エゴイズム 第3話
ちょっと遠い未来。
その未来では超能力を使える人が少しいる。
ただ、まだ超能力者を知る人はまだ少ない。
そんななか、超能力を悪用する者もいる。
人知を超えた力に警察は、なされるがまま。
警察の権威がなくなりつつあるために、自衛隊が台頭。
自衛隊附属中学校、高等学校が続々開校される。
しかし自衛隊でも超能力者による犯罪に手を焼いている。
業を煮やした政府は賞金首制度を半ば強引に公布し施行した。
この制度により市民、軍人という隔たりはなくなりつつある。
このような混乱している時、上文(かみふみ)ハイツの永治幸平(ながやこうへい)たちは行動を起こすのであった。
4月8日:いつものこと
上文高校は全国有数の進学校のため、始業式の翌日には授業があった。
ほとんどの生徒が下校する生徒の中に幸平はいた。
彼は上文ハイツというマンションで一人暮らしをしていて入口あたりで管理人にこう言われた。
「今日、会議あるからなー。」
「あ、はい。わかりました。」
上文ハイツの部屋数は少ないほうだ。
管理人の部屋を含めて17部屋しかないが、1つ1つの部屋が広い。
その上まだ、4人しか住んでいない。
自室に入った幸平はすぐさまパソコンの電源をいれアルマジロというソフトを起動する。
このソフトはハイツに住んでいるエンジニアによって作られたもので、通話やチャットができる。
「あっといけね。」
ペンを落とした幸平はペンの上に手だけをかざし、ペンが吸い付くように手についた。
そう、彼はサイコキネシストだ。
*
「うーん、今回はね、強盗がここ付近に潜伏しているらしいから警察無線を傍受しながら動いていくよ。はい、じゃ、0時にはバンに乗ってるようにしよう。」
なんとこのハイツは管理人以外は超能力者だったのだ。
車の中には5人。
永治 幸平(ながやこうへい)、サイコキネシスト、男性、16歳、高校生
神津 真帆(こうづまほ)、テレパシー、女性、20歳、大学生
小池 勇治(こいけゆうじ)、木・火・土・金属・水の操作、男性、21歳、大学生
谷中 良太(やなかりょうた)、声帯の変化、男性、27歳、エンジニア
矢沢 将 (やざわまさる)、男性、32歳、管理人
のこの5人だ。
「警察の無線を傍受するかぎりはこの地域に強盗が潜伏してるみたいやね。将さん、車をここらへんで停めて。」
「よし、全員で探してくれ。見つけたらアルマジロで連絡すること。じゃぁ、頑張ろう。」
*
『さて、強盗はどこにいるのかな・・・?』
「っていたよ・・・。」
<犯人いましたよ。良太さん、GPSで特定してください。僕の近くです。今から追いかけます。>
強盗がアジトと思われる建物に入ることを確認すると能力でドアを吹き飛ばす。
「誰だ、お前!!」
「・・・。」
犯人が駆け足で階段を上がるが幸平は落ち着いて階段を上がる。
ドボルザークの「新世界より」を口笛で吹きながら。
『こいつ、焦りすぎだろ・・・。ベランダに逃げて行ったぞ・・・。』
ベランダに逃げた犯人の胸倉をつかみ柵から外にだす。
そう彼はサイコキネシストだが特異性があり自分の身体能力を増幅することも可能なのだ。
「そ、そんなんじゃ、お、俺は殺せないぞ!」
「なら手を放してもいいよな。」
手を放し強盗がベランダから地上にまっさかさまに落ちていった。
グギッとくじいたような嫌な音がする。
「ぐぁあぁぁ、いでっええええええええええええええええええ!!!!!!!」
「俺の体重は、60kg。100gを1Nとして600N。ここから地面はまぁ、12mぐらいか?600×12は7200N。つまりここから720kgの人間がお前にぶつかるが覚悟はできてるかぁ?」
「ひ、ひっ!!??」
ピョンと柵から飛び降り強盗に向かって落ちていく。
強盗にぶつかる直前に地面を念力で押し反作用でふわりと着地する。
どうやら強盗は気絶してしまったようだ。
<確保しました。>
と幸平が無線で伝えたしばらくしたあとバンが来た。
将は満面の笑みで
「おう、幸平、お疲れ様!日本が賞金首制度を導入してくれたおかげちょっとの殴りとかは許される。いやー、いい時代になったもんだ。」
『この人、いつから自警活動してるんだよ・・・。』
「よし、俺はこいつを警察に引き渡す。お前らは先に帰っててくれ。勇治、運転頼めるか?」
首を縦に振る勇治。
彼は能力の対価として言葉を発することができない。言葉を発すると49日間能力の発動ができなくなってしまう。
*
ハイツに帰った彼らは寝るかお風呂に入っていた。
時刻は3時57分・・・。
「あ、明日、英単語テストじゃん!!あああああ、寝たい!寝たいぞぉ!」
エゴイズム 第3話