波
波打ち際に置いた足裏の砂を、
返す波が、さらって行く時の、
頼りなく、不安な心地。
それにも似た、僕の心は、
それでも、そこに足を置く。
つんのめるのか、のけぞるのか、
いつでも不安定な足裏の砂を、
そうだ、冷や冷やしながら、
僕は、そこに足を置く。
夜の海は、波間に月光がたゆたい、
漆黒の海底に溶けていく。
青白き蠱惑の光に、見惚れて佇めば、
たちまち、砂をさらわれる。
どんなに凪いだ海も、眠らない。
綿毛の風吹く、春の海も休むことがない。
それでも僕は、そこに足を置き続ける。
それが、愛と呼ばれる日まで・・・・
波