ポット

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「ギュるギュるギュる」

ああ、また下痢かー



いや違った
ただお腹が減っただけだった


通りかかった店に入った

指定された席に座りメニューを広げ「店長のオススメ・M(ミックス)」と書いてあった料理を選んだ

というよりどの料理にも「店長のオススメ」は書いてあった
不思議な店だ
いわゆる全ての料理に自信があるということだ


あ、
いまさら喉の渇きに気付く


店員は水を持ってきてくれるのだろうか


テーブルの端に【ポット】が置いてあった
すぐさま手を伸ばして取ったのだがコップがないことに気付く




ああ、喉が渇いた



奥の方をふと見るとおばさんがステーキを美味しそうに食っている
というより喰らっているに近い


今にもヨダレが垂れてきそうだ
ちなみにステーキに対してではない



おばさんの隣の席の女の子がちょー可愛いからだ

貴重な水分を失うわけにはいかない
いかんいかんとヨダレを啜り上げ
美女から視線を外すと後ろに


水コーナーがあった
コップも沢山並んでいる
セルフサービスだったのだ


美女が五度見するくらいの速さで駆けて行き
喉が潤うまでガブガブ飲んだ


席に戻って一息つく


ではこの【ポット】は何なのだろうか?



さては、お茶なのだろうか?


料理はまだ来ない
空腹の最大値は疾うに越えていた

そこから【ポット】との睨めっこが続く…



【ポット】への追求心に駆り立てられる


何のためにあるのだろうか?

周りを見渡すと
他のテーブルにはあまり置いていないようだ

店員に聞こうとしたが
たかが【ポット】のことで呼び出すことが恥ずかしく結局、断念した

よく見れば他のポットには
説明のようなものが貼ってあった

しかし
遠目で見たものの文字が小さくて見えやしない

近くに行って見ようとも考えたが
変人だと思われるのも嫌なのでこれも諦めた

しかし
【ポット】が気になることに変わりはない
逆に興味意欲が増してくる



触ってみたところ結構暖かかった



あ!


麺類などの足し湯ではないだろうか!


今まで一番正体に近づけた気がした



だが結局それも気のせいに過ぎなかった

なぜならメニューにスパゲティやピザやハンバーグなどの洋食しか載っていなかったことを思い出したからだった


なにが入っているのだろうか?



元々少なかったが
周りの客がいなくなっていることに気が付いた

人は何かに集中すると周りが見えなくなってしまうものだ


ん?
ふと思った

他の人がいないにも関わらず
料理の匂いがあまりにも濃い


そして、最終手段に出た
【ポット】を開けてしまおうという事だ


息を呑み
フタを回していった

「パカッ」という音とともに覗き込む


⁉︎



テストで最下位を取ったかのような衝撃が走る



そう
足し湯でもなく
お茶でもなく
もちろん水でもない



ポットの中身は
あの【店長のオススメ・M(ミックス)】だった

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  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-23

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