詮夢なんてそんなものだ。
「ああ、うん。起きよう」
諦めることにした。
おはよう。
この暗い自室に挨拶をして、やけに早い朝で今日は始まった。
*
リビングのカーテンを開けると、そこには見ただけで凍りつくような光景が広がっていた。
別にそこには衝撃の光景があった、とかいう比喩ではなく、見たまんまの感想。
やけに寒いと思っていたのだが、外は真っ白の雪景色。今年は初めて見る雪景色だった。
まあ、初雪を綺麗だとか言う前に寒いと言うのがオレな訳だが。
所謂寒がり。ただの寒がり。
「だ、暖房」
そう呟いて、急いで暖房のスイッチに向かう。
体はもう既に冷えきっているのだ。これ病気なんじゃないかと思うくらいに。
体感温度は例えるなら夏だけど曇りの日の海に入った並みの温度。嫌な思い出だ。
さて、時間は午前5時半を過ぎた頃。
どうしようもなく、なんとなく、テレビをの電源をつけるも、何か見たいものがやっているわけではなく。
かといってゲーム? 読書? 興味がない。
なら勉強……
「するはずないだろ……」
溜め息を吐いて、後ろに倒れる。
思い返してみれば、最近つまらないなぁ。昔の方が、なんておじさん臭いことを考えてしまう。
まあ、暫くこのまま思い耽っててもいいかもしれない。まだぼんやりした思考でそう答えを出す。
リビングには、テレビの雑音と暖房の熱風を送りつける音が広がって、そして消えていっていた。
*
ふと、我に返って、ポケットに入れておいた携帯を取り出す。
メールも、留守電なんて、そんなものは無かった。
うう、と思わず呻き声が喉から漏れてしまう。これが現実だ。
高校二年。もう一年すれば受験シーズン真っ盛りの歳。
オレは、まあ言ってしまえばこの地域では優秀な部類に入るだろう高校に入っていた。
成績中の上。学力は上の下。運動だけは上の方だとは思うが、『中三のあの事』もあって部活には入らず。最近は学校以外で外には出ないような生活。
クラスではほとんど勉強の真似事か、ペン回しをしながら考え事をしている振り。
「柊くんって、なんか近づきにくいよね」
そんな言葉も、よく小耳に挟む。
別に不快とは思っておらず、時たま自分で自分に絶望するくらいだ。
時たま、あくまでも、時たま。
なんて、最近の生活を振り返っていると、何故だか涙腺が緩むような気がした。
あれ、おかしいな。目から液体が……とまではいかないものの、辛いのは事実だ。
まあ、オレにはこんな生活がお似合いだとは思う。本当に。
そんな、そんな思いが胸を締め付けているときに。
よりにもよってこんなときに。
ブブブブッ、と、携帯のバイブ機能は長い眠りから目を覚ました。
「やっほ。弟君」
Lost