有限空間
1つの始まり
有るはずで無いその世界の物語
『ぎゃあぁぁ…』
一人の叫び声がこだまする
そんな声が響き渡る中二人の青年が話していた
『やれやれ…また食べられた。食欲旺盛なこった』
一人の金髪青年がため息混じりにやれやれ…と話す
『おい、ゆうき。お前上の誘い受けんのか?』
顔を向けられた一人の青年は
顔に苦笑いを浮かべながら
『まあね…ただ僕は実力行使。みたいな立場とは変わるみたいだから力を分離させたいんだけど…』
そう言うと悩ましげに考え込む
『んー作んのか?でもアレ相当体力使うだろ、
いくら力の強いお前でも大丈夫か?』
金髪の青年が心配げに青年を見つめる
何て言ってもリスクのある行動、
『うーん…それでもこの方法が今一番みたいだからなぁ…』
ひとしきり思い悩み考え込んだ末口を開いた
『…やっぱり作るんだな?』
先程とは打って変わり
真面目な表情を向ける
『うん、作ってみようと思う。もう一人の僕を』
そして思い悩んでいた口調から一変、
真剣な口調に変わる
『やれやれ…なら準備しなくちゃな』
青年はしぶしぶとその場を離れていく
『さあ…準備が整い次第始めようか』
微笑み青年も移動する
「改変の始まりだ」
『ここは……?』
おかしい
記憶がほとんどない
何故俺はここに…
『真っ暗だ…何も見えない、電気もついてないのか?』
辺りを見回してみるが何も見当たらない
『おはようゆうき。もう一人の僕』
???
言ってることが理解出来ない
身長は自分と同じくらいだろうか
青年がにこやかに俺の方を見て微笑んでる
わからないことだらけだ
『ちょっと聞いてもいいか?』
『ん?構わないよ。今は何もわからないだろうしね』
彼は苦笑しながら説明し始めた
『ここはいわゆる精神世界、やろうと思えばなんでも出来る世界…まあなんでもでもないんだけど』
精神世界??
どういうことだ?
『でも大抵のことは出来るよ。武器を出したりワープしたり、果てには相手を食べちゃうことも。吸収って言った方がいいかな?』
思考が追いつかない…
食べる?吸収?
『ま、仮にも僕なんだ。簡単に食べられたりしないでね?』
悪戯にそう言い放つ
『君に来てほしい場所があるんだ』
そう言って彼は歩き始めた
…段々目が慣れてきたのだろうか
辺りの様子が少しずつ見えてきた
『ここはね、ある女の子の精神空間。そして僕達はその世界の住人』
精神空間?住人?
俺がいた世界とは違う世界なのか…?
『じゃあ俺の記憶は…』
そう言いかけた時
『おっと誤解しないでね?君の記憶も確かに君のもの。君はそれだけの記憶を持って生まれたに過ぎない…何の因果かこの世界にね』
そう言ってニコッと笑顔を向ける
『まあ僕が生んだようなものなんだけど…』
細々と話す…ってちょっと待った!
『ちょっと待ってくれそれってどういう…』
俺の言葉を遮り彼が話しを続ける
『そして僕達はこの世界で『彼女』の平穏を保つために動いてる。君にもその協力をしてほしいんだ』
急に真面目な声色に変わる
『そして僕達はそんなちょっと特殊な『彼女』の中に住まう…いわば人格者だ』
人格者…!
頭の中で何かが壊れた音がした
自分の世界観が目まぐるしく動く。
今日はそんな一日になる気がした
『ん、着いたよ』
そう言われ辺りを見回してみる
ここは…囲いの中に数人が集まって談笑している
『六人くらいか…?何の用事で俺をここに?』
俺はとりあえず聞いてみることにした
身の回りの状況もまだ飲み込めてないのに
連れ回されたんじゃたまったものじゃない
『いらっしゃーい!!』
うわっ、びっくりした…なんだコイツは
身長は俺よりちょい下か、
金髪にピアス…派手な奴だな…
『ようようよう!お前がゆうきの弟か、俺ナナシっよろしくな』
ん…?ゆうき?
『おい、ゆうきはお…』
言い終わる前に
『まあまあ待て待てちゃんと説明すっからさ』
そう言うとどうどうと落ち着かせるような動作を取り肩を組んでくる
ずいぶんと陽気な奴だな…
『何故肩を組むんだ』
『いいじゃねぇーのそんくらい』
笑いながら肩を叩かれた
『何ムスッとしてんだ、餓鬼だなー』
表情を読まれた…どっちが餓鬼だ
『んで俺が鋼哉だ。』
無表情のまま高身長の男が答える
『あ、このオッサン無知ってかあまり会話出来ねーけど気にすんなよ』
『…俺をどうしたい?』
耐え切れずに言ってしまった
『んー』
ナナシの表情が一瞬変わった気がした
だがすぐに戻り
『だから焦んなっての、ゆっくりなー、さて次いってみよか』
またはぐらかされた
一体なんだというんだ…
『勇斗、一応守りでやってる。よろしく頼むな』
30代くらいか?工場にいそうな感じだな
守りってなんだ?
『守り?』
『そう焦るな、お前さんにもちゃんと説明する』
むむ…
『私は美羽だよっみんなからは『みぃ』って呼ばれてるの』
天真爛漫な笑顔を向けてくる
十歳来てないかな?くらいの小さい子だ
『よしこれでここにいるの『ぜいいん』か?』
『ぜいいんじゃなくて全員な』
勇斗が突っ込む
『う…細かいなー別にどっちでもいいじゃねぇか、伝わりゃいんだよ』
『ふふっ』
つい笑ってしまった
『こらそこ笑ってんじゃねぇぞ』
ナナシが顔を赤くしながら言う
『いやだってお前誤魔化し方…ククッ』
だめだ、相手が必死な分余計に笑ってしまう
笑ってるからかナナシの顔も真っ赤にし
『こっ、このやろ…おっし表出ろやっ』
クイッと指で後ろの方を指差す
『あのー…』
話しを割って口を開いたのは俺を連れてきた青年だった
有限空間