触ると分かる男の発明。
最近、猫も杓子もスマートホン、スマートホンの定義は?と聞かれたら
皆様、答えられますか「ピットしたら、ラララーと画面が替る?」とか「プッシュボタンがない」とか、あいまいな答えないなるでしょう、答えは簡単に「高機能携帯電話」で良いみたいですよ。
神が買った製品を生み出すには何かわけがある、そんなショートショートです。
ある日の出来事。
やる事,為すこと事上手くいかない、誰にでもある経験・・・ティーブン氏は今まさにこの状態だった。
昼間からバーボンを飲み、ムシャクシャとモヤモヤを誤魔化す日々が続いている。
「アーなんか良いことないかなぁ?くそがぁ」 酔いが進むに連れて荒れていく、さっき新しく開けたバーボンが半分になるとトランス状態が訪れた、さっきまでのムシャクシャとモヤモヤが消え行く。
「へへッ、ハハッハ、俺はなぁ、選ばれし人間だ、君ら愚民には理解できんだろうが!」
としゃべるが、もちろん周りには誰もいない、彼の独り言・・・
ティーブン氏の場合トランス状態になると、まず無敵モードに入りそこから更に感覚が研ぎ澄まされていく。
「俺はシャーマン、シャーマンなんだよ」また独り言を呟いた、シャーマンは霊界と交信できると信じられている人物の総称で、ティーブン氏の憧れでもあった。
トランス状態で自分をシャーマンと強く思い込むことが、彼のストレス解消法だが今日はいつもより強く思った。
「アー神よ、私に力を下さい、人々を驚かせたいのです、どうか!どうか!」呪文を唱え終えるとグラスに半分以上残っていたストレートバーボンを、一気に煽った、普通ならこのまま眠り落ちるのだが、今日は違った。
ついに神に祈りが通じたのか?、トランス状態がマックスを振り切ったのだ。
まず持っていたグラスの分子構造(蜂の巣を並べたような)が頭の中に浮かび上がってきた、
「どうしたんだ、これは?」ティーブン氏自体も理解できないが、不思議な力が宿った事にうすうす気が付いた、
大学時代に少しだけ勉強した記憶のある分子構造だったからだ、もし無学なら気が付かなかったであろう。
「ひょっとして、触るだけで何かわかるのか?」今度は試にバーボンを指に付けてみると、思った通りにアルコールの分子構造とバーボン特有の結合分子、そしてその製造過程まで浮かび上がってきた。
次は何気なく机の引き出しに入っていたトランプを触ってみると、図柄が次々とサムネイル表示で浮かび上がった。
「うん!なんだ、これは・・・トランプの順番なのか?」試にトランプをよく切って一番上に人差し指を当ててみた。
次々と図柄や数字が浮かび上がる、一瞬で一番上の札から下まですべてわかる、「次はダイヤの3」言いながらめくると当たっている。
「おー何だこれは?」しばらく夢中になって、めくり当てをしたが外れる事はなかった、酔いが醒めるまでは。
「酔いがさめると、この力もなくなるんだ」せっかく神がかりの能力を授かったのに、どう活かせばいいのか?
「酔っ払いのマジシャンか?種も仕掛けもないけど信じて貰えないだろうな、クソインチキマジシャンどもめ・・・
カジノでも行くか?しかし酔っぱらいすぎると追い出されるだろうな!」なにしろ能力を発揮できるのは、かなりの泥酔状態だ。
「なんだ、全く役に立たないのか」人生、早々上手くはいかない物であるが、使い方は本人次第である。
世界的ヒット。
やがてティーブン氏は学生時代の知り合いと共同経営のコンピューター開発会社を設立した。
中堅企業からの依頼を受けて、既存のコンピューターのグレードアップ、部品点数を減少させるコンパクト化を手がけたりしていた。
そしてティーブン氏は技術的には並みだったが、素晴らしい業績を上げていくのは仲間から見ても不思議だった。
ある時に一人の男が聞いた「どうしたら、そんなアイディアが出るんだ?」
「酒を煽るのさ、それもバーボンじゃなくてはダメだ、ボトルで半分も飲めばもう、OKさ」
とティーブン氏は真面目に答えたが、それを真に受ける者は誰もいなかった上に
「もったいぶって人を馬鹿にしやがって」と反感を持つものまで出て来た。
その事が原因ばかりではないが、やがてティーブン氏は居場所をなくしてしまい、追放同然に会社を追い出されてしまう。
「これからどうしたものか?」今更、地道に働くなんてプライドが許さない。
「ヨシ、俺を追い出しやがった奴らにリベンジしてやる」やることは世界中の誰もが、
驚くようなコンピューターシステムの開発だ。
そしてやることはもう決まっていた、まず大量のバーボンを買い町はずれのガレージへと運び込んだ。
次はトランス状態の閃きを音声として記録する為のレコーダーの開発だった。
本体はなるべく小さく、音声をデジタル化し圧縮するプログラム、普通なら2~3年の開発期間を要するだろうが、
ティーブン氏に掛れば、ボトル半分のバーボンを煽るだけ、一晩でプログラムを開発、本体の設計は二晩で終わった。
出来上がった製品を使い更にインターネットで音楽を取り込めるようにして市販化した。
「愛パッド」と名づけられた製品が街に出回るとたちまち「凄い高性能」「おしゃれ」「使いやすい」の形容詞が付いた、トレンド雑誌での特集記事が更にブームに火をつけた。
会社を創始してからわずか二週間で株式公開、ティーブン氏はついに億万長者になったが、リベンジは終わっていない。
次々と画期的な機能、斬新なデザインの製品を作り続けなければならない。
ボトル半分でトランス状態になれていたものが、今は一本開けても足りない、より深く、より酩酊を求めていく、
「愛フォン」と名づけられた携帯電話は、世界の常識を覆したがまさにそれは、「触れれば分かる」性能だった。
指先でコンピューターを操る高度な技術は、ティーブン氏の「トランプめくり」能力の発想から生まれたものだ。
やがて追い出された会社を買収してティーブン氏のリベンジは幕を下ろしたが、そしてそれと同時に大量のバーボンで内臓は機能障害を起こし寿命宣告を受ける事になった。
ティーブン氏の会社は存続したが、バーボンの酔いが生むあの芸術的センスのある製品は作れなくなった。
そして彼の事は世界中が覚えていていまだにカリスマ的存在、やはり彼は「シャーマン」なのだ。
(完)
生死一如
触ると分かる男の発明。
アップルの創始者って言ってよいのではないですか?
ネットには共同設立者の一人と言う扱いです、そんな彼は充電池の形、電子基板を始め「美しい」にこだわったとかです。
日本の研磨技術でピカピカに磨いた携帯電話もあった程です。
この美的センスは何処から来るのでしょう。
余談ですが私も、スマートホンにしたのですがアップルのアイフォンが使いやすいという人が大半です。
一度使うと、他社は使い難いって感じでしょうか?まぁ私は国産です(やっぱり使いにくいかなぁ、まぁまぁ使ってますが、なにか?)。