たぬきの花嫁さん

夏の始めお天道様もてっぺんを迎えた頃、
一列に並んで歩く行列。
白や黒のビシッとした格好のたぬきさんが、
ペタンコペタンコ。
ずんぐりむっくりな体を揺らしながら歩いている。

行列の前の方にはとびきりおめかしをしている花嫁さん。
白無垢に角隠し。
一生に一度の晴れ姿。

着慣れない和服に歩く速さは、
のんびりのんびり。
それでもゆっくり進んでく。
のんびりのんびり。

花嫁さんのすぐ前にはお父さんお母さん。
すぐ後ろにはお兄ちゃんお姉ちゃん、
弟に妹と並んで歩いている。
それからいっぱいの親戚やお友達。
皆が今日という日を一緒にお祝いしたくて、
後ろに続いて歩いてる。

にこにこ笑顔。
とってもごきげん。
ぽかぽかお天気。
心もぽっかぽか。

花嫁さんのお家から花婿さんのお家まで歩いて向かう。
花嫁さんが生まれてから今までに、
お世話になったたぬきさんから、
仲良くしてくれたお友達。
こうして歩いて花婿さんに全てを知ってもらう。
嫁いでいく花嫁さんにふさわしい行列。

行列は花婿さんのお家へ到着するまで続く。
そこで花婿さんと永遠の愛を誓うと、
おごそかに行われていた式は終わり。

どんちゃん騒ぎへ変わる。
お父さんもお友達も一緒になって、
踊れ歌えのお祭り気分。

おっきなお腹を、
ぽんぽこぽんぽこ。
ぽんぽこぽん。

いっぱいのごちそうに、
いっぱいのお酒。
飲めや食べれやでお腹もいっぱい。

お祭り気分の騒ぎは日が暮れるまで行われる。
花嫁さんは泣くことなんてない。
ずっと笑顔のまま嫁いでいけるように、
たぬきさんたちは最後まで騒ぎ通す。

いつものように暗くなってお家に帰るのと同じ。
皆は揃ってお家に帰る。

また来るね。
っておやすみなさい。

たぬきの花嫁さん

たぬきの花嫁さん

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-23

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