双子の翼
prologue
「ギィィィィィィィィィィィィィ」
俺には双子の弟がいた。そう、2ヶ月前までは。交通事故で泣き叫ぶような車の音を、俺はいまだに忘れられない。
やけに眩しい朝日を浴びて、俺は目をさました。テレビをつけて、いつものように学校に行く支度をしていたら、ある占い番組の音が聞こえた。
「しし座のあなた、今日は最下位です。いろいろなドジが重なり最悪な1日になるかも…。」
「うわ、まじかよー。」
いつもなら良い占いなら信じて、悪い占いはスルーするのだが、このときは嫌な予感しかしなかった。
「あ、もうこんな時間だ。走って学校行かなきゃ遅刻するかも…。 行ってきまーす!」
家を出た後、近道をしようと道の角をまがった時
「ドン!!」
と、いう音と共に、「俺」の体が跳ね上がった。
目が覚めた。俺は弟のように車にはねられ、死んだはずだ。なぜ生きているのだろう。
「なぜ生きているのだろう?と思っていませんか?」
真っ白な空間の中に急に美しい女性?があらわれた。
「あなたは確かに死にました。弟のように。でも、この場にあなたがいるということが、なにを示しているのか、あなたはわかりますか?」
突然そんなこといわれても、わかるはずがない。
「そうですか。それはそうでしょうね。」
俺は声に出したつもりはない。だがこの女性は心を読んでいるかのように、俺が思い浮かべた言葉の答えを口にした。なぜだ?
「心くらい読めますよ?なんせ女神ですから♪」
は?意味が分からない。女神?でも、それが本当だったとしたら、この変な白い空間に俺がいることは、まぁ微かに少しだけなら信じられる。
「弟は興味津々で信じてくれましたよ~~。」
「ちょっと待て、俺の弟もここにきたのか?」
「もちろん。2ヶ月くらい前にね。」
「なぜ俺たちは死んだのに、ここにいるんだ?死んだら人類皆ここに来るのか?」
「あなた達だけです。ここに来るのは。」
「なぜ俺たちだけ、ここにきたんだ?」
「…………………………」
「なんで?」
「………………………………………………」
なんで答えないのだろう。何か理由があるのかな?
「そんなことより、1つお願いがあります。」
いい加減な女神だな。
「あなたの弟さんはもう行ったのですが…。あなたにはこれから、モンスターズ・ファンタジーというゲームの中に転生し、ゲームクリアを目指して旅をしてほしいのです。」
モンスターズファンタジーというゲームなら聞いたことがある。そういえば俺の弟もハマってたゲームだな。
「なんでですか?俺にとってメリットは無いじゃないですか。」
「あなたの弟さんも同じことを言ってましたよ。メリットはあります。ゲームクリア時にあなた達双子で1つだけ願いをかなえて差し上げます。」
「はい、わかりました!行ってきまーす!」
「えらい変わりようですね。」
現実世界に生き返る、という願いを叶えてもらえばいいし。
「なるほど、そういうことでしたか。」
「あ、心読めるんでしたね。」
胡散臭いけどなぁ、この女神。
「聞こえてますよ~~。すべて。」
「すすす、すみません!!」
「詳しい質問などはゲームクリア時にすべて答えますからお気にならさずに。」
「最後の質問何ですけど、俺の弟もゲームクリア目指して旅してるんですか?」
「はい、どこかで合流できるようにしておきますね。」
「じゃあ早速行ってきまーす。」
「あ、最後に私からのプレゼントです。様々なチート能力をあなたのキャラに追加しておきますね。では、いってらっしゃ~い。」
そういえばなぜ、あの女神はゲームクリアをしてほしいのだろうか…。
えっ~と。あの女神によると、最初にキャラ設定をしなければいけないらしい。まず始めに種族選びか…。人間、怪人、ドワーフ、ロボット、竜神の中から選ぶのか~。竜神はかっこよさそうだけどなー。やっぱり人間にしよう。
次は性別か。当然男性だな。
次は年齢かぁ。少年、青年、大人、中年、老人から選ぶらしい。実際どーり青年でいくか。
最後に名前入力かぁ…。実際の名前は涼だから…。そのまま「リョウ」でいくか。
よし、人間 男性 青年 リョウでキャラを登録しよう。ちなみに弟は優という名前で、このゲームでは「ユーちゃん」という名前らしい。女神がいってた。
登録を終えた途端、フワッという感触と共に緑の草原に降り立った。とにかく、近くの町にでも行くか。
2時間後
ここらへんに町なんかないじゃないか~。
「そんなときに登場女神ちゃんでーす。」
なんか出てきたー。
「今だけサービスで、近くの村へワープさせちゃいます☆」
「村じゃなくて町がいい。」
「えっ?ワープしたくない?」
「すいませんっ!村がいいですっ!」
「ちなみに、リョウ君にプレゼントしたチート能力は、古代魔法のワープ能力と、呪文が使えない職業でも呪文が使えちゃう能力ですね~。ワープは一度行ったことのある場所しか行くことができませんので、注意してください。あと、中級呪文までなら全部リョウ君が使えるようにしましたよ~」
「いつからリョウ君と呼ぶようになった?」
「いまからですよ~。」
まあ、どうでもいいや。
女神にワープさせてもらい、ある村についた。どうやらこの村は、怪人たち、すなわち、エルフが集う「ベルリー村」という村らしい。まずは、近くのエルフ達から情報収集だ。
エルフ達が集うベルリー村で、俺は情報収集をしていた。情報収集の内容は、この世界での戦い方、このゲームのクリア条件、「ユーちゃん」を知っている人物探しなどなど。
おかげで、次の情報が集まった。
一つ目は、この世界には村、町、お城などがあり、そのお城の城下町には「狩人ギルド」という場所があること。そこで雇ってもらえると、様々なクエストを受注できるらしい。どんどんクエストをこなしていくと、S級クエストがを受注できるようになり、そこにゲーム進行の手がかりがあるらしい。
二つ目は、この世界でのバトルの強さは、レベル制ということ。単純に敵を倒せば経験値が入り、それでレベルが上がる仕様らしい。ちなみに、レベルが上がると装備できる武器と防具が、どんどん増えていくそうだ。
三つ目は、なんと、ユーちゃんこと、俺の双子の弟、優の目撃情報である。つい四日くらい前までは、このベルリー村にいたらしい。エルフ達の情報によると、今はベルリー村から四時間くらい歩いたところにある、アイレン城下町という場所にいるらしい。
俺は、早速ベルリー村を出発して、アイレン城下町を目指した。
歩いて四時間なら、走れば二時間だ。まあ、ずっと走るのは嫌気が指すけど。
三時間後~
よし、なんとかアイレン城下町についたぞ。途中でいろいろなモンスターに遭遇して、思ったより時間が立ってしまった。おかげで、レベルが1〜5に上がったけど..........。地味にチート能力を連発したけどね♪
そういえば、狩人ギルドがあるはずだから、そっちにもよっていくか。
優がこの城下町のどこにいるのかを、聞き込みしながら探すかー。女神が言ってたけど、僕も優も、顔や見た目などは生前と変わってないらしい。
まず始めに酒場で聞き込みしてみるか。
よし、酒場についた。早速聞き込みを開始するか。話しかけやすそうな人いないかな〜。うーん、あの人にしよう。
「あの〜、ちょっといいですか?今、人探しをしてまし........てっえええええええええええ???」
なんと、話しかけたのは双子の弟の優だった。
「!!!!!涼?!久しぶり〜」
「久しぶり〜じゃねーよ。勝手に死にやがって!寂しかったんだぞ!!優!」
「ごめん。でも、涼もここにいるってことは死んだんでしょ?」
「…交通事故でな。優と同じ死に方した。」
「そっか..........。女神には会った?」
「ああ、最初にな」
「ちなみに涼も僕と同じで、人間、男性、青年、なんだね。」
「まあ、ね。それより、なぜユーちゃんという名前にしたんだ?」
「涼は知ってるでしょ?生前僕がこのゲームにハマってたこと。」
「ああ」
「その時使ってた名前だからだよ。」
「なるほど」
「でさ、せっかくだからいろんな話しよう?」
「そうだな。じゃあその前に宿を手配しに行くよ。」
「僕も行く〜。」
俺と優は夜遅くまで一緒にいろんな話をした。
そして、夜が開けた!
「おはようー涼。」
「おはようー優。」
「今日は何か予定ある?」
「ないよ」
「じゃあ行きたいところある?」
「俺が行きたいところか〜。狩人ギルドとかで雇ってもらいに行きたいところだけどなぁ。」
「よく狩人ギルドとか知ってるね。涼」
「情報収集しまくったからな」
「実は僕、アイレンギルドのギルドマスターと知り合いなんだ〜〜」
「マジで!?」
「すごいでしょ〜。ちなみに僕もアイレンギルドに所属しようと思ってるよ」
「じゃあ一緒にいかないか?」
「やった〜。今、いく準備するね。涼はバトルタイプ何系?僕は呪文系だけど」
「俺は多分、打撃系だと思う。チート能力で呪文も唱えられるけど.........」
「やっぱり涼もチート能力貰えたんだ〜」
「ああ」
「良かったーー」
「涼もってことは優も?」
「もちろん。呪文系だけど打撃系特技使えるよー」
「「やったーーーーーーーー」」
俺と優はそろってハイタッチした。優と話していると楽しい気分になる。
「よし、優〜そろそろ行くぞ〜〜」
「はーい。Let's go〜〜〜〜」
20分後~
「心の準備はいい?涼」
「ああ」
「いざっ!!」
俺と優でギルドのドアを開け、ギルドマスターがいる部屋へと進んで行く。
「失礼します」
「おお、ユーちゃんかね。久しぶりじゃ」
「お久しぶりです。マスター」
「わざわざここに来るということは、何か要件があるのじゃろう?」
「はい。私と私の双子の兄をアイレンギルドに入れていただけないでしょうか」
「ユーちゃんの強さは把握しておるから即戦力として、是非入ってもらいたいのだが........。ユーちゃんの兄よ。」
「はい!」
「自己紹介をしてみたまえ」
「はい。名前はリョウです。レベル5でまだまだ新米ですが、アイレンギルドに入れたら精神繊維頑張りたいと思います。ちなみに打撃系の職業ですが、中級までの呪文なら唱ることができます。」
「!!。それは誠か?」
「はい」
「双子揃って特殊能力を持っているのか。よし、二人とも即戦力としてアイレンギルドへの入隊を許可する!!」
「「ありがとうございます!!」」
「やったねーーーー涼」
「よっしゃあああ」
「明日からクエストをこなして行きますか。」
「オーー」
「なぁ、優のレベルはどれくらいあるのか?」
「まだ12だよー。」
「え?2ヶ月も前からゲームプレイしてるのに?」
「ずっと職人っていうシステムで金稼ぎしてたからね」
「職人?」
「そう、おかげで1000万g溜まってます(笑)」
「お〜〜〜〜〜〜〜」
優の話によると、職人は今からいう5種類あるらしい。
一つ目は、料理。名前の通り料理を作って稼ぐ職人。
二つ目は、鍛治。鍛治で武器などを作り、稼ぐ職人。
三つ目は、防具。防具を生産して、稼ぐ職人。
四つ目は、裁縫。服などを作り、稼ぐ職人。
五つ目は、錬金。道具を調合して稼ぐ職人。
優は鍛治職人らしい。俺は裁縫職人にでもなろうかなー。お金全然ないやー。
翌日~
「涼~。もうすぐクエスト行くよ~」
「は~~」
「何ムスッとしてんの?」
人生初のクエストを楽しもうと思ってたのに。クエスト内容がしょぼすぎる。最初に俺がいた広い草原にクリコン草という、草が生えているらしい。それを採集して来る、という簡単なクエストだ。
「あ~なるほど。分かったよ。涼は初めてのクエスト内容が気にくわないんでしょ~」
「鋭いなっ!」
「あのね、クリコン草はね、毒消しの作用があるんだよ。」
「へぇー」
「でね、クリコン草が生えている草原を、クリコン草原と言うんだ。」
「へぇー亅
「クリコン草原はものすごく遠くにあるから、多くの人が取りにいけなくて、ギルドに依頼しにくるんだって」
「そうなんだ」
「余分にとってきて、店に売れば金にはなるよ。」
「クリコン草原までどれくらい時間がかかるんだ?」
「8時間くらいだね」
「良かった」
「!?、なんで?」
「俺は一度いった村にワープできるんだ」
「なんで涼が、古代魔法を使えるの?」
「女神のおかげ。」
「なるほど。チート能力か〜」
「優も何かチート能力あるんでしょ?教えてよ」
「僕のはね〜〜〜〜〜〜〜。ひ・み・つ!」
「えー、教えてよ〜〜〜〜〜〜〜」
「いつか見せるよ」
そんなこんなで、ベルリー村まで俺たちはワープした。
クリコン草原到着〜〜〜〜〜〜〜。
クリコン草原にきてから40分くらい、クリコン草を探し続けているが、いまだに1個も見つけられない。「優〜、そろそろ休憩しないか?」
「そうだね」
「じゃあ、なんか話でもするか」
「涼は、どんな職人に就こうと思ってるの?」
「裁縫か料理かな」
「へー。そういえば、涼は料理上手いよね」
「そうかな〜。」
照れるなぁ。そういえば、優は俺の作る料理好きだったな。
15分後〜
「あったああああああああああ!」
「本当?涼」
「ああ」
クリコン草原のはずれの部分に、大量にクリコン草が生えていた。
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今、俺はアイレンギルドにいる。クエストを達成できたら、ギルドマスターに報告しなければいけないらしい。
「マスター、クリコン草採取の依頼をこなして来ました。」
優がギルドマスターに話しかけた。
「ご苦労。さぞかし疲れたじゃろう?」
「はい」
「宿を手配してある。今日はゆっくりするがいい。」
「ありがとうございます」
さすがギルドマスター。風格や佇まいがすごい。ちなみに報酬は、2500gだった。
明日は、ギルド休みだし、職人にでも手を出すか。
翌日~
今日は裁縫職人を体験してみるか。
裁縫ギルドって思ったより大きいし、本格的だな。さすがはゲームだ。
「お邪魔しまーす。今日一日裁縫職人を体験させていただけないでしょうか?」
「ん?お客んか。すまん、もう一回要件を言ってもらえないか?」
めんどくさい人だな。けど、種族は竜神なのかー。かっこいいな。
「あのー、今日一日裁縫職人を体験させていただけないでしょうか?」
「おお!久しぶりの体験者だ。是非お願いしたい」
この人何気に熱い人だな。
「俺の名前はリョウといいます。狩人ギルドに所属しています」
うむ、Simple is the best 自分でも恐ろしいくらい普通の自己紹介だな。マアイイケド。
「私は、竜神のマアイ。見てわかる通り裁縫ギルドマスターだ。今日一日よろしくな。ちなみに、狩人ギルドのS級隊員だ。」
おお、すげー。そんなに強いのか、この兄さん。
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「では、これより裁縫職人について説明する。」
本格的だなぁ~。
「はい!」
「いい返事だな。じゃあ、まず始めに作れる装備の説明だ。作れる装備は、バトルタイプが呪文系の人達が主に装備する服などだ。服を作るのには素材が必要で、この裁縫ギルド内にある素材屋で買うか、自分で集めるかして、裁縫を行う。」
ここまでならまぁ簡単そうだな。
「装備が完成したら、私に教えてくれ。その装備を市場に出しておく。」
「面白そうですね。」
「まぁ今から実践してもらうから、とにかく作ってみてくれ」
素材は用意してくれてるのか。じゃあやりますか。
意外と難しいな。
15分後〜
「ふぅー。マアイさん、できました。」
「ほう、なかなかの出来栄えだな。」
「ありがとうございます」
「裁縫ギルドに入らないか?」
「まだ保留でお願いしていいですか?」
「そうか、まぁゆっくり考えろ」
「はい」
裁縫楽しかったな。次は料理職人の体験をしに行くか。
料理ギルド到着〜
「失礼します。今日一日料理職人を体験させていただきたくて、来ました。」
「あら?あなたは、もしかしてリョウ君?」
!? なぜ俺の名前を知っているんだ?
「はい。俺の名前はリョウといいます。」
「やっぱり〜。狩人ギルドのマスターからあなたの話を聞いていたのよね〜〜。」
なるほど、そういうことか。
「あなたのことを、逸材だ!とか言って褒めていたわよー。」
そんなことを言われても嬉しいわけなくはなくなくない。それにしても料理ギルドのこの姉さん、すごく可愛いな。女神の三倍はあるぞ。
「あっ、自己紹介がまだだったわね。私は、料理ギルドのギルドマスターのレイカと言います。よろしくね☆」
おお、しゃべり方も可愛いな。それに、レイカさんはナイスボディだ。
「種族はあなたと一緒の人間よ。」
見てわかるけどね..........。
「なぜ、あのじいさんと知り合いなんですか?」
「親戚だからよ。」
そうなんだ〜。っていうか、ついレイカさんの顔に視線が言ってしまうんだが........。
「さて、そろそろ本題に入ろうかしら。」
「お願いします。」
「料理職人は、料理を作ってお客様に食べてもらうとしか稼ぐ方法がないと勘違いしてる人達が多いのよね。本当は、一時的に戦闘中のスキルをあげたりする食べ物とか、料理レシピを作ったりする方の仕事の方が多いのよ?リョウ君知ってた?」
料理職人って結構奥深いな。
「いいえ、知りませんでした。」
「まぁ知ってる人は、ほぼ料理職人だけなんですけどね。」
そうなのか。
「料理ギルド内の全員にランクがつけられてるのは、知ってる?」
そういえば、情報収集しまくってたときにそんな話を聞いたような………。
「聞いたことならあります。」
「いいね☆でね、ランクは下からF級、E級、D級、C級、B級、A級、S級、一つ星、二つ星、三ツ星に分かれているのよ。ちなみに私は………………。言わなくても分かるよね♪」
「はい。」
当然三ツ星だろうな。
「じゃあ、そろそろ体験してもらうわよ。」
「わかりました。」
「まずは、レシピ作りから。」
2時間後〜
「レイカさん、出来ました。」
「速いなー。どれどれ。」
自分なりに上手く出来た気がする。
「!!。このレシピは..........。」
ん?
「レイカさん、何かあるんですか?」
「いいからこのレシピどうりに作って見て。面白いわよ〜。」
はぁ。まぁやってみるか。
1時間30分後〜
「レイカさん、出来ました。味見はまだしてないので、レイカさんにお願いしたいのですが.....。」
「なにいってるのよ。味見どころか全部私がもらうわよ!」
!?!?!?!?まぁ食べてくれるならいいか。
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「わぁ!やっぱり〜。リョウ君すごいな〜。」
何を言っているのかよくわからない。
「え?その料理、そんなに美味しいんですか?」
「すごく美味しいわよ〜。実はね、料理の中にも黄金比率っていうのがあってね。リョウ君の作ったレシピには、それが完璧に出来ていたから驚いちゃったんだ。」
へぇー。俺が生前生きてた世界では、これが普通だったんだけどなぁ~。このゲームには、料理要素が少ないのだろうか。
「今日は、ここまでかな。リョウ君は、料理の才能あるよ。今ならいきなりS級ってところかな。」
マジか。嬉しいな〜、レイカさんに褒められると。可愛いし。
「どの職人になるか迷ってるんだったら、まだ保留でも大丈夫だからね。」
「はい、今日一日ありがとうございました!」
「またね〜〜〜〜〜〜〜〜」
「うーん、どうしようかな〜。」
俺は、この二日間で体験した裁縫職人と料理職人のどちらになろうか、迷っていた。
「なあ〜、どっちがいいと思う?優〜。」
なんとなく優に聞いてみた。
「僕に聞かないでよ。それくらい自分で決めないと〜。」
なんで上から目線なんだよ。まぁ言っていることはごもっともだが。
5分後〜
そうだ。とりあえず、各職の要点をまとめよう。まずは裁縫からだ。
呪文系装備と服を作れる。
マスターは竜神のマアイさん。
装備を作るのに素材が必要。
成功すればいい値段で売れる。
くらいかな。
次は料理だ。
マスターが超可愛い。
マスターは人間のレイカさん。
スキル向上アイテムを作れる。
良いレシピを作るとそのレシピがかなり高く売れる。
これくらいかな。
20分後〜
よし、決めた!料理職人に俺はなる!!
マアイさん、 なんかすいません。
決めた理由は、自分が料理好きなのと、マスターが超可愛いから。俺にしては、これでも考え抜いた方である。
「そうと決まれば早速料理ギルドへGO!!」
ーーーーー
料理ギルドについた。レイカさん今いるかな?
「失礼します。先日体験に来たリョウと申します。レイカさんはいらっしゃいますか?」
「いるわよ~~。」
まあ、いるだろうな。さっそく本題に移そう。
「あの~。先日話した職人のこと何ですが…。」
「うんうん!」
すごい目を輝かせてるな。
「料理職人に決めました。」
「わ~、本当~?じゃあこれからも一緒だねー(^-^)/。」
満面の笑みで僕にレイカさんは微笑んだ。かっわい~な~(笑)
「とりあえず、今日は帰っても大丈夫よ。手続きは私がやっておくわ。」
やっぱり面倒見のいいマスターだな。今思えば、最初は金稼ぎだけが目的だったのに、今は可愛いレイカさんに会うのが目的だったりします。町の人が、レイカさんはアイドル的な存在だ!とか熱心に語ってたし…。ファンクラブがあるという噂もあるしな~。
宿到着~
一応、優に報告しておくか。優は俺よりこのゲームに詳しいし…。
「なぁ~、優ー。」
「何~?」
「俺、料理職人になるよ。」
「やっと決めたんだ~。まあ、はっきり言って職人よりゲームクリアが優先なんだけどね…。」
ぐうの音がでないほど正しい言葉を言い放たれましたっ!いや、俺だって薄々気づいてたけどね?ただ、今まで俺の中の純粋な心がゲームをね?楽しめってね?いってるような気がしてたんだよ?まあ今優に言われた言葉で確信が持てたけどさ?まだ俺の心のどこかでゲームを楽しめって叫んでるような気がするよ…。
ん?そういえば優は生前このゲームをやり尽くしているんだよな?それならゲームクリア条件くらい知っているんじゃないのか?
「はぁはぁ」
俺は全力疾走で、あるクエストの任務をこなしているところだ。
なぁ、優。お前はこのゲームのクリア条件を知っているんじゃないか?と、俺は隣にいる優に聞こうとしたけど、やっぱりやめた。
なぜなら、今受注しているクエストの報酬は、ゲームクリア条件を教える、という内容だったからだ。ここまでして優がクリア条件を探すのは多分、生前プレイしてたゲームのクリア条件と今いるゲームのクリア条件が違うからだろう。
1時間後~
「以外と早く終わったね。」
優がすがすがしい顔で俺に話しかけてきた。
「そうだな。」
ゲームクリア条件を教える、という報酬のクエスト何だから、もっと大変なクエストだと思ってた。
「さっそくマスターに報告して、ゲームクリア条件教えてもらおう~。」
「ああ。」
その後、ゲームクリア条件を教えてもらったが、意外と普通に予想できる内容だった。
その内容とは、
世界に眠る五つの宝石を集め、目覚めの海という場所に投げ入れる
という内容だ。なんかドラ○ンボー○みたいだな。しかも、その内の2つはギルドマスターの爺さんが持ってたから、実質 集めなければいけないのは3つだけだ。
2ヶ月後~
宝石集めてる時間を語ってもしょうがないから割愛しよう。
今俺がいるのは目覚めの海という場所だ。そして、俺と優の手には、合計で5つの宝石を持っている。ついにきたんだ!現実世界に戻る(生き返る、という表現の方が正しいと思うが。)ときが!!
「よし、涼。そろそろいくよ。」
「ああ。」
「これで、この世界ともお別れだね。」
「そうだな。」
「「せ~の!!」」
ポチャンーー。
「一一一一一一一。」
その水の音が聞こえた途端に俺は白い空間にとばされた。 今、何か優がつぶやいたような。いや、間違いない。
「涼。お別れだね。今までありがとう。」
と、言っていた。
っっ、どういうことだ?何でそんなことを?
この白い空間には俺以外にはだれもいない。優も…。
「ふわっ。」
その音と共に目の前に女神が現れた。
俺は即座に口が動いてしまった。
「俺の質問すべてに答えろ。」
「はい…。」
優のことは最後にきこう。
「なんで俺と優だけがこの世界に来たんだ?」
「すみません。それは嘘です。」
嘘?お前は何を言っている?
「あなた達以外にもたくさんの人をここに連れてきました。そして、全員がクリアを目指して冒険し、全員が死んでいきました。」
は?
「この世界につれてきた方法は、不慮の事故にみせかけて、地球上の人間を殺すというやり方です。」
は?は?は?は?は?は?は?これじゃお前は神じゃない!悪魔だ!
「俺と優もおまえのせいでこんなことに??」
「………はい………。」
「っっふざっけんじゃねーよ!おまえのせいで俺と優は離れ離れになったんだ!おまえのせいで人間たちが死んだんだ!」
「ごめんなさい!最初は、クリアすれば宝石の力で願いがかなう、という特典が欲しかっただけなんです!だけど、だんだんエスカレートして…。」
は?なんだよ!その理由!
「俺に謝るんじゃねえ!お前が殺した人たちにむけて死で償え!お前は女神じゃない!悪魔だ!」
「…はい。わかりました。」
冷静になればいろいろなことに気づいた。沢山の暴言を俺が吐いたこと。願いは1つしか叶えられないこと。それによって、俺か優、どちらかしか生き返れないこと。そして………………、優が俺が生き返ることを望んでいたこと…。
これが、俺があの悪魔にいった最期の言葉だ。
「俺を……生き返らせろ。」
気がつけば俺の目にはたくさんの涙が溢れていた。
優…。ありがとう。俺はお前の分まで楽しく人生を送るよ。ありがとう。ありがとう…………。
そう思った途端に、もっと…、もっと涙が溢れてきた。
これが俺の弟がいない理由。
これらは、全部中学3年生の夏におこった出来事だ。
双子の翼