うめぼし

幼心に
祖母の作る梅干しが
嫌いであった
口腔にあの果肉の酸味が
脈打って広がるような気がした
食べずにいると
悲しい顔をしてみせるので
酸味に喘いで飲み込んだ


大人心に
祖母の作った梅干しが
嫌いである
口に含むと懐かしい酸味が
優しく広がっていく
食べずにいても
変わらぬ顔のままなのに
私は喘いで飲み込んだ

うめぼし

うめぼし

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-18

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