願った思い。Ⅱ
携帯
いくらかして絵梨は戻ってきた。
「ごめん、少し取り乱した」
「大丈夫だよ。おかえり」
彼女の言葉に出来るだけ優しくそう声を掛けた。もしかしたら自分が彼女と同じ立場だったら怖くて顔も見れないだろうから。
またしばらくの沈黙になった後、彼女が口を開いた。
「…………えっと……先生にこの事話してきたよ? あ、それとね? かなでさん……君のお母さんにも話したからね……?」
「……お母さん?」
「そ、君のお母さん。奏“かなで”さんだよ?」
少し考えたが顔すら思い出すことが出来なかった。それに
「そっか……家族、居るのか」
考えてすらいなかった。確かに絵梨を見ると十代くらいだろう、その幼馴染みなのだから自分もそうは変わらない年で、親と暮らしててもおかしくは無いだろう。
「当たり前じゃん! …………どうしたの?」
不思議そうに彼女が聞いてきた。
「いや、考えてなくて……僕ってどんな人間だった?」
正直に答え、疑問に思ったことを聞いてみる。
「え? うーん。難しいな……私から見て弘輝君はカッコいい人だよ? 自分の意志をちゃんと持ってて、優しくって。誰隔てなく笑って話してて……それでも学校の中には偽善者って妬むような人も居たけど」
「……そう。教えてくれてありがとう」
やっぱり聞いてみてピンとはこなく、胸の奥がもやついた。
「いえいえ、明日には奏さん見舞いに来れるって言ってたよー、もしかしたら携帯が返ってくれば何か思い出すかもねぇ……あ、でもここに運ばれたとき携帯持ってなかったみたいだよ?」
“携帯”と聞いた瞬間、一瞬脳裏に何か堅いもので殴ったような粉々になったスマートフォンが写真のように映った。
「ーーっ!?」
「え、どうしたの? 何か思い出した?」
「……いや、何も」
(今のなんだったんだろう……)
気になりはしたが、何故だかとても思い出したくなかった。
ーー思い出したらいけないような気がした。
願った思い。Ⅱ
2話目です(* ̄∇ ̄*) 自分でも内容が気になって来ましたww 続きはどうなるんでしょうか……。今作は大分短かったですが、あまり長い作品は書けないのでこの程度になるとは思います。
前作から引き続き見てる人が居るのかも気になりますが、自分は関係なく書いたり書かなかったりしますよ!