僕はノラ猫。

てくてく。ポテポテ。


てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
名前はない。



てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
毎日歩く。



てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
たまにもらえるにぼしが、僕の大好物。



てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
今日は僕の、とっておきの話をするね。


僕は今日も青い空の下、コンクリートの道を歩くんだ。


僕の周りのものは、全部僕より大きい。


僕より小さいものは、ありんこみたいな虫ばっかり。


大きいものは、さすがの僕でも怖い。


特にブーンってすごいスピードで迫ってくる「くるま?」が怖い。


だからブーンがあんまり来ない道を、僕は歩くんだ。


てくてく。ポテポテ。


てくてく。ポテポテ。


わぁ。焼き魚のいい匂いだぁ。


……お腹すいたなぁ。


道を歩くと、たくさんのいい匂いがある。


僕はノラ猫。


だからいつもお腹ペコペコ。


今日はいい匂いに負けちゃいそうだ……。


そう思うとフラーっと、誰かのお家の庭に入っていった。


くんくん。


うーん。やっぱりいい匂いだぁ。


でも、泥棒さんはいけないんだよね。


うーん。お腹すいたなぁ。


ちょっと残念に思ってたら、ベランダで金魚が泳いでた。


あっお魚だっ!


お腹すいたなぁ。


金魚が気が付いたのか、金魚ばちの中をぐるぐる泳ぎ回っている。


僕はそぉっと近づいてみた。


金魚は慌てているみたい。


どうしよう……。


お腹すいたけど……。


うーん。お魚は死にたくないよね。


うーん。お魚はにぼしみたく、動かないものに限るよね。


怖がらせてごめんね。


でもお腹すいたから、金魚の餌をパクり。


うぎゃっ。ぺっぺっ。


美味しくないっ!!


にがにがする舌を手で擦る。


うーん。にぼしが一番だ。


バイバイ。お魚さん!



てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
優しいノラ猫なんだよ。



てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
いつも腹ペコノラ猫。



てくてく。ポテポテ。
僕はノラ猫。
誰か、にぼしを下さいな。

僕はノラ猫。

僕はノラ猫。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-27

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