キミ と 私 。
天使の宿りし桜
貴方の十年前はどうでしたか
逞しい幹がすうっと伸びていた
寄り添えば 温かいくらいに
もっと大きな実が生り
もっと大輪の花を咲かせていた
ひらり ゆらり くるり ふわり
花弁は風と共に踊っていた
ひらり ゆらり くるり ふわり
貴方を包み 私を包み
髪を撫で 頬を撫でる
貴方の十年前はどうでしたか
凛とした立ち姿が誇らしかった
身も心も若々しかった
私はあの頃に戻れるでしょうか
ひらり ゆらり くるり ふわり
熱き勇気が舞い落ちる
ひらり ゆらり くるり ふわり
金色に輝く世界へと誘おう
ひらり ゆらり くるり ふわり
ひらり ゆらり くるり ふわり
こんにちは
悪魔の宿りし桜
御前の十年後はどうなっているか
ぼろぼろに皮は剥けているだろう
触れれば 痛々しいくらいに
もっと実は小さくなり
もっと咲き誇る花は減るだろう
ぷつり ゆるり ぽとり ぐしゃり
花弁は悲しみにもがくことなく落ちるだろう
ぷつり ゆるり ぽとり ぐしゃり
御前を捨て 俺を捨て
涙をそそり 堕ち狂う
御前の十年後はどうなっているか
醜い姿を誰も見ることはないだろう
身も心も朽ち老いてしまうだろう
俺はその不様な姿を見てやろう
ぷつり ゆるり ぽとり ぐしゃり
運命(さだめ)の元に命が舞い落ちる
ぷつり ゆるり ぽとり ぐしゃり
光のない暗闇の世界へと誘おう
ぷつり ゆるり ぽとり ぐしゃり
ぷつり ゆるり ぽとり ぐしゃり
さようなら
赤、紅、血
赤ペン走らせ血の海を
口紅塗ってドクドク脈打ち
鉄の香りがツンと鼻に衝く
生温かい液体が手に滲み
スウーッと堕ちていく
ドクッ――ドクッ――
身体の中から液体脈打ち出す
赤ペン突き刺し血の川が
口紅なぞり流れてく
生温かい川に冷たい身体
手が染まり苦痛の表情
スウーッと堕ちていく
ド…ク――ド…ク――
ほんの微かに脈打ち出す
赤黒に染まる身体
痛みを越えて
鮮やかな液体眺めて
ほくそ笑む
嗚呼、何て綺麗なのだろう
赤 紅 血
スウーッと堕ちていく
脈打つ者は何も無い
キミ と 私 。