神皇様のお嫁さん ~2~

黄泉編が終わり、第二段!
新キャラも続々~!(^ー^*)

 「椿様、苦しくはございませんか?」
そう笑顔で言いながら、どんどん帯をしめていく女房から悪意を感じた。
 黄泉の門から帰還した椿と尊は、そのまま神老帝(尊の父で元神皇様)に呼び出しをくらった。
神老帝曰わく、
『はやく祝言を挙げ、はやくやることやって、はやく孫の顔を見せぇ~』
らしいので、予定よりはやく祝言を挙げることにしたのだ。
が…、屋敷中に祝言の噂が広がるやいなや、椿は女房達からの些細な嫌がらせを受ける羽目に…。そして今に至るわけである。

「は、はい…丁度いいです。」
全然丁度よくなどない。何か込み上げて来そうな勢いだ。
「そうですか?まだ少し余裕がありそうですが…?」
ニコニコしながら帯に手を伸ばしてくる。
さすがにこれ以上締められると、本当に何か出てきてしまう。
(だ、だれかーーー!)
「早苗様、何をしておられるのですか?」
突然襖の方から聞こえてきた声に、二人とも驚く。
早苗と呼ばれた女房は、声の主を見るなり、顔をしかめた。
「桃華様…、ただ帯をしめていただけですよ。」
「では何故椿様は涙目なのでしょうね?」
早苗はバツが悪そうな顔をして、目をそらす。
「さ、さぁ?」
「早苗様。ここからは私がします。お引き取りを。」
早苗は、そそくさと部屋をあとにした。
「あ、あの、ありがとうございました、助かりました。」
「椿様…、ああいう場合しっかりお叱りになって下さいませ。でないと椿様の身がもちませんよ。」
きつくしめあがった帯を緩めながら、桃華と呼ばれる女房は助言する。
「わ、分かりました、頑張ってみますね!」
桃華は意気込む椿に苦笑をし、着付けをやり直し始めた。
「桃華様、桃華様はお年はいくつですか?」
見た目は椿とさほど変わりがなく、同い年に見えるほどだ。
桃華のくりっとした目が椿を驚いたように見る。
「えっと…桃華様?なにか変な所でもありましたか?」
「あ!い、いや!違うんです!その、様や敬語は使わなくてもよろしいのですが…」
今度は好い加減に帯が締まっていく。
「私、人の上に立つなど経験が無いもので…、同じ目線が良いんです。同じ目線で物を見て、会話して…そっちの方が楽しいじゃないですか」
椿が微笑むと、桃華は着付け途中の手をとめた。
「…あ、あの…何か気に障ること言いましたか?」
椿が桃華の顔をのぞき込むと、桃華が何かをつぶやいた。
「年齢は400歳です。現世では16歳といったところです。名前はご存じの通り桃華です。父は御門神社という小さな神社の神です。好きな食べ物は、現世で一度食べたケーキなるものです。正直ここの女房達は好きではありません。私、椿様にお仕えしたいです!」
一気に喋ったからか、頬が少しあかく染まっている。
「へっ…、あ、えっと、神司椿…あ、貴城椿です。歳は同じく16歳です!好きな食べ物はチョコレートです。正直ここの桃華様以外の女房達はあまり好きではありません。桃華様!私の女房になって下さいませ!」
一瞬の沈黙の後、2人は声を立てて笑った。
「椿ー!まだかー?」
襖の外で声がする。
愛しい人の声だ。
「尊様!すみません、もう少しです!」
椿はあわてて返事をすると、桃華に急いでもらうようお願いした。
 「神皇様、終わりましたので中にお入り下さい。」
桃華のかけ声とともに、襖があく。
瞬間、尊は息をのんだ。
純白な着物が椿を包み込んでいて、触ると崩れてしまいそうな儚さと、どんな闇にも屈しない光を放っていた。
椿の唇は熟した実のように紅く、艶やかに輝き潤っていた。
「尊様?」
妖艶な唇が自分の名前を呼ぶ。
女房が居なければすぐに、それを食していたことだろう。
「あ…いや、そんな可憐な姿、他のやつに見せたくないなぁ…、
って思ってな」
なめらかな頬があかみがかった。
「も、もう。ダメですよ、そんなわがまま。」
完全に2人の世界である。
桃華は苦笑して、部屋を出ようとした。
「あ!桃華様!待って下さい!」
2人の世界から抜け出したのか、椿が桃華を止めた。
「尊様、こちら桃華様です。私、桃華様に私専属の女房になっていただきたいのですが、よろしいですか?」
正気に戻った尊が、桃華に目をむける。
「八代!いるか?」
尊が叫ぶと、襖の外から声が聞こえた。
「はい、ここに。何でしょうか?」
「桃華という女房は信用できるか?」
しばらくの沈黙の後、八代はしっかりした声音ではい、と返事をした。
「よし。ならいいぞ!桃華、これから椿の世話をよろしく頼むぞ。」
桃華はまるで花が咲いたように微笑んだ。
「はい!」
椿と桃華がキャッキャと騒いでいると、一都がやってきた。
「尊様、椿様、そろそろお時間ですよ。」
不意に尊が椿を見つめる。
「…どうされましたか?」
「本当にいいんだな?俺と縁を結んで…。後戻りは──」
「するつもりなど、これっぽっちもありません。」
凛とした声音だった。
真っ直ぐに尊を見つめ返す瞳は、神世に来たときに揺らいでいたものではなく、意識のあるものだった。
「ここに来たときには、とても不安でした。ですが、とても温かな人に出逢いました。とても…愛しい人が出来ました。だから神世がとても大好きになれました。私は戻るつもりは御座いません。仮に、戻れと言われても戻らないでしょう。…こんなに沢山の幸せをもらったのにも関わらず、まだ尊様と一つになることを望んでいる私は、望み過ぎてバチが当たるかもしれませんね」
顔を赤らめて微笑する椿を、優しく尊は抱きしめた。
「椿…ありがとう、お前はこれからまだまだ幸せになるんだ。バチを当てる神がいたら、俺が消してやる。だから、もっと望めよ。俺はお前を甘やかしたくて、しょうがない。」
「尊様…」
完全に2人の世界に戻った2人を、一都が咳払いで現実に引き戻した。
「行きますよ。ほら、尊様はやく!」
「ちっ…いいところだったのに…バカ一都!」
「何とでもいいなさい!このノロケ神!」
「あ!言いやがったな!」
先に行く2人の応酬を聞きながら、桃華と苦笑した。


すっかり暗くなった辺り。
雅な音楽とともに舞い上がる桜。
火照った頬に心地よい風。
隣に並ぶ愛おしい人。

天国のお母様、現世のお父様、少し意地悪なお義母、お姉様、
私、今日、結婚します。
尊様に生涯を捧げます。
産んでくれて、育ててくれてありがとうございました。
「椿、行くぞ。」
尊様、愛してくれてありがとうございます。
「はい!」
私は宇宙一、幸せな人間です。



「でさぁ~、…ちょっと椿っち聞いてる?」
半ばボーッとしか聞いていなかったので、瞬間的に冷や汗がにじみ出る。
「え!?あ、はい!聞いてますよ!」
今は、そう、祝言の場だ。
なぜこんな状況なのかというと、酔っ払った七水が椿に絡み出したのだ。
そもそも、七水がこの祝言の場に出席していることじたい、おかしいのだが…。
椿はそれには触れず、七水の話しを根気強く聞く。
内容は終始尊の事である。
「もー!悔しいー!椿っちにとられちゃったぁ…グスッ、」
ダルがらみもいいところだ。
いきなり泣き始めた七水に、焦りながらもちり紙を渡す。
「椿っち優し
いね…美人だし…性格良いし…七水より強いし…」
「…七水様…、何を言ってるんですか!七水様は私なんかが産まれる前からずっと尊様の事をお慕いされておられたのでしょう?頑張って追いかけられておられたのでしょう?十分お強いじゃないですか!!私なんてまだまだです。七水様は私の先輩です!」
「つ、椿っち~!(泣)」

神皇様のお嫁さん ~2~

神皇様のお嫁さん ~2~

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-30

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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