鑑賞記録-座・高円寺 冬の劇場21 MODE カフカ・プロジェクト2013 三部作連続上演より
高円寺にある座・高円寺にて、一作目「失踪者」観劇。
MODO作品は、カフカ原作の短編集と別役実の「マッチ売りの少女」を過去に観させていただいたが、今回は中でも上演時間最長の三時間弱。ほぼ素舞台で二階構造の空間に、わずかな小道具とあとは役者の肉体でもってカフカが有する異世界をめまぐるしくも軽やかに建設しては、あっという間に解体してゆく。入れ替わり立ち替わり場面が展開することで、原作の雰囲気そのままに、理屈で語らず「失踪者」を視覚化することに成功している。原作から練り起こされた台本をスタートとせず、エチュードを繰り返し、三次元を軸に構成されていったものの成せる技であろう。
ベースが素舞台であるのだから、当然ながら空間には余白が存在する。しかし本作でいうなれば、その余白ですら饒舌に物語る。暗がりにぽっかりと穴のあいたような不十分さが、観る側の想像力を逆に刺激して、カフカの無味乾燥な世界体験をより高揚させていると感じた。
鑑賞記録-座・高円寺 冬の劇場21 MODE カフカ・プロジェクト2013 三部作連続上演より