月詠の柩

寂びれ使われなくなって数百年経つであろう廃教会がある。
信仰心の強い教徒がいるわけでもなく、
誰かが住み着いているわけでもない。
ただただそこに昔から建っている。

昔は活気があった周辺も今は寂びれ人が来ることも稀である。
そのはずなのに月に一度教会に活気が戻る日がある。
それが今晩。
満月の夜。
月明かりで満ちる教会に異世界からやってくる住人がいる。

緑がかった青色の殉教者風な服装で、
髪の色は青みがかった銀髪という変わった風貌の少女。
見た目は十代半ばくらいだが妙な落ち着きと品格があり、
とてもそんな歳には思えない。

彼女は一人で何をするわけでもなく、
古ぼけたマリア像を熱心に見つめているだけで、
辺りには他に誰もいない。
そのはずなのだが彼女の周囲にはなぜか、
多くの気配を感じ取ることができるというが、
人には決して見ることができない存在。
それを扱うのがこの少女、
ノエル・ヴァン・シュタイン。

死者の世界から月に一度だけこうして現世へと降臨する彼女が、
この廃教会へやってくる理由はただひとつだけ。
それは世界中から集まるさまよえる魂魄を、
異界へと送り届けるため。

魂魄の大半は幼い子供たちで死んだことに、
気がついていないということが多い。
今日もそんな魂魄が大量に廃教会を取り囲んで、
月明かりを浴びて共鳴するように光り輝いている。
ノエルはそれを温かく包み込むようにひとつひとつと触れ合い、
異界へと送り届けていく。

ノエルは丁寧に失われた命の心を受け止め浄化して、
安らかになった魂魄を異界へ迷わないように導いているが、
全ての魂魄が素直に異界へと送られるわけではない。
中には死を受け入れられず駄々をこね始める魂魄も存在する。
そんな場合であってもノエルは、
根気よく死を受け入れてもらえるように幼い魂魄と会話する。

無数にある魂魄も朝が近づくにつれて数を減らしていくと、
最後のひとつも異界へと送り届けたがこれで終わりではない。
むしろ問題はここからなのである。
廃教会へたどり着けずにいる魂魄を回収しなくてはならない。
どこからともなく取り出した権杖を天に向けると、
月の明かりを受けその方角を示しだし、
ノエルは迷うことなく廃教会をあとにして魂魄の元へと急ぐ。

飛び出したノエルはまるで天使のような翼を広げ、
自由に空を舞いながら高速で移動をする。
半ば強制的という形で魂魄を慌てて回収するノエルが、
再び廃教会へ戻ってきた頃には、
既に夜が明け朝になろうとしている。
次々と異界へと送るが最後のひとつとなった時に、
完全に夜明けが来てしまった。

それまで焦っている態度すら見せていなかったノエルだが、
ここへ来てしまったという顔をしている。
最後まで死を受け入れようとしなかったその魂魄に異変が起きる。
綺麗な桃色をしていた魂魄が青みがかり紫色へと変貌すると、
球体だった魂魄は突然内側から何かを生み出そうとする力に、
押し出され破裂したかと思うと廃教会内に嫌な空気が漂う。

ノエルは権杖をしまい死神が持っているような大鎌に持ち替えた。
霧が晴れていくと次第にその姿があらわになるが、
その姿を見てもノエルの表情は変わらない。
しかし人が見てしまえば悲鳴を上げずにはいられないだろう。
もはやその姿は人とは呼べず空想上でしかない悪魔か、
化物でしかないのである。

こうなってしまうとノエルも優しく送り届けることは不可能となり、
実力行使で異界へ送るしかない。
魔化してしまった魂魄は現世に留まりたい思いが強いほど、
強力な力を得て転生してしまう。
目の前にいる魔化した魂魄は、
今までにないくらいの大きな力を感じられた。

もう一度大鎌を強く握り締めると先手必勝。
まだ意識が無いと見える魔化した魂魄にノエルは、
ためらいなく大鎌で切りつけるが、
大鎌が届く瞬間に目を見開いたかと思うと、
右手で軽く大鎌を受け止められてしまった。
しかもそれを振り払おうとしても全く動かず、
左手の一撃をくらってしまい壁まで吹き飛ばされる。

普通の人間なら致命傷とも言える一撃ではあったが、
ノエルはケロッとしている。
大釜を再び構えると今度は慎重に間合いを計り、
相手の出方を伺ってみると思ったとおり、
ノエルに向かって真っ直ぐに向かってくると、
大きな手で殴りかかってくる。
それも単純な一撃でたいしたことはないが、
放っておくわけにはいかない。
魔化した魂魄は徐々に力を使いこなすようになることを、
ノエルは知っている。

次の一撃で決めようと機会を伺っていると、
さっきよりも動きが素早く一撃の重みが増している。
慌て始めたノエルは相手の動きに合わせカウンターを食らわせるが、
その皮膚の硬さに驚かされる。
現世のものも異界のものも斬り捨ててきた大鎌が、
このものには通じない。
それほど強い思いがあるというのだろうか。
ノエルは困った。
本来ならやり残したことをさせて成仏してくれれば、
そんな良いことはないのである。
それでも死んでしまったものの意を叶えることなど、
ノエルに出来るはずもなく、
ただこうして魂魄を沈め異界へと送るだけである。

ノエルは集中し始めると一言言い放った。

「安らかにお眠りなさい。」

ふぅーっと大きく深呼吸、
大鎌に力を込めると大鎌が赤く紅く輝き始め、
異様な空気を一掃していくと、
素早い動きで魔化した魂魄の背後へと回ると、
さっきは弾き飛ばされた一撃だったが、
今度はすんなりと刃が通った。
致命傷とまではいかないが明らかに弱っている。
ノエルはもう一撃食らわせようと大鎌を振り上げると、
魔化した魂魄に斬りかかるがノエルとの間に、
突如として異空間が現れた。
それはノエルの知る異界のそれとは別の扉。

その中から強烈に吸い込む風が吹き、
魔化した魂魄はそのまま飲み込まれていってしまった。
慌てて追いかけようとするノエルだが、
ノエルが穴へ向かおうとすると今度は、
逆風となり吹き飛ばされてしまい扉は消え去ってしまった。

現世の驚異が去ったことには変わりないが、
いったい今の扉はなんだったのかノエルは知らない。
ノエルがこの教会で異界送りを始めて初めてのことだった。

そもそもノエルが異界送りを始めたのは今から、
600年ほど昔のことになる。
その間ずっと同じことを繰り返してきている。
進むことのない自分の時間への思いなど押し殺して、
他人のためにせっせと仕事をこなしてきている。

もはやどうしてこんなことになったのかを考えることもない。
月に一度現世へ帰り仕事をしていれば、
何も変わらない毎日を暮らしていられる。
そんな人ならざるものが現世や異界には多く存在している。
ノエルはそんな犠牲者の一人に過ぎないのかもしれない。





何もない空っぽの毎日。
いつまで経っても死ねない体。
不老不死とは不愉快なものですることが何もない。

あるとすると仕留めそこねた魔化した魂魄が、
吸い込まれていった見たこともない空間。
今いるこの空間とも違うし現世とも違う。
第三の空間がそこにあった。
悠久とも言える時の中で始めて見た空間。
他の異界師にも言えないまま次の月がやってくる。

激しく降る雨の中数多くの魂魄が今日もやってくる。
純粋で死んだことも理解できない命。
多くの希望に満ちた人生が終わりを迎える。

二度と戻ることのない異界で永遠とも言える、
長い時間をこれから迎える。
順調に終わりを迎えるかと思われたところで、
ノエルは嫌な予感がしていた。
先月の出来事が再び起きる。
そう直感した。
だからと言ってこの場から逃げることもできない。
全ての魂魄を現世から消さなければ異界へ戻ることすらかなわない。

だが予感は外れたらしい。
全ての魂魄を異界へ送り届けることができたが、
一安心していたのも束の間。
異界への扉が開くことはなく、
先月現れた奇妙な空間が出現した。
吸い込まれることを警戒したノエルだが、
予想に反して逆風がノエルを襲った。

何か出てきた!?

ノエルが強風の中からそのモノをとらえた瞬間。
ゾォッと寒気が走った。

先月吸い込まれていった者とは別らしいが、
おぞましい姿であることに違いはない。
大きな翼に巨大な爪、
更には尻尾の先は鋭く尖っている。
地に降り立つと同時にノエルの目の前までやってきた。
咄嗟にノエルは大鎌で攻撃に出るが、
爪で防がれてしまう。
そして知らないうちに背後へと回っていた尻尾に刺された。

衝撃は受けるものの痛みがあることなどありえない。
時が止まっている時点で全てはあの時のまま。
ましてや歳を取るなんてことはありえない。

「痛っ。」

刺されたところから何かが吸われるのを感じた。
生きていた頃感じた痛み。
たまらなくその場に倒れこむが更にその行為は続く。

「ったくいい加減にしなさいよ!」

ありったけの力で大鎌を振るうと、
思っていたのと違う強い威力で尻尾だけを残して、
消滅させてしまった。

「な、なにこれ。」

服がなぜか少し小さい。
それに見える景色も違う。
これはまるで……。
慌てて手鏡で確認するとどう見ても14歳の顔立ちではない。
少なくとも二十歳。
こんな現実があるはずがない。

ワタワタしていると徐々にその変化は納まり、
元の14歳のノエルに戻っていった。

異変は更に続く。
いつもなら全て異界へ送り届けると勝手に、
異界への扉が開かれるのだがいくら待っても扉が現れない。
こちらから連絡手段はないし扉を開く方法もわからない。
600年間何も知らずにただ繰り返してきたこの行為。
何か異変が起きていることは明らかだが、
ノエルの方から連絡する手段がないのなら、
ここに留まる以外に手段はない。

試しに権杖を出そうとしてみるが、
いくらその素振りをしてみても出てこないが、
大鎌はなぜか出し入れ可能だった。
まさかと思い魂魄の位置を確認しようとするが、
全く感じることもできない。
ついさっき全てを異界へ送ったと言っても、
全くのゼロになることなどない。
そして感じられないということは、
あの人並み外れた跳躍力も無くなっていた。

つまりは人に戻ってしまった。
だが試しに大鎌で指を傷つけてみるが痛みはないし、
傷が残ることもない。
それらを踏まえると異界からの力は失ったが、
肉体的には不死のままといったところかもしれない。

とにかく異界側がこの異変に気がつき、
向こうから扉を開けてくれない限りは、
この廃教会に留まる意味もないということになる。
とりあえず1週間ほど滞在してみたが、
思った通り向こうから開くことはなかった。

そしてお腹も減らないことも分かった。
やはり不老不死であることに変わりはない。
だがそうなると気になることがある。
あの謎の次元から現れた者がなんなのか。
あの時の攻撃は確かに痛かった。
何よりも生命を吸われた。
あのまま吸われ年齢が増加していけば、
おそらくは死を迎えることになる。

不老不死ということがこの600年の間、
どれだけのことだったかを考えると、
恐ろしくもあり自然でもある。
あの扉が再び開かれる可能性があるとすれば次の満月の夜。
それまで久々の現世を楽しもうと決めた。


600年もの間のんびり現世を見ることなどなかった。
元々住んでいた場所のことなんて覚えているはずもない。
そもそも現世にいた時の記憶はほとんど無くなっている。
理由は知らないがそういうこと。
特に何かを見て懐かしいと思うこともない。

人とむやみに接触をしてはならない。
そんな掟は存在しないが暗黙のルールとして、
そういうことになっている。
適当な街を見つけると遠くの丘から観察をする。
生き生きとした人間が無数に歩き回っているが、
争いなどなくとてものどかな雰囲気を感じる。

これならば紛れ込んでも何の問題もない。
そう思ってノエルは街中へと入っていった。
特に気になるところはないものの、
たまに感じる視線が気になる。
賑やかな中でも少し裏道へ目を向けると、
随分と差のある暮らしを強いられているようだ。

長年染み付いてきたものもあるのか、
賑やかな方へは目もくれず裏道へと足を運ぶ。
家もなく道端に座り込んで亡くなっている老人。
ハエが集っている子供の死体。
これが現世の現実。
生きているうちは死が付きまとう。
この子供も数多くの夢を持ち必死に生きようとしたに違いない。
腐敗している死体にそっと手を触れると、
残された記憶が伝わってくる。

「……!?」

子供が死ぬ寸前の記憶。
何かに追われ走り回っている。
決して餓死したわけではない。
真っ黒な影から逃げ回り最後には飲み込まれ、
肉体が朽ちるまで命を吸われている。
そして死体の周りには真っ黒に染まった血。
おかしいのは色だけではない。
その血は踊るようにぴちゃぴちゃと跳ねている。

あの怪しい影からこぼれ落ちたもの。

「現世でも何かおかしなことが起きているのかな。」

そっと手を話しながらボソッとつぶやいていると、
背後に何かの気配を感じ振り向いた。
そこには黒猫。
しかも初めて見た左右で目の色が違うオッドアイ。
虹彩異色症とも言って左右の眼で虹彩の色が異なる。
もしくは一方の瞳の虹彩の一部が変色する形質のこと。
それだけでも不思議だったがこんな貧困な裏道に、
食べ物を求めてやってくるとは思えない。

「変わった者がいると思ったが普通の人間か。」

「!?」

600年も経つと猫でも喋ることがあるのだろうか。
そうだとすると進化というものは恐ろしく早い。
突然変異だろうか。
それとも記憶が定かではないだけで昔からこうだったか。
怪しまれないように適切な対応をしなくてはならない。

「普通よ。
もうどこから見ても普通!
今から寝るところを探すの。
それじゃアディオス!」

完璧に誤魔化したと思って180度回転し去ろうとした。

「喋る猫がいるわけなかろう。」

ギクッ

やはり600年程度でそんなことになることはない。
だがしかしそうするとこの黒猫はなんだということになる。
頭が混乱してきたノエルは現実逃避して、
猫なんかいないと思い込もうとしてもう一度振り返る。

「……。」

いなくなるはずもなく黒猫はそこにいた。





「死体に触れるだけで記憶が見える。
そんな人間もおらん。
あの影と関係のある者か。」

「影!?
私もそれが知りたい。
あれは何!?」

黒猫が知るはずもない。
この際会話ができるというところはどうでも良い。
問題はあの影。
実態が見えないということは攻撃が当たるかも不明。
いくら大鎌の威力があっても影だとすると飲まれるだけ。
それもこの裏……旧市街でしか現れないという。
黒猫もそれを探りにきてノエルと遭遇した。

黒猫はウィルと名乗りこの街がグランエスタニアというところで、
旧市街は100年ほど前の大戦時に崩壊したままと言う。
600年経とうとも戦争はくりかえされている。
なにも変わりはしない。

「つまり旧市街はあれが出るからずっと放置されている。
そういうことで良いのかな?」

「そうなのかもしれんしそうじゃないかもしれん。
100年も生きている者などおらんしな。」

言われてみるとそうだった。
生きている人がいたとしてもそんなこと知らないだろう。
ウィルによれば図書館にある文献を見ても、
そんなことは何も書かれていないという。
他に調べる方法と言えば待ち構えて実際に拝見するしかない。
それが一番手っ取り早く確実。

成り行きとは言えウィルと一緒にいると、
大鎌を出すことも躊躇してしまう。
なんとか一般人であると思わせて場をやり過ごし、
一人で影を待ち構える作戦を考える。

しかしそんなもの浮かぶはずもない。
今まで月詠の民として魂魄を異界へ送ることしかしていない。
600年もの間繰り返してきたことをいちいち考えてするわけもなく、
ウィルをこの場から遠ざける方法など考えつかない。

「あ、そうだ。」

ウィルを遠ざける方法は浮かばない変わりに、
ノエルは自分が遠ざかる方法を選んだ。
ウィルと別れサクサクと旧市街の中へと進むと、
どこら中に死体があり不審な最期を遂げている。
それらに触れるたび最期の記憶を読み取れ、
どれもが虚ろな影に追いかけられた挙句に、
生命を吸われ絶命していた。

「廃教会で見たあの化物と何か関係があるのかしら。」

ふとあの時刺されたことを思い出し、
生命を吸い取るという共通点に疑問を持った。
廃教会で現れたあれは一体なんだったのか。
それ以前に異界とは別の扉が出現した理由。
全く関連性がないとは言い切れなかった。


スタスタと歩きある地点を過ぎた時だった。
違和感を感じて遥か前方を確かめると、
何度も見た記憶と一致する虚ろな影。
実態の存在しない境界のない闇が速度を上げ向かってくる。

大鎌を構え待ち受ける。

だめだ!?

寸前のところで避けるとそのまま虚ろな影は、
後方にあった廃墟の一角を丸呑みしていく。
避けなければ飲み込まれる。
そんな相手を葬ることなどできるのだろうか。
だが考えている暇はない。
方向を変え再び虚ろな影が接近してくる。
対処する方法は見つからない。
幾度となく避けるが徐々に速度が上がり、
息も上がってきたところで少し反撃に出てみる。

大鎌で壁を叩き壊しその勢いのまま、
虚ろな影に向かって投げつけるが全て吸い込まれてしまう。
次に一か八か大鎌で斬り付けたが大鎌まで飲み込まれてしまう。
これで武器にできるものがない。
再び逃げ回るノエルは大鎌がなくなったおかげで、
身軽になり余裕を持って逃げ回る。
しかし逃げ切ることは不可能。
どうしたって虚ろな影の方が速い。
いづれ追いつかれる。

「止まって動くな。」

どこからともなく声がする。
まさか止まるなんてことできるはずがない。
今止まってしまえば飲まれてしまう。

「奴は動くものに反応する。
だから止まれ。」

逃げるだけではもうどうしようもないことは確か。
その言葉を信じるしかないノエルは、
凍ったようにピタッとその場で止まってみせた。
すると虚ろな影は急に動きを鈍らせ、
その場から去っていった。

「やはり奴は音に反応している。」

影からウィルが現れた。
ずっとノエルを囮に観察していたに違いないが、
助けられたことも事実。
旧市街から出て新市街へと来ると随分と風景も違う。
華やかな街並みに貴品のある人々。
まるで旧市街を消そうと虚ろな影をまいているように感じる。

「これが現実。
誰も旧市街になど行かん。
新市街にいれば影に食われる心配はない。
調査も今では全く行われず放置状態。
行き場のない者が行き着く……いわばゴミ処理。」

ノエルにはわからない。
亡くなった魂魄に哀れみを感じないわけではないが、
ひとつひとつに感情移入しているような状態でもない。
今更それを変えることも必要かと言えば、
ノエルにとっては邪魔でしかない。
今は異界へ戻るヒントが欲しい。
あの別次元への扉と虚ろな影。
それが唯一の手がかり。
しかし大鎌まで失いますます人に近づいてしまった。

試しに大鎌を出そうとしてみるとなんと権杖が出現した。

「……どうなってるのよ!」

わけもわからず一人でプンスカしていると、
周囲からは白い目で見られていたが、
ノエルは全く気になんてしていなかった。
しばらくは新市街を見てまわろう。
大鎌を持ったままでは目立っていた格好も、
権杖であればそこまで目立ちはしない。
一人気ままに散策していると見たこともない食べ物が、
沢山並んでいる。

「どうだいひとつ。
たったの50ギル。」

もちろんお金など持っているはずがない。
それにお腹は空かない。
ただ珍しい光景に関心しているだけだが、
匂いだけでもよだれが口の中で溢れそうになる。
これも本能というやつだろう。
我慢して通り過ぎると今度は綺麗に着飾った人たちが、
パフォーマンスをしている。
何かのイベントかもしれないがノエルの知るところではない。
とにかく賑やかな街。
そんなイメージだった。

ふと一人の人間に目がいった。
真っ赤なひらひらのワンピースにピンクのリボンを腰に巻き、
ショートヘアの金髪で歳はノエルと近い感じの子。
場違いと言うわけではないが気になって目で追ったが、
すぐに人ごみへと紛れて行ってしまった。

その直後。
急にどこかで大きな爆発が起き驚く人々。
これはイベントや日常の出来事ではないらしい。
ノエルも慌てようとするがどう行動することが普通かわからず、
爆発の起こった方向へ向かった。

「市長の自宅が爆破されたらしいぞ。」

「やだわ。
最近おかしな噂もあったからかしら。」

野次馬たちの声が聞こえてくる。
状況はさっぱり飲み込めないが異常事態というわけではない。
爆発した瞬間こそ驚いていた市民だったが、
今は既に落ち着きを取り戻し冷静に状況を観察している。
所詮は他人事。
自分さえ巻き込まれなければ関係ない。




狙われたのは市長。
市長自身は不在だったが身内は怪我をしたという声が聞こえる。
これだけの人間が住んでいれば政治に歯向かう者もいる。
それは当然。
しかし過激すぎる。
本人を狙わず身内を狙うなんて随分と卑怯な手。

そうは思ってもこれ以上人と関わる気はない。
どうせ虚ろな影の情報はこの街にない。
ひと時の休戦。
そのためにいるだけ。

大鎌では駄目だった攻撃も権杖ならば話しは違う。
異界の力さえ戻れば打撃とは別の攻撃がある。
それに託すしか方法はない。

異界から誰も来てくれないのなら、
可能性があるものを調べるしかない。
再び旧市街へと入ると恐る恐る虚ろな影を探った。
音に反応するとは言え姿を消すわけではない。
だとするとゆっくり近づけば先制も可能かもしれない。
そう睨んだ。
権杖を硬く握り締め突き進む。

しかし旧市街をあちこち回っても虚ろな影と遭遇しない。
やはり音を立てなくては近づいてこない。
そこでノエルは大きな石を遠くへ投げ捨てることにした。
先に発見さえできれば対処も色々できる。
追われる側になれば逃げる。
それではさっきの二の舞。

思い切って遠くへ投げてみると虚ろな影が姿を現す。
チャンスは一度切り。
権杖に力を込め天高く振りかざした。

すると権杖に光が集まり虚ろな影を照らし出す。
初めは暗闇に光が吸い込まれていくだけだったが、
次第に光が闇を制し虚ろな影は消滅した。

結局正体は不明だったが異界へ戻るための情報は何もない。
そう思ったが何か落ちている。
それを手にとってみると一枚のお札。
何を意味しているのかノエルにはわからないが、
試してみる価値はあると判断して持ち帰ることにした。


ノエルはグランエスタニアの街を後にして、
元来た道を引き返す。
一刻も早く試したい。
真っ直ぐに廃教会を目指すと到着する頃には夜になっていた。

試すと言っても何をして良いか不明。
お札をかざしてみたり扉の現れる位置に貼ってみるが、
ウンともスンとも言うはずがない。
やはり今回のことと虚ろな影とは無関係だったのだろうか。
諦めもつくと別の疑問が出る。
このお札が虚ろな影を作り出していたとすると、
作り出した人間がいる。
ノエルにとって異界へ戻ることが先決ではあるが、
気になり出すと抑えが効かない。
中途半端に首を突っ込むのは危険。
今更それを知っても既に遅い。

元来た道をもう一度戻っていくと、
グランエスタニアの街が騒がしい。
それにあちこちで煙が上がっている。
そしてあるはずのないものの存在を目の当たりにした。

「虚ろな影……なんでまだいるの。」

しかも旧市街だけに漂っていたそれは、
新市街にまで進出しているし一匹ではない。
無数のそれは次々と人を飲み込み生命を奪っている。

しかし体が無意識に動き出す。
権杖を構え一匹ずつ退治していくが数が多すぎる。
これでは人が全員食われるのが先かもしれない。
そこへ刀を持った女の子が現れた。

「助太刀するで。」

その女の子はまさにあの時一瞬視界に入った全身赤色を、
まとっている子。
だが刀で切れる相手ではないことをノエルは知っている。

「駄目!
こいつは刀じゃ斬れない!」

しかし聞こえていないのか真っ直ぐに虚ろな影へ向かっていくと、
剣先を地面に擦りつけ刀を振るってみせた。
するとどこからともなく炎が現れ虚ろな影を丸焼きにした。

「平気や。
これでも結構ビビリやから無茶はせんよ。」

ニカッと笑うと次の目標へと走っていく。
ノエルも負けずに虚ろな影を退治していくと、
倒した数だけあのお札が残されていく。
やはりこれは人工的に作られたもの。
だとするとそれを見ている者がいる。
そいつをなんとかしなければ永遠に同じことの繰り返し。

ノエルは虚ろな影を倒しつつその相手を探すと、
堂々とした態度で一人の男が登場した。

「おいおい、君たち何してくれてんの。
これじゃせっかくの実験がまた失敗なのだよ。」

白衣を着たひ弱そうな男は傲慢な態度で二人の動きを止めた。

「やっと黒幕のお出ましかい。
さっさとあんたを葬って終わりにしようか。」

有無を問わずに男に突っ込むが、
周囲の虚ろな影がそれを邪魔する。
とても一人では近づけそうにない。
そこでノエルが一点に集中して男の前にいる、
虚ろな影を一斉に排除すると刀で一刀両断にした。

すると今の今まで活動をしていた虚ろな影たちは、
その場に崩れ去りピチピチ跳ねているだけの黒い血。
次第にその動きも無くなり騒ぎは終息するかに見えた。


「あの二人が化物を退治したって。」

「あんな子供が。」

「きっとあの子たちが招き入れたのよ。」

「近寄ったら殺されるわ。」

酷い言われようだ。
ノエルは別に構わない。
どうせ一時のことに過ぎない。
しかしこの子は何か目的があってここへ来たに違いない。
悪いことをした。
そう思ったのだが……。

「いやー凄いな!
あんた名前は?
どこの人?
うちはイリス・ハイド・フィール。
14歳でずっと離れた辺境の地からここに、
強そうな人探しに来たんやけどあんたに決めたわ!」

わけがわからないまま話しが進んでいく。
押しの強い子に弱いのだとこの時初めて知った。
イリスの話しでは突如として、
巨大な人型のロボット風な者が現れ村を襲って行ったという。

また厄介そうな話しになっているが、
ここまで聞かされてしまっては断ることも不可能と感じ、
ただただ頷き着いていくしかなかった。




すっかり現世に溶け込んでいるノエルは、
グランエスタニアを後にしてイリスの住む村へ向かう。
その間ずっとイリスはあのままのテンションで、
ノエルは無心で答えるだけだった。

ようやく村に着く頃には力尽きる寸前で、
イリスが元気過ぎるのを見ると余計に疲れてしまった。
村はあの時の現状を維持していた。

「じゃああれから一度も現れてないんや?」

イリスは村長の家に集まっている者たちと会話をしているが、
ノエルはなんとなく気まずくて入れない。
どうせ問題の奴が現れない限り行動も取れない。
1時間ほどするとようやくイリスが外に出てきた。

「聞こえてたと思うけどあれから出てないんやて。
もしかしたらもう二度と出てこんかもしれんなー。」

「……。」

それならばそれでも良いのだろう。
しかし村の周囲を見ると明らかに何かが通った形跡がある。
それは巨大な何かがいたことを物語っている。
やはりこれもあの黒い血……黒血の現象なのだろうか。

「そうそう暇な爺様連中があれに名前も付けてたで。
巨神兵なんてたいそうな。
ま、とりあえず明日明るくなったらそいつが出たところ、
案内するから見に行こ。」

妙に気に入られてしまっているが、
ノエルがここに長時間滞在することはない。
異界への帰り方さえ分かればそれで終わる。
本来なら記憶にすら残らないように行動すべきだという、
その理由がなんとなく理解できた。

眠くなるまで語り合うとイリスが先に寝付いてしまった。
あれだけのテンションを維持しているのだから、
疲れも溜まるだろう。
ノエルは疲れを知らない。
そう見えるように仕草を見せることはあっても、
特に状態が変化するということはない。

そっと起き上がり村の外へ出ると、
昼間と違い静か過ぎて不気味にも感じられる。
既に村人たちは皆眠っている様子で、
月明かりだけが周囲を照らしている。
とても綺麗な景色はノエルの心を熱くさせる。
過去の記憶が無意識のうちにそうさせていることを、
ノエルは知らない。

のどかで何もない村。
こんな村で巨神兵が何のために現れたのだろう。
それも突如として現れ消えていった。
そんな人の何倍もある大きさのものが、
誰の目にも止まらず消え去るなんてありえない。
まるで扉の中へ消える。
そこに異界との繋がりを感じた。

ここはどれだけ遠くまで目を向けても同じ景色が続いている。
緑が空や海のようにどこまでもどこまでも。

「!?」

偶然かそれとも必然というべきか。
ノエルが来たその日の夜巨神兵は現れた。
だが遠い。
まだ遥か遠く。
それにひとつ確かなことが分かった。
扉などなかったが突然湧いたように巨神兵は出現。

イリスがわざわざ大きな街であったグランエスタニアまで来て、
助太刀してくれる相手を探していたのだから、
イリスの炎の刀では歯が立たないということだろうか。
炎の刀と言ってもあれはただ、
刃先をギザギザにして油を塗りたくって、
摩擦によって炎を出すだけのもの。
魔法やマジックのそれとは違う。

どちらにしてもまずは村から離す必要がある。
ノエルは大鎌を持ち全速力で巨神兵の元へ向かった。


目の前まで来るとその大きさが分かる。
遥か上空にある顔。
五十メートルほどはありそうだ。
それに全身を漆黒の鎧をまとっている。
特にノエルを敵視しているわけでもないらしく、
目の前に来ても変化なく村へ向かって歩いている。
これはこれで問題。
どうやら動くものをランダムで狙うわけではなく、
目的を持ってあの村を襲おうとしている。

それならばと大鎌を思い切り巨神兵に向かって振り抜いた。
するとようやく巨神兵がノエルを認識したように、
腕を振り上げゆっくりと地面ごと叩いてくる。
あまりにもスロー過ぎてノエルは難なく避ける。
お互いにダメージはない。
大鎌が駄目なら権杖と思うが夜。
あの力は昼間でなくては使えない。
夜はもっぱら大鎌。
これに限る。

だがあの漆黒の鎧には全く傷すらついていない。
イリスがグランエスタニアまで来た理由も分かる。
どこかに弱点があるはず。
ノエルはあちこちを大鎌で叩くが、
どこを叩いても成果はない。

正体不明の巨神兵。
その正体がようやくわかる時が来た。
どこからともなく伸びたそれには見覚えがある。
鋭く伸びるそれは廃教会で遭遇したものと似ている。

あまりの衝撃にノエルは一瞬行動力が鈍った。
その隙を逃すことはない。
ノエルは再び生命を吸われる。
急激に肉体が成長を始めあっという間に二十代。
しかしここがチャンスでもある。
あの時普通に振るった大鎌も威力を増していた。

ノエルは思い切って大鎌を振るった。
しかしダメージはない。
まるでそこに何もないかのように渾身の一撃を、
無効化している。

次第に生命を吸われていくノエルだが腕が重たい。
まるで何か重たいものが乗っかっているように思えた。
まさにその時。
大鎌を持っていると言うのに権杖が出現した。
今までにそんなことを試したことなどなかったが、
同時に出せるなんて思うはずもない。
何しろどちらも右手に持つだけあって、
二本同時に持つことなどありえないし、
両手で持っても相当な重量。
二本持つなんて考えたくもなかったのだが、
その心配は無かった。

大鎌と権杖は重なり合いひとつの武器と化した。
それはとても軽く細長い薙刀のような形をしている。
そのままの勢いに任せ巨神兵に斬りつけると、
それまでの苦戦が嘘のように真っ二つに斬り裂いた。

すると中からは黒血が溢れ出る。
咄嗟に避けようとしたが間に合わずノエルはそれに飲まれた。


遠のく意識。
しかし心地良い。
忘れていた黒血の意味。
それは無残に殺された命の記憶。
鮮血の赤に染まっていた血は憎悪と悲愴に満ちて、
黒く染まり長い月日をかけて、
憎しみだけで動き回っている。


目を覚ますと黒血は消え空に輝く星たちだけが見える。
静かに戻った森。
疲れるはずもない体だが気持ちはぐったり。

ぐったりだと言うのに何かに引っ張られる気がした。
それは全く自分の力ではどうしようもないほどの力。
既に元の姿にも戻っていてさほど強力な力を出すこともできない。
更にはさっきまで薙刀だったものも、
いつの間にか大鎌に戻っている。
必死に地面に叩きつけその場にとどまろうとするが、
抗うことはできなかった。
宙を舞いあるところ目掛けて飛ばされていく。

「……これって。」

その方向は廃教会。
扉が開いているのだろう。
向こう側から助けが来た。
ようやく戻れる。
最後にイリスに挨拶くらいはしたかったが、
元々会えるはずもない関係。
巨神兵……黒血の集団も葬ったということで、
ノエルの中では納得することにした。

数日の間とは言え久々に現世を満喫したノエルだった。




600年前。
それはノエルが生きていた時の話。


とある王国の娘として生まれ、
もうすぐ十四歳になるノエルは、
気高く勇敢な王である父と貴品があり優雅な母の間に生まれ、
何不自由なく育てられてきた。

そんなノエルが一番好きなことは、
城の一番上にある小さな部屋から夜空を見ていること。
王国のどんな建物よりも上にあるその場所は、
誰よりも空に近く月を独り占めしている気分になる。

そこで歌うことこそノエルの楽しみだった。
とても美しい詩とそれに見合った声は、
聴く者を魅了し安らかにさせる。
天使の囁きのような豊かで優しいものだった。


しかし運命は急転する。
国内で反乱が起き王である父と后である母は殺害され、
娘であるノエルだけが生き残った。
国は一気に戦場と化しノエルにも命の危機が迫る。

たった十四歳にも満たない少女に何ができたか。
ノエルの存在など無力に等しい。
そう自分でも思っていた。
自分にできること。
それは歌。
国中の人に歌を捧げる。
それがノエルのできること。

十四歳になる日にノエルは国民の前に立ちそして歌おうとした。


その願いが叶うことは無かった。
まさに歌おうとした時だった。
全ては一本の矢で納まりかけていた内乱は、
悪化の一途を辿っていった。


ノエルは十四歳の誕生日即位する日にこの世を去った。
多々ある無念の中に一番の無念はあの歌を詠めなかったこと。
その思いだけがノエルを600年もの間、
死ねない体のままさまよい続けている。

それは同時にノエルの育った国が未だに、
内乱を続けていることにもあった。





次の満月の夜。
それが待ち遠しい。
そんなことは今までに一度も無かった。
いつものように魂魄を異界へ送り終えるとまだ朝まで時間がある。
もちろんいつもならその場にとどまり時を待つ。
しかしノエルは自由に飛び立つ。

あるはずのない記憶を遡り目指すは自分のいた国。
そこは戦場。
600年もの間休まることなく戦い続ける地。
黒血の絶えず溢れ出る地。
その臭いに誘われノエルは600年ぶりに、
故郷の地へ足を踏み入れた。


夜中だと言うのに燃えたぎる炎。
鼻に来る強い刺激臭。
人を燃やしている臭いに違いない。
それに至るところにある焦げた死体や生焼けの死体。
これから焼くのだろう死体。
あちこちに人が転がっている。

ノエルは自然と拳を握り締めた。
月夜に舞うノエルの姿は天使のように見える。
青白い服装と整った顔立ち。
それでも荒んだ心しか持たない者には、
攻撃の対象としか見えない。

敵味方の区別ができないノエルは格好の的。
無数に飛び交う弓。
よくもまあ600年もこんなことを続けている。

並の人間を叩くことなど月詠の民であるノエルにとっては、
たやすいことであるがそれを許可されることはない。
それも暗黙の了解ではある。
例外はあっても特例は認めない。
そんな不安定な状況。

無数に飛ぶ弓は止むことを知らない。
どこまでもどこまでも飛んでくる。
いったいいつ寝ているのかと思ってしまう。
第一600年間殺し合っているというのに、
なぜ人がゼロにならないのか。
不可解としか思えない。
これも黒血のせい……。


ノエルは抵抗できない気持ちのまま弓の雨を避けながら、
他の場所へも行ってみるが、
どこまで行っても状況は変わらない。
まともに取り合ってくれる相手は見当たらない。

東の端から西の端。
南から北へと移動していくとどこでも弓が飛んで来たというのに、
全く誰もいない土地があった。
そこは海の見える丘で満月がとても綺麗に見える。

何か違和感がある。
初めてのはずの場所なのに懐かしい。
無性に何か叫びたくなる。

ぞろぞろと次第に集まり出す国民たち。
デジャブ……というわけではない。
ノエルの心に留まっていた記憶が、
過去に生み出したノエルの黒血を呼び覚ます。
徐々に侵食されてくるのが分かる。

このまま死ねるのならそれも良い。
そっと目を閉じ最期の時を安らかに迎えよう。


閉じたはずの目。
それなのに眩しい。
明るく照らす何かに思わず目を開けてしまった。

そして自然と頭の中に流れ込んできた歌を詠んだ。


600年前。
詠むはずだったあの歌。
その歌が失いかけていた心を取り戻させる。
憎しみ合い殺し合ってきた国民たちは、
武器を捨て手を取り合って600年ぶりの、
ノエルの帰還に歓喜した。


夜明け。
照らされる日の光を浴び徐々に国民が消えていく。
さまよっていた魂魄が浄化されていく。
600年もの間救われずにさまよっていた魂魄を、
あの時歌えなかった歌を詠んで約束を果たした。

あの時止まった時間がようやくノエルの中で動き始めた。


これで良かった。

「みんな600年も待たせてごめんね。」

月詠の柩

月詠の柩

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-22

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