現代に有効な即興に関する考察


以下、文面は、2013/11/30に大塚レ・サマースタジオにて開催された「即興イベント『ナリユキ』」の準備段階においての、即興に関する一つの考察です。もちろん、公演本番に反映されていない箇所もあります。

あえてほとんど推敲せず、メールでのやりとりそのままに掲載いたしました。






お疲れ様です!
岩渕です。

11/30即興イベント「ナリユキ」の稽古及び企画ルール(?)についてなのですが、その後自分なりに「有効な即興って何だろう」と戦略を練ってみまして、ちょっとした趣向を見出しました。もちろん一提案に過ぎませんので、出過ぎたこと、不必要な内容部あれば存分に却下していただいて構いません。

参考にしてもらえたらと思います。
少し長いですが読んでみて下さい。


「ファン感謝祭」「一部観客参加(ルール提案等)」の形式に基づく即興芝居公演ですので、どのように観客参加させるかが、まず大きな課題だと思います。

例えば、観客による、

・シチュエーションの提案
・劇中台詞の提案

を企画の面白味とする話が飲み会でも議論に上がりましたが、それだけでは観客目線での参加とするには、いささか不十分であると感じます。
「シチュエーション」も「劇中台詞」も観客の実感からすれば解離した一時的な閃きに過ぎず、仮にそれらが即興劇中に用いられても、それほどの熱狂には至らないのでは、との懸念があります。下手をすれば、本公演に比べ、荒さばかりが目立つ「不完全燃焼的なごたごた芝居」と受け取られかねません。

即興の醍醐味は、一般的にリアルタイムな「偶然性」とそれに伴う「スリル」です。したらば、「偶然性」「スリル」と「観客」とのジョイントを担える“何か”をよくよく検討し、設ければよいのではないか、と思うのです。
つまり、芝居という虚構物語の中に効率よく観客を投影し、あたかも自分自身が芝居の一端として躍動している”錯覚としての実感”を持たせることです。

具体的に言えば、

・観客に自身を投射(分身)するような「物(衣類、小物、生活用品、思い出の品などなど)」を持参させ、それを実際に作中に登場させるなり、配置するなり、身に付けるなりして、「物」自体を作品に参加させる

というアイディアです。

観客は、ある安全志向により、自身が直接的に芝居へ参加することを極力避けたがりますが、しかしながら同時に、半強制的に物語に身を委ねることを熱望する矛盾の中にいます。

芝居に分身としての「物」を登場させ、それが物語の運命(芝居の「筋書き」でしょうか……)を左右しかねない状況を意図的に創り出すことで、芝居のクオリティー面を主体とせず、即興の持つ「偶然性」「スリル」に注視させることが出来ると考えます。
(※もしかしたら、物に対し、さほど思い入れがなくとも「自分が作中にそれを持ちこんだ」という実感だけで充足を得ることが可能かもしれません。その点、僕もたいへん興味があります。)

その場の持ち込みによって、役者の風貌も「サラリーマン」「チンピラ」「警官風」「おばちゃん」「小学生」「酔っ払い」「妖怪」などなど確定しても面白いかもしれません。
配置される物によっては、「公園」「学校」「雑貨屋」「海辺」などなど、状況設定も変化してきます。つまり、予め用意されたシチュエーションを選択するという観客の実感に対して解離的なルールではなく、その持ち込みこそが大まかな「役柄の印象」や「シチュエーション」を導き出していく考え方。

導き出す過程においても、俳優・観客がともに集められた状況からコミュニケーションをとりつつ決定する楽しみが生まれます。
要は、企画の支配権は観客が握っているのだと”錯覚”させるわけです。
(※必要あれば、そこで初めてこちら側が用意した小物や状況を補填すれば良いのです。)

これは、一般に現代人の消費感覚をついているのではないでしょうか。「データベース上のアバター」や「AKB商法」や「ノベルゲーム」なんかもこれに似ていますね。


あくまで上記の提案は企画の入り口に過ぎず、そこから派生する問題は山積で十分推敲の余地ありですが、いかがでしょうか。
分身が登場していることもあって、終演後の観客も「○○のあの使い方はないでしょう!笑」など、傍観者でなく一体験者のようなコミュニケーションが取れ、交流としてももってこいだと思われます。


岩渕幸弘

現代に有効な即興に関する考察

現代に有効な即興に関する考察

「以下、文面は、2013/11/30に大塚レ・サマースタジオにて開催された「即興イベント『ナリユキ』」の準備段階においての、即興に関する一つの考察です。もちろん、公演本番に反映されていない箇所もあります。あえてほとんど推敲せず、メールでのやりとりそのままに掲載いたしました。」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-03

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