四季に咲く花

四季に咲く花

プロローグ

キーンコーンカーンコーン。------
六限の終わりを告げるチャイムが
なるとともに、太陽を浴びた向日葵のように、寝ていた生徒が立ち上がる。

みんなを縛り付ける授業というものからの、解放の合図であった。

この高校の2年4組の生徒たちは、
頭が特別悪いわけでもなく、いいわけでもない。そんな普通な生徒たちが集まっている。

しかし、その中ではひときわ目立って見える四人組がいた。

終わるや否や、元気になり、
元気を振りまいているような女の子。
彼女の名前は桜木春奈。

チャイムが鳴り終わっても、
ホームルームが終わっても、
ピクリとも動かない大きめの生徒。
彼が海賀夏樹だ。

授業中も、終わってからも、
特に代わりもなくぼーっとしている男の子。彼の耳にはイヤホンがささっている。彼が伊吹秋斗。

そして、あの絵に描いたような清廉潔白で大人しい彼女が、雪村冬音である。


少し周りより目立って見える彼らは、
実は小さい頃からの幼馴染なのだ。
家がみんな近所で、いつも一緒にいた。
そんな彼らはお互いのことはほとんど知っている。

春奈がとんでもなく食べることも、
夏樹が春奈に恋をしていたことも、
秋斗が実は天然であることも、
冬音の絵はこの世のものとは思えないことも。

そして、彼らは面白いほど事事の意見が
ばらばらなのだ。必ず四つに分かれる。


小学生の夏休み、みんなで出かけようという話をしていた時のことだ。
どこに行くか、意見を出し合っていた。

春奈は遊園地。夏樹は海。
秋斗は博物館。冬音は観光地巡り。

そして彼らは絶対に自分の意見は
譲ろうとしない。春奈、夏樹はともかく、秋斗と冬音も、そうなのだ。

そうして、もめていて夏休みが終わったのも、今となっては思い出になっている。

そんな仲良し四人組の、四つの意見。
彼らの日常を覗いてみよう。

まよいねこのかえるばしょ


いつも通り、授業という任務を終え、彼らは四人で帰っていた。

「来月テストだねー!冬音、今回といろいろとよろしくね♪」と春奈が言う。「うん。春奈が出来ちゃえば、赤点取るのは夏樹だけだね。」と冗談混じりの笑顔で冬音は笑う。すると、夏樹は詰まったような顔をして、焦りながら、「お、俺も秋斗に教わるから余裕だよ!」と詰まりながら言う。「やだ。」秋斗が夏樹を一蹴する。「なんでだよ!いいだろ!頼むよ!」夏樹は秋斗をゆさぶりながら言う。春奈と冬音は笑っている。

そんな他愛のない話をしながら帰っている。すると、道端に小さな猫がいる。とても小さな茶トラの子猫だった。首輪がついている。
「かわいー!!」春奈が目を輝かせながら言う。夏樹も「小ちゃいなぁ、、捨て猫か?」と冬音に尋ねると、「たぶん。」と言う。秋斗はというと、夏樹の後ろに隠れて、ホラー映画を見るように恐る恐る覗いている。実は極度の動物嫌いなのだ。
夏樹がその猫を抱えて、秋斗に見せた。「ほら、秋斗、猫だよ猫ほら!」意地悪そうな顔をして秋斗に近づける。「やめて!やめて!やめろ!ごめん夏樹、勉強いくらでも教える!ジュース奢る!やめて!」あの秋斗が人が変わったように喋り出した。「飼えないかなー?」春奈が疑問そうに言うと、二人は止まった。「いいんじゃね?かわいいしな。」「うん、、このままにするのもかわいそうだもんね、、」夏樹と冬音は賛成した。「ばかはるな!ばか!ばーか!」泣きそうな声で秋斗は言う。「大丈夫だよ、別に何もしないもん!」春奈が言う。

そうして秋斗の大反対は無視して、ひとまず春奈の家に連れて行くことにした。

「かわいいなーこいつー」夏樹は子猫とじゃれている。子猫も、とてもなついているように見えた。「かわいくないよ!」秋斗は言った。「てか別に秋斗無理してこなきゃよかったじゃんよー笑」春奈が言うと、「え、いや、暇だしさ、、ね?」「へー!」春奈が笑う。すると、冬音が「名前はどうするの?」みんなは少しの沈黙の後に、

「タマ!」「コジロー!」「トラでいいよ茶トラだし」

そして三人は顔を向かい合わせた。いつものことである。

決まらそうにないな、と思った冬音は、「ひとまず、連れて行って近くのホームセンターで見てもらってさ、餌とか色々買ってこようよ。」冬音はみんなのことをよく知っているので、まとめるのがうまかった。

そして彼らは近くのホームセンターまで歩くことにした。子猫を春奈がだいている。
すると、前から泣いている小さな女の子がしょぼくれながら歩いている。「どうしたの?」冬音が聞くと、女の子は顔を上げた、すると目が急にきらきらし出して、「ミケだ!!!」と大きな声で言う。どうやら彼女は飼っていたネコが逃げてしまい、探していたそうだ。それを偶然、四人が拾った。「君のうちの猫なんだね、よかったね、見つかって!」春奈が笑いかけると、大きな声でうん!と女の子はいい、春奈から猫を預かって、陽気そうに抱きかかえて帰って行った。

彼女の背中はどんどん遠くなり、
それを見る春奈の目は少しうるんでいた。「飼い主、いたみたいだね。」冬音が優しく春奈に言う。「ゔん。」春奈が泣いていた。「よかったじゃねぇの、あいつも帰るところがあったみたいで。」夏樹がフォローをいれる。「、、、うん。帰ろーみんな!!」
春奈が吹っ切れたような笑顔で笑う。それを見て三人も笑いいつものうちに帰る。


帰る場所があるという。そんな当たり前のことを私たちは忘れかけている。
それに気づくことができるのは、些細な出来事なのかもしれない。
気づいていても、気づかなくても、
私たちは帰れる場所が待っている。


「てかあいつミケっていうんだな。」
「トラでいいだろ、、」

四季に咲く花

四季に咲く花

仲良し四人組による、当たり前に起こる 当たり前の日々の当たり前の考えを。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-25

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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