旅人(途)

彼は旅をする

まだ見ぬ何かを見つけるために
まだ見ぬ誰かと会うために
彼は旅をする

旅支度

ガス灯、舗装されていない街道、両脇の店々。
荷馬車、煙を立ち上げる自動車、群れる人々。

ここが僕の住む街。
とにかく店と人が多く、色もとりどりで、まるで鍋に色々な野菜を詰めてごった煮した様だ。右を見ても、左を見ても同じ風貌の人が一人もいない。

そんな街の喧騒から離れた所にある、駄菓子屋の上に僕の根城がある。
部屋には、僕が気に入っている本で埋め尽くされている。
黴臭く、埃っぽく、暗い、我が城である。
僕が持つ本の中で、一番の割合を占めるのは「一里」という方の風景写真集である。
とてつもなく大きな樹の中にある町。
一年中雪に埋まる白銀の森。
摩訶不思議な浮遊都市。
僕が見たこともない町の景色の中を旅している方だ。

僕は街の図書館の司書をしている。毎日、図書館に行っては、整理、貸出、返却、掃除、事務処理、来月の広報新聞の作成等々…。
また次の日も同じ仕事。
また次の日も。
また次の日も……。
正直、思っていたより面白くない。

いつからか、僕は旅をしたいと思っていた。

普段の僕だったら、思うだけで行動に移さなかっただろう。
今回は何かが違った。何がと聞かれたらわからないが……。
「今」を逃したら、もう「今」は僕の前には現れてくれないと思った。
確かに、仕事に対して嫌気が刺していたが、それだけではなかった。
だから、仕事を辞めてしまった。あんなに、憧れた仕事を辞めてしまうのは、色々と勇気が必要だった。
僕の人生に初めての転機が訪れた。天国行きか、地獄行きかはまだ分からない。

大きめのバッグを用意した。
中には、おにぎりと缶詰を沢山。水筒に「一里」の写真集を一冊。厚手の大きな布も入れたら、バッグは一杯になった。
そして、重たい。
旅をしたことが全くない僕は「こんなものか」と呟き、布団入った。
胸が高鳴りを止めずなかなか眠れなかった。

いってきます

目が覚めた。

僕はとても座り心地のいい椅子に座り、机に突っ伏して寝ていた。
懐の懐中時計を取り出して目を遣ると、もう2時になろうとしていた。
外から子供達の明るい喧騒が我が暗い根城に響いていた。

僕は体を起こし、本の樹海と化した部屋からバックを引っ張りだして、中を確認した。
なんとなくバックが軽かった。
根城の中心で、椅子の後ろにある窓の方向に目を向けると、色々な物が目に入った。
陽光に煌めく黒い石。
なんだかよく分からない木製の盾と槍。
積み重なった様々な色の本達の樹。
そして、暗い部屋を照らす暖かい光とどこまでも続く青い空。

私は玄関に向かい、サンダルの横にあるブーツに足を突っ込み、部屋を出た。
僕はこれから、旅に出るのだ。

隣町の私のノート

最初の旅の目的地は隣町。
隣町といっても歩いて2時間以上はかかる計算だ。
それでも、普段あまり出歩かない僕にとっては立派な旅だ。

旅人(途)

まだまだ途中です。

更新がんばります!

旅人(途)

一人の男が旅する話です。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-02

Copyrighted
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  1. 旅支度
  2. いってきます
  3. 隣町の私のノート