SS探偵事務所
ジョンの告白
彼の名前は島田ジョン。アメリカ人の父親、日本人の母親の間に生まれたハーフである。ジョンは父親に似て、整った容貌で、女子からも人気がある。そんなジョンが大学に入学してから一目惚れで片思いの女性、佐藤晴美に告白を今日することに決めたのだ。ジョンは長い間米国で暮らし、大学から日本に移住してきた。ジョンは日本語は通じる程度に話せるのだが、日本での大学生活では、そのギクシャクした日本語のせいで、うまくとけ込む事ができなかった。
そんなジョンに初めて親身に話しかけてくれたのが佐藤晴美である。食堂でひとりぼっちだったジョンに、晴美は気遣い、英語で話しかけたのである。笑顔でジョンに話しかける晴美。孤独だったジョンはそんな晴美がとても可憐で魅力的に感じた。その後もたまに仲良く話すも、友達どまりであった。
午前6時半、ピピピピと目覚まし時計がジョンの耳元で鳴り響き、すぐさま停止のボタンを押した。ベッドから颯爽と出て、背伸びをし、大きくあくびをする。彼は昨日の夜から興奮し、眠れなかったようだ。なぜか?それは、高校で1番美人で清楚といわれる佐藤晴美に告白するからだ。彼女に出会ってから1年。日本語も比較的流暢になり、そのルックスのおかげか大学では人気者になっていた。1年たった今なら彼女に告白する自信があるジョン。彼女に初めてであってから1年、この日に告白する事に決めた。急いで朝ご飯、シリアルを食べ、家を出た。
ジョンはいつも通り学校へと向かう。そんなに彼は緊張していなかった。つまり彼女の告白への返事はきっとOKだと自信をもっているからだ。晴子はその容姿端麗なのにかかわらず、彼氏を作った事がない事で有名だからだ。ジョンはそれは晴美が日本人の男には興味がないと踏んでいる。大学の講義も終わり、お昼にいつもの食堂に向かった。ジョンがいつも食べるテーブルに晴美がA定食をおいしそうに食べていた。
『やあ 晴美。元気かい?講義はどうだった?』
晴美は食べていた者を全部の見込み、ハンカチで口をふき終えてから答えた。黒いロングヘアーで古風な顔立ちな女の子である。
『いつもと同じで可もなく不可もなく。つまらなくはないんだけどね。あの先生、プリントに書いてあるのそのまま読んでるだけだから、講義行く意味ないのかも。』
ため息を少しつき、ジョンのほうを少し見上げる晴美。その上目づかいがとてもかわいいとジョンはときめく。
『はっ』
そんな可憐な上目使いがジョンに遂行せなばならぬミッション(告白)を思い出させる。
『あのさ、晴美。今日の3時に君と話があるんだ。きてくれるかい?』
『話? 話なら今でもいいんじゃない?』
『いや、その話は。。。とても大事だから ここでは出来ないんだ。誰もいないところじゃないと』
晴美はジョンをまじまじと見ながら
『じゃあ 英語で会話すればいいんじゃない?この大学内で英語わかる人すくないし、みんなにはわからないと思うよ』
まさかの返答に驚くジョン。 I love you!なんていったら どんな日本人でも耳を傾く事間違いないだろう。 それは避けたかった。
『いや 英語でもさぁ 先生とかにはわかるじゃない? とにかく 3時公園広場で集まるから いい?」
『まあ いいけど、その話長くなる?3時半からバイトがあるのよね」
長くなるかならないか。いい質問である。ジョンにはわからなく、口をパクパクさせながら返答をかんがえていた。
『えぇ えーとぉ す、、、すぐ終わるよ』
『そうなの。じゃあ いいよ!。3時にね。じゃあ!』
そう言い残し、食堂からでる晴美。 晴美が出た後で、何も食べず、席に座り、ジョンは告白することをイメージトレーニングしていた。
そして3時。講義をさぼり1時間前にここにきたジョンのまえに現われる晴美。晴美は早速ジョンに問いかける。
『えっと 話って何なの?」
とても不思議そうにジョンを見つめる。
『えっと えー と 』
なんて切り出したらいいかわからなくなるジョン。長々話す選択肢は日本語の単語力の少ない彼には無理だった。
『ボクと つきあって くだ さい』
自分でも驚くほど片言になってしまったことに気付く。本人の目の前だと緊張してしまうのか。
『え あっ』
晴美は目をぱちくりさせながら 返事にに詰まらせていた。
彼女は一端深呼吸をし、コトバを吐き出した。
『え と ごめん。アタシ ジョンとつきあえないの。』
大学付近のその公園で、冬の冷たい風がジョンの頬をなでる。 その風はすごく冷たかった。
『..... oh my god...}
思わず母国語が出てくるジョンの口。
ジョンは意外と早くでたその晴美の返事に驚きを隠せなかった。
ジョンのイメトレにはそんな振られるイメージがなかったのである。
彼は悲しみで歪んだ顔のまま彼女に聞いた。
『理由は なんですか?』
『それは.......}
黙り込む晴美。すると彼女は腕時計を見つめながら、とっさに切り出す。
『バイトの時間だから。 いかなきゃね。じゃあ また あとで』
そういうと一目散に公園から姿を消した。
彼女の本性
ジョンはしばらくそこに立ち尽くし、固まっていた。
バイトの時間だから、交際拒否?彼にはその晴美の返事が納得できなかった。振られた理由が曖昧だからだ。
ここで引き下がったら 男ではない。Be a man.Do the right thing.
晴美が立ち去ってから数分、彼は晴美の後をつける事にした。バイト先だ。バイト先で晴美にもう一度その理由を聞きたかったのである。
ジョンは晴美を必死に追いかけた。とある駅前で 彼女を見つけ、身を隠すジョン。実に怪しい。しかし今気付かれたら またバイトにいかなきゃといわれ 逃げられそうだったので、実を隠さなければならなかった。
尾行する事10分。ある雑居ビルに彼女は立ち入る。 ジョンも慌ててその中へと入る。どうやら彼女はこのビルの2階に行くらしい。ビルの中のエレベーターの止まった階数で彼は確信した。2階になにがあるのか、ビルの詳細が書かれた壁を見る。
『SS探偵事務所?』
2階にはSS探偵事務所とかいうものしか存在しなかった。多分彼女はここでバイトしているのだろう。
急いでその探偵事務所に向かう。今のジョンは事務所にはいったら後の計画など頭に入っていなかった。ただ会って彼女と話がしたいのだ。その探偵事務所は2階のフロア全部ではなく、片隅にあるようだ。残りはもの置き場として使われている。 その事務所のドアの前へと体を持っていく。そのドアにはさびている看板がかかっており、SS 事務所と書かれている。SSとはその責任者の頭文字かなぁとジョンは呟く。
すると
急にドアが自動的に開いた。
『いやぁー お客さん。違いますよ。Same Sex の略です。って 君は誰なのぉ? 高校生? まさかその歳で悩みぃ?』
ジョンの目の前に突然 20代前半ぐらいの男性が現れた。身長が高く、天井に付きそうであった。髪型は、ジグザクな形、いわゆるツンツンヘアーで その風貌は、ヤクザを意識させるようなオーラをだしていた。しかし その姿と言葉はすごく違和感があった。その男は その太々しい風貌に反して、オネエ言葉を使っているのだ。
ジョンは、その突然現れた男に圧倒され、状況が飲み込めずコトバが出なかった。
『ん 黙ってないで なにか言いなさいよ』
『あの。。 ハルミ のトモダチ です』
事実だけを伝えたら その男は白い歯を見せながら にやついていた。
『あー、そうなのー。ハルミちゃんが言っていた子ってこの子なのねー。よろしくっー』
巨大な両手で握手されるジョン。 彼には今の状況が飲め込めない。
後で話を聞いてみると、彼はその探偵事務所の所長、つまりボスらしい。
『あ ハルミちゃん= お友達よぉー』
その男の台詞と風貌がすごくミスマッチで ジョンの開いた口が塞がらない。
その男は立派なスーツから 1枚名刺を取り出しボクに渡した。
『SS探偵事務所 ボス』
その野前の欄にはしっかりボスという字が。
(いや 名前ではないだろう、ボスは。)
彼はここに来た事を後悔しかけていたが、 ハルミが目の前にあらわれると その不安は吹き飛んだ。
『あ ジョン! きてくれたんだー 』
ジョンは笑顔で彼女を見つめる。振られた後にどんな顔をすればいいかわからなかったのである。
『あ もしかして つきあってほしいって バイトの面接のことぉ? 』
『えっ』
つき合う。 ジョンは彼の頭にある日本語辞典を探しその言葉を調べると、 つき合うとは(Go out with gilrs)と(Accompany with someone) つまり 恋人と付き添いの二つ意味がある事に気付いた。
ジョンは慌てて
『あ うん そそおそ そうなんですよ つきそいで きてもらいたくて』
なんてでまかせだ。彼の顔は真っ赤だ。
『そうなんだ!! じゃあ 最初からそういってもらえれば よかったのにぃー。てっきりワタシの事好きなかとおもったよ』
するとそのボスという男は笑いながら言った
『ははは ハルミはモテるわねぇーー 彼女、女の子にしか 興味ないのに』
『ああ もうー 店長ったら!』
『ちがーう ボスよーー! 何度言ったらわかるの! ハルミ!』
『すいませーんーって ボス! その事は秘密のはずなのにー』
『いいじゃない。彼アルバイトなんでしょう?ねえ そこのかわいい 坊ちゃん?』
『え えええ はい そうです』
ジョンは 下を向きながらそう言った。 完璧に話題についていけなかったのである。
(れ れ れ れぇぇぇぇ ずびあん? ハルミがぁーーー?)
彼の心にはベートーベンの運命がBGMとして流れていた。 そうそれは運命。
『うふん。ハルミちゃん ありがとうね。ワタシの好みの子 つれてきてもらって』
『そんなことないですよー でも彼 ハーフで かっこいいと思いますよー!』
ジョンは ハルミに出された ポッキーをつまみ お茶をすする。
(そう それは 運命。彼女がボクに話しかけたのは ボスの 好みそうな男だったから。 なのか。』
そう考えると また 運命が彼の中で響く。
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