私の問題

Story:01 [私とはどのような人物か]

今 もっと強調すれば たった今現在
地球上には約70億人もの人がいるらしい
でも、私からすればもっといるんじゃないかと思うんだよ
未開の地の謎の全裸民族とかさ、地底人とか
まだまだ発見されてない人の集まりがあったりするのではないかと
それだったら100億人はいるんじゃないのかと
これだけ地球は広いんだからそんなこともあるのではないかと
とにかく私は考えているわけですよ
「絶対に地球には100億の人はいるぞっ!」って
ま、それらに意識なんてないんですけどネ

Story:01 [私とはどのような人物か]

「操は本当、葬式で泣いたりしない子なんだな」
親戚のお婆ちゃんのお葬式からの帰りの車内
運転する父が突然、そんなことを言った
「お前、知代お婆ちゃんには結構お世話になってたろ」
「……一緒にマフラー編んだっけな?」
必死に思い出してみたものの、知代お婆ちゃんに関しての記憶が曖昧だ……
なので、マフラーを編んだ件には疑問符をつけさせてもらおう
「いいお婆ちゃんだったろ?悲しかったよな亡くなって」
「……」
コクリ
とにかく何も言わずにうなづいておく
「お父さんもな、知代お婆ちゃんにはよくお世話になってな……お母さんとよく...」
適当に相槌を打ちながらカバンを探りケータイを取り出しいじる
「聞いているのか操?」
「うんうん」
「はぁ……もういい」
やっと黙った、車内では静かにしてほしい
用済みとなったケータイをカバンにしまい
助手席をリクライニングさせ目をつぶる。

お母さんは私が生まれてすぐに死んだらしい
なので記憶にはない
父曰く「健気できれいな人」
だったらしい
そんなことはどうでもいいのさ
私は今、期末テストが近い
高校2年の3学期に生きる私からすれば結構重要だ
3年生に上がれるかどうかの、そのテストであるのだから
私はある事故のせいで3年に上がれるか危険だ
2学期の期末テストでは、ある3科目が0点であった
テスト用紙の氏名欄に「永井 操」と書き忘れたのである
小学校では大体、回答の字を見て
「操ちゃ~ん、これあなたの字だよね、名前忘れてたよ~」
「あ、ほんとだ~テヘぺロ☆」
ってなって0点なんてなかったのに……
この事故のせいで2学期のクラス順位とか落ちに落ちた
もともと私は
授業不参加多め、ノート提出曖昧、クラブ不参加、イベント不参加
やらで1年から2年に上がれたのはギリギリというレベルらしい
とにかく授業には参加してノートの提出を頑張ったりした2年生であったが
名前書き忘れ事故でまたギリギリ状態らしい
どうすればギリギリではなく、普通というレベルになれるのだろうか?
私は考え、考えた結果
「ま、なんとなるや」
という答えを導き出した、素晴らしい
きっと私は普通にはなれないのだろう
死んだ母のように「健気できれいな人」ではないのだから。

葬式から帰って私はお風呂に入ってすぐに寝た
とにかく朝が待ち遠しいかったのである
明日も太陽が昇る、そう信じている。

意外と早く訪れた朝を歓迎しベッドから起き上がる
リビングに向かうと新聞を読んでいる父を見つける
「おはよう操」
「おはよう」
小声でつぶやきトースタにパンを放り込む
それと同時に洗面所で顔を洗い歯を磨き、朝の行事を終了させる
鏡に映る眠そうな私の顔をまじまじとみる
「…はは、変な顔~」
トースターの音が聞こえ小走りで戻る
「焦がすなよパン」
「うん」
良い狐色に焼けたパンにバターを塗り咥えたまま
自分の部屋に向かって制服を探す
まったく、なんでこんなに私の部屋は汚いのだろうか……
パンくずを落としながらも制服を探ししわくちゃの制服を見つける
右手しわを伸ばしながら左手でパンをほおばる
制服の上にパンくずが落ちていく
なんとか食べ終わり寝巻を脱いで制服を着用し
カバンを持ってリビングに降りる
「いってらっしゃ~い」
「はいはい」
買ったばかりの靴を履いて玄関から飛び出す
と同時に後悔した
夜に雨でも降ったのか水たまりができており
庭のそれに思いっきり足を入れてしまい靴が汚れた
「うひゃ~……も~いいや」
近くにかけてあったタオルで足を拭き自転車にまたがる
学校までは約10分だ
ゆっくり行こう、時間はあるのだから……。

遅刻もせず教室に入る
人が多く変な空気が漂う教室は、あまり好きじゃない
「でね~ あ、操おはよ~」
「はいはい」
私が席に着くと女子2人が近づいてくる
あぁもう面倒くさい…
「ねぇねぇ昨日お葬式だったんでしょ?」
「うん」
「学校、大丈夫なの?元気出してね」
「元気だよ」
苦笑いを見せとにかく早く離れてくれというオーラを放つ
が、こいつらには通用しないんだろうな……
こいつら…いや、地球上に存在する約70億
私からすれば約100億の人間
すべては私のように意識を持っていないのだから…
私は私以外をゾンビと呼ぶ
「そういえばさ、今日はなんか転入生が来るらしいよ」
「えぇ~今~?」
転入生?…このクラスにゾンビが増えるのか
「男の子らしいよ~」
「へぇ~イケメンだったらいいなぁ~~」
「……」
「ねぇねぇ操はどう思う?」
「……え?」
「だから、男の子だったらイケメンがいいよね?」
「……さぁ」
興味はまったくない
「ほら~席につけよ~~」
「あ、先生きた、じゃね操」
「はいはい」
先生の登場とともにクラス中のゾンビが自分の席に座る
適当にあいさつし1時限目の準備をして
カバンを探りメガネを取る
「もう知っていると思うが、今日は転入生がいる、入ってきなさい」
トビラが開く音が聞こえ足音が聞こえる
「うわぁ、結構イケメンじゃない……?」
小声でそんな声が聞こえる
メガネをかけ転入生とやらを見てみる
すらっとした体系で身長は高く
ショートの黒髪で綺麗な顔で目は少し鋭いけど
肌の色や顔のパーツからして、服装によっては女に見られそうだ
胸ポケットには赤色のメガネが入っており
肩にはショルダーバックがかかっている
なんというか渋谷あたりにいそうなやつ
私服にネクタイをつけそうなタイプのやつだ
「じゃあ自己紹介を」
「はい」
男らしい低い声
「久留見 靖也です、よろしくお願いします」
クラス中で拍手が起きる
「じゃあ、靖也君の席はあそこ あの黒い眼鏡にショートの女子の後ろ」
「………あ」
私か
「はい」
足音が私に近づく
それは徐々に大きくなり
それは私を通り過ぎ
それは私の後ろで止まる
「………いっ」
背中を突っつかれ私は変な声を出してしまう
ゆっくりとふり向くと、さっきの足音の根源である転入生が
私をじっと見ている
「君、名前は?」
「……永井 操」
「永井さんか……よろしく」
「……はいはい」
いつも通りのゾンビに対しての言葉で会話を終了させ
私は前を向いた。
「よ~し、じゃあ教科書の70ページを開いて~~」
とにかく、転入生なんて考えずに勉強をしよう
たとえこのクラスに10人、20人とゾンビが増えようと
私には関係ない
唯一意識がある私だ、かかわる必要なんてあるまい
物に話しかけるようなものだ
この世界に、意識があるのは私だけ
この世界には、私しかいないのだから

Story:02[モノと関わり関わられること 前]

Curiosity killed the cat 好奇心は猫を殺す
ということわざがある…その意味は
9つの命を持つ(そういわれている)猫ですら好奇心が原因で命を落とす、それが転じて
過剰な好奇心は身を滅ぼすという意味である
たしかに猫は見た目以上にタフだ、高いところから落ちても自然に体を回転させ足で着地する
すばらしい反射能力だ
『猫の歴史と奇話』という本によると
23メートルの高さからコンクリートの階段に落ちた猫がいるらしい
その猫が負った傷は爪が一本折れただけ
人間だと爪どころか命が折れる高さであろう
また、離陸したての輸送機から飛び降り76メートル下の芝生に落ちて平然と歩いていたとの記録もある
しかし、先ほどの本の中には
10.6メートルから落下して内臓が損傷し死亡した猫がいるという記録がある
これは一体どういうことか?
私的にそこに[好奇心]が関わっているのかもしれないと思う
ただの私の憶測というか、戯言というか…寝言みたいなものであるが
猫はきっと不意な落下なら何メートルだろうが何キロだろうが死ぬことはないのではないか?
とするならば、猫は[好奇心]で死ぬのだろう…10.6メートルも何らかの好奇心がったのだろう
「ここから落ちても僕は生きてるのかにゃ~」
「なんかたくさん走っているけどぶつかったらどうにゃるのかにゃ~」とか
そんなくだらない好奇心で死ぬのが猫という生き物かもしれない
実際、猫は好奇心が強いかなんて知らない
可愛いことに変わりはない猫であるが、そんな好奇心で死んだと飼い主が知れば、それはとても悲しいことである
……以上の戯言から、好奇心など持つだけ無駄と結論を出しておこう



Story:02[モノと関わり関わられること 前]

黒色は光を吸収しやすく逆に白色は光を反射する
その理由は、光の色は赤色、緑色、青色の3原色で構成されており
白色はそれら3つの色を100%の割合での掛け合わせで出来ていて
黒は3つの色0%の割合で出来ている
以上の事から、白色はこれ以上加える光の色がないため反射し
黒は光の色を含んでいないため吸収するのである
なかなか面白い話ではあるが正直言って興味はない
しかし私はどこかしらで興味のない話、いわゆる雑談を覚える
と言ってもゾンビ相手に話したりしない、ただ頭の中でつぶやいているだけ
それでも一応私は満足している、ほかのゾンビにはこんなことできやしない
どうだゾンビ共~、私の周りにいるゾンビ共~お前たちに空想などできやしないだろうが、ははははっ
できそこないのゾンっ
私の考え事を妨げたのは学校のチャイムだった
それは授業の始まりではなく、呼び出しのチャイムだ
「2年3組、永井操、久留見靖也はすぐに職員室までくるように」
「……うわ」
もう授業始まりだというのに呼び出されるのは果てしなく腹が立つ
ゾンビの言うことだ…無視しよう……
「あの、永井さん?」
「いっ…は?」
前には、かの転入生、久留見靖也がいた
何で名前覚えてんだよ私……ゾンビだぞ
「呼ばれたから行かないと……」
「じゅ、授業始まるし、それからで……」
「いや、すぐに来いって言ってたし、行こうよ」
あぁうっとおしいこのゾンビは……一人で行けよ……
あぁでも、このままだと面倒だし……あぁ…
「わかった……じゃあ行くよ」
おもむろに立ち上がり廊下までの道をふさぐゾンビを避けていく



職員室までの道筋、隣に久留見ゾンビが私と同じ速度で歩く
「あのさ永井さん」
「…………」
「……ねぇ?」
「………」
「永井さん?」
何だよこいつ……なんで話しかけてくるんだよ……
黙って歩けないのかよこのゾンビは
「俺の事嫌ってる?」
あぁうるさい……
私が光だったらこいつが黒でも絶対に反射する
「ねぇって?」
「あぁもううるさい……何?」
「いや…俺の事嫌ってるのかなって」
「なにさ、『あのね永井さん』って呼びかけの理由はそれ?違うでしょ?」
「あ…ごめん……なんで呼ばれたのかなって」
「知らないよ……」
「そうだよね……」
そうやってずっと黙っていてほしい
あぁ、結構長くしゃべった気がする、なんでゾンビみたいなモノに話しかけているのだ私は
恥ずかしい恥ずかしい、古文風でいうと
モノに話しかけたる自分が恥ずかし

大体、私はいつも愛想悪くしているのになんでゾンビは私にかかわろうとする
なんだ、そういう本能でもあるのか?ンなわけない
つまりあれか、ゾンビを光とすると私は黒色みたいな感じで
ゾンビを吸収しやすい人間なのか?私は
別にかわいくないし、背も低いし、なにがゾンビを……
好奇心か?何ともくだらない好奇心で私と関わろうとするのか!
それが本当なら激おこだ、激おこぷんぷん丸だ
ゾンビごときが好奇心で私と関わろうなど……
成敗だ!好奇心なんて持っている生意気なゾンビを成敗だ!古文風で言うと
「永井さん?」
「……?」
「職員室すぎたよ?」
「……はいはい」
8歩ほど戻り職員室に入った

先生の要件はこうだ
私の成績が危ないこと
私の進級が危ないこと
私のノートの提出を望んでいること
私の傘が盗まれた件について犯人は校長だったこと
以上
最後に先生は「とにかく頑張れ」と言い残し私は退出した
ちなみに久留見ゾンビに対する要件は聞かずに帰った、まぁ当然だろう

先に帰っていた私だったが久留見ゾンビは結構速く追いついてきた
「俺、教科書買わないとダメなんだってさ」
「……」
「ねぇ永井さん?」
「……はいはい」
勝手に買えよ教科書ぐらいさ、私になに話しかけてんの
「永井さんは人と話すの嫌なの?」
「……」
「ねぇ?いやなの?」
「……」
「ねぇって、永井さん?」
「はぁ……あぁもううるさいよ!」
立ち止まり久留見ゾンビを見る
「さっきから犬みたいにさ!何でそんなに私に話しかけるの!?ゾンビの分際でさ!返答しないってわかったら黙ってほしいんだけど?」
二行以上しゃべってしまった
「ゾンビ………いや、だってさ……」
「なに?」
「俺……永井さんに興味あるし……」
「いっ………あんたらが……あんたらみないなゾンビが興味を示すんじゃないよ!好奇心なんてくだらないよ!猫死ぬんだよ?お願いだから私に話しかけないで!」
久しぶりの大声で喉が痛い、周りのゾンビの視線も痛い
「……ごめん」
「……」
ようやく黙ってくれたようだ……
私が歩いても彼は立ち止っている……
かなり差が開いたところで彼は歩き出した
追いつこうとしているわけじゃなく、私を避けているように思える


好奇心など、持っても何の意味がない
もしも私が好奇心を持ったのならモノと会話するのだろうか?
否と言っておこう
道端に石ころがあってそれを見て
「これ、なめたらどんな味するのかな?」
って好奇心もってなめたとするのならその人は変人だ
私は変人ではない……そう信じている

私の問題

私の問題

「この世界には私しかいない」 そう思い続けていた少女が、一人の少年と出会い、変わっていく話

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-28

Copyrighted
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  1. Story:01 [私とはどのような人物か]
  2. Story:02[モノと関わり関わられること 前]