侵学史
二つ目の広場初の作品。
こんかいは恋愛系を含まない作品に仕上げます。
明豊と宙飛
今日も晴天。この日、仲間の一人が爆竹の空砲をなんかいも投げた。
俺はそいつの腕を掴んで線路沿いを通って、
マンションの内通路を出ると、おじさんに会った。
その人は、103歳だそうだ。広尾長明と言い、仲間の一人の曽祖父だった。
「そいつは、明豊、21歳。」
名前まで教えてくれた。俺は頷いた。3つも年上だった。
「理炉っ! 」
声の主は、宙飛。
宙飛が俺を呼んでいた。
腕を引っ張られ、道路を走って、階段を昇って、螺旋の道を駆けた。
丁度、したからみえないところ。
上に宙飛の妹・実侔が、少しばかり笑っていた。
実侔は俺の一つ上、仲間思い。
「充貝、兄ちゃんたち帰って来たよ。」
充貝が外出しないで待っている。
俺は実侔に促され、隠れ家に入る。
「宙飛が理炉を連れて来た。」
充貝が言う。
「明豊を連れてこようとうしたんでしょ。」
実侔に聞かれ、頷いた。
言われて明豊がいないことに気付いたが、
総旿や沸分もいない理由を聞くことにした。
「総旿や沸分は」
「和務たち5人、明豊のもとへ駆けつけた。」
宙飛が帰って来て早々伝える。
「よっぽど明豊を一人にさせたくなかったんだろうな。」
充貝が言う。
5人ということは、那由多も三河も含まれていることが解った。
「寿々音は順調か」
「明色の勉強みてる。第一私、ここに居たいから。」
宙飛の言いたかったことは実侔には解っていた。
女の子一人だからという心配は却って実侔を怒らせた。
明色は16歳。寿々音は19歳。
明豊のことがあって決めたことだった。
明色までなってしまったら、手がつけられない。
俺らの居心地と後の代のことを考えてのこと。
「ありがとな、実侔。」
宙飛は面目なさそうに言う。
充貝が小刻みに頷く。
そして、口を開く。
「10人以上居たんだけどなぁ。こりゃあ実質5人だったら半分以下。
量資はリーダーを誰だと思っているんだろうね。」
量資は沸分の下の名前。
充貝の苗字は国分だから。
仲間は下の名前で呼び合う。
目上に対してさん付けが望ましいが俺は無視している。
暗黙の了解かなにか、呼び方に対して強制しない。
少なくとも、一目は置かれていない。
間違いないだろう。
沸分も明豊のもとへ行った理由は無いだろう。
だが、幾つか見当はついた。
この間のロードレース。
宙飛が沸分と競り合って優勝。
宙飛にとっては安心したことだろう。
沸分にとってはイタいところを突かれたかもしれない。
かなり来てたと思う。あとは、クイズ大会。
俺が優勝して、宙飛が準優勝。
これには、沸分って意外にバカ敬えない。
そこらへん無知だが、エリート大学に合格ったタイプと思いました。
しかしながら、そういったことで俺らから隔たりを置くとは思えなかった。
形として脱退になっただけで、明豊次第で戻って来ると俺は睨んでいた。
無論、充貝は脱退を認めていない。黙認しているだけ。
実侔だって三河に総旿、沸分だって戻ってきてほしいと思っている。
ひょっとすると、沸分も明豊も年下たちと関わりたくないかもしれない。
尚更同じ仲間を。それだ。
実侔と総旿は同じ年同じ大学、同じ学科。
一つ上の三河はいいとして、助け合わなきゃ単位が危ないはず。
「実侔の単位考えないことにしたのか」
「誰が」
充貝が聞き返す。あたかも問題ないみたいに。
なにを言っているんだろう。
「もういい、考えない。自ら離れた者を即追うなど。離れそうになるのを止めるならまだしも。」
「理炉の言う通りでした。」
実侔が笑顔をつくる。
これは宙飛は衝撃を受けた。
「実侔、出席日数は足りてるだろ。総旿と仲良くしてたみたいだけど、単位のこともあったんだね。」
吹っきれた実侔に宙飛が言う。
あぁ、明豊を連れ戻さなきゃよかったんだ。
俺は浮かない顔をした。
「理炉、暗い顔すんなよ。私、考えないことにしたから。明豊が一人にならなくてよかったという進展があったから。」
「そっか、実侔が思うなら良いか。」
俺は穏やかになった。
「辞典があるから読むといい。」
充貝がフォローする。
「これで授業の復習できるね。」
宙飛が添える。
実侔は小さく笑った。
俺たちはそういった実侔の笑顔に心、救われてきた。
仲間だと実感がある。
実侔がいることが万能。
侵学史