凍るような日々の線上にて

     太古には生き物たちは悠久の時を感じて生きていたのだろう
     温かく滑らかな風 常緑の樹々 鮮やかな色彩の草花 澄んだ湖水
     ゆるやかに歩んだ あの日々の空の碧を 胸に思い浮かべてみる
     


     ラプトルに出会うのは恐ろしかったかもしれない
     でも彼らは 今では可愛い小鳥 姿を見つけるのが楽しい
     そのさえずりは 気持ちを和ませてくれる
     この忙しない都会の時の中で
     


     いつから こんなに歯車の回転は速くなったのだろう
     呼吸のリズムを太古にもどしてみると
     この身を取り巻く全ての光景がまるで 早送り再生のように過ぎ去る
     何も心に滲みないままに
     


     みんなどれほどのスピードで
     この世界の出来事を噛み砕き飲み込んでいるの
     消化不良のまま進む毎日は
     


     立ちのぼる水蒸気が空を白く濁らせている
     心の曇りはそこに灰色を混ぜるのだろう
     おとぎ話に生きるものは陽の光が優しくなったというだろう
     権謀術数のこの社会の中で 何に指標を置こうか


     
     足元を通り過ぎた雲の影 スーパーサウルスの歩みのよう
     群れから遅れをとらないようにと 寄り添い小走する小さなキミ
     ビルの谷間を吹く風は 渓谷の風の音と変わらないけど
     大地に生きるものは変遷してゆく
     ゆるやかに歩んだ あの日々の空の碧を 胸に思い浮かべてみる
     

凍るような日々の線上にて

凍るような日々の線上にて

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-10-02

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