真夜中フレンド

真夜中フレンド

真夏の真夜中にできた初めての友達。

とっても、可笑しな子だけどほんとは、とっても優しい

不透明なあの子

どうやら、僕は死ぬらしい。
夏の太陽がとっくにもう山に隠れたそんな夜中時に、斑目辰生12歳は、1人病室のベットの上で考えていた。かなり、悲しいことなのに当の本人は「明日は、雨が降るらしい。」位の軽さでしか、思っていなかった。
チクチクと、時計の秒針が進む音が聞こえる。ふと、時計を見るともう、12時を過ぎる位だった。辰生は、小さく息を吐く。
担当医の話だと、最大で明日の昼間でしかこの心臓は動かないらしい。と言うことは、あと辰生が生きていられるのは残り最大で12時間位。辰生は、片手を胸に当ててみた。ドクンドクンと、心臓が動いている音が聞こえた。
正直に言って、辰生はこの心臓が止まることを、イメージすることができなかった。『心臓が停止する』や、『死んでしまう』という言葉は理解できたし、何となくだが一寸前からそうなんじゃないかな程度には理解していた。けれど、イメージができないのだ。この心臓が、無音状態になってしまうことが。
「あー、もうめんどくさい」
そう、呟きながらボリボリと頭をかく。

「なーにが、めんどくせーんだ?少年よ。」

急に、聞こえた声に辰生は飛び上がるほど勢いで体を起こした。キョロキョロと、回りを見渡す。「上だよ。上。」声の指示通り上を見た。辰生は、人生で一番と言ってまでいいほどに、驚いた。なんと、少女がいたのだ。しかも、半透明で中に浮いているというあり得ない姿を。辰生は、目を溢れそうなほどに見開いた。 少女は、辰生のそばまで降りてくると辰生の顔を覗きこんだ。
「大丈夫かー?まぁ、あたりまえか。」
「え、どちら様でしょうか…?」
辰生が、恐る恐る聞く。少女は、あれ、言ってなかったっけ?と言い、中に浮い再び浮いた。
「あたしの名前は、カミィリア。ただの、バンシーさ。」
カミィリアは、その場でニカッと笑う。
「バンシー?」
辰生が、不思議そうに呟く。
「ありゃ、バンシーを知らないとは!!」
カミィリアは、あからさまに作ったような驚いた顔する。その行動に、辰生は少し、ほんの少しだけ引いた。カミィリアは、急に顔をキリッとさせ、眼鏡を少しあげるような仕草をする。
「説明しよう!!バンシーとは、もうすぐ死ぬ人間の側でシクシクと涙を流す妖精的な生物さ。」
『もうすぐ死ぬ』その単語が、脳内で何度もリピートする。理解していたはずなのに、少し悲しかった。
「ねぇ、カミィリア。」
「ん、なんだ?」
「僕は後どのくらいで死んじゃうの?」
カミィリアは、ポカンと呆けた顔をした。
「何だよ、その顔は。」
こっちは、いたって真剣なのに…
「いやーな、普通は泣き叫んだりする子ばっかでそんなこと聞いてくる奴いなかったからさ。」
そーか、そーかとカミィリアは呟く。
「よし、じゃぁよく聞け、辰生。」
カミィリアは、中に胡座をかきながら言った。
「まず、はっきり言うとあとお前は30分後に急な心臓停止死んじまう。」
そんなに早いのか。僕が死ぬのは。
「…そっか。」
そう呟き、カミィリアを見た。
「確かに、死ぬってのはとても苦しいことだ。でも、実際はそうでもない。寝むっちまうより簡単なことさ。」
目をつぶっちまえばすぐ終わる。
カミィリアはおどけていった 。
「はは、カミィリアが言うと本当のことの用に聞こえる。」
辰巳は、薄く笑った。それと同時に涙が溢れそうになった。泣きそうな辰生に、カミィリアは、心配したのかゆっくりと近くへとよってきた。辰生は、近寄って来たカミィリアをギリギリ自分とすり抜けない程度に軽く抱きしめた。辰生のいきなりの行動にカミィリアは目を見開き微かにうろたえた。辰生は、気付かれない用に静かに涙を流した。
「辰生…?」
「何でだろ。」
自分の声が、病室の中で響いた用に聞こえた。
「もう、生きることを、諦めてたのに。 」
辰生は、カミィリアをさっきより強く抱きしめた。
「今更、死ぬってことが怖くなっちゃうなんてさ…。」
こぼれ落ちた涙が、カミィリアをすり抜け布団を濡らした。カミィリアは、微笑んで辰生を、ゆっくりと撫でた。
「さっきも、言っただろー?一瞬なんだよ。一瞬。死んじゃうのってさ。」
カミィリアは、すっと辰生からすり抜け、辰生の側に立った。
「それに、お前は独りで死ぬんじゃない。あたしだっているんだ。寂しくないだろ?」
カミィリアのその言葉が何故かとても嬉しかった。
「カミィリア、ありがとう。」
カミィリアは、ニカっと笑った。
「さっ、そろそろ時間かな。」
それを聞き僕は、ベッドに寝転ぶ。自然と、瞼が重くなってきた。
「ねぇ、カミィリア。僕の最後のお願い聞いてくれない?」
カミィリアは、僕の手を握って頷いた。
「僕、友達いないんだ。だから、」


友達になってくれない?


「勿論だよ。辰生。」
「ありがとう。カミィリア。僕の最初で最後の友達。」
そう言い、辰生は涙を流し重い瞼を閉じた。
「バイバイ。あたしの初めての友達。」
そう言った、少し寂しそうなカミィリアの声が聞こえた気がした。

真夜中フレンド

遅くなりすいません。
暫く忙しかったんです…

今回は、友情です。
つぎは、なに書こうかな♪

真夜中フレンド

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-15

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