『願いを叶える木』
願いを叶える木を題材に書いてみました。
その日は昨日の曇り空が嘘だったかのように、真っ青に晴れた。
僕は学校の授業を終えて、街のはずれへ向かった。ほとんど毎日のように、僕はそこへ向かう。会いたい会いたい。町はずれのあの木に会いたい。
鳥居を抜け、裏の林を抜け、少し高い丘を駆け上がると、白と緑に染まった木があった。
それは、『願いを叶える木』。
祈りとともに付けられた白い紙は、街の住人の願いだ。
僕はまだ白い紙をつけて願ったことはまだ一度もないが、すごい綺麗だな、と思う。
白と緑に彩られた木はまるで女の子のようで、可愛く、美しかった。
『願いを叶える木』。噂に聞いたことがある。恋愛成就したとか、くじの五等が当たったとか。ここで願えば、たいていの小さな願いは叶うという噂を聞いたことがある。でも、あくまで噂らしい。不思議と実際に願ってみないと、分からないらしい。
でも僕は、願いを叶えてくれるから好き、ではなく、この木が好きなんだ。
そんな木を、僕は、みしろちゃん、と呼んでいる。街のみんなはご神木と言っていて、名前をつけてない。みしろちゃんは、僕が付けた名前だ。
みしろちゃん、今日も元気そうだ。良かった。
僕はみしろちゃんに腰掛、目をつぶった。
こうしてると、なにかささやいている気がしてくる。
さやさやとざわざわと、紙と紙や葉っぱと葉っぱが擦れあう音が聞こえてくる。
日差しはすでに傾きかけているが、なんか暖かい。
気持ちいい。
なんだかみしろちゃんが、優しい気持ちで僕を包んでくれてる気がした。
しばらくそうしていると、瞼がオレンジ色になった。
目を開けると、日没寸前だった。
「じゃあね、みしろちゃん」
――じゃあね、ケンくん。
「ん?」
丘を下りるところで、声が聞こえた気がする。
まさか、木がしゃべるわけじゃないし。
「じゃ」
僕は、夕ご飯が待ちきれなくなっていた。
夕飯を食べ終えて、自室でゆっくりとしていると、妹のミキがいつのまにか部屋に居た。
「部屋に入るなら、ノックしろよ」
「ケン、うるさい」
お兄ちゃんと呼んでくれない。
ミキは僕のベッドで横になって、少女マンガを読んでいた。
話しかけるなオーラを出している。
そのくせ、完全に無視するとミキは怒るのだ。いったいどうすれば良いんだか。
ミキは少女マンガが面白いようで、後ろ脚をバタバタしている。
僕のまくらを抱えていて、離そうともしない。
「はぁ~」
僕は呆れて机に突っ伏した。
「……ねえお兄ちゃん、またあの丘へ行ったの?」
「ん? ……うん」
まどろみ始めていたところに声かけられたので、適当に返事をした。
「私も行きたいなあ」
ミキは不満そうにつぶやいた。
妹のミキはまだ小学校に入ったばかり。
街の掟では、小学5、6年生ぐらいにならないと近づいてはいけないらしい。なんでも、そういう決まりだからとか。理由は知らない。そして、なぜだか近づけないようだった。
僕は小学5年生になった日、催し前に訪れていた。ほんとは催し前にも来てはいけなかったのだが、どうしても行きたかった。
その時見た感動を僕は忘れそうにもない。
「もうちょっと待てよ」
「でもでも、うー」
ミキは足をばたつかせた。
「お兄ちゃんばかり、ずるい」
「そういわれてもな」
時計を見ると、八時に回っていた。そろそろ風呂の時間だ。
「風呂の時間だ。さっさと入れよ」
「もう!」
ミキは立ち上がると、ドアへ向かっていった。
「明日、やってみるか」
ミキはその言葉を聞いて、嬉しそうに飛び上がった。
「うん!」
みしろちゃんに、妹を紹介しよう。
今度こそ、みしろちゃんにたどり着くぞ。
授業が終わって、すぐさま家に直行した。
妹はすでに帰っている。
友達とさきに帰ったらしい。兄と一緒に帰るのも恥ずかしいのかもしれない。
あんなに甘えてきているのにな。
「ただいまー」
「おかえりー。お兄ちゃんおそーい」
僕はすぐさま二階の自分の部屋に鞄を置き、一階へ下りる。
冷蔵庫へ行って、キンキンに冷えたお茶を一杯。
「ぷはー」
妹はお菓子と水筒を準備していた。
「では、行くぞ」
「おー!」
玄関の鍵をしめて、さっそく街のはずれに向った。
ここからだと、なんも問題ない。
でも、神社に近づくにつれて、おかしくなるのだ。
「お兄ちゃん、ここだね」
「ここからだ」
親指の大きさほどに見え始めたみしろちゃん。
この距離あたりから、迷いに巻き込まれていくのだった。
ここからは妹の手を引いていくことにする。
以前、手を引かないで行こうとしたときは、僕だけがたどり着き、妹は自宅前に立っていた。ミキは大泣きだった。今度はそんなことないように、手を繋いだ。
ミキはちょっと顔を赤くしながらも、嬉しそうである。
僕も若干照れながら、一歩一歩踏みしめるように、みしろちゃんへ向かった。
――ドキン
今なにか、薄い霧のようなものが僕らの周りを漂った気がする。
手を繋いでいない右手で目をこすってみる。なにも見えない。
気のせいかな。
それからは黙々と歩いていく。
緊張と楽しさを噛みしめながら。
――一時間ほどたった気がする。
おかしい。たどり着けない。
どうして僕は辿りつけるのに、ミキほどの年齢はダメなんだろう。
「お兄ちゃん、疲れた」
でも、妹の方は気にしてないようだった。
手をがっちり結ばれ、ふざけて振りほどこうとすると怒ったこともある。
「ここで、食べよう」
ここで、て言われても、こんな道路の真ん中で。
でも、よく考えてみたら、人と一度も出会ってなかった。
これじゃあ術中だ。
今日も無理だったか。
でも、ミキにそれ言ったら怒るからな。
ミキは道路にシートを敷いて、おかしを広げている。
「お兄ちゃん、座って」
「はいはい」
言われたとおりに座った。
そのあと、お菓子を食べて楽しんだ。
「あれ?」
妹と僕、合わせて二人なのに、なぜか三人座っているような座り方した。
おかしいな。
「あー、お兄ちゃん食べたでしょー」
「え? なんだよ」
「ほら、ここに置いておいたうんめえ棒がなくなってるよ」
あ、ほんとだ。
まるで誰かが食べたかのようだった。
でも不思議と怖い感じがしない。
「ん、んー」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
どうやら僕は困ったような顔をしていたようだ。
それもそのはず、妹のミキと一緒にみしろちゃんへ挑戦するとき、たまにこのようなことが起こっていた。不自然と言えるくらい。
「もう、帰ろうか」
「えー」
「だって、今日も無理だったろ」
「んー」
ミキは不満そうだったが、しぶしぶうなずいてくれた。
帰ることを決意したとたん、体が軽くなった気がする。
僕たちはそれを片付け、仕方なく自宅へ向かった。
それから数日間、友達に誘われて放課後サッカーをしていた。
今日はそれが早く終わったので、久しぶりにみしろちゃんと会える。
ワクワクした気持ちで僕はみしろちゃんの木がある丘へ向かっていた。
もう夕日で空がオレンジ色に染まりかけている。
いつもと違う時間。みしろちゃんは歓迎してくれるかな。
走っていると見慣れない人が視界の隅にうつった。
後ろを振り向くと、背広すがたで、顔は分からない。
なぜだかちょっと気になったが、とにかくみしろちゃんに会いたい一心で僕は走った。
「みしろちゃん……」
いつも木を見上げるようにしているから分かる。
枝の端っこの小さな区間が枯れていたのだった。
枯れた枝の先の葉っぱは、茶色くなっており、祈りの紙は黒ずんでいる。
僕はその真下に向った。
「これはひどい」
黒ずんだ紙はボロボロになっていた。
僕は心配してみしろちゃんへ振り替える。
なにかおかしなところが無いか、くまなく探した。
でも、あの一点以外は、なんにも異常がなかった。
ご神木でも、こういうことってあるのかな。
夢中で探し回ったので、もう空は青く黒くなっていた。
今日は仕方ない。
「みしろちゃん……またね」
僕は木の幹に触れて、そのまま帰った。
明日は、友達と遊ぶのをやめて、直行で向かうと決めた。
次の日の朝は、学校ではご神木が枯れ始めた話題で持ちきりだった。
大人は、街のシンボルとして心配し、僕たち小学生は願いの心配を話し合っていた。
はやる気持ちを抑えて、全ての授業が終わるのを待ってから僕は直行した。
木の周りには、近所のおばさんやおじさんなど、神主さんまで心配そうに見上げていた。
僕は見上げた。
昨日の一区間がさらに広がっていた。
「そんな……」
大好きな木が、大好きなみしろちゃんが、
<ケンくん! ケンくん!>
声がした。前聞いたときよりはっきりと。
そして確信した。これは夢ではない。
声がした方へ振り替えると、巫女の服装をした小さな女の子が立っていた。髪は緑と白で、このご神木そのものだった。
「みしろちゃん!」
大人たちがぎょっとして僕に振り向く。
でも、僕の方を見るだけで、なにも分かってないようだった。
大人たちは興味をなくしたように、また木を見上げた。
巫女服のみしろちゃんは、木の根元付近から手招きしている。
僕は意を決して近づいた。
「みしろちゃん、まさかみしろちゃんなの?」
僕はささやくような声を出した。これなら大人たちは気づかない。
<うん、そうなの>
その声には元気を感じなかった。
やつれた顔をして、ふらふらしている。
<気付いた時にはこうなってて、それで……>
僕は恥ずかしいのをこらえて彼女を支える。
<はあ……う>
みしろちゃんが倒れた。
<み、水>
「ま、待ってて」
僕は慌てて境内の水を取りに行った。
コップを発見し、それで飲ませる。
<はあ、助かった>
「大丈夫、そうじゃないよね」
<気付いたらこうなってて。私、あいまいな意識だったの。でも、なぜかこうなってて>
ふらふらしながら答える。
「枯れ始めているよ、みしろちゃん」
<……なぜだかわからないの>
「なぜこうなったのか、覚えてる?」
みしろちゃんは首を振った。
<今頼めるのは、ケンくんしかないの。私、こうして姿を保っているのに必死で。助けてほしい>
こんな可愛い子に言われたら助けないわけにはいかない。
「ぼくに、どうしたら」
<お腹がずきずきする。たぶん、誰かがなにかやってるの。それを突き止めてほしい>
「突き止める?」
<くる、しい。……危ないことはしないでね。また、ね>
みしろちゃんは風景に溶け込むように消えてしまった。
僕はさっそく大人たちや子供たちを見まわすが、怪しいとは思えなかった。
みしろちゃんは眠ってしまったのだろうか。
もう夕焼けだ。
今夜は怪しいやつは現れそうになかった。
僕は長期戦を覚悟した。
それからは、人になったみしろちゃんを見ることも、あやしい奴を見かけることもなかった。
時間は刻々と過ぎていく。
木は全体が枯れ始めて、緑の笠は、茶色に染まり始めていた。
街ではどこもその話題で持ちきりで、しばらく丘には人がしきりなしに訪れていた。
今日も収穫もなしで、部屋でごろごろしていると、妹がまたノックもなしに入ってきた。
「お兄ちゃん」
あのことだ。
「なんだよ」
僕はミキに背を向けた。
「木を見たいよ」
泣きそうな声でミキが言う。
「……うん」
「どうしても見たいの」
枯れることなんて想像つかなかったのだろう。未来永劫元気な木なら、ということで我慢sていたに違いない。
「明日、一緒にいこうか」
「うん!」
ミキはすぐに部屋を出て行った。
おおかた、明日の準備をしているのだろう。
たぶん、明日ならたどり着けるきがする。
僕は授業を終えた放課後、まっすぐに家に帰った。
ミキはすでに着替えていて、準備は出来ていた。
僕たちは急いで木のある丘へ向かった。
それが、いままでが嘘のように、丘へたどり着いた。
人がだれもいない。次第に丘に人が近づかなくなったようだった。
「お兄ちゃん、ついにたどり着けたね」
「ああ」
ミキはそのまま木に抱き着く。
「でっかーい」
「でっかいな」
僕たちはそれから、ぶらぶらと木の周りで遊んだ。
僕は疲れたので、腰かけていると、
「ねえ、おにいちゃーん」
「なんだよ」
やれやれ。ミキはなにか手に持っている。
なにか見つけたようだ。
またくだらないものかもしれない。
「ほら、これみて」
手に持っているのは、服のボタンだった。
ボタンが落ちていた?
それは、学生のものでもなく、スーツのものだった。よくお父さんのを見ているから分かる。
「なんでこんなものが」
ぼくたちは、それを手に持ってしげしげと見ていると、背後に音がした。
「おやおや、ここに有ったようで」
「「あ」」
そのボタンはうしろに立っていたスーツのおじさんに取られてしまった。
おじさんはそれを大事そうにしまう。
「キミたちが見つけてくれたのかね。ありがとう」
僕はとっさにミキをかばって後ろに下がった。
「おやおや、怖がらせたようだね」
<その……ひと、です>
「まさか、そのおじさんが!」
おじさんはその一言で、鋭い視線になった。
「なんのことでしょう」
おじさんはとぼけている。
決めつけはよくないが、たぶん、このおじさんが犯人に違いない。
「おじさんが、この枯れる原因でしょ」
「…………」
あたりを沈黙が包み込む。
鋭い視線、それが余裕の笑みの視線になった。
「ばれちゃあしょうがない。この木にはお世話になったんですよ。でも、ある願いは叶わなくてね……失望したからこういうことです。……さてどうするんです?」
く、舐められてる。
ミキは俺の服をぎゅっと握っておびえていた。
努めて冷静を装い聞いた。
「願いが叶わないから。そんな理由で?」
「役立ちませんから」
このおじさんがどうやって木をここまでしたのか分からない。でも、許せなかった。
「言いふらしてやる。後悔させてやる」
「ふん。楽しみだな」
おじさんは取りつく島もなく、そう言い捨て、帰って行った。
「お兄ちゃん」
「ああ」
言葉に伝えなくても僕たち二人は決めた。
それからはおじさんのことを言いふらした。
最初は僕たちが優勢だった。おじさんへの疑惑の目が生じ、追い込んで行ったかに見えた。
しかし、僕たちには決定的な証拠がなかった。
逆に反論が広がり、僕たちはうそつき小僧たちとして疑われたり、無視されたりするまでになった。
おじさんの思惑通りだった。
僕は帰ってきてベッドに突っ伏した。
たまに見に行けば、おじさんがいた。そして、木の枯れ具合は目にみはるようだった。
もうだめだ。みしろちゃんに申し訳ない。
悔しくて悔しくて、ベッドを叩いた。
「お兄ちゃん、大丈夫」
「おまえこそ、大丈夫かよ」
またノックせずにミキが入ってきた。
そのミキには元気がありそうもない。
学校で木について聞かれるのに疲れたのだろう。同感だ。
でも、このままじゃ、手遅れになる。
「お兄ちゃん」
「ミキ、手伝ってくれ」
「?」
「今日深夜家を脱出する。そしてあいつと戦う」
「お兄ちゃん、無理しちゃダメって」
僕はあらかじめ買っておいたインスタントカメラを取り出した。
「あいつの犯行の瞬間をこれでとる。今日こそチャンスかもしれないんだ」
「でも」
「大丈夫、なんとかなるさ」
「んー」
ミキはあまり乗りきでないようだ。
「お願いだ、ミキ」
僕はミキの肩をつかんだ。
ミキは顔を真っ赤にして言った。
「うー、分かった。あとで聞かせてね」
そうして僕たちは作戦を開始した。と言っても、妹のミキにあらかじめ一階の窓の鍵を開けてもらうことだった。
僕はそこから抜け出し、一目散に丘へ向かった。
僕はそーっと丘に近づき、様子を見てみた。
おじさんがいた!
おじさんはなにか持っている。
あれは、チェーンソーだ。
――ウィィィィィィン
チェーンソー独特な音が周囲に響き渡る。
僕はもう恐怖を押し殺して、近づいた。
「やめろおおおおお」
おじさんはチェーンソーを止め、僕を殴った。
僕は地面に突っ伏す。
一発KOだ。
<ケンくん! ケンくん!>
みしろちゃんが僕を心配する声が聞こえてくる。
ごめん、無理だった。
<ケンくん! 私は良いから逃げて>
そうは言っても、立ち上がれそうにない。
「ぼくを殺すのか?」
「はあ?」
おじさんはなにを言い出すんだこいつは? と考えてるみたいだった。
「どうしてお前を殺す必要があるんだ?」
<ケンくん、はやく逃げて>
「だって目撃者だろう」
僕は片手でカメラを持ち上げて、パシャッと撮った。
おじさんはそれを奪い取り、地面に叩きつけ、フィルムを取り出す。
「殺したら、警察が来るではないか」
そう、それでいい。一秒でも長く時間を稼ごう。
「でも、こんな時間に外にいるおじさんは、怪しいんでない?」
「それはお前も同じだろう」
確かにそうだ。
く、あまり持ちそうにない。
「さて、いくかな」
おじさんはチェーンソーを再び動かし、それを木にぶつける。
ああ、僕の大好きなみしろちゃんが。
目の前で切り刻まれていく。
それはすぐに終わった。
チェーンソーは木を半分以上切り刻み、あとはもうちょっとだけだった。
いつの間にかみしろちゃんの声も聞こえない。
「これで最後だな」
おじさんはなんでここまでするんだろう。それはもう分からない。
でも、僕は小さな願いを願うことにした。
もう一度、みしろちゃんと会えますように。
おじさんはそれを大きく蹴った。
木は傾き、倒れていく。
もう終わりだ。
――バン、ボン、ガッシャーーーン
「え」
それはまるでどんぐりが転がるように飛び跳ね、社に激突する。
その音はお寺の鐘と同じくらい、大きな音だった。
おじさんは顔が真っ青になり、逃げようとした。
僕はチェーンソーとおじさんの靴に掴みかかった。
「この、はなせ! はなせ!」
「終わりだ。おじさん」
<終わり>
僕と同じように、みしろちゃんもおじさんの靴をつかんでいた。
「こんのおおおおお」
「なにごとだあああ」
それからはあっという間だった。
おじさんは警察に連行され、周囲は人だかり。
僕は褒められたのと怒られたのを何度も繰り返した。
さらに、僕たちへの疑惑の念は消えた。
それから一カ月ほど、丘へ近づけなかった。
相変わらず、みしろちゃんは切り株らしい。
僕とミキはひさしぶりに許可が降りて、丘にやってきた。
切り株がポツンと置いてあり、あのすばらしい緑と白が見る影もない。
僕たち二人は、それを見れる間近に座った。
「みしろちゃん」
「あ、お兄ちゃん見て」
ミキがなにか指差していた。
そこには、木の芽があった。
「ああああ」
まだ木は死んでなかった。生きているんだ。
僕たちはうれしくて、ジャンプしあった。
「あ、またうんめぇ棒がなくなってる!」
「え、ほんとか!?」
それは、みしろちゃんがまだいるってこと。
「なんでお兄ちゃん嬉しそうなの」
ミキは怒った顔をして言った。
「なんでもないよ。それに僕じゃない」
「ううううう」
「あ!」
「どうしたの、お兄ちゃん」
丘より下に、巫女の小さな女の子がいた。それは、緑と白の髪で。
「あれ、あんな女の子いたっけ?」
「ミキ、見えるのか?」
僕はミキの肩を揺さぶった。
「うわああ、お兄ちゃん。……見えるよ」
「そうかそうか。実はな、あの子は」 END
『願いを叶える木』
八千字を超えました。
もう少しかけそうな気がします。
最後は息切れ気味(汗)ですが。
楽しんでくれたら幸いです。