ドラえもん最終回『宿題は、終わったのかい?』(に)

(に)

ダダダダダ!!

ガチャッ! バタン!

ドドドドドッ!!



「ド、ドラえも〜ん!!」



のび太は、いつもの様にジャイアンとスネ夫にいじめられ、涙をこらえながら家に飛び込こんだ。


玄関に入るなり、我慢していた涙も開放され大号泣! 階段を勢いよく駆け上がり、いつもの様にそこに座っているドラえもんに泣きつく。



「☆※♯℃★◇▲!!」



のび太は、今日あった出来事、ジャイアン達にいじめられた事を一生懸命ドラえもんに伝たえるが、泣きながら言っている為、何を言っているのかサッパリ解らない。


きっと、この状態ののび太の言葉を理解出来るのは、固い友情て結ばれた親友であり、良き理解者でもあるドラえもんくらいなものであろう。



「あれ出してよ! ほら前に使ったやつ!」



「今度という今度は我慢の限界だ!」



のび太はそう言いながら、ジャイアンへの怒りをドラえもんにぶつける。


しかし、ドラえもんはそんなのび太の呼び掛けに何の反応も示さなかった。


いつもなら、



「またかい? のび太くん! 君はいつもそうやって僕の道具に頼ってばかりで……」



と、ドラえもんのお説教が始まるのだが、何故か今回に限ってそれがない。



「……おい。 どうしたんだよ、ドラえもん?」



しかしドラえもんは、何も言わない……。


そんな態度のドラえもんに少し不審感を覚えたが、のび太にとって今はそれ処ではなかった。


今はただ少しでも早くジャイアン達に仕返しをして、ギャフンと言わせないと気がすまないのだ。



「なんとか言えよ! ドラえもんまで僕をバカにするのか!?」



「ドラえもんってばッ!!」



のび太はそう言いながらドラえもんを突き押した。


──だが、






ユラッ…………コテン……



ドラえもんは何の抵抗もなく、そのまま倒れこむ。



まるでただの置物かの様に……



「…………ドラえもん?」



のび太にはドラえもんに何が起こったのか解らなかった。


すぐに思い付いた事は、ドラえもんがイタズラをしてのび太を脅かそうとしているのだと思った。



「ま〜たまた〜! ドラえもんってば〜! そうやって僕を脅かそうとしたってムダだよ」



実は過去にも、何回かドラえもんのイタズラや道具の効果によってこういう事があったのだ。



「ほら、ドラえもん! もう、いいだろ!? いつまでそうやってるつもりだよ!」



のび太はそう言いながらドラえもんを揺する。



「やあ、ゴメンゴメン! のび太くん」



いつもの笑顔でそう言うドラえもんの反応が帰ってくるものだと思い込んでいた。


しかし、そんなのび太の思惑も裏切り、ドラえもんになんの反応もない。


──なんだろう? 何かがおかしい……。


のび太はいつもと違う空気を感じ、少し不安になる。



「ねぇ、ドラえもんってば!」



そう言いながらのび太は、ドラえもんを起こそうと色々試してみた。


叩き、起こし、転がし、揺すり、はたまたしっぽを引っ張ってみたりと、今出来る限りの事を試した。


しかし、ドラえもんに何の反応も無い……。



「……」



そして、のび太は小学生ながらに今のドラえもんがどういう状態なのかを察知する……






『ドラえもんが壊れてしまっている!!』


と。


あまりに突然の事態に、どうしたら良いのかのび太には分からなかった。


しばらく呆然と立ち尽くすのび太だったが、ふとある事に気が付いく。



「そうだよ! 壊れたんなら治せばいいんじゃないか!」



そう言うとのび太は無造作にドラえもんの『四次元ポケット』に手を突っ込んだ。



「……あれ?」



しかし、中はいつもの四次元になっておらず、何故かただのポケットとなっていた。


どうやらドラえもんが機能していないと四次元ポケットも使えなくなってしまうようだ。


のび太はどうしたらいいのか判らない自分に、だんだんイラつきだって来る。


だが、すぐに別の方法がある事に気が付く。



「そうだ! 『タイムマシン』で未来に行けば……!!」



のび太はそう思い付くと、直ぐさま自分の机の引き出しを開いた。


しかし、そこあるはずのタイムマシンはなく、ただの引き出しになっている……。



「なんだよっ! なんで使えないんだよ! これじゃドラえもんを直す事が出来ないじゃないか!」



そう言いながら、机の引き出しを無造作に取り出し、足元へ投げつけた。



「……ドラえもん。 僕はどうしたらいいんだよ! 何とか言ってくれよ! ドラえも〜ん!!」



のび太はそのまま、ただただ泣く事しか出来なかった……。



いつものび太が困っている時、ドラえもんが助けてくれた。


だからこそドラえもんがピンチな今、自分が助けてあげたかった。


しかしそうは思っても、のび太にドラえもんを助ける力が……方法が見つからない。


ただ無力な自分を思い知らされ、泣くだけしか出来なかった。


また、そんな自分が情けなかった……。




「……のび……ん! …………び太さん……」



ドラえもんの片割れで泣き崩れていたのび太の耳に、どこからともなくのび太の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


もちろん周りを見回すが自分達以外、他に誰も見当たらない……。


しかし、のび太を呼ぶ声がするのは間違いない。


のび太は静かに耳を澄ませ、この呼び声がどこからくるのかを探った。


どうやらふすまの中から聞こえてくる様だった。


そこはドラえもんが来てから、ずっとドラえもんの寝床になっている場所。


前に何度かドラえもんの留守中に黙って中に入り込、よくドラえもんに怒られたものだ。


しかし今はその怒ってくれる人がいない……


のび太はふすまの戸にそっと手を当てると、ゆっくりとドラえもんの方を振り向く……



「ごめんね、ドラえもん。 ……中、開けるよ……?」



もちろん、ドラえもんに反応はない……


実際、その声がドラえもんに届かない事はわかっていた。


しかしのび太には、掛けずにいられなかったのだ。


動かぬドラえもんを見つめ、そしてゆっくりと視線を外す。


のび太は、ふすまの戸を静かに開いた。



(つづく)

ドラえもん最終回『宿題は、終わったのかい?』(に)

ドラえもん最終回『宿題は、終わったのかい?』(に)

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-12-01

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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