Monsters Blood

Monsters Blood

※この物語は流血や暴力や少々ホラー表現があります。苦手な方は見ないことをお勧めします。

テンプス大陸ではモンスターたちが様々な村や国を襲い苦しめていた

そんな時ケントルムと呼ばれる国で生まれたのが「モンストゥルム」と呼ばれるモンスターハンターの支部だった。

そんな中、モンストゥルムに登録されてない、モンスター専門の賞金稼ぎ
ヴィルマ・ベーテルは一人で国中を旅しながら賞金付のモンスター退治を行っていた。

「さぁ、モンスターを封印しよう」


ファンタジーアクションストーリー

不定期更新です

登場人物

ヴィルマ・ベーテル:本作の主人公。女性。有名なモンスター専門の賞金稼ぎ(バウンティハンター)。男っぽい口調でしゃべる。老人と子供と動物に優しくモンスターには容赦しない性格。ある目的のため一人で旅を続けている。

第0滴 Harpyiae

赤い月が浮かぶ夜空の下で、一匹の怪物があたりに肉片を散らばせながら人間を食らっていた。怪物は、顔からお腹まで女の姿をしており、両腕と下半身は鳥のような姿をしていた。怪物が肉片を食いちぎるたび、赤い鮮血が舞い地面を黒く染めていく。醜い顔を血で濡らし、これにとっては美味なのだろう、嬉しそうに臓物を食らっている。そんな怪物の背後から低めの声が振ってきた。

「やっと見つけた」

その声に怪物は、黄色い目を光らせながら声のした方に振り向いた。その人物は、教会の屋根の上にいた。月に背を向け逆光で顔は見えなかったが体のラインから女性であることは判明できた。
風で長い髪が激しく靡いている。

「怪物ハルピュイアの血を持つものか」

怪物、ハルピュイアは、翼を広げ奇声を上げると地面を蹴り上げ声の主のほうへと向かう。

「安心しろ、すぐに主の元へと送り届けてやる…今までの罪を全部背負ってな!」

女性は、教会の屋根を蹴り上げると空中で一回転しハルピュイアの肩に足をかけると力を加え地面へと蹴りつけた。その反動を利用して今度は、空中で宙返りをし、片膝をつきながら地面を降り立った。蹴りつけられたハルピュイアは背中から地面に向かって叩きつけられぎゃっと悲鳴を上げた。

女性は、背中から銀色の十字架の形をした杭を取出しハルピュイアの前に突きつけた。十字の中心に五つの、ルビー、サファイア、エメラルド、アメジスト、そしてダイヤモンド、宝石が十字の形に埋め込まれていた。宝石は月明りで一つ一つ競い合うようにきらりと光った。

「ぎぃぃぃ…」

ハルピュイアは、その光に一瞬怯えるもすぐに女性を睨みつけ牙をむいた。黄色い目がゆらゆらと怒りで燃え上がりちょっとでも隙を突けば襲いかかろうと耐性を低くした。

「やれやれ…お仕置きされるまで分からないようだな!」

女性は、杭を片手で頭上まで持っていき指を器用に動かしながら回転させ十字架を突き付けるようにハルピュイアに向けて突きつけた。ハルピュイアは、地面をけり翼を羽ばたかせながら駆けだした。

「テンプスを守る主、テンポラ神よ。我の声に耳を傾けたまえ」

女性ははっきりとした口調で言い放つと十字架の杭の宝石が光りだした。宝石から光の糸が現れ彼女の前に二重の円が出来上がり、銃で照準を合わせるようにハルピュイアを狙っている。

「ウェール、アウトゥムヌス、アエスタース、ヒエムスの自然の神よ、わが十字架に力を与えたまえ」

女性は、ハルピュイアが接近したのが見えると駆け出し地面を強く踏みつけハルピュイアの肩に向かって飛び、さらにハルピュイアの方を強く蹴りつけ反対側へと降り立った。ハルピュイアは、バランスを崩し地面に突っ伏した。その瞬間、彼女は光の二重の円をハルピュイアに向かって放った。二重の円は、ハルピュイアの腰あたりを囲むと一気に在図をちいさくし縄で縛り上げるように体をとらえた。ハルピュイアは突然の出来事に困惑し光から逃れようと体を捩った。

「無駄だ、お前はもう逃れられない」

ハルピュイアが顔を上げると月明りで彼女の顔が見えた。青みがかった黒くてストレートな長い髪をオールバックにし、化粧っ気はなく、形の良い眉毛は弧を描き、鋭い目つきと赤い瞳がハルピュイアを睨み下ろしていた。ハルピュイアはその目に恐怖を覚え、彼女から逃れようと体を必死に動かし逃げ出そうとした。

「諦めろ」

女性は手品のように一枚の赤いカードを取り出した。中心には黒い背景と赤い帯のような絵が印刷された単純なカードだった。

「お前の運命(ファートゥム)は決まっている」

カードを指ではいくと回転しながらハルピュイアの左胸にぴたりと張り付いた。それと同時に杭を振り上げカードを目印にし心臓へと突き立てた。骨を砕き肉を突き刺す感触が伝わり、杭はハルピュイアの背中を貫通した。

「ぎいぃっぃぃいぃぃぃ!!!!!」

ハルピュイアが悲鳴を上げた。痛みが広がりやけどをするような熱さを感じた。刺された処を中心に、ゆっくりとひび割れてゆき、ぽろぽろと壊れた陶器のように崩れ始めた。

「ハルピュイア!!封印(ケーラ)!!」

宝石が光りだし十字架を銀から金色へと色を変え、あたりを照らすようにまばゆく光りだした。ハルピュイアは、断末魔を上げながらぼろぼろと体が崩れ去り地面に小さな山を作った。十字架の光が収まるとカードを突き刺したままかがらんっと地面に落ち、元の色を取り戻した。彼女はそれを拾い上げ穴の開いたカードを引っこ抜いた。裏面に血がこびりついているが、不思議なことにその地は孔がふさがると同時にまるで吸い込まれるように消えて行った。表を見ると、先ほどは何もえがかれていなかったところにハルピュイアの絵と帯の部分にHarpyiaeと書かれた文字が浮かび上がった。

それを確認すると彼女は初めて笑みを見せた。


「任務完了(ミッシオ・コンプレートゥル)」


***** 


「ありがとうございます、ハンター様」

女性は近くの村に来ていた。木造で立てられた家や小屋が並んでおり、柵の向こう側には、多くの牛や羊が餌を食べている。彼女の周りには目の前にいる老人以外誰もいなかった。すべての村人は、それぞれ自分の家からこっそりと彼女を見ていた。

「貴方のおかげであの忌々しいハルピュイアがいなくなりました。これで平和に暮らせます」

「気にするな…」

「これは謝礼金です、ほんのわずかですが」

そういうと老人は朝でできた袋を取出しヴィルマの手の上に乗せた。金属がこすれる音が聞こえその手に重みを感じた。

「ありがとうございます」

女性は、肩にかけていたサックのほうに、金の入った袋を突っ込むと再び背負いなおした。

「あの、そういえばお名前をお聞かせ願いないでしょうか…」

女性は、老人に背を向けると村の外へと続く道を歩き小さく呟いた。

「ヴィルマ」

風が吹いて彼女の髪が靡いた

「ヴィルマ・ベーテル」



そう言って彼女は村から離れた。

Monsters Blood

別の場所で公開していた小説をこちらに移動させました。

Monsters Blood

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-11-28

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 登場人物
  2. 第0滴 Harpyiae