鑑賞記録-映画「パニック・イン・スタジアム」より


1976年、ラリー・ピアーズ監督。
アメリカンフットボールの試合が行われる競技場にて、侵入した狙撃手と、10万人の観客の安全を守るため投入された“SWAT”(特殊部隊)との格闘を描く。まさに「パニック映画」の名にふさわしい。試合時間ラストの二分、同点でむかえるスタジアム全体の熱気と呼応するように、固唾をのむ犯人とSWATとの駆け引きは見物。彼らの華麗で統制された組織的ムーブメントを眺めているだけでも十分に楽しめる。
そうして映画も佳境、ついに犯人の無差別乱射が開始された後は、なんともいい難い、まるで関ヶ原の合戦風景を目の当たりにするような衝撃的映像体験である。10万人の観客が我先にスタジアムを出ようと大混乱を起こしては、いっせいに出口へ猛進する獅子さながら、人間を物のごとく軽々と蹴り飛ばし、踏みつけにし、倫理も道徳もその一切合財をかなぐり捨てた動物的体裁があらわになる。哀れ人間の崇高な美徳も、たった数発の銃弾によってこう簡単にも箍がはずされてしまう。これこそ、本作一番の狂気であった。

鑑賞記録-映画「パニック・イン・スタジアム」より

鑑賞記録-映画「パニック・イン・スタジアム」より

「1976年、ラリー・ピアーズ監督。アメリカンフットボールの試合が行われる競技場にて ……」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-28

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