星空のもとで
1話目は天川雄馬と主人公の子供の頃の話。
まだ主人公の名前は出してないのでわからないと思いますが
後にこの話が1番の近道になるお話です。
2話目はまだ投稿してないのでお楽しみに!
1話 別れと現実
きっと僕は待ち続けていた。
二度と戻れないと知りながらただひたすら
アイツの姿だけを今も待ち続けていた。
それはきっとアイツと約束した
最期の夢だったから…。
桜が綺麗に咲くことで有名な小高い山を
ただひたすら上へ上へ登りいつも一番デカイ桜の木の下で
ずっと考えていた。
“このまま一生を過ごし 年をとっていく”
それもあの日まで…。
アイツは俺にいつもこう言った。
「なぁーこの空が見えるか…?」
俺はなにも答えなかった。
いや、答えれなかった。
無数に飛び交う満天の星空に
いつもよりも大きく見える三日月。
「俺もいつかあの星に届くかな…?」
明るい口調でいつも通りのアイツとは
少し違っていて
アイツが振り向くといつもは見せない何処か悲しげな顔をしていた。
「雄馬なら届くよ!絶対!」
俺がそう答えるとアイツも笑ってくれて
「だな!」
そう笑顔で答えてくれた。
でも神様は夢を聞いてはくれなかった…。
100人に1人しかかからない重く苦しいと言われてる病気に
アイツはかかった。
先生方は最善を尽くしてくれたと思う。
「雄馬!おい雄馬しっかりしろ!」
時は次第に流れて4年の月日が経った。
病状は悪くなる一方で
日に日にアイツが弱っていくのを近くで見ていた。
いつしか涙が頬を伝って流れはじめた。
「空は今日も満天の星空か?」
それがアイツの最期の言葉だった。
天川雄馬 享年11歳。
その若さでこの世を去った雄馬は
1日、1日を懸命に生きていた。
あの日から5年…。
俺は高校生になり毎晩星の観察をするようになったが
今でもこの星空が大嫌いだった。
俺は雄馬みたいに夢も目標もなく
ただひたすら雄馬と一緒にいれると思っていた。
「おはよー!」
後ろからいきよい良く声掛けてきたのは
子供の頃隣に引っ越してきた蒼井静音。
子供の頃からお姉さん振るとこがあるから
みんなには『しずねぇ』なんて呼ばれてるちょっと苦手タイプ。
「あ〜おはよ」
桜の木に囲まれた百段の階段を登り川の流れる横道を
20分位歩くと俺たちの高校がある。
『私立桜ヶ丘高等学校』
この街では普通の進学校だが、ちょっと前までは女子高だったため
割合的には、6対4。
女の子には興味がないが裏には雄馬の眠る墓がある。
そこに1番近いという理由だけでここに決めた。
「桜も咲き誇り川のせせらぎを感じさせる暖かな春を迎え…」
どの学校も校長先生の話は長いのは知っているが
立ったまま聞かされるとは思わなかった。
「ねー天馬!一緒に帰ろ?」
静音とは同じクラス。
毎日一緒に帰らないといけないとなると
少し思いやられる。
俺の名前は天川天馬。
雄馬の双子の弟で顔は全く似てはいないし、性格も真逆。
「先帰っていいよ」
俺は素っ気なく答えて静音の声にも振り向かず
そのまま教室をでた。
俺はその足で裏の墓地に向かった。
学校の裏道をずっと進み途中にある階段を登り
そのまま進むと見えてくる。
『桜ヶ丘墓地』
この街で唯一のとこだがみなは来たがらない。
いや、来ることの方が珍しい。
ここには古くから伝えられてきたことがあって
“満月の夜みなが静まる
今宵は幾度の時を越え
此処に甦らんとする魂もまたあり”
これはつい最近聞いた話だが
「雄ちゃんと同じこと聞いてきたのいつぶりかしら」
と母は少しさみしそうな嬉しそうな顔で
いつもより時間をかけて話してくれたのを覚えてる。
今日は満月の夜。
何が起ころうとそれが真実というのなら
俺はなにも動じない。
その時だった満月が1番大きく見える時
俺は夢を見た。
雄馬に会う夢を…。
2話 双子の夢
「起きなさーい!天馬!」
俺は夢を見ていた。
母の呼ぶ声は聞こえたし、でも昨日の記憶が
全くない。
今日は満月じゃないけどもう一度行ってみることにした。
雄馬の墓の前でひとりつったってる人がいる。
「あの…」
俺が聞くと彼は振り向いた。
「キミは天馬…くん?」
俺のことを知ってる?
いや、でも俺は彼を知らない。
彼は笑顔で俺の方に歩寄ってきた。
服装からしてこの墓地の奥にある
お寺の子だと予想はついた。
でも、そのお寺の子がなぜ雄馬の墓の前に…?
「いやー大きくなったね!」
彼はそう笑顔でつぶやいた。
「あの…初めてあったんですが…」
俺は驚きよりも何を言ってるんだって不思議に思ってしまった。
けど彼ははこう言った。
「私の名は夜未。遥歌夜未。
この世にとどまってもう200年目になる。
彼…天川雄馬くんには一度君を連れてきてもらったことがあるんだ。」
夕日に背を向けたままの彼に
俺の顔は見えていたと思う。
驚きを隠せない顔が…。
星空のもとで