クラス in らぶ。
恋愛ものでありながらも、クラスの絆を共に描いた、新感覚ラブストーリー。
今までになかったものを書きたいと思い、この作品に挑戦しました。
人は誰しも恋に臆病になるもの。過去のトラウマがあれば余計に…です。恋に臆病になっている人、想いを溜め込んでいる人には特に読んでいただきたいです。
プロローグ
体育祭の打ち上げ。
先生達には禁止されている。でも、それを忠実に守っているクラスはほとんどないだろう。
いつもは制服姿のクラスメイトが、意外にもオシャレな私服を着こなしているのはとても新鮮で、どことなく違和感もある。
近所のファミレスで、ありきたりでたわいもない話をする。ただそれだけなのに、なんだかとても充実して、楽しかった。
1章 打ち上げのその後…
とりあえず、打ち上げは終わった。
二次会といえるほど大それたものではないが、この後は男女で別行動。異性がいないところで話したいこともあるからだろう。
男子は近所の大浴場に行くらしい。変わった趣味だとつい笑ってしまう。そこもうちの男子達らしいのだが。
女子はというと、近くの公園で暴露大会だそうだ。もうすでに8時を回って、外は真っ暗だというのに、こちらもなんだか物好きだなと笑えてくる。面倒くさいと思わなくもないが、2年間も同じ時間を共有し、みんな、気のしれた仲間だ。付き合うのも悪くない。それに、暴露大会というのは、なかなかな耳より情報も手に入る。
私にはどうしても情報収集が必要な要件もあることだし…。
この時はまだ、まさか自分があんな大暴露をすることになろうとは、思ってもみなかった…。
2章 暴露アクシデント
たいして驚きもしないような暴露話がしばらく続いた。私はとりあえず微笑みながら、その話に耳を傾けていた。くだらない話ではあるが、面白いといえば面白い。
だが、私の知りたいのはそんな話じゃないんだ。
すると…
「実は私…高木くんが好きなの…」
キタ。これを待ってたんだ。
正直、友達といえども、他人の恋愛には興味なんてさらさらない。でもアイツのことが好きな女子がいたとしたら…それだけが心配だった。
恋バナ。それが始まってしまった以上、女子達の暴走は止まらない。片っ端から好きな人を告白していく。もちろん「いない」と答える子もいる。でもそれはたいてい、物静かな女の子。みんなもそこまで深くは追及はしない。それ以外は、思春期の女子のことだ。誰だって好きな人くらいいる。中には他のクラスの好きな人まで暴露する子もいた。
けれど、心配していた名前があがることは一度もなかった。まぁアイツのことを好きな女子なんて、はじめからいるとは思っていなかったが、一安心だ。
最後に私の番になった。
「いないよ…そんなの」
でもうちのクラスの女子達はしつこかった。私は世にいう『おとなしい』とは程遠い性格だ。
だからだろう。みんなの追及は厳しい。
「佳奈は絶対にいるでしょ!」
「正直に言っちゃいなって!応援するからさ」
確かに教えたらみんな応援してくれるだろう。このクラスは今までにないくらい、いいクラスだから。でも言うわけにはいかない。
過去に…あんなことがあったから。人に教えることはどうしても避けたかった。
しかし…
「佳奈って…宮間が好きなんでしょ?」
一人の女子がそういった。周りも「なるほど〜」とでも言いたげに、納得の表情をしている。
私は凍りついた。
違う。全然違う…。そうじゃないんだ…。
確かに宮間とは幼なじみで、今は席も近いのでよく話す。
彼は運動神経抜群で勉強もそこそこできる。皆に優しく、同性からも異性からも好かれている。いわゆる『人気者』だ。
「確かによく喋ってるよねー」
「カッコいいしね〜。よくわかるよ」
私の気持ちなどお構いなしに、もう「佳奈は宮間が好き」という前提で話は進んでいく。
「違うよ!だから好きな人なんていないってば!」
そう言っても誰も耳をかそうとしない。人とは思い込んだらなかなか考えを改めない。そういうものなのだ。
どうすればいいのか、わからなくなった…
3章 過去のトラウマ
以前にも同じようなことがあった。こんな状況に陥った経路こそ違うものの、私が本当に好きだった人とは違う人が『佳奈の好きな人』として、噂が広まっのだ。
小学校高学年のとき。周りもみんなまだ幼稚だったから、いろんな人にからかわれた。別にからかわれることはたいして気にしなかったが、問題はこの後だ。
『私の好きな人として噂されている人』…つまりは周りが勝手に思い込んでいるだけで、私は好きだなんて一度も思ったことのない子。確か斎藤くん…という名前だっただろうか。噂が、その斎藤くんの耳にも入ったようなのだ。
斎藤くんはまんざらでもなかったようで、それ以来、私によく喋りかけてくるようになった。
それと比例して、他の男子とは喋りにくい雰囲気になったのだ。斎藤くんと付き合ってるわけでもないのに、周りの男子達は気を使って私に近づいてこない。肝心な『私が本当に好きだった人』とも距離が遠のいてしまい、結局は気持ちを伝えることすらできなかったのだ。
4章 全ての原因
そのような事態を起こしてしまった全ての原因は、私が友達に好きな人を教えてしまったから。
信用していた友達だった。だが…。
どうもその友達は
「佳奈って〇〇が好きなんだろ?」
とクラスの男子に言われたらしい。それがものの見事に当たっていて、友達は慌ててしまったようなのだ。所詮は小学生。無理もないだろう。
そして激しく動揺したその子は、私の好きな人を隠そうとして、つい
「違うよ!佳奈ちゃんは斎藤くんが好きなんだよ!」
と、とっさに思いついた斎藤くんの名前を出してしまったのだという。いわゆる『でまかせ』だ。
そこから一気に噂は広まってしまった。
その友達に悪気があったわけではない。むしろ隠し通そうとしてくれた。ただそれが裏目に出てしまった…それだけの話だ。その子は一切悪くない。
原因があるとすれば私だ。知られなくないはずの秘密を、人に教えてしまった。全てはこのことから、この悲劇が起きてしまったのだ。
「そんなことない」「なんでそんなひねくれた考え方するんだ」だいたいの人はこう言う。でも他人がなんと言おうと、私はずっとこう思って生きてきた。それと同時に秘密…特に恋愛に関することは、どんなに信用している友達といえども喋るまい…そう心に決めていたのだ。
5章 覚悟
こんなことがあったので、私は怖くてたまらなかった。また同じことが起きてしまうのではないか…と。あのときの記憶が、あのときの抉られるような気持ちが、頭の中で蘇り、かき混ぜられていく。
何があってもあの悪夢を繰返したくない。私は覚悟を決めた。あんなことになるくらいなら、正直に言ったほうがマシだ。
すると…
1人の女の子…この子はクラスでもおとなしい方だ。
その子がポツリと呟いた。
「え…。佳奈ちゃんって…高科くんが好きなんじゃないの?」
みんなの動きが止まった。私の頭の中で巡り巡っていた考えも急停止し、真っ白になった。
「そうなの?」
別の女の子が恐る恐る私に尋ねる。
私はもう、隠し通すことを諦めた。どうせ覚悟を決め、打ち明けるつもりだったのだ。
コクリ…
頷いてみせた。
「えぇーーーーーーーーーー!」
この日一番の驚嘆の声だっただろう。夜9時の公園に、女子達の声が響いた。
私はクラスでもあまり目立たないはずの女の子…その子の洞察力に、ただただ感心するしかなかった。
6章 女子達の恋成就大作戦
次の日から、早速うちのクラスの女子達の行動が始まった。
ニヤニヤと意味深な表情で私を見てくる。高科が動くたびに私と高科を見比べてはニヤニヤする。その繰返しだ。ついには適当な理由をつけて、高科が私に喋りかけるように仕向けてくる女子もいた。
でもそれは、決して悪意に満ちたものではなく、私のために、良かれと思ってしてくれているのは身にしみて感じられた。確かに『余計なお節介』と言わざるを得ないこともないわけではない。それでもみんなへの感謝は尽きなかった。
居心地の悪いような、窮屈なような、今までに感じたことのない、おかしな感覚にとらわれた。しかしもう、周りを気にしなくていい。みんなが私の味方をしてくれている…そう思えた。
あの夜暴露し、女子達がサポートしてくれるようになってから高科との距離はかなり縮まった。
あとは私が勇気を出して行動すればいい…ただそれだけとなった。
みんなは充分過ぎるくらいに、協力してくれたのだから。
卒業式は再来週。もう時間がない。回りくどいことなんてする必要ないだろう。
ただ一言、伝えればいいのだ。
「好きです」と。
7章 不思議な光景
返事はすぐにはこなかった。
しかし卒業式の日。
式を終えて教室に帰ると、高科が私の元にやってきた。
まさか、今ここで?周りには沢山のクラスメイト。こんな中では返事がyesだとしてもnoだとしても、恥ずかしくてたまらない…。
女子はいいだろう。みんな事実を知っているのだから。実際もうすでに、女子達は全員心配そうに私を見つめている。でも今は男子もいる。なのに…
「俺も好きです!付き合ってください!」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
だが一斉に嬉しさがこみ上げて、気づいたら涙が流れていた。
ふと涙で潤んだ瞳で周りを見渡すと、とても不思議な光景が広がっていた。
女子はもちろん、笑顔で喜んでくれている。
だが男子も、驚いた表情一つせず、女子同様に笑顔だ。
エピローグ
後から知った。
高科も私と同じように、あの打ち上げの後、暴露させられていたのだと。そして彼は言ってくれた。
「佳奈がずっと前から好きなんだ」
男子はそんな高科に協力したのだという。女子達が私に協力してくれたのと同じように。
そしてクラスのみんなは気づいていた。私と高科が両想いであるということに。
やられたな…。
そう私は思った。
結局私だけ、一人でもがいていたのだ。
でも、このクラスは本当に最高だ。この絆をいつまでも忘れずにいたい。
そしてクラスメイト達が一生懸命に繋いでくれた、高科との赤い糸を、決して切らすまいと心に決めた。
クラス in らぶ。
話が結構複雑に入り込んでいるので『佳奈の本当に好きな人』と『偽の佳奈の好きな人』との関係性について、読者さんには読みづらい部分もあったかと思います。すみません。
また、この作品は意図的に主人公の年齢は明らかにしていません。「中学生なのか高校生なのか」それは読者さん個人の感じ方で受け取っていただきたいと思ったんです。
読者さんの年齢や感受性によって、中学生を子供っぽいと思うか、大人だと思うか、違ってくると思います。よりこの作品を楽しんでいただくために、あえて主人公の年齢は、読者さんそれぞれに託させていただきたいです。