月が綺麗ですね

月が綺麗ですね

ここでは初めて書きます


真面目な文学少女の伝えられない想い、がテーマです。


半分実話に近いかもしれません。


ちなみにごく一部を除き、登場人物の名前やキャラは実際の友人や先生のものです(笑)


まったく関係ありませんが。

孤立状態

本のページをまたひとつめくる。


もうそろそろ読み終わるだろうか。


なにせ他にすることがないものだから、本を読むスピードはとにかく早い。


周りでキラキラした女子や、精神年齢が低い男子が騒いでいる。


うるさいな、と思わなくもなかったが


たとえ声を出したって、私の声なんて誰にも届かないだろう。




山下優里




それが私の名前。


この私立広葉学園中学校3年生、5組。


大したとりえがあるわけでもなく、なんとなく勉強だけを頑張る毎日だ。


ちなみにこの前の中間試験は学年220人中23位。


少なくとも悪くはない・・・と思う。


私は運動神経が死んでいると言っていいほど、運動ができない。


だからこそこの私立中学校で勉強で結果を残したい。


それ以外に私の存在を示す方法はないから。






私は、極端に友達が少ないのだ。






もともとあまり社交的ではなく、深く狭く付き合いたいタイプだった。


それでもクラスに1人親友に近い存在がいたから十分だったんだけど・・・ほんの1ヶ月前までは。





そう。


私には友達がいたのだ。


その元・友達をちらりと見る。


小野木明日香



それがその子の名前。


背が低くて童顔、眼鏡をかけてる。性格が恐ろしく悪い・・・ことに最近気づいた。


「もっちゃん、明日香ねー?」


『もっちゃん』こと岩本さんに話しかけている。


ああ、またターゲット変えたんだ・・・3回目?


ほら、岩本さんのグループの子が困ってる。爽ちゃんと栗原さん。


1ヶ月前、私は彼女___小野木明日香に捨てられた。


「明日香ぁー、優里ちゃんとぃるのぁきたー♪」


マンガや小説のように吹き出しがあったとしたら間違いなくこう表記されるだろう。

ちょっとワガママな子だったけど、ここに来て本性を出したか・・・ってその時は思った。



唯一気になったのが、小野木さん(私には名字呼びの癖があり、仲がいい人でもさん付けで呼ぶことが多い)と私は2人組だったから、

私が1人になる=彼女も1人になるということだった。


でも、さすが。


人の懐に入るのがとてもうまい小野木さんは、ターゲットを決めて次々に話しかけにいった



1人目は、東さん。私と塾が一緒だった、バスケ部の子。でもべたべたくっつくタイプの小野木さんには合わないあっさりした子だったから

うまくいかなくて小野木さんの方から離れた。


2人目は、梨亜ちゃん。バレー部で、『もーりー』こと森山さんと2人組の子。3人グループになるのかと思ったけど、結局また離れていった。



そして今、3人目・・・岩本さんだ。卓球部だっけ?特に目だつタイプじゃないけど、嫌われることもないような子。



さて、今度はうまくいくのかな?関係ないことなのかもしれないけど。



私はあの時から『ぼっち』を貫いている。

私の性格上、また親密な関係になれる子を見つけるのはほぼ不可能だとさとった。


だったらせめて格好よく孤立してやろう・・・と決めた。


幸い、というのか。クラス内からの同情を頂いたため特に不都合はない。





本のページを再びめくる。




移動も1人だし、休み時間もこうして1人で図書室に行くか教室で本をよんでいるかだ。さすがにお弁当は他のクラスの親友と食べているけど。


今のところこの状態に満足している。








淡い恋心

「すいません、返却します」



朝・・・学校についてすぐ、図書室で司書の先生に、借りていた本を差し出す。


バーコードを読み取ってもらい、本を元あった場所に戻す。


「優里ちゃん今日は何借りるのー?」


ほぼ毎日本を返しては借りを3年くりかえしているため、司書の先生(3人いる)とは全員かなり仲がいい


「んー・・・久しぶりに『アン』シリーズにしよっかな・・・」



世界名作『赤毛のアン』は、実は10巻ほど出ている



「好きだねー、それ」


「だって面白いもん」





「優里ちゃーん!!!!!おはよ!」


司書の1人、南先生との会話中にやってきたテンションの高いこの子は数少ない友達の1人、1組の朔山。


「おはよ、朔山。今日もテンション高いね」


「はっはっはー♪当然だよ優里ちゃん」


「・・・そうだね。テンション低かったら朔山じゃないや(笑)」


「そう言う優里ちゃんは相変わらずテンション低いね」




「山下は朝苦手だもんなー」




「黒川・・・いきなり話に入ってこないでよ」



黒川。


私と同じクラスの男子で、図書室の常連仲間。


お世辞にもイケメンではないが、めちゃくちゃ不細工ってわけでもない。


比較的話しやすい奴なので、サブカル系女子とかと仲がいい(キラキラ系女子からは嫌われているが)。


そして・・・


「まあそう言うなよ(笑)」


「・・・」



私の



好きな人。



なんのためらいもなくカウンターにもたれかかる私の隣に来て


体が少し触れるくらいの距離で私を見る。


どこを見ればいいか分からなくて、眼鏡の緑のふちを見ることにした。



「あいかわらずお前の手ぇ冷たいなー」


「心は温かいの」



くすくす笑いながら私の手をちょっと握り、じっと見る



やめてよ



期待しちゃうじゃん





「うぃーっす、黒川」


「朔山、いたのかよ」


「ちょっと待てwww優里ちゃんに抱きついてましたけどwww」


「お前髪切れよ。前髪長過ぎだろ」


「まあっ!女子になんてことをっ!セクハラよっ!」


「そーいやそうでしたねー」



あ、言い忘れたけど朔山は確かに女子だ。


一人称が『俺』だけど




「私もう教室帰るから」


「えー、じゃあまたね優里ちゃん」


「うん。黒川も余裕もって帰りなよ」


「分かってるわ(笑)」







とか言って、いつもギリギリのくせに。







伝えること

借りた本を読みながら、右斜め後ろの席をちらちらと気にする。



席替えで近くになれた、黒川の席。



もうすぐ8時30分・・・読書の時間が始まるのに。






「ほらー座れー!」






担任も教室に入ってきた


あいつは帰って来ない・・・来た!





「やべ、ギリギリ(笑)」



本当。何が『分かった』なのよ。


まあどうせ・・・


「理華と話してるとついつい時間忘れちまうんだよなー♪」


「うっさいくたばれリア充本読めや」


ばか。


せめて私の前でそんな話しないでよ。


「うわ山下ひでー」

「・・・」



好きな人の惚気なんか聞いて嬉しいわけないじゃん。




野々宮理華ちゃん




2組の女子




黒川の_____彼女。







眼鏡をかけた、可愛い系の顔


サイドでくくった長い黒髪


勝てっこ、ない。






だから私は気持ちを伝えることはない。


結果が決まりきってるから。

カタオモイ

君は知らないんだろう



私の気持ちなんて


知ってたら


こんなこと



するわけないもん_______________









「山下?聞いてるか?」



「ああ・・・うん」



「悪いな、時間もらっちまって」




違うよ?


辛いのは


君の相談を聞くこと


信頼されてるのかもしれないけど


好きな人の恋話なんか



まともに聞けないよ。









『理華が最近冷たい』



黒川の悩みを聞く休み時間は



話せる嬉しさと

いろんな辛さで



めちゃくちゃだ。



泣かないだけで、精一杯。

月が綺麗ですね

月が綺麗ですね

好きだって、伝えられない。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-21

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  1. 孤立状態
  2. 淡い恋心
  3. 伝えること
  4. カタオモイ