僕がお酒をやめた理由
ずっと昔、とても身近で、
いつの間にか、疎遠になってしまった、「あなた」へ
実は、僕、酒をやめたんだ。
やめてから、もう随分経ったかな。
まぁ、結婚式の乾杯のシャンパンくらいは飲むけど、
酒を浴びるように飲んでいた、かつての僕を知る古い友人達には
「友達と会って酒を飲まないって、お前、それって一体どうなのよ?」って、
非難ゴウゴウだったりで、一応、その場では、
「ちょっと胃を悪くしてさ・・・」
って誤魔化したりするんだけどね(笑)
確かに酒を控えるようになったきっかけは、そうなんだけど、
実は、酒をやめている理由があるんだ。
恥ずかしくて他人にはなかなか言えないんだけど…
あなたには打ち明けるけど、
実は、僕、「魔法使い」の修行している最中で、
酒を飲むと「魔法」の使い方が鈍るんだ。
…今、笑ったか、呆れたでしょ?
どちらかというと「ハァ~?」って
呆れているあなたの顔が目に浮かぶよ(笑)
話を戻すと、僕が修行している「魔法」みたいなもの、
実は、これって、みんな知らず知らずのうちに使っているものなんだ。
例えば、お母さんはいつも赤ちゃんに放っているんだよね。
赤ちゃんもそれを感じているし、
赤ちゃんだって自然とそれを使っている。
だけど、大人になるにつれて、
それをうまく使えなくなるんだよ。
水や空気みたいなものだから、
他に目移りしちゃって、
取るに足らないものだと思って、
それを大事にしなくなるんだ。
だけど、たとえ気付いていなくても
みんないつもそれを使っている。
たまたま、正しい使い方をしている時もあるけど、
大抵は、間違った使い方をしている。
今、僕は使い方を忘れてしまった「魔法」を、
正しく使えるように修行しているんだ。
ところで、その「魔法」は、
正しくても、間違っていても、それを強く念じると、
とてもすごい結果をもたらすんだ。
思いやりとか感謝の気持ちとかから正しく使うと、
小さな神様達が現れて、みんなをハッピーにするのだけど、
怒りとか恐れとか欲とかに駆られて間違った使い方をすると、
目に見えないお化けが出てきて、
当人だけでなくその周りまで傷つけてしまうんだ。
それもその「魔法」を完全に解くまで、
そのお化けは姿形を変えていつまでも現れ続けるんだ。
「魔法」の修行をしていると、
自分が無意識に生み出しているお化けが見えるようになるんだ。
そのとき、一瞬でも落ち着いて「魔法」を解けば、
その瞬間だけは、お化けを消すことができるんだ。
そう、実は、僕があなたとの間に感じていた壁は、
遠い昔、僕が間違って使った「魔法」が生み出したお化けって、
ようやく正体を見つけたんだ。
そして、ほんの一瞬だけど、
落ち着いて「魔法」を解いたら、
その瞬間、お化けが消えたんだ。
その瞬間、何が起こったと思う?
今まで自分を傷つけてきた人の全てを赦したくなる感じ。
今まで自分が傷つけてきた人に全てを謝りたくなる感じ。
今まで自分を大切にしてくれた人に感謝したくなる感じ。
今まで自分が大切にしていた人に素直な気持ちを伝えたくなる感じ。
愛憎入り乱れた複雑な気持ちを抱いて、
ガンジガラメになっていた心が空に解き放たれた感じ。
今まで体全体にまとわりついていたのが、
さわやかな風に全部吹き流されて、
体がフッと軽くなる、そんなさわやかな感じ。
優しい気持ちに包まれる感じ。
そう、自由な感じ。
それは、ほんの一瞬だった。
僕はまだ修行中の身だから、
まだお化けを完全に退治できていないんだけど、
それが消えた瞬間に起こったことが見えてから、
なんだか勇気が湧いてくるんだ。
「魔法使い」の修行って、苦しくて辛いけど、続けようってね。
ところで、
長い旅の途中で、とてもきれいなものを見つけたんだけど、
まだまだ先は長そうで帰る機会もなさそうだし、
僕、シラフだと口下手だから、
たとえ帰ってもうまく伝える自信もないから、
きれいなもののことを絵葉書に書いて届けたい、
例えば、そんな気持ちになったんだよね。
心からの祈りを込めて:
みんなが幸せでありますように。
2013/03/30 哲郎
僕がお酒をやめた理由
こんなヘンテコリンな文を最後までお読みいただきありがとうございます。
本作品は、私の家族関係について綴った体験記「続・家族」(https://slib.net/26461)のテーマにあたります。
作者のプロフィール(https://slib.net/a/9877/)から、他の掲載作品とともにご覧いただけます。
「続・家族」は少々長文ですが、よろしかったら、そちらもどうぞご覧ください。